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2023年03月21日(火)8:56 PM

タイの労働者保護法改正(在宅勤務)についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
労働者保護法の改正

タイの労働者保護法改正(在宅勤務)について

 

2023年3月21日
One Asia Lawyers Group タイ事務所

1.はじめに
2023 年 3 ⽉ 19 ⽇に労働者保護法第 8 号(以下、「改正法」)が官報に掲載され、
2023 年 4 ⽉ 18 ⽇より施⾏されます。改正法では⼀定の要件について労使間で合意する
ことで、在宅(または事業所外での)勤務が可能となることが明記されました。改正法
の背景には、従業員のクオリティオブライフ(QOL)向上、使⽤者が受ける恩恵に加え、
通勤による交通渋滞の緩和が挙げられています。本ニュースレターでは改正法の概要に
ついて解説致します。
2. 第 23/1 条の追加
新たに追加された労働者保護法第 23/1 条によれば、従業員が事業所外での業務(在宅
ワークやインターネットを利⽤した事業所外での業務含む)を⾏う場合は、必要に応じ
て以下の情報を含む詳細について、書⾯または電⼦ファイル形式により労使間で事前に
合意しておく必要があります。
(1) 合意内容が適⽤される開始⽇と終了⽇について
(2) 通常の労働⽇及び労働時間、休憩時間、及び時間外労働について
(3) 時間外労働及び休⽇労働にかかる基準、及び休暇の取扱について
(4) 従業員の業務スコープ及び義務、及び使⽤者による業務管理または監督について
(5) 業務上必要な機器または道具の提供及び諸経費について
また、通常の労働時間が終了した際、または使⽤者より指⽰された業務が終了した際、
従業員が事前に書⾯で同意した場合を除き、従業員は使⽤者や上⻑からのいかなる媒体
による連絡であっても終了後の業務を拒否する権利を有すること、さらに、事業所外で
の業務を⾏う従業員は、事業所内で業務を⾏う従業員と同⼀の権利を有すること、が定
められました。改正法の施⾏により、コロナをきっかけとした在宅ワークがさらに促進
されることが予想されます
                                    以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
masaki.fujiwara@oneasia.legal(藤原 正樹)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

2022年11月11日(金)8:24 PM

タイの民商法改正についてのニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

タイの民商法改正について

 

速報:タイの民商法改正について

                                     2022年11月11日
                               One Asia Lawyersタイ事務所

1.はじめに
2022年11月8日に改正民商法第23号(以下、(「改正法」)が公布され、2023年2月7日より施行される予定となっております。多少の変更点(主に表記方法の変更)が見受けられたものの、草案のほとんどがそのまま承認され、公布されています。本ニュースレターでは、改正法の概要について解説致します。

2. 非公開株式会社の最低発起人数及び最低株主数

これまで非公開会社は設立の際、3名以上の発起人を必要とし、また、会社解散命令の対象となる事由として株主数が3名に満たなくなった場合と定められていたことから、3名以上の株主が必要と解されてきましたが、改正法では株式会社設立手続きの柔軟性を高め促進する目的で、発起人数及び株主数共に2名に削減され、規制緩和が図られています。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1097条

発起人3名以上で株式会社の設立が可能。

発起人2名以上で株式会社の設立が可能。

第1237条

(4)

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、3名に満たなくなった場合。

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、残り1名となった場合。

3. 株主総会招集時の新聞公告

これまで非公開会社が株主総会を招集する際は、7日前(普通決議)または14日前(特別決議)までの全株主への招集通知発送に加え、新聞公告の掲載が求められていましたが、改正法では無記名式株券を発行している会社を除き、新聞公告の掲載義務が撤廃されました。

ただし、現状、付属定款において株主総会招集時の手続きとして新聞公告の掲載を行うと定めている場合は、付属定款の変更登記を行わない限り、引き続き新聞公告掲載が必要となります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1175条

1項

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに地方紙に少なくとも1回公告し、さらに、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に名前のある全株主に対し、配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に掲載されている全株主に対し配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、会社が無記名株券を発行している場合は、地方紙に少なくとも1回公告するか、省令で定めた規則及び方法に基づき電子メディアに公告する必要がある。

特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

4. オンラインによる取締役会開催

2020年4月の勅令及び同年5月のデジタル経済社会省告示により、電子システムを利用した会議は既に一定の要件の下で認められていましたが、改正法では取締役会のオンライン上での開催が今後より多く利用されることを期待し、明文で認められることとなりました。

ただし、依然として取締役本人による出席が必要とされるため、委任状による代理人の出席は認められていないことにご留意下さい。改正法ではオンラインによる株主総会の開催について明文で定められていませんが、上記告示によりオンラインによる株主総会を開催することも従前どおり認められます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1162/1条

付属定款で禁止する場合を除き、取締役会においてテクノロジーを利用してコミュニケーションを取ること(以下、「オンライン会議」)も可能であり、取締役が会議の場に出席することも不要である。

オンライン会議の開催時は、電子システムによる会議に関する法律に従うこと。

オンライン会議の場合も取締役は取締役会に出席しているとみなされ、定足数の計算に含め、議決権を有する。

5. 株主総会の最低出席者数

これまで株主総会の最低出席者数については民商法上明確に定められていませんでしたが、法制委員会事務局(Office of the Council of State)の公式見解により「討論し決議を採択すること」という株主総会の目的を果たすため、2名以上の株主または代理人の出席が必要になると解されてきました。改正法ではこれを明文化し、少なくとも株主またはその代理人2名の出席が必要となることが明確になりました。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1178条

株主総会において会社資本の4分の1以上を代表する株主が出席しなかった場合、その株主総会の議題について審議することはできない。

株主総会は株主または株主から委任を受けた代理人が2名以上出席しなければならず、かつ出席株主が有する株式の合計が会社資本の4分の1以上でなければ決議することはできない。

6. 会社設立時の創立総会議題

従前より新会社設立登記申請前の創立総会において付属定款の承認が求められており、付属定款には投票の際に同数となった場合(議長が決定票を投じる等)の解決方法を任意で規定しておくことが可能でしたが、改正法では第1097条で発起人の数が2名以上に削減されたことに関連して投票時に同数となる可能性が高まることから、当該規定が義務付けられることとなりました。DBDが公開する付属定款のテンプレートを利用する場合、株主総会における解決方法は規定されていますが、取締役会については規定されていないため、別途追記する必要があります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1108条

(1)

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役または株主間の和解できない問題または反対意見に対する解決方法について規定しておくこともできる。

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役もしくは株主間の和解または決議できないような問題または反対意見に対する解決方法について規定しておかなければならない。

7. 配当金支払い

従前より配当の支払いは株主総会または取締役会決議から1か月以内に行うことと定められていましたが、改正法では少数株主保護のため1か月以内に支払を完了することと明記されています。

 

従前の内容

改正法の内容

第1201条

4項

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に行うこと。

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に完了すること。

8. 吸収合併

これまで合併を行う場合は、新設合併のみ可能で、吸収合併については認められておらず、一方会社への全部事業譲渡+他方会社の清算という形で実質的な吸収合併を行うケースが見受けられました。新設合併は許認可の新会社への承継が認められておらず、一般的なM&Aの手法としては用いられていませんでしたが、改正法により可能となった吸収合併では吸収する側の存続会社が有していた許認可 は合併後も引き継がれると考えられている(許認可毎に別途確認が必要です)ためM&Aにおけるスキーム選択の幅が広がることが期待されます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1238条

株式会社は合併することはできない。ただし株主総会の特別決議による場合を除く。

株式会社は特別決議により合併することができる。

2社以上の会社は、次のいずれかの方法により合併する。

(1)     合併により新たに会社を設立し、合併された元の会社は法人格を失う(以下、「新設合併」)。

(2)     合併により1社の法人格のみを残し、その他の合併された会社は法人格を失う(以下、「吸収合併」)。

第1243条

新会社は合併された元の会社の全ての権利及び責任を引き継ぐ。

合併後の新会社[1]は合併された元の会社の全資産、負債、権限、義務、及び責任を引き継ぐ。

[1] 吸収合併時の存続会社を含む

9. 反対株主の株式買取制度

今回新たに合併に反対する株主のための株式買取制度が設けられ、会社は合併に反対する株主に対し、当該株主が保有する株式の買取者の手配が義務付けられています。買取価格について反対株主と買取者との間で合意に至らない場合は、今後公布される省令に従って任命される鑑定人により買取価格が提示されます。買取者からの買取の申し出から14日以内に反対株主が株式を売却しなかった場合、合併手続きの進行が認められ、反対株主は合併した会社の株主であるとみなされることになります。

