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2021年09月09日(木)5:12 PM

大統領規則第49号2021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

大統領規則第49号2021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正

 

大統領規則第492021年によるアルコール関連事業等に関する外資規制の改正

2021年9月
One Asia Lawyers; Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul

 

1.はじめ

 インドネシアにおいては昨年制定された雇用創出に関する2020年法律第11号(以下「オムニバス法」)に関連して、投資事業分野に関する大統領規則2021年第10号(以下「PR10/2021」)が2021年2月2日付で公布、施行されました。

 さらに、2021年5月25日にこのPR10/2021を改訂する形で「投資事業分野に関する大統領規則2021年第10号の規則の改正に関する大統領規則2021年第49号」(以下、「PR49/2021」)が公布、施行されました。これに伴って同規則に添付されている投資リストが更新されております。

 PR49/2021は、PR10/2021によって開放されたように見えたアルコール飲料事業への民間投資について、イスラム宗教団体からの意見を踏まえて再度禁止にする一方で、PR10/2021で緩和されたその他の外資規制を再度変更する等の変更を含んでいる点で注意が必要となります。

 その他、商品に関わる電子商取引について協同組合や零細・中小企業(MSME)に割当てる旨規定する等、多数の分野について外資規制を定めております。

2. 投資が閉鎖された事業部門に関する変更

 アルコールを含む酒類の製造については、オムニバス法制定前の外資規制をきていしていた大統領規則2016年44号において投資禁止分野とされておりました。これに対して、PR10/2021は酒類製造が投資禁止である旨を明記しておらず、その結果酒類の製造が解禁されたと解釈されておりました。

 しかしながら、PR49/2021はアルコール飲料製造に関連する3つの事業分野を投資禁止事業分野に追加しております。

 これにより、改正後に設定された閉鎖された事業分野は以下となりました。

(i) 麻薬
(ii) 賭博および/またはカジノ
(iii) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)に記載されている魚類の採取
(iv) サンゴの利用または採取<
(v) 化学兵器
(vi) オゾン層を破壊する可能性のある化学物質
(vii) アルコール飲料製造(KBLI 11010)、アルコール-ワインを含む飲料の製造(KBLI 11020)、アルコール-モルトを含む飲料の製造(KBLI 11031)

3.投資が開放された事業分野に関する変更

 PR49/2021は、上記投資禁止分野について定めると同時に、下記のような条件付で投資が開放された分野についても変更が規定されております。

(1) 優先事業分野

 PR10/2021では245分野が優先事業分野とされていましたが、PR49/2021では246分野が優先とされ、以下のような優遇を受けることができるとされております。

(i)財政的インセンティブ(例:税控除、タックス・ホリデー、投資手当、輸入関税の免除)
(ii)非財政的インセンティブ(例:ビジネスライセンス、移民、雇用問題の緩和)

(2)協同組合およびMSMEへの割り当て、または義務的なパートナーシップ

    パートナーシップが必須な事業分野の合計は、PR 10/2021では89分野でしたが、PR49/2021においては106分野(181KBLIコード)となっています。協同組合や中小企業のために留保された分野を従来の51分野から60分野に、中小企業とのパートナーシップを必須とする事業分野を38分野から46分野に拡大された点に注意が必要です。 

 また、PR 10/2021においては100%外資での投資が可能とされていた下記商品の電子商取引がPR49/2021では中小企業に留保された事業となる旨が規定されております。これにより、下記の事業分野は、外国企業による投資が禁止されることになります。

i)食品・飲料、タバコ、化学薬品、薬局、化粧品、実験装置(KBLI 47911)
ii)繊維、衣類、履物、個人用機器(KBLI 47912)
iii)家庭用・台所用品(KBLI 47913)

(3) 条件付事業分野(株式所有制限)

 PR49/2021における条件付事業分野の合計は、37分野(41のKBLIコード)となっております。

 運搬・郵便事業の分野では、PR10/2021では無条件での投資が解禁されていた運搬事業(KBLI 53201)について、PR49/2021では外国人の最大所有率を49%とすることが規定されております。ただし、郵便事業(KBLI 53100)はPR 49/2021から除外されており、外国企業による100%までの投資が開放されております(以前は、所有率が最大49%に制限されていました)。

(4) 条件付事業分野(その他の制限)

 PR 49/2021においては、条件付事業分野において事業者が満たすべき要件として、PR 10/2021で定められていた上記株式所得制限や特別なライセンス等に加えて、新たに、「アルコール飲料の管理・監督の分野における制限、厳格な監督、他の法令による規制」を規定致しました(PR 49/2021第1条による改定後のPR10/2021第6条1項d、同条3a項)。具体的には、アルコール飲料卸売業(KBLI 46333)、アルコール飲料小売業(47221)、およびアルコール飲料小規模(Kaki Lima)小売業(KBLI 47826)がこれに該当します。
 これらの事業分野については、制限、厳格な監督及び個別法による規制の対象となることになります。

4.PR49/2021に基づく適用除外

 大統領規則2016年44号及びPR10/2021と同様に、PR49/2021も、本規則制定前に承認を受けている事業者への適用はない旨が規定されております(PR49/2021第Ⅱ条)。

5.結論

 上記のように、PR49/2021では、上記外資規制の対象となる4種すべての事業分野において修正がなされております。今回の改正では、特定の事業分野が新たに優先事業分野に追加されたほか、事業分野の中には、これまで別表3の条件付投資分野に記載されていたものが、別表2のMSMEに留保された分野またはMSMEとのパートナーシップが必須の事業分野に変更されたものもあります。他方、新たに別表から削除された事業分野もあるところ、今後の投資を検討するにあたり、非常に重要な変更を多数含んでおりますので注意が必要となります。

2021年08月16日(月)9:36 AM

インドネシアにおける電子署名の法的有効性についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

インドネシアにおける電子署名の法的有効性について

 

インドネシアにおける電子署名の法的有効性について

2021年8月
One Asia Lawyers; Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul

法的根拠

–       インドネシア民法(ICC)
–       電子情報と取引に関する法律2016年19号で改正された法律2008年11号(Law 19/2019)
–       電子取引システムの導入に関する政府規則2019年71号(GR 71/2019)

1.はじめ

 コロナウイルスの蔓延により、多くの企業はビジネスにおいてオンラインでの対応を余儀なくされております。世界各国では、渡航禁止やロックダウンなどの措置がとられており、インドネシアにおいても政府による大規模な社会的制限により、多くの企業が営業停止や、会社での業務を制限されております。

 在インドネシア日系企業の多くも、現在はリモートワークで業務を行っているところ、契約書の作成や省庁への申請手続きに困難を感じる場面も多いかと思います。このような状況において、オンライン上で行うことができる電子署名の有効性は、多くの企業の関心事となっております。本ニュースレターではインドネシアにおける電子署名の有効性に関する法制度および実務の状況をご説明致します。

2.   インドネシアにおける電子署名と契約

(1)電子契約

 電子システム上で作成された契約(電子契約)の有効性について、インドネシア民法は、意思の合致による契約の成立を認めているところ、有効な契約の成立に直筆の署名は要件とされておりません。これを前提に、Law 19/2016は、電子契約が有効であることを規定しています。

(2)電子署名の要件

 Law 19/2016において、「電子署名」は、「他の電子情報に添付、関連付け、または関連づけられた電子情報で構成される署名であり、検証および認証ツールとして使用されるもの」と定義されています(1条17号)。

 また、以下の要件を満たす限りにおいて、電子署名は法的効力を有する旨規定しています(Law 19/2016第11条、GR 71/2019第59条3項)。

・電子署名作成の際に使用されるデータが署名者のみに関連していること
・署名手続において電子署名作成に使用されるデータが署名者のみの権限の下にあること
・署名時以降に発生した電子署名の変更を把握可能であること
・署名時以降に電子署名に関する電子情報に変更があった場合にこれを把握可能であること
・署名者を特定するための一定の方法があること
・署名者が関連する電子情報に同意を与えたことを示す方法があること

 また、GR 71/2019は、電子署名を「認証された電子署名」と「認証されていない電子署名」の2種類に分けて規定しいます(60条2項)。両者の主な違いは、認証された電子署名がより強力な証拠価値、すなわち、裁判の際に当事者が電子署名が本物であることを証明する力が強い点にあるとされています。

 a. 認証された電子署名

 認証された電子署名は、それ自体が偽造等のリスクが低く、安全かつ真正であるとの推定が働きます。GR 71/2019第60条3項は「認証された電子署名」の要件として前述の有効な電子署名の要件に加え、インドネシアの電子証明書プロバイダーが作成した電子証明書によって証明されることを規定しています。

 この電子証明書プロバイダーはインドネシア通信情報省がこれを管理しており現在、インドネシアでは下記6つの期間が電子証明書プロバイダーとして登録されています。

 (i) 技術評価応用庁(BPPT)
 (ii) State Code and Cyber Agency (BSSN)
 (iii) インドネシア公共貨幣印刷会社 (Perum Peruri)
 (iv) PrivyID
 (v) Vida; and
 (vi) Digisign

※ 電子証明書プロバイダーの利用方法は各機関のウェブサイトに掲載されております。

 b. 認証されていない電子署名

 認証されない電子署名の例としては、直筆の署名をスキャンしたもの、オンラインでのクリック形式の同意、電子メールによる署名などが考えられます。

 また、インドネシアで登録されていない外国のプロバイダーが開発した電子署名も、認証されていない電子署名とみなされます。

このような認証されていない電子署名の場合、裁判の当事者は、証拠となる契約書の電子署名が有効かつ真正なものであることを自ら立証する必要があります。

 もっとも、認証されていない電子署名も法的に有効な署名となりますので、厳密な契約内容の有効性や署名の真正が争いにならない契約書等に利用することができます。一般的な使用例としては、企業間の商業契約(NDA、調達文書、販売契約など)、消費者契約(小売店の新規口座開設文書など)、リース契約などが挙げられます。

物理的な署名を必要とする活用事例

 上記のように、インドネシアにおいては電子署名の利用が認められており、実務上も、一定の契約についてはこれらが使用されいます。もっとも、法令上、下記のような一定の官公庁に提出する契約書については直筆の署名が必要とされています。

・雇用関係の文書
・定款、公正証書に記載する必要のある株主決議、株式・資産の譲渡契約書
・知的財産権の移転契約書
・不動産譲渡契約書
・公証、認証、捺印が法的に要求されている文書や契約書

(3)     クロスボーダー取引における電子署名

 インドネシアの規制では、クロスボーダーの電子署名に関する具体的な内容は定められていません。しかし、政府は現在、電子取引システムを利用したクロスボーダーの取引行為を規制するための政府規制案を作成中であるとされています。

