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2023年10月13日(金)5:00 PM

フィリピンDepartment of Trade and Industry(DTI、通商産業省)が発表した「5つの消費者責任」に関するニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

フィリピンDepartment of Trade and Industry(DTI、通商産業省)「5つの消費者責任」を発表

フィリピンDepartment of Trade and IndustryDTI、通商産業省)
5つの消費者責任」を発表

2023年10月
日本法弁護士  難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

第1.はじめに

消費者からのレビューやフィードバックは、市場における商品やサービスの質を向上させる上で不可欠です。DTIは、消費者の権利から生じる義務について、完全かつ正確なガイダンスを消費者に提供することが重要であることに鑑み、2023年7月13日にDTI Policy Advisory 23-01, s. 2023-「Re: Five (5) Consumer Responsibilities (消費者の5つの責務)」を発表しました。

以下、サプライヤー事業者側の義務に関連する法律をご紹介します。

第2.DTI Policy AdvisoryNo.23-01, Series2023 消費者の5つの責任

1.クリティカル・アウェアネス(批判的認識) – 使用する商品やサービスの使用、価格、品質について、より注意深く、疑問を持つ責任

a. RA第7394号、Consumer Act of the Philippines(フィリピン消費者法)
第3編 – 欺瞞的、不公正、非良心的販売からの保護
第4章 ラベリングと公正な包装
第74条 政策の宣言 – 国は、消費者が消費者製品の内容物の性質、質および量に関する正確な情報を得ることができるようにし、かつ、そのような製品の価値の比較を容易にするために、強制表示および公正な包装を実施する。
第81条 値札の要件 – 各商品の価格を示す適切な値札、ラベル、または表示を公然と掲示せずに消費者向け製品を小売販売に供することは違法であり、購入者を差別して、記載された価格よりも高い価格で販売してはならない。

b. RA第7581号、改正価格法
第5条 価格操作の違法行為 – この法律が適用されない商品に関する現行法の規定を妨げることなく、商品の生産、製造、輸入、保管、輸送、流通、販売またはその他の処分方法に常習的に従事する者が、基本的必需品または主要商品の価格を操作する以下の行為を行うことは違法とする。

1) Hoarding(買い占め)とは、個人または共同した個人が、生活必需品を、通常の在庫レベルを超えて不当に蓄積すること、またはこれらの品物の在庫を処分、販売、分配することを不当に制限または拒否すること、及び再生産、取引、商業、産業の経路から不当に持ち出すことをいう。ある者が、その生活必需品の在庫を、その者の通常の在庫の50%増しとし、一般大衆に販売することを不当に制限、拒否、または怠った場合、その過剰を発見した時点で買い占めの証拠となる。通常在庫の判断は、その者が少なくとも3ヶ月間事業に従事していた場合は、在庫発覚の直前3ヶ月目から、そうでない場合は、事業を開始した時点から起算する。

2) Profiteering(利益供与)とは、生活必需品を、その真価を著しく上回る価格で販売すること、または販売のために提供することをいう。生活必需品が次の態様で販売される場合、利益供与が推定される。(a)値札がない場合、(b)重量または寸法が不当に表示されている場合、(c)不純物が混入または希釈されている場合、(d)一般大衆に販売または販売のために提供する生活必需品の価格を、直前1カ月にその価格の10%を超えてつり上げた場合。

3) Cartel(カルテル)とは、生活必需品の生産、製造、加工、保管、供給、流通、販売、または処分に従事する2人以上の者が、その価格を人為的かつ不合理につり上げ、または操作することを目的とした合意またはその組み合わせをいう。同一の市場において競争し、同一の生活必需品を取り扱う2人以上の個人または事業者が、生活必需品の価格を人為的かつ不合理に上昇させる傾向のある非形式的または相補的な行為を相互に行う場合、または競合する製品の価格を同時に不合理に上昇させ、それによって相互の競争を減退させる場合、カルテルに関与していることが推定される。

c. RA第9711号、Food and Drug Administration Act(FDA、食品医薬品局法)

d. RA第10642号、Philippine Lemon Law(フィリピン・レモン法)

e. RA第10909号、2016年のNo Shortchanging Act of 2016(2016年短絡禁止法)施行規則
第4章第2.1条 消費者は、すべての取引後、直ちに正確な金額の釣銭を受け取る義務を負う。

2.行動 – 消費者が公正な取引を得られるように主張し、行動する責任。

a. 1987 Philippine Constitution (1987年フィリピン憲法)
第12条第19項 国は、公共の利益のために必要な場合には、独占を規制し、または禁止します。いかなる取引制限または不正競争の結合も許されない。

b. RA第7394号、Consumer Act of the Philippines(フィリピン消費者法)

c. RA第7581号、Price Act(改正価格法)
第5条 価格操作の違法行為

d. RA第7925号、Public Telecommunications Policy Act of the Philippines(フィリピン公共電気通信政策法)
第20条 エンドユーザーの権利 – 電気通信サービスの利用者は、以下の基本的権利を有する。苦情の徹底的かつ迅速な調査および対応。電気通信事業者は、苦情が電話で受理されるように努め、すべての書面または電話による苦情の記録を保管するものとする。

e. RA第8293号、The Intellectual Property Code(改正知的財産法)

f. DTI Administrative Order No.08、Series 2002、消費者製品販売における連鎖販売取引またはねずみ講の禁止

g. RA第10642号、Philippine Lemon Law(フィリピン・レモン法)

h. RA第10667号、Philippine Competition Act(フィリピン競争法)

i. RA第10909号、2016年のNo Shortchanging Act of 2016(2016年短絡禁止法)施行規則
規則IV 2.2項 消費者は、事業所の消費者福祉担当窓口にすべての不当表示の事例を報告し、即時の措置/救済を求めるか、または違反が行われてから10営業日以内にDTIに苦情の手紙を書き、提出することができる。

j. RA第8749号、Philippine Clean Air Act of 1999(1999年フィリピン大気浄化法)
第41条 市民訴訟 – 本法またはその施行規則の規定を施行する目的で、市民は誰でも、適切な裁判所に対し、適切な民事訴訟、刑事訴訟、または行政訴訟を提起することができる。

a) 本法またはその施行規則の規定に違反する者、またはこれを遵守しない者。

b) 本法と矛盾して発令された命令、規則、規制に関する省庁またはその他の実施機関。

c) 本法またはその施行規則により義務として特に禁止された行為の遂行を故意にまたは著しく怠り、または職務の遂行においてその権限を濫用し、またはいかなる方法においても本法またはその施行規則に基づく職務を不適切に遂行する公務員。

3.社会的関心 – 地域社会、国家社会、国際社会のいずれにおいても、消費が他の市民、特に貧しい人々、搾取されている人々、恵まれない人々、力のない人々に与える影響を自覚する責任。

a. RA第7394号、Consumer Act of the Philippines(フィリピン消費者法)

b. RA第7581号、Price Act(改正価格法)

c. RA第10642号、Philippine Lemon Law(フィリピン・レモン法)

d. RA11900号Vaporized Nicotine and Non-Nicotine Products Regulation Act Implementing Rules and Regulations(気化ニコチンおよび非ニコチン製品規制法施行規則)
規則XV 消費者の役割と責任
第2条 消費者

a) 消費者の権利を行使し、消費者の責任を果たすこと。気化ニコチン・非ニコチン製品および新型タバコ製品は、正規に登録された製品を販売する信頼できる合法的な販売業者からのみ購入すること。

b) 気化ニコチン製品および非ニコチン製品、それらの機器、または新型タバコ製品の購入時に、適切な年齢確認のため、消費者の写真と年齢または生年月日が記載された政府発行の有効な身分証明書を常に提示すること。

c) 気化ニコチンおよび非ニコチン製品のみを製造元の指示に従って使用し、該当する場合は、指定されたベイプエリア(DVAs)のみで使用すること。

d) 気化ニコチンおよび非ニコチン製品を未成年者から離して適切に保管すること

e) RA 第11900号またはその施行規則の規定に違反する売主を報告すること。

4.環境認識 – 消費が環境に及ぼす影響を理解する責任。天然資源を保護し、将来の世代のために地球を守る個人的・社会的責任を認識する。

a. 1987 Philippine Constitution (1987年フィリピン憲法)

b. RA第7394号Consumer Act of the Philippines(フィリピン消費者法)

c. RA第8749号Philippine Clean Air Act of 1999(1999年フィリピン大気浄化法)

d. RA第9211号Tobacco Regulation Act of 2003(2003年タバコ規制法)および同施行規則

e. RA第9003号Ecological Solid Waste Management Act of 2000(2000年生態学的固体廃棄物管理法)

5.連帯 – 消費者の利益を促進し、保護するための力と影響力を発展させるために、消費者として一緒に組織する責任。

a. 1987 Philippine Constitution (1987年フィリピン憲法)

b. RA第6938号Cooperative Code of 1990(1990 年協同組合規約)

c. RA第7394号Consumer Act of the Philippines(フィリピン消費者法)

第3.企業がとるべき対策

 本ポリシーアドバイザリーは、消費者が既存の法令に照らして自らの責任について十分な情報を得ることを目的とするものです。本アドバイザリーは、消費者が積極的に救済を求め、紛争解決に参加し、商品やサービスの質を向上させるためにフィードバックを提供することを奨励しています。そのため、フィリピンで活動する企業や団体は、罰則や訴追を避けるため、本ポリシーアドバイザリーなどに列挙されている現行法の下、上記消費者の責任に留意しながら、これに対応していく必要があります。詳細については、下記までお問い合わせください。

 引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

2023年04月14日(金)8:54 AM

フィリピンにおける投資促進に向けた戦略的投資のためのグリーンレーンの設置についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

投資促進に向けた戦略的投資のためのグリーンレーンの設置

 

投資促進に向けた戦略的投資のためのグリーンレーンの設置

2023年4月
弁護士 難波 泰明
フィリピン法弁護士 大場 正巳
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae

