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2021年05月14日(金)8:16 PM

タイにおける不動産担保型ICOの概要について報告いたします。

不動産型ICOについて

 

タイにおける不動産担保型ICOの概要について

2021年5月14日

One Asia Lawyersタイ事務所

1.はじめに

2021年2月11日にThe Securities and Exchange Commission of Thailand(以下、「SEC」)からInitial Coin Offering (以下、「ICO」)に関する告示第5号[1](以下、「本告示」)が発行され、3月1日から施行されています。

本告示の主な改正点として、不動産担保型ICOに関する新規則の追加が挙げられます。不動産担保型ICOは、不動産を担保としてICOを行い、その不動産を貸し出すことにより賃料収入などの収益を得ることを目的としています。タイの不動産担保型ICOは、資金調達方法及び利益分配方法の点で不動産投資信託(以下、「REIT」)に類似していますが、投資家保護の仕組みの点においてはREITと比べて十分に規制されていなかったことが改正の背景にあります。

本ニュースレターでは、不動産担保型トークン発行による資金調達の方法及び条件等の概要について解説致します。

2.不動産担保型ICOプロジェクトの要件

不動産担保型トークンの発行により資金調達を行う場合、対象となる不動産の要件として、施工が完了した不動産で、かつ、利益を分配できる準備が整っており、差押または紛争等の対象物件となっていないこと[2]、プロジェクトの数や投資額の80%以上を占めるか、投資額合計で5億バーツ以上であること[3]等が定められています。

つまり、コンドミニアムの一ユニットや一軒家であってはならず、プロジェクト内のヴィラやコンドミニアムの総戸数の80%以上、またはプロジェクト投資額の80%以上もしくはプロジェクト投資額が合計5億バーツ以上でなければなりません。

 3.デジタルトークン発行者(以下、「発行者」)に求められる資格

発行者はSECのICOに関する2018年告示第1号[4](以下、「告示1号」)が定める以下の主な資格を満たす者でなければなりません。

・タイ法に基づき設立された公開会社または非公開会社であること[5]

・破産会社、破産法に基づき会社更生を申請中、または会社更生中の会社ではないこと[6]

・取締役及び幹部がSECの規定する禁止事項及び告示1号第20条で規定する禁止事項に該当しないこと[7]

・最新の財務諸表について、SECから承認を得た会計監査人による監査を受けていること[8]

これらに加え、不動産担保型トークンの発行者は、オペレーション体制、人事体制(資産管理責任者の設置を含む)、資産管理体制、利益相反防止体制の整備も要件に挙げられています[9]

 4.申請から許可取得までの流れ

ICOによる資金調達を希望する申請者は、まずICOポータルにプロジェクトの提案を行います。ICOポータルは、告示1号第16条~21条で定める規則に基づき当該プロジェクト及び申請者の1次審査を行います[10]。ICOポータルは、発行者とトークン化されるとされる不動産の両方についてデューデリジェンスを行います。

ICOポータルによる審査通過後、申請者は申請書等一式をSECに提出し[11]、全書類が揃ったと確認された時点で申請料金をSECに支払います[12]。ICOの申請料金は、IPOの場合の規定に準じると定められており[13]、30万バーツとなっています[14]

申請料金の受領後、SECは書類一式を確認し、気づいた点や疑問点について申請者に書面を発行します。申請者は指定された期間内に書面で回答します。当該プロセスは、SECが書類一式を受領してから60日以内に完了させなければなりません[15]。SECは、申請者からの回答受領後30日以内に、審査の結果を通知します[16]

 5.許可取得後の主な実施事項

SECより発行許可を取得した者は、許可取得日から6ヵ月以内に、ICOポータルを通じてデジタルトークンを販売します(期限の30日以上前に延長申請することも可能)[17]。この6ヵ月以内に、文書または電子データ等で、ホワイトペーパーを公開します。ホワイトペーパーには、発行者の情報、資金調達目的、事業計画、リスク、及び販売方法等について記載し[18]、タイ語で作成する必要があります[19]

また、発行者は、信託開設契約を、遅くとも受託者(Trustee)への信託財産譲渡日までに締結します。受託者への信託財産の譲渡は、デジタルトークン販売終了後15日以内に実施する必要があります[20]

さらに、発行者はデジタルトークンの販売結果について、販売終了後15日以内にSECに報告する義務も有しています[21]

 6.信託の開設と受託者の役割

不動産担保型ICOの発行者は、これまで不動産所有権を保有するか、不動産所有権を保有するSpecific Purpose Vehicle(以下、「SPV」)の発行済み株式数の75%以上及び議決権総数の75%以上を保有する信託の開設を義務付けられていましたが、今回新たに不動産借地権が追加されています[22]

REITの場合、受託者は不動産を保有し、かつREITマネージャーにより当該不動産の管理も行います。他方、不動産担保型ICOの場合、受託者はREIT同様不動産を保有しますが、当該不動産の管理は行いません。不動産管理は発行者の役割[23]となっており、受託者は当該行為を監視する役割等を担っています[24]

 7.ICOへの投資が認められる者

REITが制限なく小口投資家から資金調達が可能である一方、ICOは不動産担保型か否かに限らず、小口投資家からの投資額に上限が設定されています。SECによりデジタルトークンの購入が認められている投資家は以下の通りです[25]

1)機関投資家

2)大口投資家[26]

例:純資産7千万バーツ以上(住居用の不動産を除く)、年収7百万バーツ以上(夫婦合わせて1千万バーツ以上)、または投資額2千5百万バーツ以上(預金を合わせて5千万バーツ以上)のいずれかに該当する個人。

3)ベンチャーキャピタル、またはプライベートエクイティ

4)上記以外の投資家(小口投資家)

1件のICO当たりの投資額上限は30万バーツ以下、かつデジタルトークン発行者の資本金の4倍もしくは1件のICO当たりの調達額合計の70%のいずれか高い方を超えてはならない。

8.さいごに

 不動産担保型ICOによる不動産管理は発行者に義務付けられていることから、最も適した発行者は、必然的に、不動産管理経験を持つ不動産開発業者であると考えられます。実際、タイの不動産開発会社であるSCアセット、サンシリ、またアナンダ・デベロップメントがICOを検討し始めたという情報が3月3日付のバンコクポスト[27]で報じられています。実現すればタイのみならず、アジア発のICOによる資金調達になるため、今後の動向に注視して参ります。