(4)      インドネシアにおける実務の取扱い

 上記のように、インドネシアにおいては電子署名に関する法令及び規則が規定されており、複数の電子証明書プロバイダーも登録されています。もっとも、実務において電子署名を使用する際には依然として様々な問題があります。大きな問題の一つは、電子署名を利用するためのインフラが不足していることと、一部の政府機関の電子署名利用に対する関心の低さです。実際に、インドネシアの実務で多く利用される公正証書等、特定の分野や特定のサービスでは電子署名は利用できない形となっています。

 また、中央ジャカルタ地方裁判所の職員によると、裁判所は未だに電子署名の受け入れに消極的で、訴訟当事者に対して直筆の署名がされた書面をスキャンして電子メールや裁判所の電子プラットフォームを介して提出することを要求しているということです。

3.    総 論

 以上のように、インドネシアにおいては電子署名に関する規定が存在しており、その有効性が認められています。

 多くの企業が在宅勤務を余儀なくされている中で、電子署名の活用は、日々のビジネスを円滑に進める上で非常に有用なものです。

 他方で、紛争の可能性のある契約や、一定の官公庁に提出する書面に関しては直筆での署名が要求されています。

 したがって、電子署名を利用する書面と、そうでない書面の違いを理解したうえで、前者に関して署名の真正が争われる可能性があるような書面に関してはインドネシアの電子証明書プロバイダーを利用する等の対応が必要になります。

 

2021年07月05日(月)12:04 PM

コロナ禍におけるジャワ・バリにおける緊急地域活動制限の実施についてニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認ください。

コロナ禍におけるジャワ・バリにおける緊急地域活動制限の実施

 

コロナ禍におけるジャワ・バリにおける緊急地域活動制限の実施

2021年7月
One Asia Lawyers Indonesia office 代表
日本法弁護士
馬居 光二 

1 最初に

 インドネシアにおいてはジャワ・バリにおけるコロナウイルスの急拡大を受けて、2021年7月2日にジャワ及びバリにおける緊急地域活動制限(Pemberlakuan Pembatasan Kegiatan Masyarakat(PPKM))の実施に関する内務大臣告示2021年15号が発出されました。

2 緊急地域活動制限について

本告示は、これまで実施されていた小規模地域活動制限に対して、ジャワ島及びバリ島におけるより厳しい活動制限を導入するものです。インドネシアにおいては1日の感染者が6日連続で2万人を越えているところ、新規感染者数を1日1万人以下に下げるとの大統領の意向を受けて内務大臣が本告示を発行致しました。

 以下本告示の概要を説明致します。

(1)対象地域

 ジャワ島及びバリ島の全県及び全市の中でレベル4に指定された48県・市及びレベル3に指定された75県・市が制限の対象となっております(告示第1項、第3項)。

(2)制限の内容

  ア.事業の制限

  主な事業活動の制限は以下の通りです。

  ①学校、大学等教育活動はオンラインで実施(告示第3項(a))
  ②必須分野(金融、銀行、情報通信、決済システム、隔離業務を行わないホテル、輸出指向産業)以外の活動については完全在宅勤務(告示第3項(b))
  ③必須分野は50%を上限にオフィス勤務が可能(告示第3項(c)1号)
  ④実施を遅らせることのできない公共事業を実施する政府部門での必須業務は25%を上限にオフィス勤務が可能(告示第3項(c)2号)
  ⑤重要分野(エネルギー、物流、食品、国家戦略プロジェクト、電気や水等)は100%のオフィス勤務が可能(告示第3項(c)3号)
  ⑥スーパーマーケット等の食料品店は営業時間を20時までとし、来客数を50%とする(告示第3項(c)4号)
  ⑦薬局は24時間営業(告示第3項(c)5号)
  ⑧レストランやカフェ、屋台等はデリバリー/テイクアウトのみ(告示第3項(d))
  ⑨ショッピングモールは一時閉鎖(⑤重要分野や⑧レストラン等へのアクセスは使用可能(告示第3項(e)))
  ⑩公共施設は一時閉鎖(告示第3項(h)))
  ⑪建設事業は100%運営される(告示第3項(f))

 イ.交通制限

 自家用車、バイク、長距離公共交通機関を利用した長距離の国内移動についてはワクチン接種証明書の提示が求められます(告示第3項1(L)1号)。ただし、物流その他の貨物輸送車両の運転手は、ワクチン接種証明書の所持を免除されております(告示第3項1(L)4号)。

 さらに、ジャワ島及びバリ島を発着する飛行機による移動では、上記ワクチン接種証明書に加え、出発前2日以内に検体採取されたPCR検査の陰性証明書が要求されます(告示第3項1(L)2、3号)。他方で、飛行機以外の交通機関による移動では出発前1日以内に検体採取された迅速抗原検査の陰性証明書が求められる形となっています(告示第3項1(L)2号)。

上記の規制は、ジャカルタ市内の移動は対象としておりませんが、タクシーやGrab等の公共交通機関は定員の70%までの乗車に制限されております(告示第3項(j))。

(3)制裁

 本告示に違反する事業者、レストラン、モール、公共交通機関、個人は制裁が科される旨規定されております(告示第10項)。

(4)期間

 本措置は7月3日から7月20日まで実施されると規定されており(告示第13項)、延長の可能性も示唆されております。

3 実際のジャカルタの様子

(1)交通

 ジャカルタ特別州内の移動について交通の移動が禁止されていないこともあり、制限初日の7月3日(土)はそれなりに車が走っていました。ただし、感染の原因となり得るスポーツを禁止するという若干不思議な目的で、中心地にあるSudirman通りが閉鎖されておりました。

 また、モールが閉鎖され、飲食店はデリバリー・テイクアウトだけになっているため、Go FoodやGrab Foodといったデリバリーサービスのバイクが非常に多く見られました。昨年売上を伸ばしたこのようなオンラインサービスの事業活動が今後益々活発になっていくことを感じさせます。

(2)建設事業

 前述のように、今回の緊急地域活動制限下でも、建設事業は100%の運営が認められております。実際にジャカルタの街中で普段どおり建設作業は進められておりました。国民の健康を守りつつも、経済の発展を強く企図するインドネシアの現状を示しているように思えます。

(3)モール

 本告示記載の通り、 ジャカルタ内の全てのモールは基本的に閉鎖され、例外的に薬局や食料品店のみが開けられている状態です。飲食店は店内での飲食が禁止され、基本的にはGo FoodやGrab Foodといったデリバリー・テイクアウトのみの対応となっております。 

 実際に緊急活動制限初日にモールを訪れてみましたが、衣料品売場等は商品自体が片付けられており、完全に閉店状態となっておりました。一方で食料品点や薬局等にはそれなりに顧客が見られました。

(4)Antigen 検査

 インドネシアにおいては約150万〜300万ルピア(約1万1550円〜2万3100円)と高価なPCR検査よりも、おおよそ15万ルピア(約1155円)と安価なAntigenと呼ばれる抗原検査が良く使われております。Antigen検査は大きなオフィスビルの前に簡易なテントを張って行われている事が多く、特に予約はしないでも、その場で受付をして10分程度で結果がわかります。

 企業によっては訪問をする際にAntigen検査でネガティブの結果を受けることが求められることもございます。ただし、Antigen検査の精度はPCR検査よりも低いため、省庁への提出等重要な場合にはPCR検査を要求される場合がございます。なお、PCR検査は鼻の粘膜と唾液のいずれかを検査することになりますが、Antigen検査は鼻の粘膜の検査だけに対応している検査場が多いかと思われます。

4 最後に  

 弊インドネシアオフィスも政府の指示に従って現在はオフィスを閉鎖し、完全に在宅勤務となっております。弊インドネシアオフィス自体はそもそもが日本、ASEAN、インドを繋いでリモートワークを行っていたため業務自体に大きな支障はありませんが、多くの在ジャカルタ企業は業務の停滞を強いられているのが現状かと存じます。

 前述の内務大臣通達は7月20日までとされておりますところ、延長も含めて今後の状況を注意深く見守る必要がございます。

 ジャカルタの現状も含め、ご懸念点等ございましたらいつでもご連絡いただければ幸いです。

2021年06月21日(月)2:12 PM

外国投資(PMA)企業に100億ルピアの払込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委員会(BKPM)の新規則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

外国投資(PMA)企業に100億ルピアの払込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委員会(BKPM)の新規則について

 

外国投PMA)企業に100ルピアの込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委会(BKPM)の新規則について

2021年6月
One Asia Lawyers Indonesia office
日本法弁護士
馬居 光二
インドネシア法弁護士
Prisilia Sitompul

1.最初に

インドネシア投資調整委員会(BKPM)は2021年6月、以下の新規制を公布致しました。

・統合リスクベースライセンスの電子システムに関する規制2021年第3号(BKPM規則20213)
・リスクベースのライセンスと投資施設のガイドラインと手続きに関する規則2021年第4号 (BKPM規則20214)
・リスクベースライセンスの監督のためのガイドラインと手順に関する規則2021年第5号(BKPM規則20215)

 本規則の目的は、2021年4月に施行されたリスクベースのビジネスライセンスの実施に関する政府規則2021年第5号を実施することです。

 なお、上記規則に基づいたリスクベースのビジネスライセンスが2021年6月2日からオンライン・シングル・サブミッション・システム(OSSシステム)に実装される予定でしたが、後述のように2021年7月2日に延期されております(BKPM回書2021年14号)。

本稿においては、インドネシアにおける上記の変更点について解説いたします。

2.主な変更点

(1)BKPM規則2021年3号

       本規則は、簡易、迅速、正確、透明性があり、説明責任を果たすことができるリスクベースのビジネスライセンスの実施を実現することを目的としております。

  BKPM規則2021年3号は、主にOSSシステムの機能と技術的側面に関する規定を定めております。

  また、下記のようにBKPM規則2021年4号及びBKPM規則2021年5号は、外国企業が投資する会社(PMA企業)によるインドネシアへの投資要件にいくつかの重要な変更を導入しています。

(2)BKPM規則2021年4号

 a. PMAの最低必要本金と払込資本金

 BKPM 規則2021年4号では、インドネシアの法令で特段の定めが規定されていない限り、PMA企業は少なくとも100ルピア(7700万円)の払込資本が必要である旨が規定されております(BKPM規則2021年4号第12条6、7項)。本規則発行前は25億ルピア(約1925万円)の払込資本のみが必要とされており、新規則ではおよそ4倍近くもの資本金が求められることになります。本規則にはこれが既存のPMAに遡って適用されるのかについて明記されておりません。一般的には、特段の明示がない以上いわゆる「グランドファザールール」にしたがって適用はされないと考えられますが、今後の運用を注視していく必要があります。

 上記払込資本金の要件は、特に新たなスタートアップ企業やグリーンフィールド投資(新たに法人を設立する形態の投資)を企図する投資家にとって極めて不利なものとなります。