 

従前の内容

改正法の内容

第1239/1条

合併の特別決議が可決された際、会社は合併に反対した出席株主(以下、「反対株主」)の保有株式を合意価格で買い取る者を手配しなければならない。買取価格について合意できない場合は、鑑定人が定めた価格を使用すること。反対株主が買取の申し出を受けた日から14日以内に売却しない場合、会社は会社合併の手続きについて進めることができ、反対株主は合併した会社の株主とみなされる。

前項における鑑定人の任命は、省令の定める規則、手順、及び条件に従うこと。

10. 合併手続きの流れ

合併を行う際は、まず各社で特別決議により合併(新設合併または吸収合併)を承認し、当該決議日から14日以内に特別決議の登記申請、新聞公告、及び全債権者に対する合併通知を行います。その後、最後に合併が可決された日から6ヵ月以内(1年まで延長可能)に合併後の新会社(以下、吸収合併時の存続会社を含む)の株主総会を開催し、第1240/1条で定められた議題全てについて決議します。これらの議題は一度に全て決議する必要はなく、何度かに渡って株主総会を開催し決議することも可能です。第1240/1条で定める全ての議題について決議が完了した日から7日以内に、合併された元の会社(消滅会社)は、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票等を合併後の新会社に引き渡さなければならず、かつ、合併後の新会社は14日以内に合併登記申請を行う必要があります。この際、新設合併か吸収合併かが会社登記簿に記録されることになります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1240条

会社は、合併の意図について、地方紙に少なくとも1回公告し、かつ会社が把握している全債権者に配達証明付き郵便で通知しなければならない。また、合併に反対する債権者には通知から60日以内に異議申立書を提出させること。

期限内に反対がなければ、反対はないものとみなす。

反対する債権者がいる場合、その債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、会社は合併の手続きを進めることはできない。

合併の特別決議から14日以内に、会社は決議日時点に債権者リストに掲載されている債権者に対し、当該決議について通知しなければならない。この場合、異議申立を行う場合の期限として通知受領後1か月以内と定めておくこと。さらに、会社は合併決議について、決議日から14日以内に広く普及されている日刊紙にも公告すること。

反対する債権者がいる場合、会社はその債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、合併できない。

第1240/1条

第1239条及び1240条に基づき進めた後、合併後の新会社の取締役は株主総会を招集し、次の議題について審議すること。

(1)     合併後の新会社の商号 この場合、新しい商号または合併前のいずれかの会社の商号を利用することができる。

(2)     合併後の新会社の事業目的

(3)     合併後の新会社の登録資本金 この場合、新会社の資本金額は合併された各社の資本金額の合計を上回る額でなければならない。

(4)     合併後の新会社の株式の配分 この場合、第1222条は適用されない[1]

(5)     合併後の新会社の基本定款

(6)     合併後の新会社の付属定款

(7)     合併後の新会社の取締役選任

(8)     合併後の新会社の会計監査人選任

(9)     合併後の新会社に関係するその他の事項(もしあれば)

合併後の新会社の株主総会は、合併された元のいずれかの会社が最後に合併決議を行った日から6か月以内に開催しなければならない。ただし、合併後の新会社の株主総会が当該期日の延長について決議した場合を除く。この場合、延長は最初の6ヵ月を含め1年を超えてはならない。

第1240/2条

第1240/1条に基づき開催する株主総会は、合併された元の会社の本店がある地域またはその本店に近い都県で開催すること[2]。また、

(1)     合併された元の会社それぞれにおいて、全株式の過半数を有する株主の出席を定足数とする。

(2)     出席株主の一人を議長として選任する。

(3)     株主総会の決議事項は別途合意がある場合を除き、(1)に基づき出席した株主の過半数の賛成により可決する。

第1240/3条

合併された元の会社の取締役会は、第1240/1条に基づき開催する株主総会から7日以内に、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票を新会社の取締役に引き渡さなければならない。

第1241条

会社が合併した時、各会社は合併から14日以内に登記申請しなければならず、合併により新たに

設立された株式会社も新規に登記しなければならない。

新会社の取締役会は、第1240/1条に基づく株主総会で承認された基本定款及び付属定款について、第1240/1条に基づく株主総会の完了から14日以内に登記官に提出し、合併登記申請を行わなければならない。

第1242条

新会社の資本金額は、合併された元の会社の資本金額の合計と同じでなければならない。

登記官により合併登記が受理された際、登記官は次の内容を登記簿の備考欄に記録すること。

(1)     新設合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

(2)     吸収合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

[1] 第1222条により増資の際は既存株主の株式保有割合に基づき新株を割当てることになっていますが、改正法では当該規定が適用されません。つまり、資本金200万バーツのA社と資本金300万バーツのA社が合併し資本金700万バーツとなる場合、追加で出資する200万バーツ分についてはA社とB社が協議しその出資割合を決定することが可能となっています。

[2] 当該株主総会のオンライン開催が認められるかは明文化されておらず、今後の動向を注視する必要があります。

11. 改正法施行前の合併決議

改正法施行前に株主総会において合併が可決されている場合、改正法前の民商法に基づき手続きを進めることも可能となっています。

以上

2022年01月07日(金)1:15 PM

タイ版下請法のマニュアルの概要について報告いたします。

タイ版下請法のマニュアルの概要について

 

 

 

タイ版下請法のマニュアルの概要について
                                   2022年 1月 7 日
  

1 はじめに

取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、「本告示」)」の解釈等を説明する取引競争委員会の告示・中小企業が商品販売者またはサービス提供者である場合の与信期間に関するガイドラインの件に関する説明書(以下、「マニュアル」)が、昨年末に公表されました。

本ニュースレターでは、このマニュアルの概要について説明致します。これまで公聴会の説明などにて本告示の解釈が示されていましたが、今後はこのマニュアルに従い与信期間について運用する必要があるものと考えます。

2 中小企業の定義(本告示第2条)

マニュアルでは、雇用者数または年間売上高のいずれかの要件に該当すれば、中小企業に該当すると説明されています。

本告示施行前の公聴会の説明では、年間売上高で中小企業性を判断すると解釈されていましたが、マニュアルでは、雇用者数または年間売上額のいずれかの要件を満たせば中小企業に該当する、という解釈に変更されました。

事業の種類

雇用者数

年間売上高

1.製造業

200人以下

5億バーツ以下

2.サービス、卸売、小売業

100人以下

3億バーツ以下

 

※雇用者数とは、賃金を得て労働またはサービスを提供する自社の従業員を意味します。つまり、掃除員や警備員を従業員として雇っている場合は雇用者数に含めますが、清掃会社や警備会社から自社に派遣されている者は含めません。

※年間売上高とは、各種経費控除前の利益全てを意味し、商品やサービスの販売から得られる利益だけでなく、その他の利益(例えば、預金の利子、会社資産の売却益、余った材料や部品の売却から得られる利益など)も含まれます。

3 中小企業該当性

例1: 従業員200人以下、年間売上高5億バーツ以上のバナナの加工食品会社A

雇用者数

200人以下

年間売上高

5億バーツ以下

該当性

(200人以下)

×

(5億バーツ以上)

中小企業である

 

例2:従業員100人以上、年間売上高3億バーツ以下の機械修理サービス会社B

雇用者数

100人以下

年間売上高

3億バーツ以下

該当性

×

(100人以上)

(3億バーツ以下)

中小企業である

 

例3:機械を製造し、修理サービスも提供する会社Cは、従業員150人を雇用し、製造事業の年間売上高は5億バーツ、修理サービス事業の年間売上高は1億バーツ

<主要事業である製造事業の要件が適用される>

雇用者数

200人以下

年間売上高

5億バーツ以下

該当性

(150人)

×

(6億バーツ)

中小企業である

※年間売上高の割合が多い方が会社の主要事業とみなされます。

4 与信期間

与信期間とは、購入者が商品またはサービスの納品または提供を受けた後、一定期間内にその代金を販売者に支払うことを約する販売者とその購入者間の文書による合意事項のことをいいます。

