トップページ
2021年03月04日(木)12:53 PM

ラオスにおける外国人出入国管理に関する罰則規定についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

外国人出入国管理に関する罰則規定について

 

ラオスにおける外国人出入国管理に関する罰則規定について

 

2021 年3月4日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

コロナ禍において、陸路にてラオスに不法入国する外国人が後を絶ちません。また、先日、1年前に観光でラオスに入国した日本人が、コロナの影響で日本へ帰国できずに路上をさ迷っていたため、ラオス政府に保護され、人道的支援により、日本へ帰国することができたとの報道がありました(Vientiane Times 2月26日付)。

ラオス政府は、これまでも、特に不法労働者の取り締まりを定期的に実施してきましたが、今後さらに増加すると予想される不法入国、不法滞在、不法就労に対する厳格な措置として、外国人の出入国管理法の徹底と違反した場合の罰則規定(罰金と然るべき措置)に関する首相令(以下、首相令)を2021年1月20日付で発行しています。以下、ラオスでビジネスを実施する上でも気を付ける必要がある罰則規定を中心に解説いたします。

2. 罰則とは

 同首相令第2条によると、罰則は罰金とその他の措置の二つがあります。その他の措置は、罰金を科せられた上で、さらに課せられる処罰であり、指導、警告、事情聴取、24時間の拘束、違反に関する書類、道具、物及び乗物の押収、滞在許可の登録抹消、事業の停止及び撤退又は関連省庁に対して企業登録証及び事業許可証の返納要請を含みます。なお。外国人及び無国籍者[1]に対しては、強制送還の場合もあります。

3. 罰則規定について

(1)滞在許可期間を超えて滞在している場合(首相令第15条)

対象:外交ビザ、公用ビザ、配偶者ビサ、優遇ビザ、専門家ビサ、ビジネスビサ、学生ビサ、メディアビザ、労働ビザを保持している外国人及び無国籍者

罰金:超過日数1日につき10万キープ(約10ドル)

 

(2)許可を得ずに事業を行っていた場合(首相令第17条)

対象:企業登録又は事業許可書を取得せずに事業を行っている外国人及び無国籍者

罰金:1回目 400万キープ及び調書

   2回目 700万キープ、調書及び事業の一時停止

   3回目 1千万キープ、調書、事業の撤退、強制送還及び再入国禁止

 

(3)不法就労の場合(首相令第18条)

対象:許可を取得せずに就労している外国人及び無国籍者

罰金:1回目 一人につき100万キープ及び調書

   2回目 一人につき200万キープ及び調書

   3回目 一人につき1千万キープ、調書、強制送還及び再入国禁止

 

(4)許可を得ずに収入を得ていた場合(首相令第21条)

対象:ラオス国籍に保全のみに保全される事業を行って収入を得ている外国人及び無国籍者、合法的に許可を取得せずに、小売、飲食店、縫製、振り売り、廃品回収、マッサージ、美容室、爪切、体重測定屋、請負業、バイク修理業、家具製作などで収入を得ている外国人及び無国籍者

罰金:1回目 一人につき100万キープ及び調書

   2回目 一人につき200万キープ及び調書

   3回目 一人につき500万キープ、調書及び場合によっては強制送還及び再入国禁止

 

(5)不法就労の労働者を雇用した場合(首相令第22条)

対象:労働許可証、滞在許可証、労働ビザを所有していない外国人及び無国籍者を雇用した個人、法人及び団体

罰金:1回目 一人につき200万キープ及び調書

   2回目 一人につき400万キープ及び調書

   3回目 一人につき600万キープ、調書及び関連省庁に対して事業許可証の抹消要請、労働者の強制送還及び再入国禁止

 

(6)合法的に結婚登録する前に家庭を築く又は寝食を共に(夫婦のように生活する)した場合(首相令第25条)

対象:合法的に結婚登録する前にラオス国籍者と家庭を築く又は寝食を共にしている外国人及び無国籍者

罰金:1回目 一組につき400万キープ及び調書

   2回目 一組につき600万キープ及び調書

   3回目 一組につき800万キープ、調書及び場合によっては然るべき処罰

 