 また、同規則では、インドネシア標準産業KBLI)の5桁のコドごとに土地建物を除いて100ルピア以上の投が必要である旨が規定されております(BKPM規則2021年4号第12条1、2項)。すなわち、複数の産業分類にわたるビジネスを行うためには、そのビジネスラインごとに100億ルピアを支払わなければならない可能性があり、更なる資本金の積み増しが求められることになります。こちらは本規則以前も規定されておりましが、以下のように同規則第12条3項において上記規定の例外が定められております。

 

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ビジネスセクター

最低投資額

卸売業
KBLIコードの最初の4桁ごとに、土地・建物以外を除いて100億ルピア(約7700万円)
飲食業
KBLIコードの最初の2桁ごとに、土地・建物を除いて100億ルピア
建設サービス(建設コンサルテーションサービス、建設施行サービス、または統合建設施行サービス)
KBLIコードの最初の4桁ごとに、1件のプロジェクトについて土地・建物を除いて100億ルピア
1つの生産ラインで異なる5桁コードのKBLIに分類される複数の異なる製品を生産する製造業
1つの生産ラインにおけるKBLIの5桁ごとに土地と建物を除いて100億ルピア以上
不動産業:
a.    建物全体や集合住宅への投資
土地と建物を含めて100億ルピア
b.    建物全体や集合住宅以外への投資
土地と建物を除いて100ルピア

 

 また、BKPM規則2021年4号第13条は、(a)駐在員事務所および(b)外国事業体に対して前述の最低投資額要件及び最低払込済資本金要件を免除しております。駐在員事務所及び外国事業体の定義は以下の通りです。

 a. 駐在員事務所:インドネシアの個人、外国籍の個人、またはインドネシア共和国の領土内で事務所設立の承認を得た外国人起業家の代表である事業体(BKPM規則2021年4号第9条3項)

 b. 外国事業体:インドネシア共和国の領土外で設立され、特定の分野で事業や活動を行っている外国の事業体(BKPM規則2021年4号第9条4項)。

 *上記外国事業体は少なくとも以下の構成要素からなると規定されております(BKPM規則2021年4号第9条11項、12項)。

 a. 外国のフランチャイザー
 b. 外国の先物取引業者
 c. 外国の民間企業の電子システムプロバイダー
 d. 恒久的な事業形態(石油および天然ガス部門で事業活動を行うために設立された駐在員事務所を含む)

 b. PMA企業の子会社がPMA企業に移行するための要件

 BKPM規則2021年4号の第 57条7項に基づき、国内投資(PMDN)会社としてのステータスを持つPMA企業の子会社は、OSSシステムを通じてデータを更新することにより、1年以内にそのステータスをPMA企業に変更しなければならないとされています。

 上記ステータス変更の結果、関連子会社が外国投資に対して閉鎖または制限されている活動を行っている場合にはその活動を直ちに中止する必要があります。

 c. ダイベストメントの要件

 BKPM規則2021年4号においてはPMA企業はBKPM規則2021年4号以前に発行された投資ライセンスに基づいて売却要件が要求されている場合、当該売却義務があることが再確認されております(BKPM規則2021年4号第14条)。

 ただし、BKPM規則2021年4号では、以下の条件を満たす場合、ダイベストメントの要件を免除することができます。

 a. 当該会社のインドネシアにおけるローカル株主が株式売却を必要としない場合(14条8項a)

 b. 株主が100%外国企業(個人)のPMA企業の場合で、インドネシア国内のいかなる者とも株式を売却する約束や合意をしていない場合(14条8項b)

 こちらのダイベストメント規定は2007年に制定された現行の投資法において撤廃されているため、それ以降に設立された会社には適用がございません。同法制定以前に設立された現地法人を所有する会社は上記株式の売却義務の適用がある可能性がありますので確認をすべきかと存じます。

(3)BKPM規則2021年5号

 BKPM規則2021年5号では、PMA企業がBKPMに投資活動報告書(Laporan Kegiatan Penanaman Modal (LKPM))を提出する旨が規定されております。報告書には、投資の実現に関する報告や、投資を実行する上で直面している問題等を含むものとされております。

 OSSシステムは、関連する政府機関(分野別の省庁や機関、地域政府、経済特区の管理者など)のシステムとも統合されていますので、このシステムを使って提出します。統合されたシステムでは、これまで各関連官庁に個別に提出していた報告手続きが簡素化されることが期待されております。

3.リスクベースのライセンスのOSSへの実装の延期

 PM規則に基づくOSSシステムのアップデートは2021年7月2日に延期されております。

 これにより、各事業者によるビジネスライセンスの申請は7月2日まで現行のOSSを通じて行われるとされております(回書5項bの1))。

 また、いまだコミットメントを達成していないビジネスライセンスを有する事業者は、6月25日までにOSSシステムにこれを提出し、6月30日までに有効なビジネスライセンスを取得するよう求められています(回書5項bの2))。

 上記の期限を過ぎてコミットメントの履行及び新規のビジネスライセンの申請をした場合には、政府規則2021年5号やBKPM規則2021年4号に規定されたリスクベースのビジネスライセンスに関する条項にしたがって処理されるとされております(回書5項bの3))。

4.最後に

 本BKPM規則は、本年3月に施行された大統領規則2021年10号で大幅に外資規制が緩和されたこととのバランスを取る趣旨で外国企業による投資へ一定の制限をかけるもの考えられます。インドネシア政府の外資融資促進への姿勢を否定するものではありませんが、これからインドネシア進出を検討する企業は上記の点を十分に検討する必要がございます。

 この点について、上記のようにインドネシアにおいては法令及び規則の実施も流動的となっております。現地法律事務所等と連携して各規則の実施状況を確認しつつ手続きを行うことが推奨されます。

2021年05月06日(木)10:24 AM

インドネシアにおける大統領規則2021年5号についてニュースレターを発行いたします。 PDF版は以下からご確認ください。

インドネシア 大統領規則2021年5号 〜リスクベースのライセンス取得要件の導入〜

 

インドネシア 大統領規則20215 <style=”text-align: center;”>〜リスクベースのライセンス取得要件の導入〜

2021年5月 <style=”text-align: right;”>One Asia Lawyers Indonesia office 代表 <style=”text-align: right;”>日本法弁護士 <style=”text-align: right;”>馬居 光二 

1 最初に

 インドネシアにおいては2020年11月2日に雇用創出に関する法律 2020年11号(オムニバス法)が施行されました。同法は投資に関係する様々な法令を改正するもので、国内外の投資活動を誘致し、インドネシアでのビジネスを容易にすることで雇用を創出することを目的としております。同法の制定を受けて、政府は「リスクベースのビジネスライセンスの実施に関する政府規則2021年第5号」を発行しました。

 本件規則は、これまでビジネスライセンスの取得手続きを規定していた政府規則2018年24号を廃止し、新たな手続きを導入することで、手続の合理化、効率化を目的としています。

2 主な変更点

(1)リスクのレベルに応じたライセンスの取得要件

 本規則では、4つのリスクレベルが規定されており、それぞれのレベルごとに異なる取得要件が定められています。事業のリスクレベルは、各事業活動について、健康、安全、環境、資源の利用に基づいて決定されます(規則第9条)。

 オムニバス法では、3つのリスクレベル(高、中、低)が規定されていましたが、今回制定された政府規則No.5/2021では、以下のようにリスクレベルが4つに分類されております(オムニバス法第7条7項、規則第10条)。

 a. 低リスク

 低リスクに分類された事業者は、商品やサービスの生産、流通、販売などの事業活動や商業活動を開始するために、事業者識別番号(Nomor Induk Berusaha、以下「NIB」)を取得するだけでよいとされております(規則第12条1項)。

 このNIBは、上記事業者識別のための番号の他に、輸入者識別番号(Angka Pengenal Impor)、税関アクセス権(Hak Akses Kepabeanan)、ハラール保証書(低リスクの中小企業向け)、環境管理・監視能力証明書(Surat Pernyataan Kesanggupan Pengelolaan dan Pemantauan Lingkungan Hidup)(低リスクの企業のみ)等としての役割も果たすため、低リスクに分類された企業は、事業開始の際に大幅な緩和を受けることができることになります(規則第12条2項等)。

 b. 中・低リスク

 中・低リスクの活動を行う企業は、事業を開始する前にNIBとスタンダード証明書(Sertifikat Standar)を取得しなければならないとされております(規則第13条1項)。

 このスタンダード証明書とは、特定の事業実施基準を満たしていることを示す声明および/または証明を意味しており、(規則第13条2項)。スタンダード証明書は中・低リスク事業、中・高リスク事業の双方で必要とされていますが、中・低リスク事業の場合は事業者自ら作成すればよいとされております(規則第13条2項)。

 c. 中・高リスク

 中・高リスク活動を行う事業者は、NIBを取得した上で、事業の準備活動をを経てスタンダード証明書を取得する必要があります(規則第14条6項)。

 この場合のスタンダード証明書は、関連する政府機関が、当該事業者が特定の事業の実施基準(スタンダード)に適合しているかどうかを検証した上で、これを満たしていると判断した場合のみ発行される証明書を意味します。

 各事業者は、NIB及び検証を受けていない形でのスタンダード証明書を取得した上で準備活動を開始し、各省庁の検証を経た上で有効なスタンダード証明書が発行されます。

 この場合の準備活動とは、土地の調達、建物の建設、設備の購入、従業員の雇用、事業基準の充足、実現可能性調査の実施など のことを指します(規則第14条7項)。

 事業者が定められた基準にしたがってスタンダード証明書を取得せず、NIBを取得してから1年以内に準備活動を行わない場合、OSSはNIBを取消すとされております(規則第14条6項)。

 d. 高リスク

 高リスクに分類されたビジネスは、リスクベースの最上位に位置します。この場合、事業者はNIBに加え、あらゆる事業を開始する前に、当該事業活動を行うための中央政府または地方政府による承認という形での事業許可を取得する必要がございます。また、事業によっては中央政府または地方政府が、それぞれの権限に基づいて、各基準の充足を検証した上で発行する製品および/または事業活動に関するスタンダード証明書を取得する必要がございます。

(2)対象となるビジネスセクター

 本規則においてはリスクベースのビジネスライセンスの実施は、以下のセクターを対象としています(規則4条1項)

1

海洋および漁業

交通手段;

2

農業

10

健康、薬、食品

3

環境と林業

11

教育と文化

4

エネルギーおよび鉱物資源

12

観光

5

原子力

13

宗教

6

製造業

14

郵便、電気通信、放送、および電子システム及び電子取引。

7

貿易

15

防衛とセキュリティ

8

公共事業および公営住宅;

16

労働力

 また、各事業にリスクベースのビジネスライセンスには以下が含まれるとされております(規則4条2項)。

 a    参照KBLI / KBLIコード、KBLIタイトル、活動の範囲、リスクパラメータ、リスクレベル、ビジネスライセンス、期間、有効期間、およびビジネスライセンス権限  b     リスクベースのビジネスライセンスの要件および/または義務  c     リスクベースのビジネスライセンスガイドライン。そして  d     事業活動および/または製品に関するスタンダード証明書