1.本大統領令の概要

 2023年2月23日、マルコス大統領は、より多くの外国投資を誘致するため、行政府に戦略的投資のための「グリーンレーン」を設置するExecutive Order No. 18, s. 2023 (大統領令第2023-18号、以下「本大統領令」)を発令しました。

 これにより、戦略的投資に該当する投資については、関連する行政からの許認可の取得が容易に行うことができ、スケジュールの見通しが立てやすくなることから、外国からの投資が加速するものとみられます。

 本大統領令の概要は以下のとおりです。

2.窓口の一本化

 Department of Trade and Industry-Board of Investments(DTI-BOI、貿易産業省投資委員会)は、本大統領令の発行から6ヶ月以内に、戦略的投資と認定されたすべてのプロジェクトのための統一的窓口として機能する「One-Stop-Action-Center for Strategic Investments」(OSAC-SI、戦略的投資ワンストップアクションセンター)を設置することが義務付けられています。

 OSAC-SI は、投資家の懸念に対処するため、まず、本令に基づく「Strategic Investments」(戦略的投資)に該当する投資案件を特定・指定し、関連するNational Government Agencies(NGA、国家行政機関)、Local Government Units(LGU、地方自治体)、準司法機関[1] に対し、許認可・ライセンスの処理、それに関する行動の監視・報告を行う権限を付与します。OSAC-SI は、そのサービスの一貫として、アフターケアまたは投資後の支援を行います。

3.戦略的投資のためのグリーンレーン

 国家行政機関、地方自治体、準司法機関は、OSAC-SIによって承認された戦略的投資に対する許認可の発行のためのプロセスと要件を迅速化し合理化するために、事務所内にグリーンレーンを設置または指定することが義務付けられています。

 許認可またはライセンスの発行のための標準的処理期間は、完全な申請書の受付から起算して以下のとおりとなっています:

 (1) 単純な取引の場合、3営業日以内
 (2) 複雑な取引の場合、7営業日以内
 (3) 高度な技術を要する取引の場合、20営業日以内

 各機関が上記の期間を遵守しなかった場合、DTI-BOIは、Anti-Red Tape Authority(ARTA、反レッドテープ機関)に対し、当該申請の確認と、「Declaration of Completeness」(完了決定)の発行を要請し、関係官庁または機関にライセンス、許認可、認証または認可の承認、延長または更新を命じなければなりません。

4.電子申請

 本大統領令によると、国家行政機関または地方自治体は、ライセンス、クリアランス、許認可、認証、または認可の申請および発行(支払い、領収書の発行を含む)を電子的に行えるようにすることとされています。

5.「戦略的投資」とは?

 本大統領令 では、このグリーンレーンを利用することができる「戦略的投資」の例として以下のものを挙げています。

 (1) 高度に望ましいプロジェクト
 (2) Foreign Direct Investments(FDI、外国直接投資)
 (3) Strategic Investment Priority Plan(SIPP、戦略的投資優先計画)に基づくプロジェクトまたは活動。

 (1) 高度に望ましいプロジェクト

 Fiscal Incentives Review Board (財政インセンティブ審査委員会) が、インセンティブを変更したり、適切な財政支援施策を作成したりするために大統領に推薦する投資計画をいいます。これに該当する要素としては、高額雇用の創出、経済活動の多様化のための新産業の構築、外国および国内の大規模な資本または投資の誘致などが基準としてあげられます。

 (2) 外国直接投資(FDI)

 外国直接投資(FDI)とは、Inter-Agency Investment Promotion Coordination Committee (IIPCC、省庁間投資促進調整委員会)により承認された Foreign Investment Promotion and Marketing Plan (FIPMP、外国投資促進マーケティング計画)の実施により生じる投資をいいます。

 IIPCCは、2022年改正外国投資法により創設されました。IIPCCは、中期5年計画および長期10年計画に向けて、FIPMPを促進することを任務としています。

 (3) 戦略的投資優先計画(SIPP)

 戦略的投資優先計画(SIPP)は、DTI-BOIが策定し、大統領の承認を得たもので、国家的に重要なプロジェクトや非常に望ましいプロジェクトであって、優先部門や産業に該当するものへの投資が該当します。

 2022年戦略的投資優先計画(SIPP)は、Memorandum Circular No.61に基づいて大統領により承認され、2022年6月11日に発効しました。3年ごとに見直しと改正が行われることとされています。2022 SIPPのうち、注目すべき産業は以下のとおりです。

Tier 1

 

A.             優先的事業

1. COVID-19対応に関連するすべての適格な活動
2. 混雑した都市部以外での雇用を創出するプログラムを支援する投資
3. 農産加工を含むすべての適格な製造活動
4. 農業、漁業、林業
5. 戦略的サービス(例:ICデザイン、クリエイティブ産業/知識ベースサービス、航空機のメンテナンス、修理、オーバーホールなど)。
6. ヘルスケア、減災マネジメントサービス
7. 大規模住宅
8. 地方自治体PPPを含むインフラと物流
9. 革新技術開発(例:研究開発活動、臨床試験など)
10. インクルーシブ・ビジネスモデル
11. 環境または気候変動に関連するプロジェクト
12. エネルギー産業

 

B.             輸出事業

1. 輸出製品の生産・製造
2. サービス輸出(マニラ首都圏に所在するコンタクトセンターおよび非音声業務処理活動を除く)
3. 輸出企業を支援する活動

 

C.             特別法に基づく事業

1. 産業用樹木の植林
2. 鉱業(資本設備奨励金に限る)
3. 書籍・教科書の出版または印刷
4. 石油製品の精製、貯蔵、販売および流通
5. 障害者のリハビリテーション、自己開発および自立支援
6. 再生可能エネルギー
7. 観光事業
8. エネルギー効率と保全

 

D.             バンサモロ自治地域

1. 輸出活動
2. 農業、アグリビジネス、養殖業、漁業
3. 基礎産業(例:医薬品、繊維衣料品など)
4. インフラとサービス
5. 産業施設
6. エンジニアリング産業
7. 物流
8. BIMP-EAGA 関連投資企業
9. 観光業
10. 保健・教育
11. ハラル産業
12. イスラム銀行の投資業務
13. エネルギー産業

Tier 2

1. グリーンエコシステム(電気自動車(EV)組立、EV部品製造など)
2. 健康関連事業(例:ワクチン自立支援計画における製造など)
3. 防衛関連事業
4. 産業バリューチェーンのギャップ
5. 食料安全保障関連事業

Tier 3

1. 第4次産業革命の先進的なデジタル生産技術を取り入れた研究開発事業(ロボット、AI、積層造形、データ解析など)
2. 高度な技術を要する製造、革新的な製品やサービスの創出
3. イノベーション支援施設の設立

6.今後の見通し

 フィリピン政府は、最近の外国投資の促進に向けた他の改革とあわせて、より多くの外国投資を国内に誘致するための取組みを続けており、今回は、特定の投資についてフィリピンでのビジネス手続きをさらに合理化・迅速化することを試みています。今回発行された本大統領令を鑑みると、政府機関がその指令を準備し遵守し、投資家がその恩恵を享受するには、しばらくの時間がかかるものと思われます。政府機関がこの改正を実施するための取組みを進めることにより、今後数ヶ月の間にさらなる進展がされることが予想されます。

 

[1] 準司法機関・団体とは、裁判所以外、立法府以外の政府機関であり、裁決または規則制定を通じて私人の権利に影響を与えるものです(Monetary Board v. Philippine Veterans Bank, G.R. No. 189571, dated January 21, 2015)。準司法機関の例としては、保健省、Bangko Sentral ng Pilipinas Monetary Board(フィリピン中央銀行財務委員会)等があります。

2023年03月13日(月)8:45 AM

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制について

 

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制について

2023年3月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

第1 はじめに

 2017年、Intellectual Property Office of the Philippines (IPOPHL、フィリピン知的財産庁)は、商標登録における行政手続きの合理化とフィリピンにおける知的財産権の強化のため、「The Revised Trademark  Regulations of 2017」(2017年改訂版商標規則)を発行しました。しかし、当該ガイドラインは、Republic Act No. 8293(IP Code、知的財産権法)に基づき規定された非伝統的な視覚商標を含むものではありませんでした。非伝統的な視覚商標を含めるため、また商標権に関する方針と実務の進展を踏まえ、IPOPHL Memorandum Circular No. 2023-001、「Rules and Regulations on Trademarks, Service Marks, Trade Names and Marked or Stamped Containers of 2023, Replacing the Revised Trademark Regulations of 2017」(2017年の改訂商標規則を全面改定する2023年の商標、サービスマーク、商号及び標識又は刻印のある容器に関する規則及び規制)が発行されました。

 これに加えて、IPOPHL Memorandum Circular No.2023-001は、IPOPHLとの書類および支払いの送信、受領を可能にするオンラインシステムを正式に導入し、迅速な対応を可能にしました。

 以下、IPOPHL Memorandum Circular No.2023-001の主要な条項を説明します。

第2 Memorandum Circular No.2023-001

 2023年2月14日に発効したIPOPHL MC No.2023-0001によって導入された主な変更点は以下のとおりです。

1.ルール101 – 改正規則では、以下の新しい定義が定められました。

 i. Actual Use(実際の使用) - 公衆を対象とした実際の営業目的を示す通常の取引過程における使用をいう。

 ii. Certification Mark(認証マーク) – 商品、サービスの地域的またはその他の地理的な原産地、材料、製造方法、品質、正確さ、またはその他の特性、商品、サービスに関する作業または労働、並びに商品、サービスに関する作業、労働がグループ・団体のメンバーによって行われたことを認証するために、その所有者以外の第三者が所有者の許可を得て商業的に使用し、または使用することを予定した標識をいう。

 iii. Communication(コミュニケーション) - 事務所に対して提出された拒絶理由通知、嘆願書、要求、および申し立てに対する応答、または維持要件もしくは権利に影響を与える文書に関連する提出物であって、提出期限の遵守に関するものを除く。

 iv. Mailing date(郵送日) - 電子通信システムを通じて、または該当する場合は申請者・登録者もしくはその代理人が指定した登録電子メールに最初に送信された日をいう。拒絶理由通知または通知が、電子通信システムまたは申請者・登録者またはその代理人の電子メールの両方を通じて受信された場合、より遅い受信日とする。

 v. Translation(翻訳)とは、フランス語を英語で表現するように、ある言語の単語を別の言語で等しい意味にすることをいう。

 vi. Transliteration(音訳)とは、漢字をローマ字やラテン文字に変換するように、ある言語の単語、文字、または文字を、音の類似性によって他の言語やアルファベットの対応する単語、文字、または文字に変換することをいう。