※「文書による」とありますが、文書がない場合でも合意事項や与信期間が無効となったり、裁判所への訴えが認められなくなるわけではありません。ただし、与信期間を文書で定めていない場合は、2560年取引競争法第57条の違反行為について取引競争委員会による調査が行われる際、その調査結果に影響を及ぼす可能性がございます。

5 本告示の適用範囲

施行日(12月16日)時点で過去の契約が終了していない場合も本告示の対象となります。つまり、過去に締結した契約が12月16日時点で有効な場合は、当該契約上の与信期間を見直し、必要に応じて本告示の要件に基づき変更を行う必要があります。

6 本告示が定める与信期間(本告示第4条(1)第1項)

1)一般的な商品またはサービスの場合:45日

2)農産物もしくは農産物の加工品またはサービスの場合:30日

※農産物もしくは農産物の加工品は腐りやすいため、与信期間が1)より短く定められています。

※上記より短い期間で既に合意している場合は、それに従う必要があります。

「農産物」とは

農業、漁業、畜産業、または林業から得られるものを意味し、例えば、米、とうもろこし、魚などが含まれます。

「農産物の加工品」とは

農産物を簡単に加工処理したものを指します。簡単な加工処理とは、油で揚げる、乾燥させる、天日干しにする、など。干し肉やドライフルーツなどが該当します。

※加工工程が複雑なもの、最新技術や機械、機器を使用するものは含みません。

7 本告示の例外(本告示第4条(1)第2項)

本告示は「法」であるため、本告示で定める要件より短い与信期間で合意している場合を除き、原則として本告示に従う必要があります。ただし、本告示に従うことができない理由または必要性がある場合、または本告示に従うことで重大な影響を受ける場合は、取引競争委員会が契約内容及び条件の下でのビジネス上、マーケティング上、または経済上の正当理由を事案ごとに判断することになります。

※本告示で定める与信期間より長い与信期間について両者が合意し、取引競争委員会への違反申立てが行われなかったとしても、同委員会は違反行為について調査及び審理する権限及び義務を有しています。

※契約自由の原則に基づき両者は本告示の範囲内で契約条件について自由に合意できますが、優越的交渉力を行使していたり、不当な取引条件が定められていたりする場合は違反行為とみなされるため注意が必要です。

8 与信期間の起算点(本告示第4条(2))

商品・サービス及び書類の引き渡し完了日が起点となります。

<商品・サービスの引き渡し完了日とは>

購入者が合意した商品またはサービスの数量、種類、品質、基準に基づき、販売者が全商品を納品した、またはサービス提供者が全サービスを提供した日を意味します。

※購入者が受領した商品またはサービスの検品期間については、合意内容、またはそれぞれの業界の通常の商習慣に従うことになります。

<書類の引き渡し完了日とは>

販売者が通常の取引で必要とする全書類(例えば請求書や納品書)を引き渡した日を意味します。

(例)飲料水の販売業者であるA(中小企業に該当)が与信期間を45日とすることでBと合意。2021年8月31日に商品及び書類の引き渡しが完了した場合、民商法193/3条に基づき与信期間の起算日は2021年9月1日となり、支払期限は45日後の2021年10月15日となる。

※与信期間の起算日を遅らせるために、正当な理由なく合意した商品またはサービス及び書類を故意に受領しなかったり、検品を遅らせたり、合意した日より遅れて商品またはサービスを受領した場合、不当行為であるとみなされる恐れがあります。

9 商品またはサービス購入者側がすべきこと

支払に関する詳細及びプロセスを明確に示す必要があります。

※これを行わない場合、または本告示の要件に基づき与信期間を変更しない場合、不当な取引を行っているとみなされる可能性があります。

なお、マニュアルでは、購入者側が販売者側の中小企業該当性について積極的に確認する義務について触れられておらず、購入者側にこのような確認義務はないと解釈してよいと考えます。

10 中小企業に該当する商品またはサービス販売者側がすべきこと

雇用者数または年間売上高により自身が中小企業に該当することを証明する必要があります。

<雇用者数を証明する書類の例>

社会保険納付書類、個人所得税納付書類(歳入局発行の領収書を添付)など。

<年間売上高を証明する書類の例>

昨年度の法人税納付書類(歳入局発行の領収書を添付)、財務諸表、DBDに提出する情報、など

※雇用者数を証明する書類については契約締結時時点のものを提示し、年間売上高を証明する書類については昨年度末のものを提示することになります。

※マニュアルでは、中小企業に該当することを証明する書類の提示は、変更がない限り一度きりで良いとされています。

※購入者が上記証明書の提示は不要であると合意した場合を除き、販売者側が上記の証明を行わない場合、本告示に基づく保護及び利益を受ける権利を放棄したとみなされる可能性があります。

11 不当行為の例(本告示第5条)

1)支払い遅延

正当な理由なく、商品またはサービスの代金支払いが定められた与信期間内に行われなかった場合(例えば、合意に基づく商品を受取ったにもかかわらず、承認が得られていないなどの理由で支払いが行われない場合など)

2)与信期間またはその他の条件の変更

正当な理由なく、または60日以上前の事前通知なく、与信期間または契約上のその他の条件(与信期間に関する条件に限る。例えば、検品期間を延長し、与信期間の起算日を遅らせるなど。)を変更した場合。一方的な変更の場合だけでなく、販売者が変更に合意している場合でも、正当理由または60日以上前の事前通知がなく、いずれかの当事者(販売者に限らず、サプライチェーンに関わる全事業者)が不利益を被った場合、2560年取引競争法第57条の違反であるとみなされる可能性があります。

3)その他の行為

・特別条項を設け、優越的交渉力を行使した場合(例えば、本告示の要件を満たした与信期間を受け入れる代わりに、他社への販売を禁止したり、値引きを要求したりする場合)

・与信期間を定めない場合。

・支払いプロセスを明確に示さない場合

・支払いを受けるためにこれまでの取引では必要とされなかった書類を要求する場合

・中小企業に該当することを証明する書類を受取らない場合

12 罰則

上記不当行為に該当する場合、2560年取引競争法57条の違反であるとみなされ、同法82条に基づき、違反を犯した年の売上高の10%を超えない額の罰金を科され可能性があります。

また、法人が違反を犯した場合は、同法第84条に基づき、法人の取締役に対しても法人と同等の罰則(違反を犯した年の会社の売上高の10%を超えない額)が科される可能性があります。

                                                                                                                                                        以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
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2021年10月18日(月)10:00 PM

タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について報告いたします。

新システムによるVAT登録及び関連書類の提出方法について

 

 

 

タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について

                                   2021 年 10月 18 日
                               One Asia Lawyers タイ事務所

1.はじめに

2021年8月24日のニュースレター[1]でお伝えした通り、2021年2月9日にタイ国外から提供される電子サービスに対する付加価値税(以下、 「VAT」)の徴収を規定した改正歳入法第53号(以下、「法第53号」)が成立し、2021年9月1日に施行されています。改正により歳入局と事業者[2]がオンライン上で納税関連文書のやり取りを含めた各種手続きを行えるようになりました(法第53号3条の16)が、その規則や手順については省令で別途定めることとされていました。

その後8月23日に発出された財務省令第377号(以下、「省令第377号」)により、電子的手段によるVAT登録や書類提出等の各種手続きにおける規則及び手順が明らかになり、さらに電子的手段として、歳入局はVES(VAT for Electronic Service)システム[3]を新たに導入しました。

省令第377号は「第1章:証拠書類[4]の作成、提出、受領、保管」と「第2章:VAT登録」の2部構成となっており、以下の通りそれぞれ解説致します。

2.証拠書類の作成、提出、受領、保管について

事業者はVESシステムにより申請書や書類の作成、提出、及び受領等の手続きを行うことが可能となります。

証拠書類の作成および保存は、少なくとも電子取引法と同等の基準で、①書面が変更されることなくアクセス及び復元が可能であること、②証拠書類を保存する際は信頼できる方法で行うことが求められています。①については、歳入局より、現在はPDFファイルのみ提出可能となっており、将来的にはZIPファイルの提出も可能となるようにシステムを改善中と回答を得ています。また、②については、歳入局では特定の方法を指定していないとの回答を得たため、電子取引法を監督するデジタル経済社会省(MDES)に照会したところ、電子取引法においても信頼できる書類の保存方法については明確な定義や要件は規定されていませんが、パスワード等でアクセス制限を設けておくことを推奨するとの回答を得ています。