 上記aは本規則別表1に、bは別表Ⅱに、cは別表Ⅲに記載されております(規則4条3,4,5項)。dについては各省庁が制定する規則において規定されるとされております(規則4条6項)。各省から発行される規則について、 現在までのところ、①農業、②貿易、③公共事業及び公営住宅、④観光、⑤郵便、電気通信、放送、および電子システム及び電子取引、⑥労働力の6分野において既に施行規則が公布されております。

 したがって、今後インドネシアへの投資を検討する企業は、想定する事業内容をもとに、上記の各表からリスクレベル、各要件等を確認の上OSSを通じて申請を行うことになると考えられます。なお、想定する事業が何に該当するかは非常に細かく規定されているところ、省庁への確認も含め、現地法律事務所による調査を推奨致します。

(3)監査手段の強化

 本規則では、リスクベースのライセンスを実施するために、監督手段についても段階的に設定がなされております。同規則では、(ⅰ)定期的な投資実現報告書(laporan kegiatan penanaman modal)及び(ⅱ)関連政府機関による監査後の監督に加えて、事業者に対する監視の一環として現地検査を導入しております(規則220条)。

 関連する政府機関による現地検査の実施として、管理的検査、物理的検査、試験、指導、カウンセリングが規定されております(規則222条2項)。各事業者は、事業所ごとに少なくとも年1回の実地検査を受けることになりますが、中・高リスクの事業者は年2回の実地検査を受けることになります(規則222条4項)。また、事業者が、検査官から基準に準拠していると評価された場合、当該事業者は次年度の実地検査を免除、削減される可能性があるとされております(規則222条5項)。

 また、本規則では、従来のライセンス制度における報告義務が見直されており、事業者は以下を提出する必要があります。

 1. 投資と人材の実現に関する四半期報告書(221条2項a)  2. 生産、企業の社会的責任、パートナーシップ、トレーニング、技術移転の実現に関する年次報告書(221条2項a)

 上記の監督措置の結果は、関連する政府機関が事業のリスクレベルを見直し、評価するために使用されます。

3 最後に

 本規則は公布日に施行され、これによりこれまでビジネスライセンスの取得手続きを規定していた政府規則2018年24号は廃止されます(規則565条)。

 本規則においては、施行から2ヶ月以内にさらなる施行規則が規定されるべき旨定められており、前述のように既に6分野について施行規則が公布されています(規則566条a)。また、OSSを介したリスクベースのビジネスライセンス取得手続きは本規則制定から4ヶ月以内に実装されると規定されています(規則566条b)。

 本規則制定後も、それ以前に有効なビジネスライセンスを取得していた事業者(コミットメントを充足している事業者)は影響を受けないとされています(規則562条a)。他方で、既にコミットメント付きのビジネスライセンスを取得しているものの、当該コミットメントを充足していない事業者は、本政府規則に基づいて申請が処理されると規定されております(規則562条b)。その結果、現時点で有効なビジネスライセンスの取得をしていない事業者は、本規則に合わせた形で調整を図る必要がある可能性があります。

 上記のように、本規則制定後2ヶ月以内にさらなる施行規則が発行され、4ヶ月以内にあらたなOSSのプラットフォームの導入が予定されるているところ、同OSSプラットフォームとの関係や、ライセンスの取得システムの詳細については今後もBKPMを中心とした政府、省庁が発する情報に注意する必要があります。

2021年03月12日(金)9:25 AM

コロナ禍におけるインドネシア入国手続きについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

コロナ禍におけるインドネシア入国手続きについて

 

コロナ禍におけるインドネシア入国手続きについて

2021年3月
One Asia Lawyers Indonesia office 代表
日本法弁護士

馬居 光二 

1 最初に

 インドネシアにおいてはコロナウイルスの蔓延により、2020年12月31日から外国人の入国が禁止されており、例外的にITAS(一時滞在許可)保持者等のみに入国が許可される運用がなされております。当該入国禁止措置が2021年2月9日付の法務人権省入国管理局通達及び同月11日付回章により一部緩和され、eVisaの保持者が追加されました。本ニュースレターでは、筆者がeVisaによって2021年2月13日にインドネシアに入国した状況をお伝え致します。eVisaの運用まだまだ不透明な部分も多いところ、これからインドネシアへ駐在を予定されているみなさまの参考になれば幸いです。

2 eVisaについて

 インドネシアにおいては、外国人がインドネシア国内で労働をするためには、一時滞在ビザ(VITAS)及び一時滞在許可(ITAS)を取得する必要があります。従前はまず在日本インドネシア大使館でVITASを取得した上でインドネシアに入国し、インドネシア国内の空港でITASを取得する必要がありました。上記VITASの取得方法について、コロナウイルスの影響もあり、労働大臣規則2020年26号により、オンラインでの手続きが可能となりました。これをeVisaと呼びます。

 筆者は2020年の11月13日付、妻は11月23日付でeVisaを取得しました。同eVisaは取得から3ヶ月以内にインドネシアに入国しない場合には無効となります。したがって筆者の場合は2021年2月13日までに入国をする必要がありました[1]

 そこで、当初は昨年12月末に入国を予定していたところ、年末に急遽入国後5日間の隔離が必要との発表がありました。筆者は妻を帯同する予定であったこともあり、隔離の状況を確認してから入国をしようと1月初旬に入国を延期しました。その矢先に外国人の入国を一切禁止する規則が発表され、その後は入国禁止期間終了が近づく度に入国を試みましたが、毎回禁止期間終了ギリギリに入国禁止措置が延期されておりました。eVisaの有効期限終了前最後のチャンスである2021年2月8日に入国禁止措置を延期する旨の発表がなされたため、入国をほぼ諦めようとしていたところ、翌9日に入国規制が一部緩和される旨の情報が日本大使館から送られてきました。そこで、急遽e-visaの期限最終日である13日に入国をすることにしました。

3 入国の流れ

(1)航空券の予約

 上記のように入国を決めてからすぐの2月10日に航空券を予約しました。フライト直前の予約になっていたため、普段の倍の価格で航空券を購入せざるを得ませんでした。今後新たにeVisaを取得、入国される場合は、ある程度余裕をもって予約すればさほど平常時と異ならない費用で航空券を購入できるかと思います。

(2)レンタカー、成田空港でのホテル、PCR検査の予約

 航空券を予約した後すぐにレンタカーと成田空港近くのホテルを予約しました。 

 コロナ期間中、筆者は空港から離れた場所で生活をしていたところ、普段は空港に荷物を送った上で電車か高速バスで成田空港へ向いますが、コロナの影響で高速バスは休行になっておりました。荷物の輸送も到着の2日前までに送る必要があり、急遽入国が禁止になる場合を考えると使いづらい状況でした。また、そもそも公共交通機関を使って途中で感染をするのがもっとも怖いため、レンタカーにスーツケース6個を積んで妻と一緒に空港に行くのが最善と判断しました。年末から合計3回レンタカーを予約し2回キャンセルしましたが、コロナ禍の影響もり、キャンセル料等なしで対応してくれました。

 また、PCR検査及び成田空港でのホテル、インドネシア入国後のホテルについても予約をしました。

(3)成田空港でPCR検査

 現状インドネシアへの入国が許可される条件として、入国前48時間以内のPCR検査で陰性である旨の証明書が要求されております。

 筆者は空港から離れた場所に居住していたことと、検査場所への移動中に感染することが怖かったので、成田空港にある成田国際空港PCRセンターで検査を受けることにしました。検査結果が出るのに4時間程度かかると言われたため、出国前日に検査を受けることにしました。

 成田国際空港PRCセンターはTerminal1中央ビル3階とTerminal2の1階にあります。筆者はTerminal2のPRCセンターを利用しました。少し分かりづらいところにありますが、Terminal 2に入ると誘導の看板が出ており、いくつか看板に沿って進んでいくと空港の建物外にPCRセンターの入口があります。建物に入って担当の方に予約した名前を告げて受付をします。この際、以前はPCR検査の陰性証明書に加え、健康を証明する医師の診断書が必要とされていたため、受付でこちらも必要でないか確認されました。少し迷いましたが、日本大使館のウェブサイトにこちらが不要となった旨の記載があったため診断書は作成しませんでした。このとき、急遽在インドネシア日本大使館に電話をしたのですが、インドネシアの祭日であったため、担当者に繋がりませんでした。必要な情報は可能な限り事前に確認をすべきだと痛感しました。

 なお、陰性証明書に医師の氏名と検査場所の住所が入っていないために問題となったケースが報告されているため、受付でこれらが証明書に記載されるか確認したところ、記載されるという回答でした。

 また、検査をする際、鼻綿棒で検査をするか唾液で検査をするか確認されます。ジャカルタ行きの便で一緒になったキャビンアテンダントの方によると、彼女達がインドネシア入国の際行う検査は唾液で行っているそうです。ただし、後述のようにインドネシアのホテルで行われた検査は鼻綿棒で行ったため、鼻で行っておけば間違いないと思います。筆者も鼻綿棒で検査を受けました。ただし、PCRセンターの鼻綿棒の検査は思っていたより痛かったです。

*入国後に在インドネシア日本大使館に確認したところ、確証はないが、鼻綿棒が確実だろうということでした。

 検査後一度ホテルに戻り、夕方検査証明を受け取りにいきました。

(4)成田空港での様子、食事

 PCR検査の結果を受け取るまで時間があったため、Terminal 2で夕食を取りました。金曜日でしたが、成田空港内での食事はほぼ大手牛丼チェーン一択でした。筆者は大満足でしたが、牛丼が苦手な方は空港内にコンビニがあるので、そちらでお弁当を購入することも可能かと思います。

 多くの便が欠航となっているため、ターミナルには殆ど人はいませんでした。

(5)搭乗手続き

 インドネシア大使館の資料

 チェックインをする際、JALの職員の方から在インドネシア日本国大使館が作成した入国時の追加措置に関する資料を渡され、大使館からの入国理由を記載した書面を有していないか確認されました。同職員の方によると、インドネシアの空港で普段よりも入国の理由を厳しく確認されるかもしれないということでした。

 また、同職員の方から、eHACというインドネシア政府が作成したアプリのダウンロードを勧められました。このeHACは、後述のように、入国後のPCR検査の際に本人確認として使用しました。eHACはGPS機能を有効にしないと使えない仕様になっているところ、入国後の追跡ツールとしての役割も担っているかもしれません。

 誓約書への署名

 搭乗手続の前に、前述のJALの職員の方から、誓約書への署名を求められて署名しました。ただ、お恥ずかしいことにあまり内容を覚えておりません。 

 クレジットカードラウンジ

 出国手続きの前に、クレジットカードラウンジで休憩しました。クレジットカードラウンジは空いており大変助かりました。利用者は私達二人だけでした。

 機内の様子

機内は閑散としており、まばらに駐在員と思われる日本の方が搭乗している感じでした。見る限り、夫婦で利用しているのは私達だけだったように思います。

(6)スカルノ・ハッタ国際空港での手続き

 検疫

 飛行機から降りるとすぐのところで整列して椅子に座らされ、Health Exermination Resultという書面を記入するよう求められました。記載した書面をもって進むと検疫所があり、成田で取得したPCR検査の陰性証明書とともに提示しました。係員が簡単に内容をチェックした後、割とすぐに検疫をパスできました。