2.規則203-優先権を主張する出願の要件が改正され、非伝統的な商標のうち、一連の動きやホログラムが申請可能な表現として定められました。

3.規則206-Declaration of Actual Use(DAU)の更新について-従来の規則では、2017年1月1日に更新期限が到来する登録商標は、登録維持のためにDAUを提出する必要があるとされていました。しかし、新しい規則では、DAUの更新は登録の有効期限切れの6か月前までに提出することと明記されています。

4.規則210-商標の実際の使用(Actual Use)に関して認められる証拠は、以下のとおり改正されました。

IPOPHL MC No. 17-010 (改正前)

IPOPHL MC No. 2023-001 (改正後)

a.                   使用されているマークのラベル

b.                   フィリピンで商品が販売されていること、またはサービスが提供されていることを明確に示すウェブサイトをダウンロードしたページ

c.                   実際に使用されている商標の付いた商品、商標が印字または付された商品の容器、サービスが提供されている施設・設備の写真(普通紙に印刷したデジタル写真を含む)

d.                   商標が実際に使用された商品またはサービスがフィリピン国内で販売され、または提供されていることを示すパンフレットまたは広告物

e.                   商品または提供されたサービスの販売に関する領収書または請求書、またはその他の商標の使用を示す類似の証票であって、フィリピン国内で商品が市場におかれていること、またはサービスが利用可能であることを示すもの

f.                    商標の使用を示す役務提供契約の写し

a.                   フィリピン国内で、商品が販売されていること、またはサービスが提供されていること、または利用できることを明確に示すウェブサイトをダウンロードしたページ

b.                   次に掲げるものの写真(普通紙に印刷したデジタル写真を含む)

(i) 商品に実際に使用されている商標を付したラベルまたは包装

(ii) 商標が印字または付された商品の容器

(iii) 商標が表示された看板または商標が表示された施設

c.                   商標が実際に使用された商品またはサービスがフィリピン国内で販売され、または提供されていることを示すパンフレットまたは広告物

d.                   商品または提供されたサービスの販売に関する領収書または請求書、またはその他の商標の使用を示す類似の証票であって、フィリピン国内で商品が市場におかれていること、またはサービスが利用可能であることを示すもの

e.                   商標の使用を示す役務提供契約の写し

f.                    長官が許容する、類似の性質を有する他の証憑

5.規則2- 団体商標および認証マークに関する新しい規則が追加されました。同規則では、団体商標または認証マークの登録申請の際、当該商標を記載したうえで、団体商標の使用を規定する協定がある場合はその写し、認証マークの使用を規定する認証機関が定めた基準がある場合はその写しを添付しなければならないとしています。

6.規則402-出願時の商標の複製に関するガイドラインも改正されました。最も重要なのは、色彩のみからなる商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標、立体商標に関する規定が盛り込まれたことです。

7.規則503-事務連絡の提出および送信の方法に関する新しい規定が追加され、電子メールまたはオンラインによる提出および送達が正式に実施されました。現在では、IPOPHLのオンライン提出システム(eTMFile)を通じて提出する必要があります。IPOPHLへのその他の通信は、IPOPHLのオンライン提出システム、eDocFileを使用してオンラインで提出することができます。

8.規則601:IPOPHLによって優先的に処理される例に加え、現在では、パンデミックの準備や対応、または医薬品製剤やワクチンなどの公衆衛生上の緊急事態への対処に直接関連する商品やサービス、すなわち、フェイスマスク、フェイスシールド、手袋、実験衣などの個人防護具(PPE)、医療機器や実験器具、除菌剤や消毒剤、科学・実験サービス、医療サービスに使用する、または使用する商標の出願も可能となりました。

9.その他、免責事項に関する規則(規則604)、登録証の内容に関する規則(規則803)が改正され、立体商標、位置商標、色彩のみからなる商標に関する規則が追加されました。

10.また、手続規則も改正されています。詳しくは、2023年商標規則(参照:https://drive.google.com/file/d/1kfczZkVpKiWuFiRSgG5OIlAKvYvRXsB9/view)をご参照ください。

第3 企業がとるべき対策

 商標登録に関する新しい規則が施行されましたので、登録商標を有している企業の皆様はご留意ください。また、立体商標、位置商標、色彩のみからなる商標に関する新しい規則も発行されましたので、関連する商標を使用している企業の皆様は、適宜申請されることをお勧めします。詳細については、下記までお問い合わせください。

 引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

2023年02月13日(月)2:50 PM

フィリピンにおける個人情報処理システム、DPOの登録義務等についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

個人情報処理システム、DPOの登録義務等

 

個人情報処理システム、DPOの登録義務等

2023年2月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

第1 はじめに

 2023年2月3日、National Privacy Commission(NPC、国家プライバシー委員会)は、Data Privacy Act of 2012(DPA、2012年データ保護法)で義務付けられている企業のデータ処理システムの登録のためのオンラインプラットフォームであるNPC Registration System(NPCRS、NPC登録システム)の供用を開始しました。

 NPCはこれと並行して、NPC Circular No.2022-04を公表し、個人データ処理システム及びData Protection Officer(DPO、データ保護責任者)の登録、自動処理またはプロファイリングに関する届出、およびのNPC登録シールについて定めました。これらは、対象となる企業に対して、DPO等の登録や年に1回の更新、NPC登録シールの掲示を義務付けるものであり、違反に対しては行政処分の対象となるなど、個人情報保護に関する実務に影響を与えるものとなっています。

また、登録義務対象外の企業についても、宣誓書の提出が義務付けられているため、留意が必要です。

 以下、NPC Circular No.2022-04の主要な条項を解説します。

第2 NPC Circular No.2022-04の概要

(1)対象企業

 以下のいずれかに該当するPersonal Information Controller (PIC、個人情報管理責任者)またはPersonal Information Processor (PIP、個人情報取扱事業者)は、本NPC Circularが定める登録等を行う必要があります(Sec.5)。

 (i) 250人以上を雇用する場合
 (ii) 1,000人以上の機微な個人情報を取り扱う場合
 (iii) データ主体の権利と自由にリスクを与える可能性が高いデータを処理する場合

 (iii)については、国家機密、個人の安全、公共の秩序、公衆衛生に影響を与える情報や、少数者や精神病者、亡命申請者、高齢者、患者、刑事手続の対象者に関する情報など法令上秘匿性が求められている情報を取り扱う場合、データ主体とPIC,PIPとの間の格差が存在する場合がこれに当たるものと考えられます(前文)。

 なお、データ処理システムの登録が義務付けられていないPICまたはPIPは、自主的に登録することができます(任意登録、Sec.6)。

 また、自主的な登録も行わない場合は、上記要件に該当しない旨の、公証を経た宣誓書の提出が義務付けられていますので、ご留意ください。

(2)データ処理システム及びDPOの登録義務

  ア 登録義務

   自動処理やプロファイリングを伴う個人情報や機微な個人情報を処理するデータ処理システム、およびDPOは、必ずNPCに登録する必要があります(Sec.3、5、7)。

   PICまたはPIPは、データ処理システムの供用開始またはDPOの選任から20日以内に、当該データ処理システムおよび選任したDPOをNPCの登録プラットフォームに登録しなければなりません。システムの更新またはDPOを改選した場合は、10日以内に更新しなければなりません。(Sec.7)

  イ DPOの登録

   登録申請は、PICまたはPIPの指定するDPOを経由して行います。PICまたはPIPは、1人のDPOしか登録できません(Sec.8)。なお、DPOは、法律またはNPCによって許容されない限り、当該企業の従業員でなければならないとされています(Sec.2 D)。

   ただし、PICまたはPIPが複数の支店、事務所を有する場合、または担当する業務範囲が広い場合は、1人以上のCompliance Officers for Privacy(COP、プライバシー・コンプライアンス・オフィサー)を指定することができます。COPは常にDPOがこれを監督する必要があります。(Sec.8)

   PICまたはPIPは、DPOとして任命された要員の個人用・業務用の電子メールとは別に、DPO専用の電子メールアドレスを届け出なければなりません。

  ウ 申請書

   PICまたはPIPが提出する登録申請書は、正規の公証を受けた上で、申請主体に応じて定められた書類を添付する必要があります。民間企業および外国企業については、以下の書類を添付しなければなりません。なお、データ処理システムの登録が義務付けられていないPICまたはPIPは、NPC Circular No.2022-04の付属書1により宣誓書を提出する必要があります。

 国内民間企業

 -(1) DPO の任命または指名を承認する公証済みの秘書役の証明書、または (2) 当該組織の代表者による DPO の任命が有効であることを示すその他の文書で、当該組織の代表者にDPOの任命権限を付与する有効な文書が添付されているもの。

 -Securities and Exchange Commission(SEC、証券取引委員会)登録証明書

 -最新のGeneral Information Sheet(GIS、一般情報シート)の謄本(原本)

 -有効な営業許可証

 外国民間企業

 -DPOの任命または指定を承認する、認証済みまたはアポスティーユされた秘書役の証明書、または任命または指定を証明するその他の文書(英語以外の言語の場合はその英訳文)。

 -認証済みまたはアポスティーユされた以下の書類の(英語以外の言語の場合はその英訳文)。

 -最新のGISまたはそれに類する書類

 -(法人、組合、個人事業主の)登記簿謄本またはそれに類する書類

 -有効な営業許可証または類似の書類

 登録時に必要な情報の詳細は、NPC Circular No.2022-04 Sec.12に定められています。

  エ Certificate of Registration(登録認証)