VESシステムによる証拠書類の提出後は、当該書類の詳細及び受領日時が記載された認証メッセージが送信され、この受領をもって、証拠書類の提出が完了したものとみなされます。

3.VAT登録について

VES(VAT for Electronic Service)システムは今後、事業者がVAT登録、VAT登録情報の変更、VAT登録の取消し、または、VAT 登録に関連するその他の手続きを行う際にも利用されます。事業者は年間売上高が180万バーツを超えた日から30日以内にVAT登録を行わなければならない(歳入法第81/1条)ため、法第53号の施行開始日時点で既に売上が180万バーツに達している事業者は、早急にVESシステム上でVAT登録を行う必要があります。システム上でVAT登録が承認された場合は、従来のVAT登録証(PorPor20)に代わり、VESシステム上の登録事業者リストに掲載されます。

4.おわりに

10月18日現在、海外企業の登録件数は98件となっており、その内日系企業の登録も数社確認できています。法第53号は既に施行開始されているため、電子サービスをタイ国外からタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業は、早急に対応する必要があるといえます。

 

[1] https://oneasia.legal/7325

[2] 海外の電子サービスをタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業を指し、電子サービス提供者だけでなく、電子プラットフォーム提供者も含む。

[3] https://eservice.rd.go.th/rd-ves-web/landing

[4] オンライン上でのVATの計算、提出、送金、課税、登録、還付、不服申し立て等に関する召喚状、納税通知書、申請書、報告書等を意味する。

                                                以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

2021年09月30日(木)11:44 AM

タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について報告いたします。

中小企業に対する与信期間の設定について

 

 

 

       タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について
                               2021 年 9 月 30 日
                          One Asia Lawyers タイ事務所
1 はじめに
2021 年 5 月 24 日、取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者
である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、「本ガイドライン」)」が発布さ
れました。本ガイドラインは、取引競争法第 57 条の下位規範として、中小企業が取引
先に提示される不当な与信期間により被り得る不利益を回避し中小企業を保護すること
を目的に制定され、中小企業と取引を行う全ての事業者に対し、施行開始日である
2021 年 12 月 16 日により適用されます。
2 中小企業とは
本ガイドラインで保護される中小企業は以下の通りとなっています(本ガイドライン第
2 条)。
(1) 200 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 5 億バーツ以下の製造者
(2) 100 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 3 億バーツ以下のサービス提供者、
卸売業者、または小売業者
なお、中小企業は取引先に対し、本ガイドラインが定める中小企業に該当することを従
業員数または売上高を証明する書類の提示を以て、証明する必要があります(本ガイド
ライン第 4 条 2 項)。中小企業と取引を行う企業は定期的(契約締結時または更新時な
ど)に当該書類の提出を求め、本ガイドラインが定める中小企業に該当しているかを確
認することが好ましいと考えます。
3 本ガイドラインが定める与信期間
中小企業が一般的な商品販売者、商品製造者、サービス提供者である場合、与信期間を
45 日またはそれ以下に設定しなければなりません。ただし、中小企業が農産物または
農産物の加工品(製造工程が複雑でないもの)だけを取り扱う商品販売者、商品製造者、
サービス提供者である場合、与信期間を 30 日以下に設定する必要があります(本ガイ
ドライン第 4 条(1))。
つまり、既に上記より長い与信期間での合意がなされている場合でも、原則として本ガ
イドラインの施行開始日前までに改定する必要があります。
なお、ビジネス、マーケティング、または経済的な観点から合理的であるとみなされる
場合は、上記の与信期間より長く設定することも可能であると規定されています(本ガ
イドライン第 4 条 2 項)が、例外として認定されるかはケースバイケースで担当官の判
断に委ねられると考えます。取引競争委員会に照会したところ、取引先の親会社の規定
で与信期間を 60 日に設定しなければならない場合でも、例外としては認められないと
の回答を得ています。
4 与信期間の起算日
上述した与信期間の起算日は、中小企業が商品を納品またはサービスを提供し、かつ納
品書や請求書等の必要書類を提出した日となります。商品の納品後、請求書が後日発行
されるような場合は、請求書の発行日が起算日となります。また、委託販売の場合は中
小企業による商品販売日が起算日となります(本ガイドライン第 4 条(2))。
5 違反とみなされ得る行為及び罰則
本ガイドライン第 5 条において、違反とみなされうる行為として以下の行為が挙げられ
ています。
• 商品またはサービスの代金支払時期が、正当な理由なく、本ガイドラインで
定めた与信期間より遅れること。
• 正当な理由や 60 日以上前の事前通知なく、契約で定めた与信期間または支
払条件を変更すること。
• その他の不当行為。例えば、契約上で与信に関する特別条項を規定し、中小
企業に不要な負担を強いること。
本ガイドラインの違反者は、違反を犯した年の売上高の 10%を超えない額の罰金を科
される恐れがあります(取引競争法第 82 条)。 

                                    以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2021年08月24日(火)9:57 AM

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について報告いたします。

VAT 課税に関する歳入法の改正について

 

 

 

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について

 

2021年8月24日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

1.はじめに

2021年2月9日、タイにおいて、海外から提供される電子サービスからの付加価値税(以下、「VAT」という)の徴収を規定した歳入法B.E.2481(1938)の改正を目的とした改正歳入法(No.53)B.E.2564(2021)(以下「法第53号」という)が成立した。2021年9月1日に施行される予定である。

以下、その改正点を詳述する。結論を先に述べると、改正によって、海外の「電子サービス」(下記の定義規定参照)をタイ国内で当該サービスを利用する個人消費者などの非VAT登録者に提供する事業者(以下「対象事業者」という)は、VAT登録の義務を負い、(仕入VAT及び売上VAT間の相殺を行わずに)VATを支払わなければならず、タックスインボイスの発行も禁止されることとなる。そして、「電子プラットフォーム」(下記の定義規定参照)運営者は、対象事業者がそのプラットフォームを通じて上記サービスの提供を行う場合、その対象事業者に代わってVAT支払い義務を負い、その義務と責任はその対象事業者と同等のものとされる。

2.納税関連文書等について

改正により、作成及び提出等の対象となる納税関連文書が明示的に拡大された。

これらの文書等については、改正前は「電子取引法で定める規則に準じて」作成及び提出することと定められていたのに対し、改正後は「省令で定める規則及び手続きに従って」(当該省令は、まだ発布されていない。)作成及び提出することと定められた。

これにより、改正後は、これらの文書等を改正前と異なる規則にしたがって、電子的方法によって作成及び提出することができるものとした。

 

第3条の16〔改正前〕

納税に関連する報告又は文書の提出、及びその他の歳入法に基づく文書の作成は歳入局長が定めた規則、手順、及び条件に従って電子的方法により行うことができる。この場合、電子取引法で定める規則に準じなければならない。

第3条の16〔改正後〕

召喚状、納税通知書、帳票、タックスインボイス、報告書、証拠書類、その他歳入法に基づいて入手、発行、使用しなければならない書簡、歳入局が納税者やその他の者と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡、又は納税者やその他の者が歳入局と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡は、省令で定める規則及び手順に従って電子的手段を用いて作成することができる。

第1項の省令は、電子取引に関する法律に準拠した文書の作成、提出、受領、保管のための関連規則及び手続きを定めるものとする。

 

3.定義

  • 「商品」について

改正により「商品」の定義から、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産が明示的に排除された。

 

第77/1条9項〔改正前〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。

第77/1条9項〔改正後〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。ただし、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産を除く。

 

  • 「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」について

改正により、新たに「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」が定義された。

 

〔改正前〕

規定なし

第77/1条10/1項〔改正後〕

「電子サービス」とはインターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産の提供を含むサービスで、基本的に自動化され、かつ、情報技術を使用せずには提供することが不可能なサービスを指す。

第77/1条10/2項〔改正後〕

「電子プラットフォーム」とは、多くのサービス提供者がサービス受領者に電子サービスを提供するために使用するマーケット、チャンネル、その他の手続きを指す。

 

4.VAT課税について

  • 課税範囲と電子プラットフォームに課される義務について

改正により、従来の条項(以下「第1項」という)に加えて、第2項及び第3項が加えられた。

第2項によれば、対象事業者は、第1項の適用がなく、仕入VATを控除せずに売上VATを計算し、VATを支払わなければならない。そして確定申告書類を提出し、第83条にしたがって納税しなければならない。