 入国審査

 ITASを所持している者も、筆者のようにeVisaのみの者も一律に外国人用の受付で対応をしていました。

 入国審査係員にパスポートとITAS取得のための資料を渡した上で写真撮影と指紋登録を行いました。担当係員の横にもう一人係員がいてスマートフォンで入国者の写真を撮っていましたが、目的は不明です。

 成田空港での説明とは異なり、割とすんなり入国審査は済みました。

 ITAS取得手続き

 入国前、本来は入国の際にITASの取得手続を行うと説明を受けておりましたが、そのような手続はありませんでした。複数の係員にこの点を確認すると、空港ではITASの取得手続を行っていないため、30日以内に入国管理局(Immigration Office)へ行って手続きをするよう指示されました。

 VISAの取得を依頼していた弊所提携先のインドネシア人担当者に確認したところ、後日彼女がパスポートを預かった上で、入国管理局での手続きをアレンジしてくれるということでした。

 筆者は以前シンガポールに留学した際、自らVISAの申請手続をした経験がありますが、やはり現地の情報に詳しいエージェントからのサポートがあると手続きが非常にスムーズであることを実感しました。只でさえストレスに晒される駐在員の方々には、是非エージェントの利用をお勧めします。

(7)隔離措置

 5日間のホテルでの隔離

 入国審査を終えてから荷物をピックアップして進んでいくと、5日間の隔離対象者の受付が設置されています。筆者は事前にホテルを予約していたため、ホテルのスタッフが迎えに来ており、上記受付の担当者と話をしてくれました。

 事前にホテルを予約していない場合には、その場で受付をして、停めてあるバスに乗って宿泊施設に向かうことになると考えられます。

 隔離に対応しているホテルの中でも、施設やサービスはピンきりで、長旅及び空港での手続きで疲弊していると考えられるため、事前に予約しておくことをお勧めします。

 なお、GrabやGojek等も含め、空港に迎えに来てる車は写真のような比較的大型のSUVが多いと思います。筆者は妻と2人、大型スーツケース4個、小型スーツケース2個に手持ちのかばん2個を載せて移動しました。また、現在ジャカルタではタクシーを含めた公共交通機関について乗車人数を50%以下にする規制が行われています。また、ジャカルタの空港はフリーWifiの入りが悪く、日本のSIMでGrab等を使おうとすると電場が通じず困ることがあります。既にインドネシアのSIMカードを持っていても、ジャカルタに到着後データをチャージしようとしたら電波が届かない等といったこともあります。空港でSIMカードを購入するか、日本にいる間にデータをチャージしておくことをお勧めします。

 ホテルの選定

 隔離のためのホテルは、インドネシア政府が定めるリストから選ぶことになっており、在インドネシア日本国大使館のホームページからも確認できます。いずれのホテルも3食付のプランであるため、通常よりも割高ですが、プランにPCR検査2回分も含められていることを考えると暴利とまでは言えないかと思います。いわゆる5つ星ホテル等もリストに入っていましたが、ちょっとびっくりするくらいの価格でした。

 筆者はインドネシアの同僚であるインドネシア人弁護士が勧めてくれたホテルを予約して5日間を過ごしました。事前にメールを送るとプランの内容や価格を教えてくれました。ただし、事前にデポジットの振込みが必要であったため、海外送金に慣れていない方は余裕をもって手続きをすることをお勧めします。

 ホテルでの生活

 ホテルにもよると思いますが、筆者の泊まったホテルは比較的ジャカルタ中心 地にあり、空港まで車で迎えに来てくれたため、スムーズに受付ができました。プランの中に交通費としてIDR330,000(約2500円)が含まれていたので、Grab等のタクシーで移動するよりは若干高いものの、空港での手続きや大量の荷物を運んでくれたことを考えると、それなりに妥当な金額かと思います。

 食事はチェックイン時にメニューを渡され、部屋の電話から注文をします。メニューが限られているため3日くらいで飽きますが、Grab food等のアプリを使って自分で注文すれば、ホテルの受付で受取って部屋まで持ってきてくれました。妻はスーパーでの買い物代行アプリを使って果物等を購入していました。外からのデリバリーを禁止しているホテルもあるようですが、筆者が泊まったホテルは問題ありませんでした。

 水、タオル、シャンプー、コップ等も全て電話でお願いして持ってきてもらう形で、部屋の掃除等は5日間無しでした。いずれのサービスも一度電話しただけではきっちり対応してくれませんが、これはインドネシアでは珍しいことではありません。特に悪気はないと思いますので、対応してくれるまで何度も電話するしかないかなと思います。

 ホテルでのPCR検査

 5日間の隔離のうち、2日目と4日目にPCR検査をする必要があります。こちらのPCR検査はホテルのプランに含まれているため予約する必要はありませんでした。一部屋がPCR検査用に使われており、午前9時から午後3時までの間に検査を受けるように指示されました。

検査室に入ると、eHACのアプリで受付をしました。筆者はアイフォンを使用しているところ、アイフォンはアプリの機動が安定しないということで、妻が持っていたアンドロイドにアプリをダウンロードして、妻と筆者双方について本人確認をしました。

PCR検査はやはり鼻でしたが成田の検査に比べるとかなり優しい(適当な?)感じで痛みはあまりありませんでした。 

 ホテルから自宅へ

 5日間の隔離が終わった朝にホテルの受付でチェックアウトをすると、5日間の隔離を行った旨の証明書及びPCRの陰性証明書をくれます。ただし今のところ、これを何に使うのかは不明です。ITASについてはこの証明書なしに普通に発行されました。

 14日間の自主隔離

 5日間の隔離が終わっても14日間の自主隔離(この時点で残り9日間)が推奨されており、外出は買い物等の必要最小限にするべきとされております。ただし、こちらに関してはあくまで推奨ということで、特に監視されているような形ではありませんでした。eHacにメールアドレスと電話番号は入れましたが、特に連絡がくるようなこともありませんでした。

(8)ITAS取得手続き

 入国管理局での写真撮影及び指紋登録

 空港で手続ができなかったため、ITASの手続を提携先の担当者に手配してもらって南ジャカルタ入国管理局で行いました。と言っても入国管理局では写真撮影及び指紋の登録をしただけです。10本の指全ての指紋を登録することに驚きましたが、入国管理局でも上記担当者が手配してくれたスタッフが案内をしてくれたので、滞りなく手続きが進みました。なお、自身で手続を行う場合、入国管理局は英語を話すことの出来ない職員も多く、看板等も基本的にインドネシア語のみが記載されているため、インドネシア語が出来ない場合はかなり苦労することが予想されます。

 ITASの発行

 上記写真撮影からおよそ1週間でITASが発行されました。現在ITASはオンライン上のみで発行されます。銀行口座の開設やSIMカードの契約等にITASが必要になりますので、必要に応じてこれをプリントアウトして提示するなどしております。なお、銀行口座開設には後述のNPWP(納税登録番号)が求められることもあります。

(9)その他の手続き

 上記ITASの発行手続が終わると、STM (警察署への届出)、NPWPの取得、 SKTT(外国人住民登録書)及び LKTKA(外国人労働者報告)の 手続を順次行うことになります。これらの手続きについても一般的にはエージェントがVISA手続と合わせて行ってくれる場合が多いと思います。

4 ジャカルタの状況

 人出としては、かなりコロナ前の状況に近づいていると思います。コロナの感染が始まった頃は殆どなくなった交通渋滞も、現在は普通に見られます。平均年齢29歳の若さなのか、そもそもの国民性なのか、市中の人々のコロナに対する危機感は総じて薄いように思います。もっとも、だからといってコロナの犠牲者がいないわけではなく、むしろASEANトップの感染者と死亡者が出ております。現地の日系駐在員の方々に関しては、やはり危機意識をもって生活されているように思います。

 なお、駐在員の方の中には、コロナの影響で長期間留守にしていたため、空調がつけっぱなしで部屋が水浸しになっていたり、部屋中が虫の死骸とカビだらけであった等の話も聞いております。住宅についてエージェントがいる場合には、事前に部屋の清掃を手配してもらうのも一つの手かと思います。

5 最後に  

 14日間の隔離を終えて先日ようやくオフィスに出社することができました。弊所インドネシアメンバーも、政府による社会活動制限は継続されているものの、毎日懸命に業務に取り組んでおります[2]

 VISA手続も含め、インドネシアへの赴任、現地での業務等に関する問題や疑問等ございましたら、いつでもご相談ください。

元気にジャカルでお会いできますことを楽しみにしております。

[1] 現時点においてeVisaの新たな発給は原則として停止されており、重要な戦略的プロジェクト等に従事する場合のみ例外的に認められるとされております。

[2] 通常はマスクを着用し、限定的に出社して業務を行っております。

2020年10月16日(金)7:23 AM

海外インフラプロジェクトの法的留意点(アジア新興国のPPP制度)について記事をアップデート致します。

アジア新興国のPPP制度

 

 

海外インフラプロジェクトの法的留意点について

アジア新興国のPPP制度

2020 年10月16日

One Asia Lawyers

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

      • 1.執筆の背景

      前回の記事「海外インフラプロジェクトの法的留意点-アジア新興国編-」[1]にて述べた通り、全世界において、巨大なインフラニーズが存在している。世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[2]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、東南アジア、南アジア、中央アジアにおける案件が活発となっている。また、当Databaseによれば、鉄道、空港、港湾等のセクターと比較して、道路セクターが伸びており、日系企業もグリーンフィールド型、ブラウンフィールド型、運営維持管理業務型を問わず、案件数を増やしている。

      ただし、アジア新興国の傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張している。また予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見される。加えて、それらの地域においてCovid-19の影響は不可避であり、現在、当事務所で対応しているプロジェクトをみても、多くのプロジェクトの事前調査、入札手続き、契約交渉等が長期化したり、政府保証や不可抗力条項、政府補償条約等について一部契約の見直しが生じるような事態も生じており、契約交渉や締結に向けて困難な問題に直面しているという側面もある。

      上記の通り、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、特にアジア新興国においては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいる。上記で述べたリスクとバランスを取りながら、今後、さらに成長可能性が高いPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はアジア各地のPPP法制について比較し、特に重要な10か国の法規制について解説する。