   NPCは、登録手続が正式に完了した場合、NPCからCertificate of Registration(登録認証)が発行されます(Sec.13)。

   Certificate of Registrationは1年間に限り有効とされており、PICまたはPIPは、1年間の有効期限が切れる30日前までに、更新する必要があります(Sec.14、18)。

(3)自動処理またはプロファイリングに関する届出

 自動処理またはプロファイリングを行うPICまたはPIPは、その登録記録およびIDに、自動処理またはプロファイリングに関与するデータ処理システムを届け出なければなりません。その際、PICまたはPIPは、以下の情報を届け出る必要があります。

 a. 同意書等を含む個人情報を取扱う法的根拠
 b. 処理されたデータの保持期間
 c. 自動処理に利用される方法と論理
 d. 処理されたデータに基づいてデータ主体に関して行われる処理(特に当該処理がデータ主体の権利と自由に重大な影響を与える場合の有無)

(4)NPC登録シール

 登録が完了すると、登録証明書と同時に登録シールが発行され、ウェブサイトを通じてダウンロードをして取得することができます(Sec.29)。登録シールは発行から1年間有効となっています(Sec.31)。

 登録シールは、事業所や事務所の正面玄関など、すべてのデータ主体が確認しやすい場所に掲示しなければなりません。また、PICまたはPIPは、そのメインのウェブサイト、またはグローバルウェブサイトの場合は少なくともフィリピンに関するページにも掲示しなければなりません。(Sec.32)

(5)罰則

  ア 登録の取消し

    NPCは、DPA等の関連法令の違反、DPCによる処分等に対する違反、DPAに従った個人情報処理能力の欠如がNPCの監査により明らかとなった場合などの一定の場合に、PICまたはPIPの登録を取り消すことができます(Sec.35)。

  イ 罰則、罰金および排除措置命令

    登録証が取り消された、または登録要件に違反したPICまたはPIPは、遵守命令および執行命令、停止命令、個人データの処理の一時的または恒久的な禁止、または行政罰の支払いの対象となる場合があります(Sec.37)。

第3 企業がとるべき対策

 本NPC Circular No.2022-04は、発行から180日間の猶予期間が設けられていますので(Sec.39)、対象となる企業は、この間に、各登録や届出などの対応を行う必要があります。また、有効期間が1年間と定められているため、適宜更新をしていく必要があります。

詳細については、下記までお問い合わせください。引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

2023年01月17日(火)1:48 PM

フィリピンにおける地理的表示登録制度の創設についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンにおける地理的表示登録制度の創設

 

フィリピンにおける地理的表示登録制度の創設

2023年1月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

 

第1.はじめに

フィリピンには地理的表示に関する独立した登録制度はありませんでした。もともと地理的表示は、フィリピン知的財産法((Republic Act No. 8293 , Intellectual Property Code of the Philippines)により、商標として保護されており、団体商標として登録することが可能でした。[1]

昨年、フィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines、以下、IPOPHL)は、地方や地域の特産品の競争力を強化するため、地理的表示に関する施行規則(Rules and Regulations on Geographical Indications、以下、「本施行規則」)[2]を発行しました。また、この施行規則は、世界貿易機関の加盟国であるフィリピンが、他の加盟国に対して地理的表示に関する権利と保護を相互に提供する義務を果たすものでもあります。

地理的表示に関する施行規則は、農業や手工業の分野に最も利益をもたらし、フィリピンの伝統的な特産品の普及を促進し、国の経済的発展や国際的な知名度の獲得に役立つものと期待されています。それと同時に、日系企業や日本の各地域にとっても、地域ブランドをフィリピン市場に進出させていく上で、当該ブランドを保護し、競争力を維持していくために極めて重要な制度です。

以下、本施行規則の主要な条項の概要を説明します。

第2 地理的表示に関する施行規則の概要

i. 地理的表示

本施行規則において、地理的表示とは、商品がある特定の場所、地域、地方を生産地とすることを示す表示であって、その商品の品質、社会的評価、その他の特性が主としてその生産地や人的要因に帰せられるものと定義されています。[3]保護された地理的表示は、最終的に取り消されるまで、または取り消されない限り、無期限に保護されます。[4]

当該地理的表示の登録名義人は、地理的表示の登録とIPOPHLによる証明書の発行により、第三者による下記の行為を阻止する権利を有するものとされます。[5]

a. 商品の呼称または表示において、商品の生産地に関して公衆を誤解させるような方法により、当該商品が真の生産地以外の地域に由来することを示しまたはこれと誤認されるおそれのあるものを使用すること。

b. 商品が他の地域で生産されたものと偽る地理的表示の使用

c. 商品の生産地の名称及び場所が付されている場合、及び「類似」、「タイプ」、「スタイル」、「模倣」、「製法」、「同様の」などの限定的な表現が付されている場合であっても、地理的表示で示された場所で生産されていない商品に地理的表示を使用する行為。

d. パリ条約第(Article 10bis)にいう不正競争行為に該当する地理的表示の使用

e. その他上記に類似または類する表示の使用。

ii. 地理的表示に関する申請者

本施行規則第7条では、地理的表示の登録申請は、次のいずれかの者のみが行うことができるとされています。

a. 生産者とは、加工された宝石やその原石、食材やアルコール飲料を含む農産物や天然物、そのほか手工業や工業の製品を加工、生産、製造する個人、または地理的表示の対象となる商品の採取、生産または製造に直接関与する利害関係者を代表する生産者団体または組織。

b. 商品の生産地を管轄する政府機関または地方公共団体、および、フィリピン国民に対してその国の法律上、自国民と同様の権利と保護を与えている国の国民の地理的表示に関し、当該外国政府の代表者。

c. 上記a及びbに基づく地理的表示の規制及び保護を特に付託された組織、団体、 または先住民文化コミュニティまたは先住民。

iii. 外国人・外国法人が地理的表示を登録する際の要件

本施行規則第7条は、一定の要件のもと、外国人・外国法人が地理的表示を登録することも許容しています。フィリピン国内企業、組織または団体、もしくは地方公共団体またはその機関のいずれにも該当しない者が外国の地理的表示の登録を受けようとする場合は、次のいずれかの資格に該当する者でなければなりません。[6]

a. 知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定、マラケシュ協定)加盟国、または、そのほか地理的表示の保護に関する他の国際条約または協定であって、フィリピンも加盟しているものに加盟している国において設立または組織された法人であること

b. フィリピン国内またはフィリピンが加盟している地理的表示の保護に関する国際条約または協定の加盟国に居住、所在し、または実質的かつ効果的な産業・商業施設を有していること。

ただし、外国の出願人は、出願の対象となる地理的表示が、登録または保護されていることを証明する書類を提出する必要があります。これには、当該政府の管轄機関または民間の証明機関が発行した文書、あるいはその他の類似の法的文書または証明書が該当します。[7]

iv. 登録不可能な名称

本施行規則第18条は、地理的表示として登録することができない名称について、以下のように定めています。

a. 法令、公の秩序、公序良俗に反するもの。

b. 外国の地理的表示であって、当該生産国または地域において保護されていないもの、または保護が取り消されたもの。

c. 商品またはその使用の特性、性質、品質、原産地、生産工程に関して、公衆を誤解させ、または欺くもの。

d. フィリピンにおける商品の一般名称、普通名称または慣用名称のみからなるもの、またはそれと同一のものであり、登録しようとする地理的表示が同一の商品に対して適用されうるもの。

e. 植物品種または動物品種の名称と同一または酷似しており、商品の真の原産地について消費者を誤認させるおそれがあるもの。

f. 地理的表示に関する定義に該当しないもの。

g. 同一商品または密接に関連し、誤解を招く商品に関して、フィリピン国内またはフィリピンが加盟している条約若しくは国際協定において先に出願または登録された地理的表示と同一または酷似しており、またはそれを想起させるもの。

v. 登録の取り消し事由

次の事由に該当する場合、登録された地理的表示は、取り消される場合があります。[8]

a. 施行規則第2条(h)に規定する保護要件を満たしていない場合。

b. 地理的表示を付した商品の品質、社会的評価、その他の特性が主として帰せられる当該商品の自然的・人的要因を含む生産地に変更があり、当該変更により不適格となる場合。

c. 裁判所または審判所の判決または決定に基づき、登録された申請者が地理的表示の使用、商品の生産基準及びその他製品の仕様に対して有効な権限を有しない場合。

d. 地理的表示の登録申請の過程で、陳述及び書類上、虚偽の申告があった場合。

e. 登録または保護された地理的表示が、保護が付与される以前にフィリピンにおいて、その対象となる商品の一般的または慣習的名称であることが証明された場合。

vi. 理的表示と商標の先使用者

本施行規則は、フィリピン国内において同一または関連する商品またはサービスに関して当該地理的表示を継続的に使用してきた、フィリピンの国民もしくは居住者、またはフィリピンに実質的または有効な商業施設を有する者又はフィリピン国内の事業者が、商品またはサービスに関連して、他国の特定の地理的表示を継続的または同様の方法で使用することを妨げるものではなく、以下のいずれかの者はこれに該当するものとされます。

– 1994年4月15日から、少なくとも10年間以上前から使用している場合

– 1994年4月15日以前から善意で使用している場合

以下の場合に、善意で商標を出願または登録した場合、または善意の使用により商標権を取得した場合が上記に該当します。

– 本施行規則の発効前

– 地理的表示がその生産国において保護される前

商標登録の適格性もしくは有効性、または商標使用権は、当該商標が地理的表示と同一または類似していることをもって、害されるものではありません。

第3 その他の更新情報

地理的表示制度の創設は、地域ブランドを有する日本の産業がフィリピン市場に進出するうえで、当該ブランドを保護し、競争力を維持していくために極めて重要な制度です。日本の地域産業がフィリピン国内に進出する際は、ぜひご参照いただけたらと存じます。

引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

 

[1] https://internationalipcooperation.eu/sites/default/files/arise-docs/2019/ASEAN_GI-Booklet.pdf