外国人又は無国籍者は、罰金と処罰の他に滞在許可証の抹消と強制送還の措置が取られる可能性がある旨も規定されています。

 

上記のほか、外国人及び無国籍者が滞在していることを治安維持関連当局に通知しなかった宿泊施設のオーナーや合法的に就労している労働者を目的と異なる仕事に就かせるなど管理義務を怠った場合も処罰の対象となっており、今回かなり厳格な規定がおかれましたので、ラオスに滞在している企業、日本人駐在員や出張者の方々は留意する必要があります。

 

[1] 外国人:ラオス国籍以外の国籍を保有し、ある任務のため契約に基づき、もしくは期限付きで一時的ないし長期的に滞在している外国人

無国籍者:ラオス領土内に暮らしている国籍を持たない外国人

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年02月22日(月)3:22 PM

ラオスにおける所得税法について(アップデート)ニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの所得税法について

ラオスにおける所得税法について(アップデート)

 

2021 年2月22日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

ラオスにおける所得税法は、2021年2月13日付「ラオスにおける所得税法の改正について」にて解説した通り、2020年1月から施行されています。今回、2021年2月10日付「所得税法履行に関するガイドライン」(Guidelines for Income Tax Law) (以下、ガイドライン)」が財務省より発行されました。同ガイドラインは、全86条で構成されており、新所得税法の内容が十分かつ明確でない点が多く、ガイドラインや細則のアップデートを待っておりました。今回のガイドラインは比較的詳細な内容となっています。下記の表にある所得の種類に従って、所得税法では、十分かつ明確に説明されていなかった、所得税の算出方法も含めて解説されています。

<ラオスにおける所得の種類>

法人税

・事業所得

・零細企業の事業所得

所得税

・給与所得

・配当による所得

・賃貸収入

・政府・行政機関のビジネスではない活動からの所得

・建物を含む土地使用権の売買、譲渡による所得

・景品、賞金からの所得(現金、現物)

・個人及び法人の株式譲渡にかかる所得

・宝くじによる所得(現金・現物)

・フリーランス・個人事業主の取得

・個人・法人によるオンラインによる売買の所得

・知的財産からの所得

・金融機関及び金融機関外を介しての貸付利息収入

・遺産相続による収入

・非居住者(ラオス国内に一時的に居住している個人を含む)の収入

 

2. 個人に対する納税者番号の発行について

同じく2月10日付で、財務省より「個人に対する納税者番号の発行について」の通知が出されました。これまでは、会社の登記と同時に、法人に対してのみ納税者番号が付与されており、個人の給与税は法人の納税者番号と紐ついておりました。今回、所得税法第6条において、個人も納税の義務があることが規定されており、それとの整合性をとる必要もありました。また、個人からの税金徴収は、企業からの給与に対する源泉徴収が主となっていましたが、新所得税法の導入で、年度末での確定申告制度も導入され、個人からの税金徴収が本格化するといえます(但し、準備が整っておらず、2021年度は実施されないのではないかと言われています。)。なお、上記1の表の所得税は、個人と法人の区別はありません。

3. 受取配当による所得

上記1.表中の配当に関して、ガイドラインに少し気になる規定がありましたので、紹介いたします。法人、個人を問わず、配当を受け取った場合、配当額の10%を受領した後、15日以内に管轄の税務署に納税する必要があります(所得税法第41条、ガイドライン第42条)。非居住者へ支払いをする場合、実務上、ラオス国内で登録された会社が源泉徴収し、代わって納税することになります。

配当額は、株主総会にて全会一致で決議する必要があり(ガイドライン第40条)、株主総会の決議書は、次の会計年度(会計年度が1月から12月の場合)の6月30日までに、管轄の税務署に通知する必要があります(ガイドライン第41条)。通知をしなかった場合、配当税額相当額を追徴される可能性があることを示唆する規定がありますので(ガイドライン第41条)、ご留意下さい。旧税法第39条[1]においても、同じような規定があり、配当に関する決議を行った株主総会の決議書を提出していなかったところ、税務署が年間の利益からみなし配当金を算出し、その10%を追徴されるケースがありました。