第3項によれば、対象事業者が電子プラットフォームを通じて電子サービスを提供する場合に、電子プラットフォーム運営者はその対象事業者に代わってVATを支払う義務を負う。電子プラットフォーム運営者の義務と責任は、対象事業者と同等とされる。

 

第82/13条〔改正前〕

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第82/13条〔改正後〕

第1項

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第2項

第1項は、事業者が海外から電子サービスを提供しそのサービスをVAT非登録者がタイ国内で利用する場合には適用されない。この場合、当該事業者は仕入VATを控除せずに売上VATを計算することでVATを支払う必要がある。当該事業者は、確定申告書を提出し、第83条に従って納税しなければならない。

第3項

第2項の事業者が、電子プラットフォームを通じてサービスの提供、サービスの対価の受領、サービスの配信、及びその他歳入局長が定める行為からなる連続したプロセスで、電子サービスを提供する場合、当該電子プラットフォーム運営者は、各事業者のサービス提供内容を分類することなく、すべての事業者に代わってVATの支払義務を負う。また、当該電子プラットフォーム運営者は、第2項の事業者と同等の義務及び責任を負うものとする。

 

  • VAT支払い義務を有する主体について

改正により、第83/6条(2)に但書きを加え、(a)(b)同上

 

第83/6条〔改正前〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第83/6条〔改正後〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

  • VAT登録が不要とされる事業者について

改正により、第85/3条(2)に但書きを加え、(a)(b)の条項を加えたことによって、例外的事業者のみが、VAT登録が不要とされた。これにより、例外的事業者でない対象事業者は、VAT登録義務を負うことが確認された。

 

第85/3条〔改正前〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第85/3条〔改正後〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

5.タックスインボイス発行が禁止される事業者について

改正により、対象事業者はタックスインボイスの発行が禁止された。

 

第86/1条(1/1)〔改正前〕

規定なし

第86/1条(1/1)〔改正後〕

(1/1) 海外から電子サービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で非VAT登録者により利用されている場合。

 

6.おわりに

2021年6月10日に発行されたバンコク・ポスト紙の報道によれば、財務省財政事務局(Fiscal Policy Office)のクラヤ・タンティミット局長が、タイの法律では、タイに恒久的施設(PE)を持たない企業(以下、「オンライン企業」という)に法人税を課すことは認められていないため、現在、財政省では、タイでサービスを提供するオンライン企業に法人所得税を課す方法を検討していると発言した。その発言は、G7財務大臣協定における、各国が低税率を維持することによって多国籍企業の誘致競争を止めるべき旨の定めを受けたものである。このことから、今後、海外に拠点を有するオンライン企業に法人税を課すことに関する法改正が成立する可能性があるため、今後の動向を注視していく必要がある。

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2021年08月16日(月)11:27 AM

タイにおける債権回収と倒産の対応の実務(第9回)について報告いたします。

債権回収と倒産対応の実務(第9回)について

 

タイにおける債権回収と倒産対応の実務 第9回

2021年8月16日

One Asia Lawyersタイ事務所

9回 タイの倒産手続  その1

日本では、倒産手続きとして、破産手続、民事再生手続、会社更生手続があるが、タイでは、破産手続と会社更生手続の2種類の手続がある。

今回は破産手続の概要と債権者の対応について説明する。

1 破産手続

 破産手続とは、日本の破産手続と同様、債務超過にある債務者の財産を換価し、これを適正かつ公平に債権者に配当する手続をいう。管財人が選任され、財産を換価し、届出した債権者に配当するという点では共通するが、日本の破産手続との大きな違いは、自己破産が認められていないという点である。以下、タイの破産手続の流れについて説明する。

2 破産手続の流れ

(1) 債権者による裁判所への破産申立

 日本の破産手続と異なり、破産法上、債権者申立てによる破産のみが認められており(破産法第9条)、自己破産は認められていない。法人破産の場合、単独又は複数の申立人による債務額の合計が200万バーツ以上存在することが申立ての要件となっている(破産法第9条)。裁判所は申立てを受理した場合、審理期日を定め、債務者を召喚し、破産申立原因があるかを審理する(破産法第14条)。

(2) 財産保全命令

 裁判所は破産申立原因が認められれば、債務者の財産を保全するために財産保全命令を下す(破産法第14条)。この命令により債務者の財産の管理権は裁判所が選任した管財人に移行し、債務者はその財産の管理処分権を失う。また、債務者の財産に対する差押えにかかる裁判所の命令や強制執行は執行することはできなくなる(破産法第110条)。ただし、財産保全命令がなされても、抵当権などの担保権者はその担保を実行することができる(破産法第95条)。

(3) 債権の届出

 債権者は、財産保全命令の官報公告から2ヵ月以内に管財人に対して、債権を届出なければならない。但し、外国の債権者については、管財人は2ヵ月を超えない範囲で 届出期間を延長することができる(破産法第91条)。

(4) 債権者集会

 管財人は債務者からの和議の申立て、または裁判所への破産宣告の申立て及び以後の債務者の財産の管理方法を協議するために、できるだけ速やかに債権者集会を召集する(破産法第31条)。

(5) 和議

 債務者が破産宣告を避けるためにその債務の一部を支払うことなどを求める和議の申立てについて、債権者集会の特別決議(投票をした債権者の過半数かつ全債権者の債権額の4分の3以上の賛成)で受け容れられ、裁判所がこれを承認したときは、この和議の内容は債権者を拘束する(破産法第56条)。なお、債務者が和議で合意した債務の支払いを怠った等の場合、裁判所は和議を廃止し、債務者に破産宣告を行う。なお、和議の廃止は、和議に基づきなされた債務の支払いの効力に影響しない(破産法第60条)

(6) 破産宣告

債権者集会において、債務者からの和議の申立てについて承認されなかった場合、または、債務者の破産宣告を求める決議をした場合、裁判所は債務者の破産を宣告する。破産宣告がなされた場合、管財人は債権者に配当するために破産者の財産を換価処分する(破産法第61条)。

(7) 財産の配当

管財人は債務者の財産を換価して債権者に配当する。なお、配当は、原則として、破産宣告から6ヵ月以内に実施すると規定されているが、裁判所は相当の理由があれば延期を許可することができる(破産法第124条)。

(8) 破産手続終結(破産法第133条)

管財人が債務者の財産を配当した場合、または債務者が和議における合意に基づく債務を支払った場合、もしくは債務者の配当する財産がなくなった場合、管財人は破産手続における事業報告書及び収支計算書を作成し、裁判所に提出するとともに、裁判所に破産手続の終結命令を出すよう上申する。裁判所は管財人の報告書及び収支計算書、並びに債権者もしくは利害関係者の反対を審理した後、裁判所は破産手続が終結したこと、または終結しないことを命じる。

3 債権者の対応

(1) 財産保全命令前

財産保全命令前は、債務者の財産処分権について制限がなされていないので、債権者は債務者から未払いの売掛金等の債権を回収することができる。したがって、債権者としては、債務者の信用不安情報などに接した場合は、債権の一部でもいいので早急な回収を試みるべきである。

なお、上述のとおり、債務者との裁判で判決を取得したとしても、財産保全命令が下されると債務者の財産に強制執行できなくなるので、判決を取得した場合、任意での支払いがなければ、早急に債務者の財産に強制執行を行うべきである。

(2) 財産保全命令後

財産保全命令後であっても、抵当権などの担保を有する債権者はその担保を実行することができる。

これに対し、担保を有しない債権者については、財産保全命令後は破産手続外で債務者の財産から債権を回収することはできない。したがって、担保を有しない債権者は、破産手続の配当手続か、債権者集会の特別決議で承認され裁判所が承認した和議に基づく債務者からの支払いにより債権を回収することになる。

まず、債権者は、財産保全命令の官報公告から2ヵ月以内に管財人に対して、債権を届出なければならない。但し、外国の債権者については、管財人は2ヵ月を超えない範囲で 届出期間を延長することができ(破産法第91条)、一般的にはこの2ヵ月の延長は認められている。

もっとも、日本の破産手続のように裁判所から債権者に対して個別に破産に関する通知が送付されてこず、官報で公告されるのみであるので、債権者が知らないうちに債権届出期間が経過してしまうことが生じうる。したがって、債権者としては、債務者に対する未払債権があり、債務者に請求しても返事がない、連絡がとれなくなったというような事情が生じれば、官報や関連取引先や同業者に確認するなどして債務者に財産保全命令が下されていないかについての情報を収集すべきである。