[2] https://drive.google.com/file/d/1av0QyMuiTKeyCVrRTSuDY7TcqCE4W_0L/view

[3] Rules and Regulations on Geographical Indications, Rule 2, h

[4] Rules and Regulations on Geographical Indications, Rule 22

[5] Rules and Regulations on Geographical Indications, Article II

[6] Rules and Regulations on Geographical Indications, Rule 9

[7] Rules and Regulations on Geographical Indications, Rule 11

[8] Rules and Regulations on Geographical Indications, Rule 24

2022年11月14日(月)9:28 AM

フィリピンにおける再生可能エネルギー計画についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

再生可能エネルギー計画、外資100%に開放へ

 

再生可能エネルギー計画、外資100%に開放へ

2022年11月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

 

第1.はじめに

フィリピンでは、天然資源の探査・開発・利用を伴う事業への外資の参入は、わずか40%に制限されています[1]。 フィリピン国内のエネルギー生産量は十分ではないため、輸入エネルギーへの依存率を縮小する上で、このような制限は障害の一つとなっています。

国産エネルギーには、再生可能エネルギー(地熱、水力、風力、太陽光など)と化石燃料が含まれます[2]。発電量を見ると、地熱や水力を主体とする再生可能エネルギーの割合は、2010年の26%から2019年には21%に減少しています。この減少は、フィリピンで石炭発電が大幅に増加したことが主な原因です[3]。フィリピンは天然資源が豊富であるにもかかわらず、国内生産量が不足しており、その不足分を輸入エネルギーで大きく補っているのが現状です。そのような状況を背景に、国家再生可能エネルギー計画(NREP[4]、2020-2040)では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を少なくとも35%レベルに戻し、2040年までに少なくとも50%まで増加させることを目指しています[5]

そのような中、2022年司法省意見書第21号(Opinion No. 21, series of 2022, dated September 29, 2022,以下「DOJ Opinion No. 21 s. 2022」という)【https://www.doj.gov.ph/opinion.html】が発表されました。同意見書により、司法省(Department of Justice (DOJ))としては、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーの探査、開発、利用は、憲法第12条第2項に基づく外国資本40%制限の対象とはならないとの考えが示されました。これを受け、2008年再生可能エネルギー法(Renewable Energy Act of 28、共和国法第9513号、以下「再生可能エネルギー法」という)の施行規則(Implementing Rules and Regulations)の規定が改訂される予定ですので、今回は、再生可能エネルギーの外資開放の動きについてお知らせいたします。

第2 再生可能エネルギーに対する外国投資

現在、再生可能エネルギー法の施行規則では、再生可能エネルギー計画の探査、開発、利用への外国人の参加は40%に制限されています。DOJ Opinion No. 21 s. 2022の発表を受け、エネルギー省の担当者は、再生可能エネルギー法の施行規則の改正により、11月末までに再生可能エネルギー分野を100%外資に開放したいとの意欲を示しています。

1.再生可能エネルギー法施行規則

 再生可能エネルギー法施行規則(規則6条19項)によれば、水、海流、風による運動エネルギー、太陽光、海洋地熱、バイオマスによる熱エネルギーは、国がこれを所有することとされ、私的所有が認められていません。

また、天然資源の探査、開発、生産、利用は、国の完全な管理・監督下に服さなければならないと定められています。施行規則では、政府自らがそのような活動を行う場合のほか、フィリピン国民、またはフィリピン人が60%以上所有する企業や団体と共同事業、合弁事業として行うことが認められています。また、外国の再生可能エネルギー開発事業者も、政府との再生可能エネルギー業務委託・運営契約を締結することにより、再生可能エネルギー開発事業を行うことができるとされていますが、外国資本の参入上限を40%に制限するフィリピン憲法第12条第2項の適用対象となることも指摘しています。

かかる規定の解釈について、エネルギー省から司法省に対して法的見解の照会がされました。

2.DOJ Opinion No. 21 s. 2022

司法省は、DOJ Opinion No. 21 s. 2022において、資源が枯渇することのない再生可能エネルギーの探査、開発及び利用については、憲法第12条第2項が定める外国資本40%制限の対象とならないとの見解を示しました。外国資本40%制限の対象となる「天然資源」に、太陽、風、水力、海洋・潮力は含まれないことが示されました。

したがって、外国人及び外国企業による太陽光、風力、水力、海洋・潮力エネルギーの探査、開発、利用は、憲法上許容されているとの見解が示されました。

ただし、法務省は、DOJ Opinion No. 21 s. 2022の解釈を適用するためには再生可能エネルギー法及び施行規則の改正が必要であるとしています。また、水源から直接、発電のために水を利用することをフィリピン国民または フィリピン人が60%以上所有する法人に限定した水法、および最高裁判所の判決は、これらが廃止または撤回されない限り、引き続き効力を有するもの述べています。

第3 最後に

前述の通り、現在、再生可能エネルギーの探査・開発・利用は、政府及びフィリピン国民との共同プロジェクト、またはフィリピン人が60%以上所有する企業に限定されています。但し、再生可能エネルギー法の施行規則が近々改正され、DOJ Opinion No. 21 s. 2022に基づき、再生可能エネルギー事業における外国人の100%所有が認められる見込みです。

引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

【2023.1追記】

本号に関連して、エネルギー省は、Republic Act No. 9513(「2008 年再生可能エネルギー法」)施行規則(Department Circular No. DC 2009-05-0008)第 19 項の改正に関するDepartment Circular No. DC2022-11-0034[6]を発行し、フィリピン政府が、フィリピン国民又は外国人、並びにフィリピン企業又は外国企業と、再生可能エネルギーの探査、開発、生産、利用サービスや運用契約について直接引き受けることができるように修正すべきと勧告しました。

[1] Section 2, Article XII, 1987 Constitution; 12th Regular Foreign Investment Negative List, List A, no. 16

[2] DOE, Primer on the Energy Balance Table (EBT) of the Philippines, page 2-3

[3] NREP, 2020-2040 p. 1

[4] National Renewable Energy Program

[5] NREP, 2020-2040 p. 15

[6] https://www.doe.gov.ph/sites/default/files/pdf/issuances/dc2022-11-0034.pdf

2022年10月21日(金)9:43 AM

フィリピンにおけるTelecommuting Actおよび同法施行規則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンにおけるTelecommuting Actおよび同法施行規則

 

フィリピンにおけるTelecommuting Actおよび同法施行規則

2022年10月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

1 はじめに

 フィリピンは公共交通機関が発達しておらず、交通渋滞が激しいことでよく知られており、通勤する労働者にとって在宅勤務は働きやすい労働環境を整備する良い選択肢として期待されています。

 フィリピンのTelecommuting Act(在宅勤務法、 Republic Act No.11165、以下「Telecommuting Act」という)は、2018年に成立しました。同法は、労働者が重要な社会経済資源であることに鑑み、労働者の権利を保護しつつ、在宅勤務などの柔軟な労働環境の提供を可能にする新しい代替的な技術革新が生まれたことを踏まえ、労働者福祉を促進するために制定された法律です(同法第2条)。この法律により、自主的な在宅勤務や代替職場の配置の際の留意点が制度化されました。

 コロナウイルスの大流行から間もなく、世界中で在宅勤務が普及し始めました。日々変化する働き方に対応するため、2019年に施行されたTelecommuting Actの施行規則がこのほど改正されました。

 Telecommuting Actと改正後の施行規則の詳細は、以下のとおりです。

第2 Telecommuting Actおよび改正施行規則

 1 適用範囲

 Telecommuting Actは、在宅勤務制度を導入する民間企業のすべての雇用主および従業員に適用されます。

 「在宅勤務」とは、民間企業の従業員が、電気通信技術やコンピュータ技術を利用して職場外で働くことを可能にする勤務形態のことと定められており、このような態様での在宅勤務制度を導入する場合、全ての企業に同法が適用されることとなります。

  Telecommuting Actの概

 民間企業の雇用主は、労使の合意のもと、任意に在宅勤務制度を導入することができます。ただし、この場合でも法律で定められた最低労働基準を下回ることはできません。(Telecommuting Act第4条)

 雇用主は、在宅勤務の従業員に、以下のとおり、職場で勤務する従業員と同様の待遇を確保する必要があります。(Telecommuting Act 第5条)

 -法律および団体交渉協定が定める基準を下回らない時間外労働および夜勤手当を含む割増賃金、およびその他これに類する金銭的給付を受ける権利
 -休憩時間、定期的な休日、特別休暇を受ける権利
 -職場で勤務する同等の労働者と同じ又は同等の仕事量と業務水準
 -職場で勤務する同等の労働者と同様に、研修やキャリア開発の機会を与えられ、同様の評価方針の対象となること
 -利用可能な機器、在宅勤務に係る諸条件について適切な訓練を受けること
 -職場で勤務する労働者と等しい団結権を有し、労働者の代表と連絡を取ることを妨げられないこと

 また、在宅勤務従業員は定期的に同僚と会う機会が与えられ、会社情報を入手できるようにするなど、在宅勤務従業員が社内の他の職場環境から孤立しないようにするための措置が講じられていることが必要です。

 3 施行規則改正の概要

 前述のとおり、コロナウイルスの大流行による業務内容の変化に対応して、電気通信事業施行規則が改正されました。                                                    

 改正施行規則で導入された主な変更点は以下の通りです。

 i. 定義規定

 定義規定が一部改正されました。

 代替職場とは、電気通信技術やコンピュータ技術を利用して、雇用主の主たる事業所とは異なる場所で仕事を行う場所をいいます。これには、従業員の住居、コワーキングスペース、または移動しながら仕事ができるその他のスペースが含まれますが、これらに限定されません。