      • 2.アジア各国におけるPPP法制

      1)総論

      前提として、PPPの法的な枠組みとしては、英米法(Common Law)体系か、大陸法(Civil Law)体系かによって、傾向が若干異なる側面がある。英米法体系の国家においては、当事者の一部が政府であったとしても、当事者意思を重視し、そもそも個別具体的な特定のPPP法が存在しない国もある。他方、大陸法系の多くの国々においては、PPP法が制定、または制定準備がなされており、入札手続等のプロセス、官民の権利義務、政府の役割、PPP契約記載事項や紛争時の処理方法等について、個別具体的に規律されている。とはいえ、下表の通り、英米法系の国であっても、最近の傾向としては、詳細なPPP関連法令を整備する国が多くなってきており、各国によってPPP関連法の整備状況は大きく異るといえる。

      なお、その他PPP法の存否に関わらず、公共調達法(Procurement Law、公共調達の方法やプロセス等を規律する方法)、公共財政管理法(Public Financial Management Law、プロジェクト認可基準、予算取得プロセス、財政上の制限事項等を規律する法律)等に加えて、前回の記事で紹介したような外資企業に対する投資規制、土地取得規制、税法、外国人労働規制等が問題となる。

      <東南アジア、南アジアのPPP法の一覧>

      国名

      法令の有無

      特徴

      タイ

      あり

      2019年3月11日施行

      十分に整備されている。内閣承認が必要となり、手続きが厳格

      ベトナム

      あり

       

      2020年にPPP法が国会で遂に可決

      2021年1月1日施行予定となっている

      カンボジア

      なし

      現在、経済財政相が草案を作成中。2021年中の制定を目標としている。

      ラオス

      なし

      PPP法草案

      現在、ラオス計画投資省が草案を公開している。2021年に制定される可能性あり

      ミャンマー

      なし

      PPP法は特に整備されておらず、個別法により対応

      シンガポール

      あり

      PPPガイドブック

      PPPガイドブックにおいて、政策方針と手続等の詳細が規定されている

       

      マレーシア

      あり

      2009年PPPガイドライン

      PPPガイドラインにおいて、PPPに適したプロジェクトの種類、入札を手続きや適格基準、運営モデル、プロジェクト承認のプロセスフローが明確化されている

      フィリピン

      あり

      1994年BOT法施行

      関連細則等十分に整備されている

      インドネシア

      あり

      2015年大統領令38号施行

      複数の法令が存在。

      改定が多く、複雑化している

       

      インド

      あり

      PPP法は存在しないが、PPPガイドライン等が整備されている

      財務省が基本政策を策定、各種ガイドラインやマニュアルを整備されているが、州毎にルールが異なるので、留意が必要

      バングラデシュ

      あり

      2015年PPP法

      2015年にPPP法が施行。PPP事務局が一括してガイドライン等を整備している。

       

      スリランカ

      あり

      PPPガイドライン

      2016年に財務省内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整機能が存在

       

      ネパール

      あり

      2015年PPPガイドライン

      PPP法草案が公開

      2015年のPPPポリシーとガイドラインによって、入札手続きやPPP契約の内容が明確化された

       

      パキスタン

      あり

      2010年PPPガイドライン

      州レベルでPPP規則が存在

      財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、中央PPP関連部署が存在。入札手順等について監督している。その他州レベルで、PPPユニットが設置された

       

      アフガニスタン

      あり

      2016年PPP法

      2016年にPPP法が成立。財務省にPPPユニットがあり、ガイドラインの作成、プロジェクト評価等を実施

      2)タイにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      周辺国と比較しても、タイは先行して、PPP法制を整備し、同法の法的枠組みに従ってプロジェクトを推進している。一般的にPPPスキームが浸透しているといえ、PPP法制定までは、インフラ投資は政府主導で行われてきたが、インフラ投資額は政府予算を越えており、さらに民間インフラ投資を呼び込む必要がある。タイにおいては、入札情報等が適切に公開されており、具体的には、国家経済社会開発委員会が準備するインフラ社会開発マスタープランにおいて、プロジェクトの目的、期限、想定総投資額等について記載されているが、それがPPP委員会で承認されると、民間事業者に公開される仕組みとなっており、適切かつ着実に実施がなされている。下記の通り、基本法やガイドライン等も比較的整備されており、事業参入において得に問題ないが、タイ国内企業の技術力等も年々向上しており、外資企業に関しては価格競争力の部分で劣勢に立たされることが多いといわれている。

      イ 法制度の概要

      タイにおいては、1992年にPPPに関する法律が成立しているが、その後、2013年の改正を経て、2019年3月10日に改正PPP法が成立し、11日から施行している。PPPの適用対象事業は、道路、鉄道、空港輸送、港湾、上下水道、エネルギー事業、病院、教育等の12項目が指定されており、いずれかに該当するインフラや公共サービスに関するPPPプロジェクトと定義されている。また、これらのプロジェクトに関して、50億バーツ以上の事業規模とする必要がある。なお、事業規模が未達であったとしても、PPP委員会が許可する場合は、例外として認められる可能性がある。

      PPPプロジェクト推進のためには、プロジェクトの具体的な内容を確定し、PPP法に従って、当局から承認を得る必要がある。プロジェクトを実施する政府機関は、コンサルタントを起用し、プロジェクトの調査報告書を作成し、所轄省庁の大臣に提出し、承認を得る必要がある。その上で、PPP委員会での承認と内閣からの承認を得る必要がある。なお、各審査期間については、PPP委員会が定める期間となっており、明確な期間規定は存在しない。

      その後、政府機関は事業者選定委員会を設置し、当委員会は、入札、選定、契約交渉、契約締結等の役割を負う。選定については、PPP法に従い、原則的に入札によって行われる(政府機関や内閣の承認がある場合は、その限りではない。)。選定業者との交渉が終了すると15日以内に、PPP契約ドラフトは検察庁に送付され、45日以内に審査を完了する必要があると規定されている。その後、所轄大臣に提出され、30日以内に審査を完了し、内閣にて審議される流れとなっている。

      以上が簡単なPPP法上の流れとなるが、タイにおいては内閣承認が必要となるため、比較的厳格な審査手続きが取られていると評価できる。

      3)ベトナムにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ベトナムのインフラプロジェクトは、主に政府予算によって行われており、そのため国債や地方債が発行されているが、必要投資額の半分程度であり、民間資金の導入が必須の状態である。また、対外債務比率も上昇しており、政府の意向として、今後さらにPPPプロジェクトを活発化させる可能性が高い。ただし、社会主義国ということもあり、どこまで民間(特に外資)に開放されるか、また運用について適切な対応がなされるかについて動向を注視する必要がある。なお、ベトナム計画投資省において、PPP関連情報が定期的に公開されている[3]

      イ 法制度の概要

      ベトナムの法制度上で「PPP」という文言が登場するのは今から10年前の2010年のことであり、当時はあくまで試験的なPPPプロジェクトに対して試験的に適用する規則という位置づけであった[4]。その後、2015年に政令化され、2018年に政令が全面改正されるなどして少しずつ法令の内容拡充が図られ、2020年6月18日にPPP法が可決され、2021年1月1日から施行予定となっている。今後さらにPPPプロジェクトに対する透明性の向上、不確実性の低減化が図られることが期待される。

      今回の主な改正点としては、投資対象が大きく統一的に整理されており、交通運輸、送電・発電、上下水道、ITインフラ等の規定のみとなっており、対象分野が限定されたといえる。また、契約類型としてBuild Transfer方式が削除されたこと、事業収益について、BOT、BTO、BOO方式のPPP事業収益が契約で定めた計画の75%を下回った場合、減収分の半分を政府が負担する保証制度(他方、PPP事業収益が計画の125%を上回った場合は、増益分を政府と投資家で折半する)が盛り込まれたこと、PPPプロジェクト契約は必ずベトナム法に準拠することなどが挙げられる。主な政令63号と新PPP法の相違は、下表の通りである。

       

      【PPP関連法令の概要比較】

       

      2018年政令

      63/2018/ND-CP)

      2020年PPP法

      制定年

      施行年

      2018年5月4日

      2018年6月19日

      2020年6月18日

      2021年1月1日

      「PPP方式の投資」の定義

      インフラ施設の建設、改造、運営、経営、管理、公共サービスを提供するために、所管国家機関、投資家、プロジェクト企業とで交わされるプロジェクト契約に基づき実現される投資形式

      (第3条1項)

      PPPプロジェクトへの民間投資家の参加を誘致することを目的に、国家と民間投資家のあいだで締結し、履行するPPPプロジェクト契約を通じた有期の協力に基づき実行される投資形式(第3条10項)

      対象

      a)交通運輸

      b)発電所、送電線

      c)公共照明システム、上水道システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、公園、自動車・車両・機械設備の駐車場・置き場、墓地

      d)国家機関庁舎、公務用住宅、社会住宅、再定住住宅

      đ)医療、教育・育成・職業訓練、文化、スポーツ、観光、科学技術・水文・気象、IT応用

      e) 商業インフラ、都市区・経済区・工業団地・産業クラスター・集中IT区インフラ、ハイテクインフラ、インキュベーション施設、技術施設、中小企業を支援するコワーキングエリア

      g) 農業・農村開発、農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス

      h) 首相が決定するその他分野

      (第4条)

      a)交通運輸

      b)送電網・発電所(水力発電所、電力法に基づき国が独占するケースを除く)

      c)利水、上水道、下水道、下水処理、廃棄物処理

      d)医療、教育・訓練

      đ)ITインフラ

      (第4条1項)

      PPP事業として認められる投資額

      規定無し

      (公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類)

      2,000億VND以上             (医療、教育・訓練は1,000億VND以上)

      (第4条2項a,b)

       

      国の参加比率

      規定無し

      インフラ整備・土地収用での国の資金拠出:総投資額の50%

      (第69条1項、2項)

      投資優遇

      投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

      プロジェクト用の輸入品:関税優遇

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

      投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇(第59条)

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料、土地賃貸等に関する優遇、および税や土地、投資、その他関連法で定めるその他の優遇

      (第79条)

       

       

       

      4)カンボジアにおけるPPP法制

       

      ア 背景、状況 

      カンボジアにおけるPPP事業は、1990年代から存在し、発電所・空港の設立など相当数の実例が存在している。もっとも、政府の体制、法制度ともに未整備な状態であり、案件ごとにアドホックに、政府と民間のリスク分担なども曖昧なままなされており、投資リスクが高い状況であった。現に、特定の理由なく政府により中途で終了するプロジェクトもあり、PPP投資の障害となっていた。カンボジア政府としてもかかる問題点を認識しており、状況を改善するため、2016年にPPP制度の整備のためのPPPポリシーを策定するとともに、PPPについての包括的な意思決定機関として経済財務省(MEF)主催の省庁横断議会(IMC)を設立した。そして、2017年に、IMCの事務局としてMEFにCentral PPP Unit (CPU)を設置した。さらに現在、MEF主導のもと、PPP法の草案作成が進んでおり、2021年中の制定を予定しているとのことである。また、PPPプロジェクトの手続・手順・要件、各機関の責任や意思決定機関などの詳細を定める標準手順書(SOP)を作成しており、PPP法の制定後速やかに政令として公布することを予定している。

