2023年10月03日(火)1:00 PM
オーストラリアの不公正契約条項規制の改正についてニュースレターを発行いたしました。 こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
→オーストラリア:不公正契約条項規制の改正
オーストラリア:不公正契約条項規制の改正
2023年10月吉日
One Asia Lawyers
オーストラリア・ニュージーランドチーム
1.はじめに
2023年11月9日より、競争消費者法(Competition and Consumer Act 2010 (Cth))における不公正契約条項(Unfair Contract Terms)に関する規制の改正が施行されます。この日付以降は、従前の当該規制の適用範囲が拡大され、かつ違反行為に対する罰則が導入されます。オーストラリアの不公正契約条項規制は、BtoCの契約のみでなく、BtoBの契約にも適用されるため、オーストラリアで事業を行うすべての企業は本規制および本法改正に留意する必要があります。
本稿では、オーストラリアの不公正契約条項規制の概要および法改正の留意点について概説します。
2.不公正契約条項規制とは
オーストラリアにおいて不公正契約条項規制とは、不公正とみなされる条項を含む標準型契約(Standard Form Contract)を規制する法令です。標準型契約とは、一般に、一当事者により作成され、締結前に他方当事者が交渉を行う機会を付与されることなく締結された契約を指します。そのため、いわゆる利用規約等の標準約款だけでなく、通常の契約書であっても、交渉力の違い、相手方に対し締結前に条項の交渉を行う機会が与えられたか否か等の事情を考慮し、これに該当すると判断される可能性があります。当事者の一方の主張により標準型契約であることの推定がなされ、他方当事者が反証の証明責任を負います。
条項が不公正か否かは、契約内容を包括的に鑑みて、以下の要件を基にに判断されます。
- 当事者間の権利義務に重大な不均衡を生じさせるか
- 一当事者の公正な利益を保護するために合理的に必要か
- 一当事者に対し(金銭面に限らない)不利益を生じさせるか
不公正契約条項の例として、以下のような条項が挙げられます。
- 当事者の一方にのみ、契約の履行を回避または制限する権利を与える規定
- 当事者の一方にのみ、契約を終了する権利を与える規定
- 当事者の一方にのみ、契約違反または終了について他方当事者を罰する権利を与える規定
- 当事者の一方にのみ、契約条項や条件を変更する権利を与える規定
- 当事者の一方にのみ、契約更新の可否の決定権を与える規定
- 当事者の一方が、独断で、契約違反の有無、契約の解釈等を決定することができるとする規定
- 当事者の一方に、他方当事者の承諾なしに契約を譲渡する権利を付与する規定
- 当事者の一方に対して、その提訴権を制限したり、立証責任を課したりする規定
3.留意すべき改正点
2023年11月9日以降に締結、更新または延長が行われる契約は、法改正の影響を受けるため、特に以下の点に留意する必要があります。
- 適用対象の拡大:契約金額の最低基準が撤廃され、契約金額に拘わらず、すべての標準型契約が適用対象となります。また、適用対象となる事業者の規模が拡大され、一当事者の従業員数が100名未満または年間売上が1000万豪ドル未満の場合に規制対象となります。
- 標準型契約の判断基準の明確化:一定のオプションの中から条件を選択できる場合や、重要でないマイナーな点の交渉を行う機会があった場合でも、標準型契約に該当する可能性があることが明確にされました。
- 罰則の導入:違反行為について罰則が導入されます。不公正契約条項の入った標準型契約を締結することと、不公正契約条項に依拠することが、それぞれ別の違反行為に指定されるため、複数の契約相手が存在し、複数の不公正契約条項に依拠し、または各不公正契約条項を複数回にわたり依拠する場合などにおいて、罰金が高額となる可能性があります。罰則の最高額は、2022年11月10日に大幅に増額されており、5000万豪ドル、違反行為により得た利益の3倍、または違反行為の期間中の売上高の30%のいずれか最も高い額です。
- 裁判所の命令権の拡大:既存契約に類似の不公正契約条項が含まれる場合は、当該契約の使用禁止等が命じられる可能性があります。
4.おわりに
本法改正は、2023年11月9日以降に新たに締結する契約だけでなく、既存契約を今後更新または延長する場合にも適用されます。また、事業者同士の契約であっても、一当事者の規模が所定基準未満の場合に規制対象となります。高額の罰金および契約の無効化という、経営への大きな支障となり得る事態を避けるため、オーストラリアで事業を行うすべての企業は、今一度、既存契約および新たに締結する契約が不公正契約条項規制に違反しないことの確認を実施することが推奨されます。