また、債権届出にあたっては、債権届出書を提出するだけでなく、この債権を疎明する資料も提出する必要がある。債権届出期間が官報公告から2ヵ月と短く、かつ、このような官報が公告されたことをすぐに知ることができない場合が少なくないため、実際には1ヵ月程度もしくはそれよりも短い期間しか債権届出までに時間がない場合もある。届出する債権が少なく、それを疎明する資料(契約書、受注書、納品書など)が少ない場合はその準備にそれほど時間を要しないのでそれほど問題はない。しかしながら、未払いの債権が多く、それを裏付ける契約書や受注書、納品書などの資料が多い場合は、債権届出までの短い期間で資料を準備する必要がある。さらに、疎明資料はすべてタイ語に翻訳する必要があり、英語で取引をしている場合この翻訳時間も考慮する必要がある。加えて、日本企業などタイ国外企業の場合、その債権届出をタイ国内の法律事務所に代理を依頼することが多いかと思われるが、債権届出の提出にあたり、委任状や会社登記簿などの公証手続きが必要となり、このために要する時間も考慮する必要がある。

なお、疎明資料については、債権届出期間後に追完が認められることが多いが、必ず認められるわけではないのでできるだけ届出期間までに提出する努力をすべきである。仮に、債権届け出期間までに疎明資料の準備が間に合わない場合は、その時点で準備できるものだけでも提出すべきである。

なお、債権届出をしたとしても、管財人や他の債権者から届出をした債権に異議が出される可能性もある。その場合は、届出債権が有効であることを更に疎明する必要がある。また、債権届出をしたとしても、債務者の財産がほとんどない場合は、配当を受けることができないか、僅かながらの配当を受けることができるに過ぎない場合もある。

したがって、債権者は、このような手間とコストと債権回収できる可能性を衡量し、債権届出をするのか、するとしてどこまでの疎明資料を提出するのかを検討し、その対応を決定すべきことになる。

 

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

masaki.fujiwara@oneasia.legal(藤原 正樹)
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)


2021年08月05日(木)10:12 AM

タイ個人情報保護法の概要と企業のとるべき対応について報告いたします。

タイ個人情報保護法の概要について

 

 

 

タイ個人情報保護法の概要と企業のとるべき対応について


                                    2021年8月5日
                              One Asia Lawyersタイ事務所

1.タイ個人情報保護法の概要

(1) 成立の背景
 2019年2月28日、タイ王国初となる個人情報保護の基本法「2019年個人情報保護法」が国会で承認され、成立した。5月24日には国王の承認を受け、27日に官報に掲載、翌28日に施行された。事業者に課される規制の多くは、公布の日から適用開始まで1年間の猶予期間が設けられており、タイ王国にて個人データを取り扱う事業者は、2020年5月27日までに、対応を完了させる必要があった。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行と政府機関及び民間企業に十分な準備期間を与えるため、2020年5月19日において、タイ政府はPDPAの延期に関する勅令を閣議決定し、施行の延長期間は2020年5月27日から2021年5月31日までとされた。本勅令によれば、施行を延期する条文は、個人情報保護に関する第2章、個人情報の使用開示に関する第3章、異議申し立てに関する第5章、民事賠償責任に関する第6章、罰則に関する第7章、法律施行以前に収集した個人情報の取り扱いに関する第95条となっており、重要な条項については大方延長となることとなった。また、本勅令において、PDPAの施行を1年間延長することを明示しており、
そして、さらに、2020年5月5日、タイ政府は同様の理由から、施行を2022年5月31日まで再度一年間延期する勅令を閣議決定した。そのため、実質的なPDPAの施行は2022年5月31日以降となった。

(2) 個人データとは
 規制の対象となる「個人データ」は、「個人に関する情報で、直接または間接を問わず、当該個人を特定することのできる情報をいい、死者の情報は含まない」と定義されている。具体的にどのような情報がこれに該当するかは、現在明確に規定されておらず、解釈によることになるが、タイ個人情報保護法のベースになっていると見られる欧州一般データ保護規則(GDPR)の定め等を考慮すると、以下のようなものが個人データに該当する可能性が高い。
・氏名
・住所
・生年月日
・国民ID番号
・位置データ
・オンライン識別子(Cookieデータ等)
・顔画像
・指紋
したがって、名刺、パスポートのコピー、タイ人のIDカードのコピー、メールのシグニチャー、求職者の履歴書等にも基本的に個人データが含まれ、タイ個人情報保護法の規制対象となる。
また、人種、民族、犯罪履歴、健康、組合加入、遺伝データ、生体データ等の特定の個人データは、いわゆる「センシティヴデータ」として、ほかの個人データに比べてより強い規制が適用される。

(3) 適用対象
同法の適用を受ける者は、個人データの収集、利用、または開示の決定権限を有する「管理者」と、管理者から委託を受けて個人データの収集等を行う「処理者」に分類され、それぞれ異なる規制が課せられるものとされている。
地理的な面では、原則としてタイ国内に所在する「管理者」または「処理者」の個人データの取扱において適用されるものとされているが、①国内に所在する者に対して、商品・役務の提供(有償または無償を問わず)を行う場合や、②タイ国内に所在する者の行動を監視する場合には、タイ国外に所在する事業者に対しても同法が域外適用されるものとされているので、タイ国内に関連会社や拠点を有さない場合でも、注意が必要である。

(4) 管理者の義務
個人データの管理者に該当する者には、個人データ取得の際の情報提供義務および同意の取得、その他適法性確保義務、取得した個人データの安全管理、記録保持義務、データ漏えい等発生時の当局への通知義務、個人データの国外移転に関する規制等多岐にわたる規制が適用される。
また、タイ国外に所在する管理者がタイ国内居住者の個人データを取り扱う場合、原則として、タイ国内に拠点を有する代理人を選任する義務を負う。
さらに、一定規模以上の個人データを取り扱うこと等の特定の条件をみたす管理者は、当局との連携や社内管理体制の監督の責任を負う、データ保護責任者(Data Protection Officer、DPO)を選任する義務を負う。

(5) 国外移転規制
同法においては、個人データをタイ国内から国外に移転することを原則として禁止する「国外移転規制」が定められている。したがって、タイ子会社が取得した個人データを日本本社のデータベースにて管理する場合等は、データ主体から同意を取得する等、法律に規定された一定の条件をみたす必要がある。

(6) 漏えい時対応
管理者が管理する個人データが漏えいする等の事故が発生した場合、当該管理者は、個人情報保護委員会事務局に対し、遅滞なく通知しなければならない。この通知は、可能であれば事故を認識してから72時間以内に行うべきものとされ、非常に厳しい時間制限が設けられている。そのため、対象事業者は、事前に十分な準備をしておき、事故発生時に迅速な対応を取ることができる体制を構築しておく必要がある。

(7) 罰則
同法に違反した事業者には、最大で500万タイバーツ以下の課徴金が課せられる。
さらに、刑事罰として、最大で1年以下の禁固もしくは100万タイバーツ以下の罰金またはその両方が科せられるものとされている。企業の違反の場合は、責任を負う取締役も処罰の対象となるため、注意が必要である。
その他、同法違反によって第三者に損害が生じた場合は、民事損害賠償の対象となるが、現実に発生した損害に加え、損害額の2倍以内の範囲で懲罰的賠償が課される可能性がある。

2. 企業のとるべき対応

(1) 要対応事項概要
同法の適用を受ける企業は、個人データの取扱にあたり、上述のような規制にしたがう必要があるが、そのために必要な対応は画一的なものではなく、事業者ごとに、事業内容、取り扱うデータの種類やリスクの大小、センシティヴデータの取扱の有無、データを取り扱う立場(管理者 or 処理者)、個人データ収集時の情報提供・同意取得状況、収集したデータの社内管理の状況、社内規程等の体制整備の状況、システムセキュリティ水準、個人データの国外移転の有無、委託先等の第三者に対する提供の有無等、諸般の事情によって異なる。
企業において同法遵守のための対応を進めるにあたっては、上述の各事情について、現在自社がどのような状況にあるのかを正確に把握した上で、必要な対応事項を洗い出し、リスクアセスメントの結果および法施行のタイムラインを考慮して優先順位をつけ、確実にタスクを完了させていくことが求められる。
これまで個人データ保護規制が存在しなかったタイにおいては、ほとんどの企業が膨大な項目の対応を求められることとなり、相当程度の時間、コストおよび人的リソースをかけて段階的に対応していく必要がある。また、法規制への対応といえば、通常総務・法務部門の管掌業務とされるが、同法対応においては、情報管理に関するシステム対応のために情報システム部門が関与したり、従業員の個人データの取扱に関して人事部門が関与したりする等、部門横断的な協力体制が求められる。したがって、一部門にとどまらず、全社的な対応プロジェクトを組成し、執行役員以上のレベルの責任者のトップダウンにより、漏れなく着実に対応を進めていくことが望ましいといえる。