      イ 法制度の概要

      カンボジアにおいて、従来、部分的には2007年コンセッション法や1994年投資法などを適用し、法令が存在しない事項については個別の調整・交渉などにより決定がされてきた。上記で述べたPPP法およびこれに基づく政令による投資の条件や手続き、政府と民間のリスク分担などの透明化・公平化が待たれる。

      5)ラオスにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきており、2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[5]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、PPPに期待する声が高まっている。ただ、ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっている。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられるが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっている。

      イ 法制度の概要

      ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があり、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけている。

      2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっており、2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態である。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれており、同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえる。同法では、PPPの定義、PPPの事業形態、PPPの方式、PPP入札の流れ(下表)等が規定されている。

       

      <PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れ(草案)>

      手続き

      責任者

      初期提案書の作成・提出

      実施政府機関

      初期提案書の検討 (20日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

      民間セクター

      発案書の検討(15日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

      実施政府機関または民間セクター

      FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      (国民議会等の承認必要)

      FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

      実施政府機関または民間セクター

      入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

      実施政府機関及び官民連携推進委員会

      入札管理委員会の選定

      財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

      6)ミャンマーにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      近年、ミャンマーにおいて日系企業からはODAのみならず、PPPプロジェクトの実施について多く相談を受けており、著者の感覚として、日系企業のミャンマーでのインフラプロジェクトに関する関心は極めて高い。しかしながら、PPP法制度等の整備は進んでおらず、過去監督機関との交渉や方針転換によりリスクが顕在化したようなケースがあり、特にリスクマネジメントについて十分に考慮する必要がある。そのような状況でも、近年、道路分野等では、民間企業へのBOTプロジェクト等が行われており、徐々にPPPプロジェクトの実績が生じている。また、ミャンマー計画財務省において、PPPプロジェクトを管轄する部署が組成されており、今後のPPP法制度整備や組織体制の拡充が期待される。

      イ 法制度の概要

      ミャンマーにおいては、統一的なPPP法は整備されておらず、公共調達法等の個別法により処理される状態である。計画財務省に照会した限りでは、特段PPP法の整備に対する具体的な動きはないようであるが、民間投資によるインフラ整備、投資については、監督当局内部でも関心が高まっているとのことである。

      7)フィリピンにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      フィリピンでは、1990年にBOT法(後述)が成立する以前の1989年に、同国では初めてとなるBOT(Build-Operate-Transfer)契約がNational Power CorporationおよびHopewell Energy Management Ltd社との間で締結され、ナボタスにおける発電所の建設・操業に関する官民連携プロジェクトが実施された。このように、フィリピンは、PPP分野においてはASEAN諸国では比較的に先行した動きを見せており、インフラ整備は重要な国家課題として位置付けられてきた。しかし、今日におけるフィリピンのインフラ整備状況は世界的に見ても低水準にあり[6]、インフラの未整備が問題点として長く指摘されている。そのような状況下、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領はインフラ向け支出を拡大し、「ビルド・ビルド・ビルド」と呼ばれる大規模なインフラ整備計画[7]を推し進めることで、投資環境の整備や雇用創出、国民所得の向上など一層の経済成長の実現を目指している。PPCセンターによる公表では、2010年以降のPPP件数は41件となっている(2019年4月30日時点)[8]

      イ 法制度の概要

      フィリピンでは、1990年にASEAN諸国では初めてとなる民活インフラ事業の法的枠組みを定めた共和国法6957号BOT法(Build-Operate and Transfer Law, Republic Act No.6957。1994年に共和国法7718号により一部改正された。以下、「改正BOT法」)および同法の実施細則(Implementing Rules and Regulations of R.A. No. 6957 as amended by R.A. No. 7718。以下、「改正BOT法実施細則」といい、改正BOT法とあわせて「改正BOT法等」)が整備されている。また、改正BOT法等を補完するガイドラインとして、国家経済開発庁(National Economic and Development Agency:NEDA)の傘下にあるPPPセンター(PPP Center)より、国家事業マニュアル(PPP Manual for NGAs)、地方事業マニュアル(PPP Manual for LGUs)、セクター毎のガイドライン等が公表されており、また、NEDOからもPPP事業に関するガイドブックが多く発行されている。PPPを主管する政府組織はNEDO傘下にあるPPPセンターであり、PPPセンターは、プロジェクト案件の発掘、実施、管理・モニタリング、地方政府組織を含むプロジェクト実施主体の能力開発・工場など、広くPPPを推進する役割を担っている。

      PPP入札手続については、政府調達改革法(Government Procurement Act, Republic Act No. 9184)が政府機関による物品・サービスの入札プロセスに関するルールを定めている。その他、通行権取得法(Right of Way Acquisition Act, Republic Act No.10572)、下級裁判所による仮処分命令の発行を禁止することで政府インフラプロジェクトの実施・完了を迅速化する法律(Expeditious Implementation and Completion of Government Infrastructure Projects by Prohibiting Lower Courts from Issuing Temporary Restraining Orders, Republic Act No. 8975)、大統領府令432-05号による合弁契約に関するガイドライン(Guidelines on Joint Venture Agreements, Executive Order 432, series 2005)、大統領府令78-12号による全てのPPPおよび合弁事業におけるADRの活用(Use of Alternative Dispute Resolution Mechanisms in all PPP and JV Projects, Executive Order 78, series 2012)など、PPPを推進するために制定された法令・ガイドラインが数多く存する。

      なお、PPP事業が公営事業の管理・運営(operation of public utility)に関わる場合は、1991年外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)および現行の第11次ネガティブリストに基づき、外資保有の上限が40%に制限されており、この点は注意が必要となる。

      改正BOT法等では、PPPの対象事業として、各種交通(道路、鉄道、港、空港など)、電力、通信、ICTシステム・設備、農業、運河・ダム・灌漑、上下水、観光・教育・健康施設など、公共インフラとして通常想定されうる事業セクターが広く含められている。なお、電力については、2001年に成立した産業改革法(Electric Power Industry Reform Act: EPIRA)によって国営電力公社(NPC)の民営化や電力市場の自由化が進められてきた関係から、PPTの対象事業として取り扱われるか否かが法的に必ずしも明確に整理されていないとの指摘があるものの、改正BOT法等ではPPPの対象事業として電力が含まれており、実際にPPPスキームによる電力プロジェクトの検討および実施がなされている。

      対象事業は、政府提案型(Solicited Proposal)と民間提案型(Unsolicited Proposal)に分類され、それぞれ事業および事業者の選定の取扱いが異なる。また、公共側の事業実施主体に応じて、国家事業(政府機関や国営企業による実施)と地方事業(地方政府による実施)に分類される。PPP事業は開発および承認(事業選定)、調達(入札)および実施というフェーズに大別される。まず、事業選定フェーズでは、実効性評価や民間事業者からの意見聴取・交換(マーケット。サウンディング)などを経て案件形成されたパイプラインプロジェクトについて、関連承認機関に対する提案および評価・審査がおこなわれ、NEDAに設置された投資調整委員会(Investment Coordination Committee of the NEDA Board:ICC)または大統領を議長としたNEDA理事会によって承認される(下表参照)。PPP事業の入札は、改正BOT法等のほか、政府調達改革法および政府調達委員会(GPPB)作成のガイドラインに基づき実施される。そして、実施フェーズへと移行し、PPT事業契約を締結(金融機関による融資の最終合意も含む)のうえプロジェクト計画に基づき事業が実施される。

      政府提案型

      国家事業:事業総額が3憶ペソ以下の場合は投資委員会(ICC)による承認が必要とされ、事業総額が3億ペソを超える場合はNEDA理事会の承認が必要となる。

      地方事業:原則として地方議会の承認によって事業選定がおこなわれるが、事業総額が2憶ペソを超える場合はICCによる承認が必要となる。

      承認期限は、承認審査条件が充足した日より30営業日以内とされている。なお、政府提案型の入札実施期間については、具体的な日数・期限は示されていない。

      民間提案型

       

      ICCおよび関係承認機関が審査をおこない承認する。民間事業者による提案後、ICCおよび承認機関による審査を経て入札前の承認がなされるまでの所要期間については、期限の明示がないもの(Open Date)もあり、1年超を要する可能性がある。

      また、入札においては、原提案者以外の者による競合提案を募集し(入札図書公表から60営業日以内)、比較評価のうえ、より優れた事業者を選定する「スイスチャレンジ方式」が採用されている。このスイスチャレンジも含めて、入札所要期間は少なくとも4カ月程度は要する。

      8)インドネシアにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドネシアでは、政府の財源不足によってインフラ投資が十分に行われない期間が、長期間続いたため、特に都市部での交通渋滞をみても明らかな通り、インフラ整備が相当遅れている状態である。複雑ではあるが、PPP法も整備されており、今後の首都移転プロジェクトと関連インフラ整備との関係でもPPPプロジェクトが増加すると考える。また、インドネシアにおいては、国営企業が多く存在しており、国営企業の民営化の進展にも注目されるが、反対も根強く進展速度は緩やかなものになると想定される。なお、政府側の事情による事業計画の変更や遅延等も多く、留意が必要である。

      イ 法制度の概要

      PPPに関する法制度は、ヨドユノ政権下で制定されたPPPに関する大統領令 2005 年第 67 号 が基本的な事項を定めていたところ、 2015年にPPPに関する大統領令2015年38号が制定され、対象セクター範囲が拡大されるとともに、後述のアヴェイラビリティ・ペイメントが導入された。2005年の大統領令は、2015年の大統領令により廃止されたが、2015年大統領令に反しない限りでその実施細則は有効とされている。具体的な内容は以下のとおりである。

      (ア)PPPの定義

      まず、インドネシアにおけるPPPとは、一般的にPPPに関する大統領令に基づき実施される事業を指す。このPPPの実効性確保のため、上記大統領令では「政府保証」及び「政府支援」について規定している。「政府保証」は後述のIndonesia Infrastructure Guarantee Fund(以下、「IIGF」という)を通して、政府契約機関(Government Contracting Agency(GCA))による契約の履行を保証する制度である。「政府支援」はインドネシア政府による「財産的支援」及び「その他の形態による支援」を指し、「財産的支援」には後述のViability Gap Funding(VGF)が含まれる。なお、インドネシアにおいては、上記大統領令に基づくPPPとは別に、公共事業に対する民間開放が行われていることに注意を要する。これらについては、各セクターが個別の法令を規定している。

      (イ)IIGF(Indonesia Infrastructure Guarantee Fund)

      財務省は100%出資して2009年末にIIGFを設立した。IIGFは、PPP 事業において、政府契約機関(GCA)の契約履行を保証しており、民間事業者のリスクを軽減している。 前述のPPP以外の各セクターの官民連携案件においては、政府保証が政府による Support Letter やConfirmation Note といった形態であったため、その内容が必ずしも明確とは言えなかった。IIGFが設立されたことで、民間事業者は、IIGFとの保証内容の協議を通じて保障内容を明確にする形で保証契約を締結することができるようになった。