[1] http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2564/E/046/T_0036.PDF

[2] 本告示第32/2条(1)

[3] 本告示第32/2条(2)

[4] https://publish.sec.or.th/nrs/7695s.pdf

[5] 告示1号第号17条(1)

[6] 告示1号第号17条(2)

[7] 告示1号第号18条(2)及び第20条

[8] 告示1号第号18条(3)

[9] 本告示第32/2条(10)

[10] 告示1号第17条(7)

[11] 告示1号第22条

[12] 告示1号第23条

[13] 告示1号第54条

[14] SEC告示 Kor Mor 21/2560号

[15] 告示1号第24条(1)

[16] 告示1号第24条(2)

[17] 告示1号第25条及び27条

[18] 告示1号第36条

[19] 告示1号第38(1)条

[20] 本告示第32/6条

[21] 告示1号第32条

[22] SEC告示 Kor Ror 4/2564号第2条

[23] 本告示第32/2 (10)条

[24] SEC告示5/2564号第8条

[25] 告示1号17条(3)

[26] SEC告示Kor Jor 4/2560号第5条(2)

[27] https://www.bangkokpost.com/business/2077219/developers-among-the-first-to-proffer-initial-coin-offerings

 

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

2021年05月10日(月)3:30 PM

タイ国 個人情報保護法(PDPA)の施行延期を定める勅令について報告いたします。

PDPAの施行延期を定める勅令について

 

タイ国 個人情報保護法(PDPA)の施行延期を定める勅令について

2021年5月10日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

2021年6⽉1⽇に予定されていたタイ国個⼈情報保護法(PDPA)の施⾏を2022年5⽉ 31⽇まで再度1年間延期する旨の勅令が発⾏されました。
施⾏の再度の延⻑の理由としては、
1)PDPA が定める規則、⽅法、条件に従った運⽤が複雑で詳細であること、
2)同法が意図する通りに効果的に個⼈情報を保護するためには⾼度な技術の使⽤が求められること、
3)コロナウィルスが未だ収束せず、経済・社会に⼤きな影響を与えており、タイ全⼟、官⺠問わず、その運⽤準備が整っていないことなどがその理由として挙げられています。
この再度の延⻑期間中に、同意書のフォーマットや個⼈データの国外移転の適法化⽅法、その他の下位規則、ガイドラインが定められることが想定されます。
今後はこれらの情報を収集しつつ、これまで準備してきた PDPA 対応体制をアップデートし、来年の PDPA 施⾏に向けた準備を進めていく必要がございます。
当事務所も、PDPA に関連する情報を収集し随時発信して参ります。
なお、末尾にタイ語原⽂を添付しておりますので、ご参考までに参照下さい。。

 

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

masaki.fujiwara@oneasia.legal(藤原 正樹)
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)


2021年05月06日(木)9:35 PM

タイにおける債権回収と倒産の対応の実務(第8回)について報告いたします。

債権回収と倒産対応の実務(第8回)について

 

タイにおける債権回収と倒産対応の実務 第8回

2021年5月6日

One Asia Lawyersタイ事務所

第8回 タイの仲裁機構での仲裁手続について  その1

前回までは、タイにおける裁判制度や債権回収のポイント、保全手続、判決に基づく強制執行手続きについて紹介してきた。今回は裁判以外での紛争解決手続きである仲裁機構による仲裁手続について紹介する。

1 仲裁について

 仲裁とは、当事者間の紛争について、当事者により選任された第三者(仲裁人)の判断に従うことを合意する紛争解決制度をいう。仲裁には、合意した仲裁機関において行う仲裁である機関仲裁と仲裁機関を選択せず当事者で合意した仲裁規則にしたがって行うアドホック仲裁があるが、アドホック仲裁は、手続き進め方や仲裁人の選任を当事者のみで決めることになるので、仲裁人の選任や仲裁手続の管理に困難が生じることが少なくないので、一般的には機関仲裁による仲裁が選択される。

 裁判と異なる点は、裁判は裁判所が公開の法廷で審理を行い訴状の請求を認めるか否かを判断し判決は公開されるのに対し、仲裁手続は、仲裁機関が非公開の場で申立書の請求内容について判断され、その仲裁判断は原則として公開されない点である。また、裁判を行うには、当事者間の同意は不要だが、仲裁手続を利用する為には紛争当事者の同意が必要となる。さらに、裁判所での手続費用は請求額が大きくないかぎり高額となることは少ないが、仲裁手続では私人である仲裁機関が行うため仲裁人の費用が発生し、裁判所での手続費用に比べ高額になるのが一般的である。

 加えて、実務上、最も重要な相違点は、タイの裁判所で判決を取得したとしても、タイはハーグ条約を批准しておらず、かつ、外国判決の承認に関する規定もないので、タイ国外でこの判決にもとづきタイ国内にある財産に強制執行することができないのに対し、仲裁については、タイは外国仲裁判断の承認及び執行に関するニューヨーク条約を批准しているので、日本や中国、シンガポールなどのニューヨーク条約を批准している国で、その仲裁判断にもとづき強制執行することができる点である。

 なお、国外の仲裁機関において下された仲裁判断にもとづき、国内の財産に強制執行するためにはその財産がある国の裁判所において承認を受けた上で執行を申し立てる必要がある。

2 タイの仲裁機関

  タイでは、1985年国際商事仲裁に関する国連国際商取引委員会(UNCITRAL)モデル法に準拠したタイ仲裁法により規律されている。タイにおける主な仲裁機関は、Thai Arbitration Institute (TAI)、Thailand Arbitration Center (THAC)の2つの機関である。

 TAIは、1990年に設立されたタイの司法省(Office of the Judiciary)の監督下にある仲裁機関であり、仲裁手続の取扱いがもっとも多い。

 また、THACは、2007年に設立された比較的新しい仲裁機関であり、タイにおける国際仲裁の促進を目的として設立された仲裁機関であり、Singapore International Arbitration Center(SIAC)の仲裁規則をモデルとした独自の仲裁規則を持っている。

 TAI、THACともに、仲裁の対象となる係争の経済的価値に応じた仲裁人報酬が発生するが、THAIでは、経済的価値に応じた仲裁管理費用が別途必要となる。

 なお、Thai Commercial Arbitration Committee of the Board of Trade of Thailand(TCAC)は、タイ国がニューヨーク条約を批准するにあたり設置された最初の仲裁機関であるが、現在はあまり利用されていない。