 通常の職場とは、従業員が定期的に出勤したり、仕事をしたりする主たる事業所、支店、または雇用主が設置した物理的施設をいいます。

 在宅勤務制度とは、改正後の施行規則、適用される団体協約(CBA)もしくは雇用契約、またはその他の社内規則に従って採用された、従業員が別の職場で働くことを可能にする一連の任意で合意された方針およびガイドラインをいいます。[1]

 ii. 在宅勤務の労働条件

 改正施行規則の第4条では、在宅勤務での労働条件は最低労働基準を下回ってはならず、就業規則や労使協約等で定められた条件を減じたり、奪ってはならないことが明記されました。また、代替職場での勤務は通常の職場での勤務とみなされ、在宅勤務が許可されている所定労働時間は、全て労働時間とみなされることも明記されました。なお、「実際の労働時間が合理的に判断できない場合」にのみ、届出人員とみなされます。

 iii. 在宅勤務制度の導入 

 以前から、法律と施行規則で在宅勤務の合意は任意であるべきと定められていたものの、その主導権は雇用主だけに与えられていました。本改正により、従業員または従業員のグループであれば、誰でも雇用主に在宅勤務プログラムを提案することができることが明記されました。[2]

 iv. 在宅勤務制度において規定すべき事項

 施行規則改正前から、在宅勤務制度において規定すべき事項は明記されていましたが、その詳細な内容は明確ではありませんでした。本改正により、各事項の詳細が明記され、在宅勤務制度の規定整備が行いやすくなりました。[3]

 (a) 資格 – 職務上の資格、業務分野、及び在宅勤務に適した役職、在宅勤務の導入環境、個別の事項及び業績

 (b) 代替職場 – 電気通信、コンピュータ技術、施設、設備に関する規定を含む、在宅勤務を導入できる代替職場の条件

 (c) 電気通信およびコンピュータ技術 – PC端末、ホストアプリケーション、インターネット接続およびセキュリティなどのソフトウェア及びその他の付属機器等の接続環境に関する事項

 (d) 労働安全衛生(OSH)- 職場衛生、照明、騒音、室温管理などの労働安全衛生基準(OSH)、身体的・精神的な健康プログラムなどを含む精神保健に関する事項

 (e) 業績評価 – 在宅勤務の従業員と通常の職場で勤務する同等の従業員との共通の業績基準(業績評価およびモニタリングの方法)、当該従業員への適切なフィードバックのやり取りの方法、業績上の問題に対処するための指導に関する事項

 (f) 行動規範 – 出席、会議中の身だしなみと態度、成果報告書の提出、コンプライアンス遵守の手段などの労働規律

 (g) データ保護、機密性、セキュリティ – 2012年Data Privacy Act (R.A. No.10173 個人情報保護法)及び同施行規則、並びに国家プライバシー委員会(NPC)の発行するその他の関連文書に従い、データ保護、機密性、およびセキュリティを図るための、個人情報、機密性個人情報、およびその他の保有情報保護のための技術基準

 (h) 緊急時の対処法 – 機器の故障、インターネット接続の不備、停電、天候不順、その他関連する事象および同様の状況に対処するための措置

 (i) 在宅勤務期間 – 従業員の要求、業務上の必要性、または運用の変化(更新または延長なしで以前の勤務形態に戻ることを含む)による在宅勤務の終了または勤務形態の変更など、在宅勤務の有効期間

 (k) 紛争解決 – 在宅勤務制度の実施および施行に起因するすべての苦情を解決するための苦情処理機構(任意仲裁への合意を含む)

 v. 在宅勤務にかかる費用負担[4]

 在宅勤務プログラムを実施し、従業員が代替職場で業務を遂行するために必要な施設、設備、消耗品にかかる、取得、適切な取り扱い、使用、維持、修理、返却にかかる費用は、雇用主の事業に通常かつ必要な費用とみなされることが規定され、事業者の負担とされることが明記されました。

 vi. DOLEへの実施状況の報告[5]

 改正施行規則により、雇用主は、事業所報告システム(https://reports.dole.gov.ph/)を通じて、労働雇用省(Department of Labor and Employment、以下、「DOLE」という)に在宅勤務の実施について通知することとなりました。当該報告通知には、在宅勤務を実施する支店、サテライトオフィス、または同様の業務単位がある場合、それらすべてを含めて報告する必要があります。

 また、使用者は、当事者が自主的に在宅勤務制度を導入したことを定めた文書を、記録の一部として少なくとも3年間保管・保存する必要があります。

第3 最後に

 在宅勤務を実施する企業は、DOLEに在宅勤務の実施について届け出なければなりません。また、労働関連の紛争や違反を避けるため、Telecommuting Actおよびその施行規則の規定に従う必要がありますので、在宅勤務制度の導入や規定の整備の際には、これらの事項に留意する必要があります。

[1] 改正施行規則 第3条

[2] 改正施行規則 第5条

[3] 改正施行規則 第6条

[4] 改正施行規則 第9条

[5] 改正施行規則 第10条

 

2022年09月15日(木)9:01 AM

フィリピンにおけるPICおよびPICに対する行政罰についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンにおけるPICおよびPICに対する行政罰について

 

フィリピンにおけるPICおよびPICに対する行政罰について

2022年9月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

1.はじめに

ここ数年、フィリピンでは、自分の名前を含んだ個人宛のスパムメールが増加し、個人情報保護に対する懸念が高まっています。

国家プライバシー委員会(National Privacy Commission 、以下「NPC」)は、このような状況を踏まえ、NPCサーキュラー(回状)第2022-01号(NPC Circular No.2022-01)を発しました(以下「本NPCサーキュラー」)。

本NPCサーキュラーは2012年個人情報保護法 (共和国法第10173号)(Data Privacy Act of 2012、Republic Act No. 10173、以下「DPA」)とその施行規則、およびNPCのその他の通達等に違反した場合に、個人情報管理者(Personal Information Controllers、以下「PIC」)及び個人情報処理者(Personal Information Processor、以下「PIP」)に課される行政罰を定めています。

NPCは、PIC、PIPに課される行政罰を定めることにより、データ主体の権利の保護責任の遵守を強化し、組織としての説明責任が果たされるよう促しており、非常に時宜を得たものといえます。

本NPCサーキュラーの詳細は、以下の通りです。

第2 PICおよびPIPの行政罰に関するガイドライン

 1 適用範囲 ―PICPIPとは

 本NPCサーキュラーの適用範囲は、DPAで定められたPICおよびPIPとされています。

 PICとは、個人情報の収集、保持、取扱いまたは使用を管理する、個人または組織をいい、自身に代わって他の個人または組織に個人情報の収集、保持、取扱い、使用、転送、または開示を指示する個人または組織が含まれます。ただし、以下の個人または組織は除かれます。

 (1)他の個人または組織からの指示により個人情報の収集、保持、取扱い、または使用、開示を行う者
 (2)当該個人、その家族または家事に関連する個人情報を収集、保持、処理、または使用する当該個人

 一方、PIPとは、個人情報管理者(PIC)がデータ主体に関する個人情報の取扱いを外部委託することができる、DPAに基づいて外部委託を受けることができる自然人または法人を指し、PICから個人情報の取扱いの外部委託を受けている事業者を指します。

 ここでいう個人情報には従業員が含まれますので、基本的にすべての企業がPICに該当し、他社から提供を受けた個人情報を保持、取扱い等を行う企業は、PICまたはPIPに該当します。

 したがって、本NPCサーキュラーはすべての企業に関連することになります。

 2 行政罰の内容

 PICまたはPIPは、DPA及びDPA施行規則、並びにNPCが発行する各通知等に違反した場合、違反事項ごとに、違反した条項に応じて以下に定める区分に従い、行政罰が課されます。ただし、一つの行為が複数の違反を構成する場合、500万ペソが上限となります。

違反の程度

行政罰

違反行為となる行為

重大な違反

(Grave Infractions)

 – 対象となるデータ主体の総数が1,001人以上

違反が発生した直前の年の年間総収入の0.5%~3

–        DPA第11条に基づく個人情報取扱いに関する一般的なプライバシー原則のいずれかに対する違反

–        DPA第16条に基づくデータ主体の有する権利に対する侵害

–        重要な違反かその他の違反のいずれであるかに関わらず、同一の違反に対する本NPCサーキュラーによる行政罰が繰り返された場合、自動的に重大な違反とみなされる

重要な違反

(Major Infractions)

– 影響を受けるデータ対象者の総数が1,000人以下

違反が発生した直前の年の年間総収入の0.25%~2

–        DPA第11条に基づく個人情報取扱いに関する一般的なプライバシー原則のいずれかに対する違反

–        DPA第16条に基づくデータ主体の有する権利に対する侵害

–        DPA第20条(a)、(b)、(c)又は(e)に基づく個人情報の安全性の保護措置を合理的かつ適切に講じることをPICが怠った場合

–        DPA第20条(c)又は(d)に基づいて、自己に代わって個人情報を取扱う第三者に安全対策を講じさせることをPICが怠った場合

–        DPA第20条(f)に基づく、NPC及びデータ対象者に対する個人情報漏えい時の通知をPICが怠った場合(ただし、DPA第30条により処罰される場合を除く)

その他の違反

(Other Infractions)

5万ペソ以上20万ペソ以下

–        DPA第7条(a)、第16条、第24条に基づき、PICの正しい身元または連絡先、情報処理システム、または自動意思決定に関する情報の登録を怠った場合

–        DPA第7条(a)、第16条、第24条に基づき、PICの身元または連絡先、情報処理システム、または自動意思決定に関する更新の提供を怠った場合

50,000ペソを超えない範囲

–        DPA第7条およびこれに関する施行通知に基づくNPCまたはその正当な権限を有する役員の命令、決議または決定に従わなかった場合

 