      (ウ)VGF(Viability Gap Funding)

      VGFは、財務省から供与される PPP 事業に対する財政的支援である。社会的な利益は大きいにも関わらず事業採算性の低い案件に対して、財務省が建設費の一部を支援することにより、PPP 事業としての成立を支援することを目的としている。VGはPPP事業における建設費の一部を中央政府予算から拠出するものであり、現金で供与される。 VGFは、社会的な便益と事業採算性とのギャップを埋めるものであるが、あくまで当該案件の建設費総額の主要(Dominant)な部分を占めない水準とされている

      (エ)アヴェイラビリティ・ペイメント(Availability Payment)

      アヴェイラビリティ・ペイメントは、前述の大統領2015年38 号で新たに導入された制度である。所定の品質でインフラサービス提供される場合に、その対価として、GCAから民間業者に定額の支払を約束する制度である。これにより民間企業者適切な投資リターンを見込んでPPP事業へ参画することを企図している。

      なお、GCAはアヴェイラビリティ・ペイメントについて民間事業者と契約をするが、当該契約の履行保証については、前述のIIGFを利用することになる。他方で、中央政府がGCAとなるアヴェイラビリティ・ペイメントが利用される案件では、前述のVGFを使用することはできない点に注意が必要である。なお、地方政府がGCAになる案件では、アヴェイラビリティ・ペイメントとVGFの併用が可能となっている。

      (オ)事業者選定方法

      PPP 案件における事業者選定は原則、公募入札方式(Public Tender)で行われる。しかしPPP に関する大統規則2015 年3号により、例外的に直接指名 (Direct Appointment)の可能性についても規定された。 すなわち、対象事業が特定条件(対象となるインフラが既に当該事業者により運転されている場合、当該技術を提供できるのが当該事業者のみの場合、当該事業者が事業に必要な土地を概ねまたは完全にコントロールしている場合)を満たす場合、または、事前資格審査をした結果、通貨事業者が1グループのみの場合には、事業者を直接指名することができる。

      実務上は、最初に公募による事前資格審査が行われ、通過事業者が2グループ以上の場合は原則通り公募入札方式で選定が行われ、通過事業者が1グループのみだった場合には直接指名手続に進むことが認められている。

       

      9)インドにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドは、世界でもっとも多くのPPP事例が存在しており、特に道路と空港セクターを中心に一般的に浸透している。モディ政権下においても積極的にPPPプロジェクトの活用が図られている。ただし、州レベルの規制やガイドライン等に基づき、運用が行われており、統一的なPPP法制度がなく、州レベルのローカルルールや恣意的な運用により、外資が参入することは困難なことが多いといわれている。また、政府や監督省庁による計画変更や事業遅延等も生じていることに加えて、現地企業との価格競争を踏まえると、外資企業のプロジェクト推進については困難なことが多いと評価できる。

      イ 法制度の概要

      インドにおいて、連邦政府レベルで統一的なPPP法は存在していない。基本的には、財務省が基本政策を策定し、各種ガイドラインやマニュアルを整備している。具体的には、以下に示す一定の規則、手続き、マニュアル等が整備されている。PPPプロジェクトにおける事前資格基準、調達プロセス、調達者と入札予定者との間の契約事項などについて規定を定めている。

      • 2017年一般的財務規則 (General Financial Rules, 2017)
      • 1978年財務権限委譲規則(Delegation of Financial Powers Rules, 1978)
      • 2017年物品公共調達規則(Manual for Procurement of Goods, 2017)
      • 中央監察委員会ガイダンス(Central Vigilance Commission Guideline)

      その他、個別に①高速道路、②上下水道、③港湾、④廃棄物管理、⑤都市交通の5つのセクターに特化した規則等が存在している。その上で、州政府が個別具体的な政令や規則等を策定し、運用を行っている。また、州レベルの法制度の整備状況は州ごとに異なっており、公共インフラへの民間投資を含むインフラに関する法的枠組みを明確に規律している主な州は以下の通りである。

       

      法規定 

      Andhra Pradesh

      The Andhra Pradesh Infrastructure Development Enabling Act 2001

      Bihar

      The Bihar Infrastructure Development Enabling Act 2006

      Gujarat

      Gujarat Infrastructure Development Act 1999 amended in 2006

      Haryana

      Haryana PPP Policy

      Karnataka

      The Karnataka Infrastructure Policy 2007 amended in 2015 and Guidelines for Procurement of PPP Projects through the Swiss Challenge Proposals Route, 2010

      Punjab

      The Punjab Infrastructure Development and Regulation Act 2002

      Tamil Nadu

      Tamil Nadu Infrastructure Development Act, 2002

      Uttar Pradesh

      Uttar Pradesh Infrastructure and Industrial Investment Policy, 2012

      West Bengal

      The West Bengal Policy on Infrastructure Development through PPP 2003

       

      インドでのPPPにおいては、Public Private Partnership Approval Committee (PPPAC、「PPP評価委員会」)が、その中核を担っている。PPP評価委員会は、内閣経済委員会(CCEA)傘下の中央省庁/中央公共セクター事業(CPU)/法定当局またはその管理下にある事業体から構成されている。PPPAC評価委員会発行のプロジェクト査定・評価・承認のための手順[9]は次の通りである。

       

      ①監督機関は、PPPにおいて実施されるプロジェクトを策定し、適切な資格を持ったコンサルタントの支援を得て、フィジビリティ・スタディとプロジェクト契約の準備を行う必要がある。

      ②必要に応じて、監督機関で議論した内容をPPP評価委員会へ提出するプロジェクト提案書に添付する必要がある。

      ③PPP評価委員会の承認のために、行政庁は、フィジビリティ・スタディ報告書とともに、所定のフォーマットで作成されたプロジェクト提案書を提出する必要がある。

      ④ PPP評価委員会は、提出された書類を関係省庁に展開し、3週間以内に関係省庁との会合を開き、プロジェクトの原則的承認の可否を決定する。

      ⑤原則承認後、行政省は資格審査(RFQ)を提出し、資格のある入札者をリストアップすることが可能となる。そして、提案要請書とすべての契約書の草案を作成する必要がある。

      ⑥最終的な承認を得るため、事前に指定されたフォーマットで作成された提案書をPPP評価委員会に送り、PPP評価委員会の全メンバーの審査を受ける。

      ⑦Niti Aayog(政策委員会)、法律省、およびその他の関係省庁は、意見書をPPP評価委員会に送り、その意見書は行政省に転送される。

      ⑧PPP評価委員会の審査のために、PPP評価委員会の覚書付きの調達書類と契約書の全てを提出する必要がある。

      ⑩PPP評価委員会は、関係当局の最終承認を得るためにプロジェクトを推薦するか、または、PPP評価委員会で更検討するために、行政省にプロジェクトの修正の再提出を提案する。

      ⑪PPP評価委員会の承認後、最終承認のため、監督機関に最終プロジェクトを付託する必要がある。

       

      なお、PPP契約書の作成に際して、以下の条項を必ず記載する必要があるので、注意が必要である。

      ①契約日とコンセッション期限

      ②民間事業者の義務、権利や制限(提供されるサービスと履行義務の説明を含む)

      ③公的主体の義務と権利、プロジェクト収入スキームと支払方法等

      ④履行監視のための要件と手続きや不履行時の処理方法

      ⑤紛争解決規定、不可抗力等の標準条項

       

      10)バングラデシュにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしている。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表し、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されている。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインを制定し、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設置されている。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されている。そして、2015年9月16日には、バングラデシュ初のPPP法が成立している。

       

      イ 法制度の概要

      PPP法は、全49条から構成される。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドラインの策定の責任を負っている。また投資家の手続き上の負担を低減化するために、関連文書のサンプルを作成し、提供することもその義務となっている。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されている。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関する規定が存在している。特に第17条では、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されている。ただし、規定自体は非常に簡単な内容となっており、今後の細則等の発表が待たれる。

      また、PPP法第19条では、民間事業者の選定方法、第22条では、当事者間の合意に際して、プロジェクト会社の設立要件や方法等が明記されており、第24条および第25条は、汚職および利益相反に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されている。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある条項が明示されている。

       

      1. 最後に

      新興アジアにおけるインフラ需要は膨大である。ただし、PPPプロジェクトを成功させるためには、PPPプロジェクトが実現可能な環境を整備することが不可欠である。その意味では、PPPプロジェクトを促進するための政策、法的、制度的枠組みの設計や強化等といった政府のアクションが絶対的に必須である。アジア新興国において、上記で述べた通り、2010年に入り、徐々にPPP法制度の制定やPPPガイドラインを策定やPPP専門部署を設置が進んでいることが確認できたのではないだろうか。しかしながら、リスクマネジメントの観点からは、制度等の拡充等のともに、財政的支援や保険制度等の整備が次のステージでは必要となってくるのは間違いない。次回は、アジア新興国におけるPPPプロジェクトの潜在的なリスクマネジメントに対する対応策や偶発債務の管理方法等への対案を検討するため、先進国におけるPPPプロジェクト事例を整理紹介し、アジア新興国でのPPPプロジェクトに活かしていきたい。

以上

本記事やご相談に関するご照会は、以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

 

2020年01月21日(火)4:03 PM

ASEAN各国の新法の状況を報告致します。

 

シンガポール→シンガポールにおける決済サービス法に関するアップデート

タイ→タイの最新法令アップデート

マレーシア→最低賃金、受益的所有者の報告に関する改正

ベトナム→ベトナムにおける改正労働法の改正

インドネシア→ハラール製品保証及び政令の制定とその後の運用について

ミャンマー→ミャンマーにおける知財に関するアップデート

カンボジア→カンボジアにおける2019年度 新法・法改正アップデート

ラオス→2019年の会社設立に関する重要法令まとめ

日本→パートタイム・有期雇用労働法の施行について

 

2019年01月23日(水)1:02 PM

ASEAN各国の新法状況をご報告いたします。

 

【シンガポール】決算サービス法案
【タイ】労働者保護法・刑事手続法関連の改正及びIBC制度の創設
【マレーシア】外国人社会保険義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する改正法
【ベトナム】サイバーセキュリティー法の施行
【インドネシア】OSSシステムのBKPMへの移管
【フィリピン】外資規制緩和の最新動向
【ミャンマー】競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資撤廃
【カンボジア】労働法のアップデート
【ラオス】付加価値税法の改正
【日本】労働基準法の一部改正

 

2019新年版ニューズレター

2018年01月11日(木)4:44 PM

ASEAN各国の新法の状況をご報告いたします。

 

シンガポール→ダウンロード

タイ→ダウンロード

マレーシア→ダウンロード

ベトナム→ダウンロード

インドネシア→ダウンロード

フィリピン→ダウンロード

ミャンマー→ダウンロード

ラオス→ダウンロード

日本→ダウンロード

 

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