TAI

THAC

司法省が監督

1990年の設⽴から30年の実績

⾮政府組織

2007年設⽴、⽐較的、新しい仲裁機関

外国⼈仲裁⼈はある程度充実

外国⼈仲裁⼈はある程度充実

仲裁人の70%以上は裁判所OBといわれている

仲裁人は弁護⼠事務所で勤務する等の実務者が⽐較的多い

裁判所での⼿続を踏襲

⽐較的に柔軟な設計(SIAC、HKIACを参考)

仲裁管理費用なし

仲裁管理費用あり

THACと⽐較すると、費⽤は低廉

TAIと⽐較すると、費⽤は⾼額

取扱件数はTHACよりも多い

取扱件数はTHACより少ない

3 仲裁手続にかかる費用

 仲裁手続費用と主要な費用である仲裁人費用の概要は以下のとおりである。実際の手続きでは、仲裁人費用以外にも申立時の費用やTHACについては仲裁管理費用などその他の費用が発生する。

(1) TAIの仲裁人費用

 TAIのWEBサイト(https://tai.coj.go.th/th/content/article/detail/id/46/iid/70)によれば、仲裁人1名の場合の大凡の仲裁人費用は、紛争額が200万バーツの場合3万バーツ、紛争額が500万バーツの場合6万バーツ、1000万バーツの場合10万バーツ、2000万バーツの場合16万バーツ、5000万バーツの場合25万バーツとされているが、事案に応じて仲裁人費用が増額される場合がある。

(2) THACの仲裁人費用

 THACの仲裁費用算定サイト(https://thac.or.th/fee-calculator/)によれば、仲裁人1名の仲裁人費用は、紛争額が200万バーツの場合15万バーツ、500万バーツの場合は28万7500バーツ、1000万バーツの場合は56万2500バーツ、2,000万バーツの場合は100万バーツとされている。なお、これらはあくまで推定額であり、実際の仲裁手続の長短などにより実際にかかる費用は異なってくることに注意されたい。

 

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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2021年04月23日(金)3:49 PM

ラオスにおける新型コロナウイルスの状況についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

新型コロナウイルスの状況について

 

ラオスにおける新型コロナウイルスの状況について

 

2021年4月23日

One Asia Lawyers ラオス事務所

1.ラオスの状況

ラオスは、アセアン諸国の中でも最もコロナの感染拡大を抑え込んでいる国となっております。感染者のほとんどが海外からの入国者であり、14日間の隔離期間中に陽性と判明されるケースであり、市中感染の報告は、約1年ぐらいありませんでした。

しかしながら、ラオスの正月(4月14日から16日)に入る直前に、コロナに感染したタイ人がラオスへ不法入国後、ヴィエンチャン市内のカラオケ店、マッサージ屋さん、ナイトクラブ、レストラン等多くの場所に立ち寄ったことから、そこから市中感染とクラスターが発生しています。

4月20日から23日の間に、上記の濃厚接触者94人の感染が確認され、過去最も多く感染者が確認されました。ラオス政府はこれを受け、特にタイとの国境を流れるメコン川に巡視船を出し、不法入国に対する取締りを強化し始めました。

不法入国をする者は、外国人のみならず、タイなどの近隣諸国へ出稼ぎに出ていたラオス人がラオスに戻ってくる際に、14日間の隔離を逃れるために、不法入国するケースも多くなっています。

また、これを機に、ワクチン接種へ行くラオス人が増えているようですが、順番を待たずに我先へと列に割り込み秩序を乱す人がいるとの報告もあります。

2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策への包括的な規制強化に関する首相命令(No.15/PM/VTE)

2021年4月21日付にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策への包括的な規制強化に関する首相命令(No.15)が出され、4月22日から5月5日まで首都ヴィエンチャンはロックダウンの期間に入っています。

首都に居住している者が他県への移動することは禁止されています。他県に居住している者が、通勤以外で首都への移動することも禁止されています(COVID-19特別委員会から許可された者や運輸等の場合は、除きます)。

また、エンターテイメント施設、カラオケ、居酒屋、インターネットカフェ、マッサージスパ、ビリヤード場、屋内スポーツ施設を閉鎖することは、もちろんですが、教育施設も閉鎖する通知が別途教育スポーツ省から発出されています。

大規模事業、工場工房、銀行、金融機関、証券市場、証券会社、病院、ヘルスポスト、薬局、レスキュー隊、郵便、通信、電気、水道、レストラン、カフェ、ホテル・リゾートは、営業が許可されています。

その他は、職場はできる限り交代制として人数を減らし、日用品の購入、通院等以外は、基本的に外出禁止とされています。なお、20名以上が集まる集会、会議、イベントも禁止されています。

首都ヴィエンチャンのみならず、全国的に感染者が増えてきていますので、ラオスにおいてもwith Coronaの生活を意識する必要が出てきています。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年04月22日(木)9:59 AM

タイ民商法改正の勅令について-利息等について-について報告いたします。

タイ民商法改正の勅令について

 

タイ民商法改正の勅令について-利息等について-

2021年4月21日

One Asia Lawyersタイ事務所

「2564年民商法典の改正を定める勅令」が2021年4月9日に発布され、翌日10日に官報に掲載、4月11日より施行開始となっています。改正に至った背景として、新型コロナウイルスの感染拡大によって、国民の多くが困窮している状況を踏まえ、債務者が必要以上に高額の金利や利息に苦しまないよう、経済状況に応じた利率の早急な改定が必要であると判断されたためであると説明されています。

改正点は、主に以下の3点となります。

  • 1. 民商法第7条(利息)

これまで利息が発生する場合で、契約や法律により明確にその利率が定められていない場合は、年利7.5%が適用されていましたが、本勅令により、年利3%に変更となっています。改正後の利率は本勅令の施行開始日以降に支払期日が到来する場合の利息を算出する際に適用されますが、本勅令施行前の期間中の利息を算出する際には適用されません。つまり、4月10日までに支払い期日が到来した場合の利息には年利7.5%が適用され、4月11日以降に支払期日が到来する場合の利息には年利3%が適用されます。なお、今後も3年毎に財務省により見直しが行われることが明示されています。

  • 2.民商法第224条(遅延利息)