2023年07月14日(金)5:23 PM
オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下のリンクからご確認ください。
→オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正
オーストラリア労働法アップデート:第2弾フェアワーク法改正
2023年7月吉日
One Asia Lawyers
オーストラリア・ニュージーランドチーム
1.はじめに
2023年6月22日に、昨年の改正(the Fair Work Legislation Amendment (Secure Jobs, Better Pay) Act)に続き第2弾となる、フェアワーク法(Fair Work Act 2009 (Cth))の改正法案(Fair Work Legislation Amendment (Protecting Worker Entitlements) Bill 2023)が可決され、同月30日に勅許を受け施行されました。本改正法により、無給育児休暇の取得柔軟化、スーパーアニュエーションの全国雇用基準化、外国人労働者の雇用法における権利の明確化等、従業員の権利保護を更に強化する規定がフェアワーク法に盛り込まれています。
本稿では、本改正法の重要ポイントについてご紹介します。
2.無給の育児休暇
弊所のニューズレター(https://oneasia.legal/9758)にてご紹介した、2023年有給育児休暇改正法(Paid Parental Leave Amendment (Improvements for Families and Gender Equality) Act 2023 (Cth))による有給育児休暇制度(政府による育児休暇の補助金支給制度)の改正に平仄を合わせるため、無給育児休暇についても以下のような改正が行われました。
• 無給育児休暇は子の出生から24か月の間にいつでも取得が可能
• 原則として連続で取得しなければならない12か月間の無給育児休暇のうち、100日間を日単位でより柔軟に取得することが可能
• パートナーが同時に取得できる日数の限定を排除
• パートナーの取得した日数にかかわらず、無給育児休暇を合計24か月となるまで延長可能
本改正事項は、2023年7月1日より発効されています。
3.スーパーアニュエーション
スーパーアニュエーションの支払義務が全国雇用基準(NES:National Employment Standards)の第12項としてに盛り込まれます。これにより、スーパーアニュエーションの支払義務を怠った雇用主に対し、フェアワーク法における罰則が適用されるようになります。
本改正事項は、2024年1月1日に発効されます。
なお、スーパーアニュエーションの支払義務については、フェアワーク法における従業員とみなされない場合であっても、より広範な従業員の定義を設けているスーパーアニュエーション法(Superannuation Guarantee (Administration) Act 1992 (Cth))に基づき従業員とみなされる者を雇用する場合は、支払義務が発生するため注意が必要です。
4.外国人労働者の権利
オーストラリアで就労する外国人労働者のフェアワーク法における権利は、労働者の移民法におけるステータスにかかわらず保護されることが明確にされました。これにより、外国人労働者が移民法において就労する権利を保有していない場合または移民法に違反する場合であっても、フェアワーク法に基づく保護規制の対象となるため、企業は、雇用するすべての外国人労働者に対し、そのビザのステータス等にかかわらず、雇用法上の手当の支給、合法な解雇手続き等の雇用法上の対応を取ることが求められます。
5.おわりに
本改正法では、上記の他に、従業員による給与控除の承認手続きの簡易化、労使協定(Enterprise Agreement)に関する当局Fair Work Ombudsmanの決定の効力の明確化、カジュアル雇用の炭鉱労働者へのLong Service Leaveの支給義務の明確化といった細則の改定が行われました。
コンプライアンスの観点から、企業は、今回の法改正を踏まえた社内手続きや就労規則の見直しを早急に行うことが重要となります。また、今後もオーストラリアでは雇用法改正の動きが予想されるため、今後の動向に注視する必要があります。
2023年06月13日(火)10:27 AM
オーストラリア労働法アップデート:最低賃金の引上げおよび直近の法改正についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。
→オーストラリア労働法アップデート:最低賃金の引上げおよび直近の法改正
オーストラリア労働法アップデート:最低賃金の引上げおよび直近の法改正
2023年6 月吉日