*この違反に対する罰金は、NPCの命令、決議または決定の対象となった違反行為に対して課される罰金に加算して課される

 3 行政罰の賦課に影響する要因  

 上記区分の範囲内で具体的な行政罰の額を定めるにあたって考慮される要素は、以下のとおりです。

 -当該違反が故意または過失のいずれに起因するか
 -違反行為によりデータ対象者に生じた損害の有無及び程度
 -個人情報取扱いの性質、範囲、目的の観点から判断される違反の性質または期間
 -取り扱われる個人情報およびDPA第16条に基づくデータ主体の有する権利を保護するために事前に取られた措置
 -命令、決議または決定としてNPCが決定した過去の違反、これらの違反により罰金が科されたか、およびこれらの違反から経過した期間
 -対象となる個人情報の種類
 -PICまたはPIPにおいて違反行為が発覚した経緯、およびNPCへの通知の有無
 -データ対象者への危害を軽減するために PIC または PIP が採用した緩和措置
 -PICまたはPIPに生じた経済的利益または回避した損失を含む、NPCの評価対象となる他の加重または軽減事由

第3 最後に

多くの企業は、自社がPICやPIPに該当する可能性があることを意識せずに個人情報を収集し、取り扱っています。しかし、当該データや、対象取引、対象者がDPAの対象である場合、DPAの規定に従う必要があり、これに違反した場合は、上記の行政罰やその他の罰則が科されることになりますので、留意が必要です。

この度、弊所執筆の「アジア・オセアニアの個人情報保護規制と実務」が出版されることとなりました。フィリピンを含む、東南アジア、南アジア、オセアニアにおける個人情報保護規制について網羅的に概説した書籍となっております。近日中に販売される予定ですので、フィリピンにおけるPICやPIPに課される遵守事項や、各国個人情報保護法に関してより詳しい情報をお求めの方は、ぜひご一読ください。

 

2022年09月13日(火)9:53 AM

フィリピンにおける新たな外国投資ネガティブリストについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピン、新たな外国投資ネガティブリストを

 

フィリピン、新たな外国投資ネガティブリストを発行

2022年9月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

1.はじめに

2018年以降更新が途絶えていたフィリピンの外国投資ネガティブリストが今年7月に更新され、第12次外国投資ネガティブリストが発表されました。外国投資ネガティブリストは、フィリピン国内での外国人の所有または投資が関連法律によって禁止または制限されている事業及び専門職をリストアップしたものです。

ネガティブリストの変更には一部の法改正が必要でしたが、ドゥテルテ政権末期に、公共サービス法、小売業自由化法、外国投資法が改正されたことにより、外国投資ネガティブリストの改正が可能になりました。今回の外国人投資ネガティブリストの改正は、これら3つの重要な法改正を反映しています。これらの改正は外国からの投資規制を緩和する方針を汲むものとなっています(これら3つの法改正については、2月、3月、4月のニュースレターをご参照ください。)。

以下、第12次外国投資ネガティブリストの要点をご説明いたします。

2.第12次外国投資ネガティブリストによる主な改正点

国防省の許可が必要な活動や製品を除き、第12次外国投資ネガティブリストは、第11次外国投資ネガティブリストの外資規制の大部分を引き継いでいます。そのうえで、フィリピンへの外資規制を緩和する今回の法改正を反映したものとなっています。

以下は、第11次外国投資ネガティブリストと第12次外国投資ネガティブリストの関連する変更点の比較表です。

【表1: 外国投資ネガティブリストの主な変更点の比較表】

11次ネガティブリスト

12次ネガティブリスト

1. 外国人は高等教育レベルで教えることができる(Republic Act No.8292)。ただし、当該科目が専門科目(政府委員会や司法試験に含まれるもの)でない場合に限る。

 

1. 相互主義を条件として、初等・中等レベルの教育が含む、専門家による指導が認められる(附属書第39号)。また、専門課程の教育に関する除外規定が削除されたため、現行の法律および規制に従う限り、外国人が専門課程を教えることができるようになった(政府委員会または司法試験も含む)。

2. 資本金2,500,000米ドル未満の小売業企業への外国投資

 

2.小売企業への外資導入に必要な資本金の要件が引き下げられ、払込資本金が25,000,000ペソ以上となった(Republic Act No.11595、Republic Act No.8762; Retail Trade Liberalization Act of 2000(小売自由化法)の改正に伴うもの)。

3. 協同組合への外国投資

3. 一般的に、協同組合では外国人の出資は認められていないが、フィリピン出生者による出資は認められるようになった。

4. 以下のものを除く、地方財政による公共事業の建設・修繕の契約(外国投資上限40%)

a. Republic Act No.7718 (改正民間インフラ投資法) の対象となるインフラ/開発プロジェクト

b. 海外からの資金援助を受けているプロジェクトで、国際競争入札が必要なもの

4. Republic Act No.9184 (Government Procurement Reform Act)(政府調達改革法)施行規則に基づくインフラプロジェクトの調達(外国投資上限40%)

5. 公益事業(Public Utilities)に該当しない発電給電事業を除く、公益事業の運営(外国投資上限40%)

5. 公益事業(Pubic Utility)の運営には、従来通り外国人持分の40%制限があるものの、公共サービス法の改正に伴い、公益事業(Pubic Utility)とみなされる事業が以下のように再定義され、範囲が限定された。

– 配電
– 送電
– 石油・石油製品パイプライン輸送システム
– 上水道配水設備および下水道設備
– 海港
– 公共交通機関

6. 国防省の許可が必要な製品の製造、修理、保管、販売(外国投資上限40%)

6. (削除)国防省の許可を必要とする製品の製造、修理、保管、および流通は、100%の外国投資が認められるようになった。

7. 高度な技術を持ち、従業員が50人以上いて、資本金が10万ドル未満の国内企業(外国投資上限40%)

ただし、以下の要件に該当し、払込資本金が 10 万米ドル以上であれば、100%の外国投資が認められる。

(i) 先端技術に従事するもの
(ii) 直接雇用の従業員が50人以上であること

7. 最低資本金 20 万米ドル以下の国内市場向け零細・中小企業(外国投資上限40%)

ただし、以下の要件に該当し、払込資本金が 10 万米ドル以上であれば、100%の外国投資が認められる。

(i) 科学技術省(Department of Science and Technology以下、「DOST」という)が定める先端技術に従事するもの
(ii) 主催機関である貿易産業省、情報通信技術省、DOSTが、革新的新興企業法に基づき、新興企業または新興企業を支援する企業として承認された企業
(iii) 直接雇用の従業員の過半数がフィリピン人であり、かつ15人未満を下回らないこと

8. (新設)

8. 相互主義を前提に外国人がフィリピンで開業できる専門職として、以下のものが追加された。

– 犯罪学
– 食品技術
– 海洋甲板工学
– 専門教育
– 放射線およびレントゲン
– 音声言語病理学 

9. 以下の専門職は、関連法の定める条件を満たした場合に企業による実施が認められる。

– 航空工学
– 農業バイオシステム工学
– 建築学
– 化学
– 電子工学
– 環境計画学
-林業
– ガイダンスとカウンセリング
– インテリアデザイン
– 造園
– 船舶工学
– 心理学
– 不動産サービス(不動産コンサルタント、不動産鑑定士、不動産査定士、不動産ブローカー、不動産販売員
– 衛生工学
– 社会事業

9.企業による専門職の外資規制は建築専門職のみとなった。

3.第12次外国投資ネガティブリストの概要

外国人投資ネガティブリストは、AとBの2つのリストで構成されています。

– リストAは、憲法または特定の法律により、フィリピン国籍者にのみ認められている活動分野を列挙したものです。

– リストBは、法律に基づいて規制される活動や企業のうち、防衛関連の活動、または公衆衛生や秩序に影響を与える分野を列挙しています。

i. リストA

リストAは、憲法または法律がフィリピン人のために留保することを義務付けている特定の事業分野を列挙したものです。外国資本による所有が完全に禁止されている分野もあれば、以下のように25%、30%、40%までの範囲で外国資本による所有が認められている事業分野もあります。 

【表2:リストA -憲法または法律に基づき外資保有が制限される事業分野】

外資保有の上限

事業分野

全面禁止

(外資保有不可)

・   レコーディングおよびインターネット事業を除くマスメディア

・   法が特に定めた場合に所定の条件に従って行う場合を除く、専門職の実践。第12次外国投資ネガティブリスト別紙には以下の職業が定められています

–        外国人がフィリピンで開業することが許されない職業(ただし、関連する法律に規定された相互主義の対象となる場合を除く)。

–        関連する法律により外国出資が制限されている専門職の企業における実践。

https://oneasia.legal/8203)

・   協同組合(フィリピン出生者の投資を除く)
・   私立探偵・監視人・警備員事務所の組織・運営
・   小規模採掘
・   群島水域、領海、排他的経済水域における海洋資源の利用、および河川、湖沼、湾、潟湖における天然資源の小規模な利用
・   コックピットの所有・運用・管理
・   核兵器の製造、修理、備蓄および配布
・   生物・化学・放射線兵器および対人地雷の製造、修理、備蓄、流通
・   爆竹およびその他の火工品の製造

上限25%

・   雇用斡旋(国内、国外雇用を問わない)
・   防衛関連施設の建設

上限30%

・   広告業

上限40%

 

・   天然資源の探査・開発・利用

・   土地の所有(フィリピン出身者で契約能力のある者を除く)

・   公共事業(Public Utility)の運営(改正公共サービス法の詳細については、ニュースレターのリンクからご覧ください。https://oneasia.legal/8416)

–          配電
–          送電
–          石油・石油製品パイプライン輸送システム
–          上水道配水設備および下水道設備
–          海港
–          公共交通機関

・   教育機関(宗教団体や宣教師会、外国人外交官とその扶養家族、その他の外国人一時居住者、またはBatas Pambansa No. 232第20条で定義された正式な教育システムの一部を形成しない短期的な高度技術開発のために設立されたものを除く)。
・   米及びとうもろこしの栽培、生産、精米、加工、小売を除く取引、並びに米及びとうもろこし及びその副産物の物々交換、購入又はその他の方法による取得(売却期間中におけるものに限る)。
・   政府関係法人、会社、機関または地方公共団体への材料、商品および商品の供給に関する契約
・   深海商業漁船の運航
・   マンション住戸の所有権
・   民間無線通信網

ii. リスト B

前述の通り、第12次外国投資ネガティブリストでは、外資保有割合が40%までに制限されている企業のうち、国防省の許可を必要とする活動や製品が削除されました。従って、これらの製品や活動に関しては、外国人の所有参加制限はなくなり、外国人はこれらの企業の100%まで所有することができるようになりました。