これまで遅延利息は年利7.5%と定められていましたが、本勅令により、同法第7条に基づき定められた利率+年利2%に変更となりました(ただし、契約や法律に基づきこれ以上の利息を請求できる場合は、それに従うと規定されています)。改正後の利率は本勅令の施行開始日以降に支払期日が到来する場合の遅延利息を算出する際に適用されますが、本勅令施行前の期間中の遅延利息を算出する際には適用されません。つまり、4月10日までに支払い期日が到来した場合の遅延利息には年利7.5%が適用され、4月11日以降に支払期日が到来する場合の遅延利息には同法第7条に基づき定められた利率+年利2%が適用されます。

  • 3.民商法第224/1条(遅延利息の算出方法)

同条は、今回の改正により新たに加えられ、本勅令の施行開始日以降に支払期日が到来する場合の遅延利息を算出する際に適用されます。これまで支払を遅延した際、支払いを遅延した分割支払金だけでなく、今後支払いが予定されている分割支払金の合計を元本として遅延利息を算出すると定めた契約が多く見受けられましたが、4月11日以降は支払いを遅延した分割支払金の元本に対してのみ遅延利息の請求が認められるため注意が必要です。

<民商法第224/1条 参考日本語訳>

分割払いで債務返済を行う債務者が、ある分割支払金の支払を遅延した場合、債権者は、当該分割支払金の元本に対してのみ、支払遅延期間の利息を請求することができる。前項と矛盾する合意は、無効とする。

 

以 上

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
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2021年04月19日(月)12:12 PM

ラオスにおける会計・監査法人の事業許可及び監査役についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

会計・監査法人の事業許可及び監査役について

 

ラオスにおける会計・監査法人の事業許可及び監査役について

 

2021 年4月19日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

会計・監査業務は、2019年にラオス政府が定めた14分野11業種のネガティブ事業[1]リスト内の業種に該当し、事業を始めるためには、企業登録の前に、計画投資省のワンストップサービスにおいて、投資許可を取得することが義務付けられています。

会計・監査業務については、2014年7月22日付「独立監査法 (Law on Independent Audit )」に規定されています。今回に財務省より発行された2021年2月16日付「会計・監査法人の事業許可及び監査役[2] (Statutory Auditor)に関する合意(No.0875)」は、2014年の一時的なガイドライン(No.007)にとってかわるものであり、2019年のネガティブリスト改正の内容と整合性をとるために発行されました。

会社設立や業務内容に関する詳細な規定は独立監査法を見る必要がありますが、同法には、外国の監査法人に対する要件が記載されていませんので、それらを中心に解説いたします。

2. 会計事務所の事業許可要件(合意第6条)

 会計業務の事業許可書を取得しようとする個人及び法人は、次の条件を満たす必要があります。

①公認会計士であること

②The Lao Chamber of Professional Accountants and Auditorsのメンバーであること

③公務員でないこと、他の会社の経営者、株主及び社員でないこと

④財務・会計上で犯罪歴がないこと

⑤上級の会計担当者が少なくとも3人以上いること

⑥過去に会計・監査業事業許可証を剥奪されたことがないこと

3. 監査法人の事業許可要件(合意第7条)

 ※①から④は上記、会計事務所と同じ要件

⑤外国人である場合、公認会計士、会計事務所、監査法人のその国の資格証明があること

⑥個人経営である場合、公認会計士が少なくとも2人以上、上級の会計担当職員が数名いること

⑦全株主の5分の3以上が、公認会計士であること

⑧過去に会計・監査業事業許可証を剥奪されたことがないこと

外国の監査法人の場合、上記①から⑧に加えて、次の条件を満たす必要があります。

①グループ会社又は親会社の経営が安定していること

②支店又は代表事務所のマネージング・ダイレクターは、独立監査法に則った公認会計士

であること

③親会社からの支店又は代表事務所設立に関する委任状があること

④労働関連法に基づき専門家等の人員を配置させること

4. 監査役の要件

 監査役は、公認会計士である必要があり、監査法人のマネージング・ダイレクター又は監査業務執行責任者[3] (Engagement Partner)である必要があります(合意第8条)。

5. 会計・監査事業における事業許可取得手続き

 計画投資省において投資許可証を取得し、商工業省において企業登録が完了したのち、以下の書類を揃て、事業許可証を財務省より取得する必要があります(合意第10条)。完全に揃った書類を財務省が受理した後、10営業日以内に事業許可証が発行されると規定されています(合意第12条)。

①財務省所定の申請書

②公認会計士資格証明証の写し

③会計士の経歴書

④公務員または会社の社員の場合は、退職証明証

⑤The Lao Chamber of Professional Accountants and Auditorsの会員証の写し

⑥IDカード又はパスポートの写し

⑦マネージング・ダイレクターの顔写真(3㎝×4㎝) 2枚

外国の監査法人である場合、上記①から⑦に加え下記の書類が必要となります。

①親会社の過去の実績報告書

②親会社からの支店設立に関する委任状

③親会社からのラオスに常駐する責任者の選任レター

なお、監査法人のマネージング・ダイレクター又は監査業務執行責任者は、事業許可証を取得後30日以内に、必要な書類を揃えて、監査役としての認証を財務省より受ける必要があります(合意第13条)。認証に必要な書類は以下の通りです(合意11条)。

①財務省所定の申請書

②公認会計士資格証明証の写し

③The Lao Chamber of Professional Accountants and Auditorsの会員証の写し

④所属している会社からのマネージング・ダイレクター又は監査業務執行責任者であることを  

証明するレター

⑤監査法人の事業許可証の写し

⑥IDカード又はパスポートの写し

⑦3カ月以内に撮影した顔写真(3㎝×4㎝) 2枚

 

[1] 2019年2月26日付ニュースレターにおいて解説。

[2] A Statutory Auditor is an auditor eligible for signing an auditor’s report on behalf of the audit firm.(Article 3, Law on Independent Audit,)

[3] An Engagement Partner is a partner in the audit firm who is responsible for carrying on the engagement and its performance and for the auditor’s report issued on behalf of the firm. (Article 3, Law on Independent Audit,)

 

 

以 上

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2021年04月19日(月)12:07 PM

ラオスにおける外国人労働者の入国許可についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

外国人労働者の入国許可について

 

ラオスにおける外国人労働者の入国許可について

 

2021 年4月19日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

2021年1月に「ラオスにおける外国人出入国管理に関する罰則規定」が発行されていますが、それに続いて、2021年2月23日付で「外国人労働者のラオスへの入国許可に関する労働社会福祉省大臣による合意(以下、合意)」が発行されています。