(2) データマッピング
すべての対応の出発点として、現在自社において、いかなる個人データが収集され、どのように取り扱われているのか、現状を把握し、法令上要求されている事項とのギャップを確認して必要な対応項目を洗い出す(タスク化する)作業が必要になる。このような作業は一般に「データマッピング」と呼ばれている。
具体的な作業としては、社内各部署に対し、個人データの収集・管理の状況等に関する質問事項を記載したヒアリングシートを送付して回答を求め、収集したデータに基づいて法規制とのギャップ分析およびリスクアセスメントを実施する。この際注意すべき点として、各部門の従業員は必ずしも法規制の内容を把握しておらず、回答のための適切な判断を行えない場合がある。そもそも同法においては、あるデータが「個人データ」に該当するかどうかという根本的な点においても法的判断が必要になる場合があり、ヒアリングシートのやり取りにとどまらず、必要に応じて法務部員または弁護士等の外部専門家の関与の下、各部門に対して法令に関する情報提供や対面での聞き取り調査を実施する等、必要な情報を漏れなく収集できるようにすることが重要となる。

(3) タイ国内代理人・DPOの選任
上述の通り、特定の条件をみたす場合、企業においてタイ国内代理人・DPOの選任が必要になる場合がある。データマッピングの結果、これらのポジションの選任が必要と判断した場合、法の定めにしたがい、速やかに選任手続を行う必要がある。

(4) 情報提供・同意取得対応
個人データの収集に際し、管理者は、個人データの取扱に関する特定の情報をデータ主体に提供しなければならず、法の定める例外事由に該当しない限り、同意を得る必要がある。
収集に先立ちデータ主体に提供すべきとされる情報は、以下の通りである。
· 収集目的
· 法的義務の遵守のため、または契約の締結・履行のために収集提供が必要な場合、その事実
· 収集対象データ・保有期間
· 第三者開示を行う場合、開示先の第三者のカテゴリー
· 管理者に関する情報、住所、連絡先等の詳細(タイ国内代理人・DPOを選任している場合はその情報)
· データ主体の権利
法規制適用開始前段階での対応としては、データマッピングによって収集する個人データを特定の上、上述の事項を含むプライバシー通知(プライバシー・ノーティス)を作成し、通知の方法を検討・決定しておく必要がある。
また、同意の取得については、管理者からデータ主体に対する同意のリクエスト方法について、以下のような要件が定められている。
· 明瞭に範囲を認識できること
· 容易にアクセスでき、わかりやすい同意フォームを用いること
· 明快で平易な言語を用いること
· データ主体を騙したり誤解を生じさせないこと
企業は、収集するデータについて、同意取得の要否を検討の上、必要な場面で行うリクエストの内容および同意フォームを、法令にしたがって策定する必要がある。なお、同意は強制されず自由になされたものでなくてはならず、いつでも撤回可能でなければならないとされているので、注意が必要である。

(5) 処理記録体制整備
管理者は、取り扱う個人データの処理を記録しなければならない。したがって、記録のフォーマットを事前に定めておくとともに、収集・利用・開示等すべての処理が適切に記録され、かつ、当該記録が適切に保存されるよう、社内管理体制を整備しておく必要がある。

(6) 社内規程の整備
管理者が法令上の義務を十全に遵守するためには、個人データの取扱に関与するすべての役職員が法令上の義務を理解し、遵守しなければならない。このため、管理者においては、「個人データ取扱規程」等の名称で、社内における個人データの管理に関する社内規程を策定し、各部門または担当役職員の義務および責任を明確にする必要がある。また、規程を策定するのみでなく、その内容を役職員に理解、遵守させるため、社内セミナー等による周知やトレーニングについても計画的に実施すべきである。

(7) セキュリティ水準の確認・整備
管理者は、個人データを保護するための適切なセキュリティ対策を講じなければならないものとされている。したがって、場合によってはITシステムの開発・改修等の作業を含め、法令の定める水準をみたすようなセキュリティ体制を構築・整備する必要がある。なお、同法においては、「適切なセキュリティ対策」の内容は具体的に明示されておらず、詳細は今後の細則、ガイドライン等によって定められることが予定されている。

(8) 契約の見直し
個人データの処理を第三者に委託している場合、当該委託に関する契約において、個人データが適切に取り扱われるよう十分な条件が規定されているかを確認する必要がある。すでに締結された契約の条件が不十分であれば、必要に応じて条件の修正や追加を行う等の対応が求められる。

(9) 国外移転対応
個人データのタイ国外への移転は、法の定める例外事由に該当する場合を除き、原則として禁止される。例外事由は、以下の通りである。
· 移転先国が適切なデータ保護基準を有し、個人情報保護委員会が定める規則にしたがって移転する場合
· 法令遵守のため
· データ主体の同意がある場合
· データ主体が締結した契約の履行のため
· データ主体の利益のために管理者が締結した契約にしたがうため
· データ主体の生命、身体または健康への危険を防ぐため
· 公共の重大な利益のため
· 企業・事業グループ内で国外移転についての個人情報保護委員会による審査及び認証を受けた個人データ保護方針に基づき移転する場合
· 個人情報保護委員会が定めたルールおよび方法に従いデータ主体の権利行使を可能とする適切な保護措置を提供する場合
事前の対応としては、タイ国内で収集するデータを国外に移転する場合をデータマッピングで洗い出しておき、ケースごとにいずれの例外事由に該当し得るかを検討することになる。一般的にはデータ主体から同意を取得する方法を選択することが多いと思われるので、この場合、同意取得の方法を検討し、同意フォームを事前に定めておく必要がある。
なお、国外移転については、電子メールにファイルを添付して国外のサーバに直接送付するようなケースのみでなく、タイ国内のサーバに国外からアクセスできる状態に置いたことをもって国外移転と判断されるおそれがあると考えられるので、注意が必要である。

10) 開示・消去の対応体制整備
データ主体は管理者に自己に関する個人データの開示およびコピーの提供を求めることができ、管理者は、法定の拒否事由に該当しない限り、原則として30日以内にこれに対応する義務を負う。また、特定の場合、消去や別の事業者への移転を求めることができる。これらのデータ主体からの要求に対応するため、対応フローをあらかじめ整備しておく必要がある。

11) 漏洩時対応整備
個人データの漏洩があった場合、管理者は、個人データ保護委員会事務局に対し、可能であれば認識してから72時間以内に通知しなければならない。また、データ主体の権利に対する影響が大きい場合、データ主体に対し、侵害を通知しなければならない。当局への通知に関する法定の通知期限は72時間以内という非常にタイトなものであるので、漏洩が発覚してから対応方法を検討していてはとても間に合わない。事前に漏洩時の対応フローおよびチーム体制を明確に定めておき、問題発生時には速やかに必要な事実を確認して通知を行うことができるように備えて置く必要がある。

3. まとめ
同法は未だ細則等の制定がなされておらず、本稿を執筆している2021年7月時点では具体的な内容については不明確なところも多いが、規制を受ける事業者としては、期限までに必要な対応を完了させる必要がある。必要な時間は組織の規模等によっても異なるが、すべての対応を完了させるまでには、半年から1年程度の時間を要することも見込まれる。常に細則等の制定状況には目を配りつつ、データマッピング等、長期の対応時間を要するタスクのうち現時点で実施できるものについて、早期に着手し、計画的に対応を進めることが重要である。

 

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2021年06月15日(火)12:10 PM

タイにおける暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容について報告いたします。

暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容について

 

 

タイにおける暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容

2021年6月15日

One Asia Lawyers

 暗号通貨・STOプラクティスチーム/タイ事務所

2021年6月9日、タイ証券取引委員会(SEC)は、既存の「Re: 暗号資産事業を行うための規則、条件、手続き」通達を改正する新たな通達SEC No.Kor Thor.18/2564(以下「第11号通達」)を承認し、同通達は同月11日に施行されています。なお、この通達は施行日以前には遡って適用されません。