以下は、安全保障、防衛、公衆衛生、秩序に対するリスク、中小企業の保護などの理由から、外資保有割合が40%までに制限されている企業のリストです。

【表3:リストB -安全保障、防衛、公衆衛生、秩序、中小企業の保護を理由として外資保有が制限される事業分野】

外資保有の上限

事業分野

上限40%

・  フィリピン国家警察(PNP)の許可を要する品目の製造・修理・保管・流通

–          銃器(拳銃から散弾銃まで)、銃器の部品およびその弾薬、銃器の製造に使用される、または使用することを意図した器具または装置
–          火薬
–          ダイナマイト
–          爆発物 
–          火薬の製造に使用される成分(例:カリウム、ナトリウムの塩素酸塩、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、バリウム、銅(11)、鉛(11)、カルシウム、亜銅酸塩の硝酸塩、硝酸、ニトロセルロース、アンモニウム、カリウム、ナトリウムの過塩素酸塩、ジニトロセルロース、グリセロール、アモルファスリン、過酸化水素、ストロンチウムおよび硝酸塩の粉、トルエン
–          伸縮式照準器、スナイパースコープ、その他これらに類する装置

(注:上記の品目の製造または修理は、生産量のうちフィリピン国家警察長官が定める割合が輸出されることが外資保有の許可条件とされる。)
・  危険薬物の製造・流通
・  サウナ、スチームバス、マッサージクリニック、その他公衆衛生や風紀に危険を及ぼすとして法律で規制されている類似の行為(ウェルネスセンターを除く)
・  すべての形態のギャンブル(フィリピン・アミューズメント・アンド・ゲーミング・コーポレーション(PAGCOR)との投資協定でカバーされているものを除く)

。ただし、以下の要件に該当し、払込資本金が 10 万米ドル以上であれば、100%の外国投資が認められる。(改正外国投資法の詳細については、ニュースレターのリンクからご覧ください。https://oneasia.legal/8333)

–          (i) DOSTが定める先端技術を伴うもの
–          (ii)革新的新興企業法に基づき、主管庁である貿易産業省、情報通信技術省、DOSTから新興企業または新興企業を支援する企業として承認されたもの
–          (iii) 直接雇用の従業員の過半数がフィリピン人であり、かつ15人未満を下回らないこと

4.最後に

フィリピンでビジネスを行おうとする外国投資家は、当該事業分野が外国資本に開放されているのか、フィリピン国民に限定または完全に留保されているのかについて事前に把握しておく必要があります。既に述べたように、第12次外国投資ネガティブリストは、外国人投資家のフィリピンへの参入障壁を軽減するために改正された公共サービス法、小売業自由化法、外国投資法の変更を反映したものです。これらの法改正の詳細については、以下のリンクから、過去のニュースレターをご覧ください。

https://oneasia.legal/8416

https://oneasia.legal/8203

https://oneasia.legal/8333

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年07月14日(木)9:30 AM

フィリピンにおける電子自動車産業についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピン電子自動車産業を推進

 

フィリピン電子自動車産業を推進

2022年7月
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae

第1      はじめに

 フィリピンは、日々のエネルギー需要にこたえるため、原油供給の約97%を輸入しており、経済活動の多くを他国に依存しています。[1]その中でも、最終エネルギー消費量のうち最も大きな割合である35%を占める運輸部門は、フィリピンの温室効果ガス排出の最大要因のひとつであり、環境に深刻な影響を与えています。

 これを受けて、フィリピン議会は共和国法11697号電気自動車産業開発法(Republic Act No. 11697, Electric Vehicle Industry Development Act (EVIDA)、以下「本法」という)を制定しました。この法律は、輸送部門における輸入燃料への依存を減らすことで国のエネルギー安全保障と独立性を確保し、公害や温室効果による危険から国民の健康と福祉を守り、世界からの投資を促進・誘致しながら国内の電気自動車産業を発展させることを目的としています。

本法は、政府機関や地方公共団体を動員して、自動車の電力化を促進し、需要の創出と産業の育成を図ることを目的としています。

本法のポイントは、以下の通りです。

第2 電気自動車産業開発のポイント

1 本法適用対象

 電気自動車産業開発法は、電気自動車、充電ステーションおよび関連機器、部品、バッテリー、関連サポートインフラの製造、組立、輸入、建設、設置、保守、取引および利用、研究開発、規制などに適用される主要な法律です。

 本法の適用対象として、以下の定義が規定されています。

 -電気自動車とは、自動車を駆動するために少なくとも1つの電気駆動装置を持つ車両を指し、バッテリー電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車、軽電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車が含まれます。

 -充電ステーションとは、電気自動車またはそのバッテリーに電気エネルギーを供給するための機器を、特別な制御機能および通信機能を持つ筐体に設置した施設を指し、バッテリー交換ステーションを含め、車両外に設置される場合もあります。

 -配電事業者とは、配電システムを運営するためのフランチャイズまたは権限を有する電気協同組合、民間企業、または政府所有の公益事業者を指します。

 -グリーンルートとは、州、市、自治体が特定・指定し、運輸省(DOTr: Department of Transportation)が承認した電気自動車専用の公共交通路を指します。

2 電気自動車産業の総合的なロードマップ (CREVI: Comprehensive Roadmap for the Electric Vehicle Industry)

 この法律では、電気自動車の開発・実用化・利用を目的とした国家計画である電気自動車産業の総合的なロードマップ(CREVI)を定めています。CREVIは、以下の4つの柱から構成されています。

 ①電気自動車及び充電ステーション
  ・電気自動車及び充電ステーションの仕様と規格の開発
  ・電気自動車産業の促進
  ・電気自動車専用駐車場の配備
  ・電気自動車専用駐車場への充電ステーションの設置・建設

 ②製造部門
  ・電気自動車産業の製造地域の開発と促進
  ・電気自動車、バッテリー、リサイクル及び充電関連施設の基準の確立

 ③研究開発

 ④人材育成

3 需要創出と産業育成

(1)電気自動車使用割合の設定

 本法は、以下の事業者に対して、CREVIで定められた期間内に、使用する車両の5%以上を電気自動車とすることを義務付けています。

 ・貨物物流会社、食品配送会社、旅行会社、ホテル、電力会社、水道会社などの産業・商業企業

 ・ミニバス、バス、ジプニー、バン、トライシクル、タクシー、交通ネットワーク車両サービスなどの公共交通機関

 ・地方公共団体、政府機関、政府関係法人

(2)電気自動車専用駐車場及び充電ステーションの設置

 上記の使用割合の義務化に加え、民間および公共の建物や施設は、電気自動車専用の駐車場を割り当てることが義務付けられています。地方自治体は、電気自動車専用駐車場の設置基準を満たしていない建物や施設に対して、建設・改築の許可を出さないよう義務付けられています。

また、専用駐車場やガソリンスタンドへの充電ステーションの建設・設置も義務付けられています。

4 投資インセンティブ

(1) 財政的インセンティブ

 本法は、財政的なインセンティブと非財政的なインセンティブの両方が用意されています。

 ・電子自動車、充電ステーション、バッテリー、部品およびその部品の製造と組み立て、充電ステーション等の関連施設の設置運用は、1987年のオムニバス投資法(大統領令第226号)および1997年の国税法(大統領令第8424号)の修正案である企業再生および企業向け税制優遇法(共和国法11534号)による戦略的優先投資計画に含まれ、一定期間の奨励措置を受ける対象となるかの検討対象とされています。

 ・完全に製造された電気自動車の輸入は、TRAIN法(A. No.10963)に基づく奨励措置を受けることができます。

 ・本法の発効から8年間、完成された充電ステーションの輸入は、関税の支払いを免除されます。

 ・本法の発効から8年間、バッテリー電子自動車とハイブリッド電子自動車の自動車使用料、自動車登録料、検査料は、それぞれ30%、15%の割引を受けることができます。

(2) 非財政的インセンティブ

また、本法では以下のような非財政的なインセンティブも提供しています。

 ・優先登録、優先更新、特別な車両プレートの発行

 ・メトロマニラ開発局等の地方自治体が実施する強制的な統一車両量削減プログラム、ナンバーコード方式またはその他類似の方式による車両規制からの免除

 ・電気自動車を独占的に利用する事業者に対する公益車両の運行許可申請と更新の迅速な処理

 ・電気自動車メーカーや輸入業者による輸入の税関での迅速な処理

 ・電気自動車の製造業について、技術移転協定に基づく外国人専門職の雇用の許可

5 電気自動車等の普及を促進するための政府機関の役割

 本法は、政府機関や地方公共団体を動員して、電気自動車の導入を促進することを意図しています。特に、エネルギー省(DOE:Department of Energy)は、電気自動車の普及と充電ステーションおよび関連機器の開発を担当する主要機関として、他の関連政府機関や地方自治体と共に、本法に必要な認定や許可の発行など、必要な規制を公布し実施することが義務付けられています。

6 罰則

 本法および今後公布される関連規則に違反した場合、50,000ペソから500,000ペソの罰金、および許可証の停止や取り消しが行われる可能性があります。

第3 最後に

 フィリピンの電気自動車産業と市場を促進するための政府のこの積極的なアプローチにより、フィリピンにはバッテリーの主成分であるニッケルが豊富にあることも相まって、電気自動車のバッテリー製造などの他の産業についても、投資家にとって魅力的な環境が整ったといえます。さらに、本法が成立する以前から、フィリピン電気自動車協会(EVAP: Electric Vehicle Association of the Philippines)は、年間成長率が8〜12%で、2024年までに16億8000万ペソ(3360万ドル)の収入と20万台の販売を見込んでいます。 今後、需要が拡大すれば、さらに大きな成長が期待できるでしょう。

 引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

[1] http://wingatchalian.com/speech/sponsorship-speech-electric-vehicles-and-charging-stations-act-2/

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