今回発行された合意は、2007年の合意の改正であり、2013年に労働法が改正されているため、その内容と整合性をとったかたちとなっています。従って、本合意の内容は、労働法の外国人労働者の入国について規定している第41条から第45条の内容に基づいています。

 一度、労働許可証を取得してしまうと、あまり気に留めることがない規定でもありますが、今回は、特に見落としがちな外国人労働者に関する規定をご紹介いたします。

なお、同合意は、外交官、各国の代表団とその家族、会議・研修参加者、事業許可証に記名されている投資家、国連・国際機関の職員等は適用の範囲外となっています。

2. 外国人労働者の要件について

 原則、外国人労働者は、ラオス人では技能が満たされないポジションの補完のため、ラオス人への技能の指導、移転のためにラオスで働くことが許可されています。

(1)条件

ラオスで働く外国人は、20歳以上、職位に応じたスキルと専門的能力があり、犯罪歴がなく、健康である者と規定されています(合意第7条)。

(2)責務

ラオスの社会保障基金に加入すること、納税すること、ラオス人へ技能を引き継ぐことなど(合意第9条)

(3)労働許可期間

雇用契約に基づき、1か月、3か月、6か月、12か月の期間(労働許可証の有効期間)働くことが可能となっています。また、5年を上限として、1回につき最大12か月の延長が可能と規定されています。

外国人労働者は、最長5年間ラオスで働いたのち、新たな職場で雇用される場合、いったん母国へ帰国しなくてはなりません。帰国してから30日後に、必要な手続きを経て、ラオスでの新たな雇用先での労働が認められます(合意第10条)。但し、雇用者が5年を超えて、継続して外国人労働者を雇用する必要があると判断した場合、雇用契約に基づき外国人労働者を雇用することが可能となっています(労働者は帰国する必要はありません)。

3. 外国人労働者の入国許可について

使用者は、事業所内における人材配置計画を作成する際、ラオス人労働者を優先する必要があります。ただし、その需要をラオス人労働者で満たすことができない場合には、使用者は、外国人労働者の使用を労働監督機関に申請する権利を有します。

(1)クオーター制(合意第17条)

事業所内の外国人労働者受入れ比率は、次の規定に従う必要があります。

ア) 肉体労働を行う技術専門家は、事業所内の全ラオス人労働者数の15%

イ) 頭脳労働を行う技術専門家は、事業所内の全ラオス人労働者数の25%

なお、クオーターは、1年間に何度でも申請可能であり、許可書発行日から同年12月31日までの最大1年間有効となっています。12月31日までに入国しなかった場合は、再度クオーターの取得申請をする必要があります(合意第21条)。申請から許可取得まで、15営業日と規定されています。

クオーター取得後に、外国人の入国許可申請を別途行う必要があり、申請後3営業日で入国許可書が発行されます(合意第38条)。

(2)労働許可証

外国人労働者は、ラオスに入国後30日以内に労働許可証を取得する必要があります(合意第25条)。30日以内に取得しいていないことが、発覚した場合は、超過1日つき一人50,000キープ(約500円)の罰金が科せられます(合意第41条)。ラオスでの雇用期間が終了し、母国へ帰国又は第三国へ行く場合は、労働許可証を管轄機関へ返却する必要があります(合意第39条)。

その他、外国人労働者は、治安維持省より滞在許可証を取得し、外務省よりLAB2ビザ(労働ビザ)を取得する必要があります(合意第23条)。

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年04月09日(金)9:47 PM

インドの個人情報保護法案2019と審議状況についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

インドの個人情報保護法案2019と審議状況について

 

 

インドの個人情報保護法案2019と審議状況について

2021年4月9日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

インドでは、個人情報を包括的に保護することを目的とした法案(以下、「2019年個人情報保護法案」)が、本記事執筆時点で、国会で承認されていません。現時点でのインドにおける個人情報に関する既存の法規制、個人情報保護法案の審議状況、そして可決された際のインパクトについて解説します。

※南アジア各国の個人情報保護法制については、2021年1月7日付ニュースレターをご覧ください。

 

1 2000年情報技術法・機密個人データ規則

本記事執筆時点において個人情報保護法は成立していないものの、 個人情報に関してインドで全く規制がないわけではありません。すなわち、個人情報保護法が成立していないから、個人情報保護に留意しなくて良いというわけではありません。

具体的には、2000年情報技術法(Information Technology Act, 2000)[1] およびその下位法令である2011年情報技術(安全措置及び手続き並びに機密個人情報)規則 [2](以下、「機密個人データ規則」)において、規制があります。金融、電気通信、医療等、産業分野ごとに存在する各規制の中で、データ取扱いに関し規定しているものがあるため、併せて確認する必要があります。

 

とりわけ重要なのが、以前より施行されている機密個人データ規則が機密性の高い個人情報(sensitive persona data)を特定し、その取扱いについて規定している点です。すなわち、機密性の高い個人データとは、個人を特定することができる情報のうち、以下の個人情報を指します(同規則3条)。

(ア)        パスワード

(イ)        金融情報(銀行口座、カード情報等)

(ウ)        身体的、生理的及び精神衛生的状態

(エ)        性的指向

(オ)        医療記録及び履歴

(カ)        生体情報

(キ)        企業のサービス提供のために提供された上記に関する詳細情報

(ク)        適法な契約等に基づき、法人が加工または保存するために取得した上記に関する情報

 

このように、機密性の高い個人データを扱う場合、外国企業・インド企業に関わらず、同規則に則った措置を講じる義務を負います。具体的には、①プライバシーポリシーの策定と公開(同規則4条)、②当該データ使用目的に関する本人の同意取得(同5条1項)、③個人情報苦情処理役員(Grievance Officer)の設置と公開(同5条9項)等を含みます。

2  2019年個人情報保護法案とその審議状況

2019年12月には、個人データの保護を規定し、そのためのデータ保護局を設置することを目的として、個人情報保護法案(Personal Data Protection Bill)が議会に提出されました。この法案の内容を精査するために、国会議員(上院・下院)30名で構成される合同委員会[3]が組織され、業界各社(Facebook, Google, Airtel, Flipcart等)との会合も設けられていますが、これまでに審議が4回延期されるなどし、本原稿執筆時点でいまだ委員会報告書が国会に提出されていません。その背景としては、1)国家安全保障やテロ対策の観点から公的機関が個人の同意なくして個人情報を収集できる例外を広範に認めるべきか、2)厳格な個人情報保護がインドで現実的に可能か、といった点について、未だコンセンサスが得られていないためとも言われています。