今回の改正の主な内容は、同通達で追加された第39/1条(以下「通達1項」)および第39/2条(以下「通達第2項」)です。以下、その内容を解説します。

まず、通達第1項では、以下の性質を持つユーティリティトークン(証券性を有さない暗号資産のうち暗号通貨以外の暗号資産)または暗号通貨(支払手段性を有する暗号資産)の取引については、暗号資産交換事業者はそのサービス提供が禁止されます。

(1) ミームトークン:

一定の目的や実体、裏付けを持たず、ソーシャルメディアの動向によって価格が変動する暗号資産

(2) ファントークン:

インフルエンサーやスポーツチームなどのファン向けに発行される暗号資産

(3) ノンファンジブル・トークン(NFT):

対象物または特定の権利の所有権または権利の付与を宣言するためのデジタルクリエイションとして発行されるトークンで、唯一無二なものであり、同一カテゴリー、同一タイプの暗号資産と同額で交換できないもの

(4) ブロックチェーン取引に利用される暗号資産で、暗号資産交換事業者またはその以下の関係者が発行するもの 

  1. 取締役、執行役員および支配人
  2. aの配偶者または同居人
  3. aにより支配されている法人
  4. SECの通達「グループビジネスの特性の規定」に基づく親会社、子会社、関連会社

次に、通達第2項は、暗号資産交換事業者に対して、暗号資産の発行体がホワイトペーパー等に従わない場合には、当該暗号資産交換事業者は当該暗号資産を暗号資産取引所から上場廃止にすることを規定する上場規則を定めることを要求しています。

また、暗号資産交換事業者は、第11号通達の施行日、つまり6月11日から30日以内に、通達第1項および通達第2項に対応する必要があります。

今回の改正で重要な点は、規制対象はあくまでタイ国内でライセンスを受けている暗号資産交換業者のみが規制対象ということであり、例えば、海外エンティティによるNFTプラットフォーム等は今回の規制では対象に含まれていませんし、個人間のNFT取引も規制されていません。

今回の改正の趣旨は、価格変動が大きく相対的にハイリスクとされるものや、インサイダーのリスクが相対的に高い類型の暗号資産等をタイ国内の暗号資産取引所に上場させないことによって投資家保護を図る点にあると思われますが、価値の源泉の観点から相対的に安全視されているNFTを規制対象にする点は、世界でも稀な例であり、今後の運用に注目が集まっています。

参考:

Notification of SEC No. KorThor. 18/2564 Re: Rules, Conditions and Procedures for Undertaking Digital Asset Businesses (No. 11)

http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2564/E/126/T_0009.PDF

SEC News : https://www.sec.or.th/EN/Pages/News_Detail.aspx?SECID=8994

 

 

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
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2021年05月30日(日)9:26 PM

タイにおける電子署名について報告いたします。

電子署名について

 

タイにおける電子署名について

2021年5月28日

One Asia Lawyersタイ事務所

  • 1.はじめに
  • 新型コロナウイルスの流行に伴い電子取引が進む中で、電子署名についてのお問合せを非常に多く受けています。タイにおける電子署名の要件及び留意点を以下の通り解説致します。
  • 2.タイ法上求められる要件
  • タイでは、2001年電子取引法[1]第26条1項で定める「信頼できる電子署名」の要件を満たした電子署名であれば、タイ法上有効であると解されています。
  • 同法第26条1項
  • (1) 作成された署名データが、使用される文脈の中で、署名者と紐づけられていること。

(2) 作成された署名データが、電子署名の作成時に、署名者の管理下にあったこと。

(3) 電子署名の作成後に行われた変更が検出可能であること。

(4) 情報の完全性を保証することが電子署名に求められる法的要件である場合、署名時以降にその情報に加えられた変更が検出可能であること。

上記の要件をどのように充足すれば良いのかは同法上、明文化されていませんが、電子取引開発機構(Electronic Transactions Development Agency, 以下「ETDA」)は別途ガイドライン23-2563号4.2.1条[2]において、電子署名を利用する場合の本人確認には、AAL2レベルを要するとされ、AAL2レベルについては、ガイドライン20-2561号2.2条[3]で以下の通り規定されています。

(1)Multi-factor authenticatorを利用する方法

例:銀行から配布されるOTP (ワンタイムパスワード) デバイスのようなものを利用し、適宜認証コードをデバイスから取得し、それをシステム内に入力する方法

(2)Single-factor authenticatorを利用する方法(2段階認証を要する)

例:ログイン画面でパスワードを入力し、さらに携帯電話に送信されたOTPを入力する方法

また、電子取引法では明文化されていませんが、ガイドライン23-2563号4.2.2条では「署名者が自身の署名行為について明確に意思を表示していることを認めるプロセスまたはその証拠を有していること」または「署名者自身が意思を表明した内容に対して電子署名を付すこと」と記されており、利用する電子署名がこれを満たす機能を有しているかについてご確認頂く必要があると考えます。

3.利用上の留意点

 電子署名を用いた電子契約を利用するにあたっては、以下について留意頂く必要があります。

(1)共同署名の可否

タイの会社の場合、複数の署名権限取締役の共同署名が必要であると登記されている場合には、複数の署名権限取締役による電子署名が必要となります。利用する電子署名サービスがこのような場合に対応できるかを確認頂く必要があります。

(2)会社印(カンパニーシール)の押印

タイでは、会社登記上、署名権限を有する取締役の署名だけでなく会社印も必要であると定められているケースが多く、その場合には、電子署名に加え会社印の押印も必要となります。

電子取引法上、会社印にも9条1項の規定が準用されるとの規定(9条3項)が存在するため、電子的な会社印の押印も有効となり得ると考えます。具体的には、会社印の印影データを電子文書に貼り付けることといった方法が考えられますが、利用する電子契約サービスがこのような場合に対応できるかを確認頂く必要があります。

(3)電子署名の信頼性と契約書の真正性

万が一電子契約の真正が争われた場合(例えば、売買契約の相手方企業がそのような契約をしてないと争ってきた場合)、契約が有効であると主張する者(つまり、御社)が、その契約書に付された双方当事者の電子署名が電子取引法26条に基づく「信頼できる電子署名」であることを立証できれば、 契約書に付された双方当事者の電子署名が有効であるものと推認され、その契約書が真正なものであることを強く裏付けることができます。 この場合、電子署名の真正についての立証責任が転換され、電子署名が無効であることを主張する相手方企業がその立証をすることとなります。

タイの裁判所で電子契約書の署名の真正について争いになった場合、裁判所に対し、利用した電子署名について技術的に説明を行う必要がありますが、電子署名の利用が進んでいないタイの現状に於いて、裁判所にその説明を行うことは骨が折れる作業になることが想定されます。

  • 4.電子署名を利用できないケース
  • 以下のケースにおいては、書面上に手書きの署名が求められており、電子署名の利用は認められていませんのでご留意下さい。
  • 不動産売買契約(民商法第456条)
  • 3年を超える不動産の賃貸借契約(民商法第538条)
  • 抵当権設定契約(民商法第714条)
  • 家族及び相続に関する取引(2006年電子取引法が適用されない民事および商取引の種類を定めた勅令)
  • 5.さいごに
  • 結論として、電子取引法第26条1項で定める要件を全て満たした電子署名はタイ法上真正なものと推認されますが、これらの要件のいずれかを満たせない場合でも、直ちに署名が無効と判断されるわけではありません。
  • しかしながら、タイ企業と電子署名サービスを利用して電子署名を用いた電子契約を利用するにあたっては日本国内で日本企業同士で行う場合よりもハードルが高いため、非常に重要な契約であり無効となるリスクも負いたくないと考える場合は、これまでどおり通常の書面での契約の締結を推奨致します。

[1] http://web.krisdika.go.th/data/outsitedata/outsite21/file/ELECTRONIC_TRANSACTIONS_ACT,B.E._2544.pdf

[2] ETDA Recommendation on ICT standard for Electronic Transactions:https://standard.etda.or.th/wp-content/uploads/2020/06/20200529-ER-E-Signature-Guideline-V08-36F.pdf

[3] https://standard.etda.or.th/wp-content/uploads/2019/02/20171204-ER-DigitalID-Authentication-V08-21F.pdf

 

以上 

〈注記〉
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miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

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