特に、同法案35条から40条において、連邦政府は、公的機関を本法案の適用から除外する権限を有する旨の規定がなされていますが、こうした制約のないアクセス権は悪用につながる危険性があると指摘する専門家もいます。

また、41条から56条においては、個人データの管理や同法案の執行を担うデータ保護局(Data Protection Authority of India、「DPA」)の設立が規定されていますが、DPAの委員長および委員は、官房長官を含む上級公務員のみで構成され、政府が任命・解任権を有する(42条)ことから、その独立性が疑問視されています。

コロナ禍においても、インド政府が国民のプライバシーを保護する義務を十分に果たしておらず、逆に監視国家に傾きつつあるとの懸念が高まっています。インド政府は、COVID-19拡大防止対策として追跡アプリ「Aarogya Setu」を開発し、国民に使用を義務付けましたが、杜撰なデータ保護対策に批判が集中しました。アプリ使用の義務化についてはその後撤回されたものの、収集された個人データの保存先やアクセス権保有機関については不透明であるとされています。

加えて、同法案が、国会情報技術委員会(the Parliamentary Committee on Information Technology)ではなく、合同委員会に審議が付託されていることに対し、一部で反発する声もあり、世論は揺れていると言えます。

合同委員会による報告書の提出は、雨季国会(Monsoon Session:7月-9月)の第1週(2021年7月頃)となる見込みで、その報告書の内容にしたがって必要な修正を加えた法案が国会で審議される予定であるものの、数ある重要法案の中で、同法案が雨季国会中に通過する公算は高いとは言えない状況にあります。仮に雨季国会での法案成立が見送られた場合は、次の冬季国会(2021年11月-12月)での法案成立が目指されることになります。

いずれにしても、大きな修正を経ないで本法案が近く可決されると、以下に紹介するとおり、機密性の高い個人データをインド国外に移転することが原則として禁止されるなど、インドで個人データを扱う外国企業にも一定の影響が及ぶこととなり、その動向が注目されています。

 同法案の主な規制には以下が含まれます。

3   個人情報のインド国外移転の厳格化

いわゆるデータローカライゼーションにかかる義務が規定されることとなります。現行の機密個人データ規則においては、機密性の高い個人データを他社(インド国内・国外問わず)等に移転することに関して、移転先が上記同等の措置を講じていることを条件に、可能とされていました(同規則7条)。一方、新法案では、機密性の高い個人情報は原則として国外移転が禁止され、当局に許可を得た場合にのみ認められるとされています。さらに、重要な個人データ(critical personal data)に関しては、インド国内でのみ処理されるものとされます(同法案33条、34条)。このため、当該データはインド国内のサーバに保存し、海外からのアクセスを制御するなどの対策を講じる必要が生じると予想されます。

 

4   独立データ監査人による監査義務

新法案は、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation 、「GDPR」)のコンセプトをもとにしつつ、インド独自の規定として、独立データ監査人(independent data auditor)による監査を毎年受けることを義務付けています(同法案29条)。

 

5   罰則

新法案により規定される上記義務に違反した場合の罰則も規定されており、例えば33、34条(越境データ移転)の規定に違反した場合は、(i)1億5千万ルピー、または(ii)全会計年度の全世界売上高の4%(4% of its total worldwide turnover)のいずれか高い方が科せられることとなります(同法案57条)。また、29条(独立データ監査人による監査)の規定違反には、5千万ルピーまたは前会計年度の全世界売上高の2%のいずれか高い方が科せられます(同条)。

 

以上のように、現段階では施行時期が不透明ではあるものの、施行されると一定の対応が必要となるため、同法案の動向を注視するとともに、法案通り可決することを想定した社内体制の整備を進めることが薦められます。

[1] https://www.indiacode.nic.in/bitstream/123456789/1999/3/A2000-21.pdf

[2] 「Information Technology (Reasonable Security Practices and Procedures and Sensitive Personal Data or Information) Rules, 2011」https://www.wipo.int/edocs/lexdocs/laws/en/in/in098en.pdf

[3] 「Joint Committee on the Personal Data Protection Bill, 2019 」http://loksabhaph.nic.in/Committee/CommitteeInformation.aspx?comm_code=73&tab=1

以 上

 

 

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info@oneasia.legal

 

2021年03月31日(水)9:08 PM

ネパールの会社法についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ネパールの会社法について

 

 

ネパールの会社法について

 

2021年3月31日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 ネパールでは、2020年に産業企業法成立、2019年に外国投資法改正、2017年に会社法改正と、ビジネスに関する規制が変化しています。世界銀行による「ビジネスのしやすさ指数2020」においては、南アジア8か国中では、インド、ブータンに次ぐ3位、全世界190か国中94位と、課題は残るものの前年の110位から16位ランクを上げています[1]

ネパール投資の際に参照すべき2つの法律を解説した、2020年12月18日付「ネパールの投資環境と2020年産業企業法投資規制について」に続き、今回は、実際に現地法人等の設立手続きや運営の際の準拠法となる2017年会社法について解説します。

 1 2017年会社法改正の概要

2017年の改正においては、企業の参入と撤退を容易にすること等を目的として、約60の条項が改正または新設されています。例えば、第9条(ka)では、非公開株式会社の最大株主数を従来の50人から101人に引き上げられており、これにより、非公開の形態をとりたい会社もより多くの株主からの投資を得られることとなりました。その他、2017年改正法では、以下のように、ネパールにおける企業運営上の重要な変更がなされています。

 

旧規定

改正規定

非公開会社の定時株主総会

(76条5項)

該当なし

(76条1項から4項で公開会社の定時株主総会開催を規定)

公開会社のみ義務であった定時株主総会開催が、非公開会社にも適用拡大。

公開会社への強制転換。

(13条1項(b))

非公開会社の株式の25%以上が1社以上の公開会社によって引き受けられた場合、当該非公開会社は公開会社に強制転換される。

削除

非公開会社の株主数(9条(ka))

50人以下

101人以下

株主総会のテレビ会議開催

(68、80条)

該当なし

テレビ会議(video conference)等が開催方法として追加

公開会社の取締役(86条2項)

性別の規定なし

女性株主のいる公開会社に対する、1名以上の女性取締役選任義務付け。

 

2 拠点設立手続き

日本企業がネパールでの事業を検討する場合、現地法人、外国法人の支店(Branch Office)、駐在員事務所(Liaison Office)のいずれかを設置することが一般的です。

  • (1)現地法人

現地法人は、ネパール会社法に基づき設立される、非公開会社(Private Limited Company)又は公開会社(Public Limited Company)を指し、外資規制上許可されている分野において事業活動を行うことができます。最低資本金は、公開会社の場合は1,000万ネパール・ルピー(NPR)(約940万円)と定められ(11条)、非公開会社には最低資本金の定めはありません。

ただし、公開・非公開にかかわらず、外国投資法に基づき、外国企業は最低投資額として5,000万NPR(約4,700万円)が必要となります。

日本企業が現地法人を設立する際は、非公開会社の形態をとることが一般的です。

会社設立手続き

会社設立には、投資額や事業費に応じ、産業省産業局(DOI)又はネパール投資委員会(IBN)での外国投資許可を取得した上で、登記事務所(Office of the Company Registrar)への登記を行います。また、歳入局(Inland Revenue Department)への税務登録を行い、永続会計番号(Permanent Account Number、PANナンバー)の取得も必要となります。

年間売上高が500万NPR以上の会社は、付加価値税(VAT)登録も行います。

  • (2)支店

支店は、外国企業のネパール国内拠点であり、当該外国籍のままとなります。原則としてネパール国内で許可されている事業活動を行うことができますが、その内容は、親会社の設立国における事業内容と類似した内容の範囲に限定されます。

支店を運営するための投資は外国投資とはみなされないため、外国投資認可は不要ですが、投資予定額に応じた支店登録手数料が定められています。

  • (3)駐在員事務所

駐在員事務所は、外国企業のネパール国内連絡拠点としての機能であり、当該外国籍のままとなります。収入を得るものを含むビジネス活動は認められません。設立には、会社登録事務所において、支店と同様の登録手続きを行います(154条3項)。

支店・駐在員事務所の設立手続き

ネパールで支店又は駐在員事務所を登録するには、管轄する政府当局から承認を取得する、又は関係機関と合意書を締結することが必要となります(154条2項)。この合意書締結の相手方機関に関し、会社登録事務所は、政府機関である必要があるとの見方をしてきました。しかしながら、この見解は管轄登録事務所により異なることがあり、政府機関ではなく民間企業との合意書提出に基づき、支店の登録が完了している事例も見受けられます。そのため、確実に且つ無駄なく手続きを行うために、想定する合意締結相手方に関し、管轄登録事務所において事前の確認をすることが肝要です。

登録時の手数料は投資予定額に応じて定められており、例えば投資額1千万NPR(約940万円)以下の場合は登録料1万5千NPR(約1万4千円)、2億NPR超3億NPR以下の場合は10万NPR等。投資額が未定の外国企業には一律で10万NPRの登録料が適用されます。

 

現地法人

支店

駐在員事務所

 

非公開会社

公開会社

株主数

上限101名

最低7名(上限なし)

株式の一般公募

不可

可能

取締役数

上限11名

3名以上11名以下。女性株主がいる場合は、1名以上の女性取締役設置が必要。

法人格

内国法人

内国法人

外国法人

外国法人

活動範囲

原則制限なし

原則制限なし

許可された範囲での事業又は取引が可能

収入を生じさせる活動(income earning activity)は不可

最低資本金

最低資本金の定めなし。

1,000万NPR

規定なし

規定なし

最低投資額

5,000万NPR

5,000千万NPR

規定なし

(支店は外国投資とみなされない)

規定なし

(駐在員事務所は外国投資とみなされない)

 

  • 外国人とネパール人の従業員雇用比率

ネパールでは、WTO協定を受諾しており、技術職及び管理職における外国人の雇用比率は15%まで認められています[2]。従業員を雇用する際は、ネパール人の人数が85%以上となるよう調整が必要となります。

3 会社の運営と機関

  • (1)株式
    • ①株式の割当

公開会社は株式の引受を公募する場合、株式発行終了日から3か月以内に株式を割り当てるものとされますが、少なくとも50%が売却されない場合には、割当は行えないと定められています(28条)。

 

  • ②株式の額面価額

株式の額面価額は、非公開会社の場合は定款に定めるものとし、公開会社の場合は1株当たり50NPR、または定款に定めるそれ以上の金額(10で割り切れる金額)とします(27条)。

 

  • ③配当金

配当は、配当実施の決定から原則として45日以内に株主に分配されなければならないとされます(182条)。

 

  • (2)機関
    • ①株主

非公開会社の株主数は最大101名(9条1項)、公開会社は最低7名(上限の定めなし)の株主数を必要とします(9条2項)。

 

  • ②株主総会

会社は、会社法に基づく定時株主総会(annual general meeting)の開催が義務付けられ、また必要に応じて臨時株主総会(extra-ordinary general meeting)を開催します。

定時株主総会

原則として毎年、会計年度終了後6か月以内に開催、設立後の第一回定時総会は事業開始許可日から1年以内に開催する必要があります。

(定足数)

株主総会の定足数(quorum)は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は割当株式総数の50%以上を占める3名以上の株主の出席が必要です(73条)。

(招集)

招集通知は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は原則として21日前までに送付することとされます(67条)。

(総会までに提出する報告書)

定時株主総会開催の少なくとも21日前までに、会社の株式や財務状況等の所定の事項を記載した報告書を作成し、監査を受けた上で、登記事務所に提出することが義務付けられています(78条)。

(議事録)

総会の議事録は、開催後30日以内に株主に送付するか、又は全国日刊紙への掲載が義務付けられます(75条)。

臨時株主総会

臨時株主総会は、取締役(会)が必要と判断した場合、監査役が要求した場合、または、払込資本の10%以上の株式を保有する株主もしくは総株主数の25%以上の株主が要求した場合に、開催されます(82条)。

定足数、議事録については定時株主総会と同様の規定が適用されますが、招集通知は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は15日前までの送付が必要となります(67条)。

普通決議の決議事項及び決議要件:

普通決議(Ordinary resolution)の主な決議事項は、取締役らの選解任、決算報告、授権資本範囲内での増資、決議要件は、出席株主の議決権の過半数と定められます(74条3項)。

特別決議の決議事項及び決議要件

特別決議(Special resolution)の主な決議事項は、減資、会社の商号・事業目的の変更、合併等(83条)、決議要件は、出席株主の75%以上と定められます(74条3項但書)。

 

  • ③取締役

(取締役の要件・義務)

取締役の国籍や居住地について規定はなく、日本に居住する日本人のみが取締役に就任することも可能です。

ただし、前述のとおり、公開会社で株主に女性が含まれる場合は、女性の取締役を少なくとも1名任命することが義務付けられます(86条2項)。

また、会社の定款に取締役就任にあたり保有すべき株式数が記載されている場合は当該数の株式を、明記する規定がない場合は、少なくとも100株を保有することが義務付けられます(88条)。

(選任・解任・任期)

取締役は、株主総会により任命され(87条)、任期は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は4年を超えないものとされます(90条)。

株主総会において解任された取締役は、取締役会において再任することができず、また、解任された取締役の後任として選任された者の任期は、解任された者の本来の任期をもって満了となります(90条)。

他方、任期満了により退任した者は、取締役に再任する資格を有します(90条3項)。

 

  • ④取締役会

取締役会(Meeting of Board)は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は、1年に少なくとも6回開催しなければならず、且つ会議の間隔は3か月を超えないものとされています(97条)。

取締役会の定足数は全取締役の51%以上とされ、また、代理人の出席は認められません(同条)。

すべての取締役会において、議事録を作成し、出席した取締役の51%以上が署名した上で、保管する必要があります。

 

  • ⑤監査役

すべての会社は、監査役を選任することが義務付けられます(110条)。

監査役は株主総会で任命され、次の総会までしか在任できません(111条)。

また、公開会社の場合、監査役は連続3期を超えて選任されてはならないとされます。

 

  • (3)会計書類作の成及び報告

公開会社の取締役会は、毎年定時総会開催の30日前までに、非公開会社の場合は会計年度の終了後6か月以内に、貸借対照表、損益計算書、及びキャッシュフロー計算書を作成し、取締役会の承認及び監査を受けたものを、少なくとも5年間保管する義務を負います(109条)。

また、資本金が1,000万NPR以上または年間売上高が1億NPR以上の非公開会社、及びすべての公開会社は、上記の財務諸表に加え、事業の状況、準備金組入金、配当支払額、その他定められた財務状況に関する事項を記載した報告書を別途作成する必要があります(同条)。

 

以上

[1] 世界銀行 Doing Business: https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[2] https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s381_e.pdf

 

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info@oneasia.legal

 

2021年03月26日(金)3:12 PM

タイにおける債権回収と倒産の対応の実務(第7回)について報告いたします。

債権回収と倒産対応の実務(第7回)について

 

タイにおける債権回収と倒産対応の実務 第7回

2021年3月26日

One Asia Lawyersタイ事務所

7回 タイのおける刑事手続き(番外編)

第6回までは、タイにおける裁判制度や強制執行について述べてきたが、最近、民事上の問題であったとしても、詐欺で刑事告訴を行うような事案が非常に多くなってきている。特に、外国企業に対しては、タイ国内での刑事告訴を通じて、相手方に圧力をかけて、相手方との和解や示談を成立させようとする動きが多い。刑事事件は、自社と、全く関係ないと考えている社も多いと思われるが、実は身近な存在である点を知って頂きたい。今回は、タイの刑事告訴手続きの概要を共有する。

その他刑事事件の時効、示談可能又は示談不可能な刑事事件の種類、検察ルートと弁護士ルートのメリット、デメリット等、よく聞かれる相談内容があるが、紙面の関係上、今回は一般的な手続きを述べるのみとし、次回からはタイの仲裁制度について詳述する予定である。

1 タイ国における刑事訴訟提起手続きの概略

タイ国内で犯罪が起きた場合、検察官もしくは被害者によって、刑事訴訟手続きが開始される。下図の通り、被害者は、被害届を警察に提出して検察に刑事訴訟を提起してもらうか(以下、「検察ルート」といいます。)、もしくは、弁護士に依頼して直接裁判所に訴訟提起する(以下、「弁護士ルート」といいます。)ことにより、刑事訴訟手続きを開始することが可能となっている(刑事訴訟法(以下法令名省略)第28条、第124条)。なお、弁護士ルートは、日本にはない制度のため、タイ独自の制度といえる。

<タイにおける刑事訴訟の手続き流れの概要>

※流れについては、PDFをご覧ください。 

2 検察ルートについて

まず、被害者が被害届を警察に提出すると、警察は捜査を行い、捜査結果を検察官へ報告する(第142条)。その後、検察官は被疑者を起訴するか否かを決定する。起訴された場合は、刑事訴訟が開始され、不起訴となった場合は、刑事訴訟は開始されず、被疑者は放免される。実務的には、被害届が受理されるまで、たらい回しにあったりすることが多く、受理されるまでに時間と労力を要することが多い。受理されると、警察署は被疑者に予備審問の期日を記載した文書を送達し、被疑者は、所轄の警察署で事情を説明する等の対応を行う必要がある。もし予備審問に対応しない場合は、逮捕令状等が発行される可能性があるため、留意が必要である。

また、起訴不起訴の判断のための十分な証拠がない場合は、検察官は警察に追加調査を命ずることができる(第143条)。検察官が不起訴判断をした場合であっても、被害者は直接裁判所へ訴訟提起する(弁護士ルート)ことは可能となっている(第34条)。検察官が起訴して裁判所へ事件を提起すると、被疑者の呼称が被告人に変わり、裁判所は、証人尋問を予定し(第172条)、刑事訴訟手続きを進めていくことになる(第182条)。

3 弁護士ルートについて

まず、被害者は、弁護士に依頼して刑事訴訟を提起することができ、裁判所は、最初に公判前聴取手続を行う。公判前聴取手続内で、被害者は原告として、被告が犯罪を犯したことについて証拠を示しながら主張する。また、被告はこの手続の中で反論を行うことができる。そして、一定の要件を満たす場合、この手続の中で双方が和解して刑事訴訟提起が取り下げられることもある。裁判所は双方が和解せず、公判手続きを行う必要があると判断した場合は、そのまま公判手続に移行していく。裁判所は、被疑者に対して証人尋問を行い(第172条)、公判手続を進行し判決を言い渡すという流れとなる(第182条)。

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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