なお、配当が出ない年度の対応については、記載されておりませんが、配当はゼロであるということを、株主総会で決議をして、念のため、財務諸表を税務署に提出する際に、決議書も一緒に提出しておくことを推奨いたします。

[1] <旧税法第39条 法人税の納付>

…the minute of meeting of partners or shareholders regarding the profit use or dividend payment shall be submitted to the Tax Administration before the first of March each year. In the case of fail to submit or open the shareholders meeting, tax officials will calculate dividend tax according to the income statement within a year.

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年02月22日(月)11:17 AM

ミャンマーにおける国家緊急事態宣言後の法的留意点についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ミャンマーにおける国家緊急事態宣言について

 

ミャンマーにおける国家緊急事態宣言後の法的留意点について

 

                          2021年2月17 日

One Asia Lawyers ミャンマー事務所

 

1 はじめに

2021年2月1日の国家緊急事態宣言の発出後、多くの日系企業より、ミャンマーでの新規プロジェクト、事業運営や輸出等に関するご相談を受けております。2月1日以降、ミャンマー全土で大規模なデモが継続して行われており、その結果として、ミャンマー国内の商業銀行の営業が停止したり、物流機能が一部停止する等、企業の事業活動に大きな影響を与えています。また、現時点において、外国企業の投資に関する主要法令については、特に大きな変更はありませんが、刑法、治安維持関連法令やセキュリティ関連規定等については、改廃等が頻発しており、留意が必要となっています。

例えば、ミャンマー国軍が設立した最高意思決定機関「国家統治評議会」の議長を務めるミン・アウン・フライン総司令官名で2月13日夜、ミャンマー国内でのクーデターへの抗議デモが全土に拡大している点を踏まえ、厳格に取り締まる姿勢を明確にしています。ミャンマー国軍は2月14日に、国民のプライバシー保護と治安に関する法律の条項の一部を停止しています。同法は、裁判所の許可なく、家宅捜索、勾留等を禁止していますが、非常事態宣言の終了まで、これらの条項を停止することとしており、結果として、裁判所の許可を得ず、適用対象者を逮捕したり家宅捜索したりすることが可能となっています。さらに、2月14日、同様にテインセイン政権時代に廃止された国家反逆罪・治安維持法が復活しており、政府批判を行う者は勾留、逮捕することが可能となっています。

また、国軍はミャンマー国内の活動家等を指名手配し、テインセイン政権時代に廃止された村落法が復活しています。これは、ある地域に他の地域の者が入って宿泊する際、宿泊先の世帯主から地方委員会への報告義務があり、活動家の移動や匿う行為を取り締まることを目的としています。また、国営新聞によれば、全国の刑務所に服役中の23,314人の受刑者に対し恩赦を行ったとの報道が出ており、外国人55名も恩赦の対象となっています(1988年にも同様の措置が取られています。)。さらには、刑法と刑事訴訟法が改正され、2月14日に即日施行しており、これは国軍に対する抗議デモ参加者の取り締まりを強化する目的で改定されています。改正後の刑法では、第121条、124条や505条等において、国家転覆、扇動行為、国軍による国家安定維持活動を妨害しようとした者に対する厳罰が明確に規定されています。

それ以外には、サイバーセキュリティ法が検討されているとの情報があります。今後、国家統治評議会で議論され、決定すれば、公布される見込みとなっています。今後、何かアップデートがあれば、適宜ニュースレターにおいて、共有して参ります。

2  よくあるご相談

まず、ミャンマー国外からの日系企業からのご相談としては、米国のミャンマーに対する制裁に関わる事項があります。米国は2月1日以降、ミャンマー国軍関係者を対象に経済制裁を発表しており、取引先やパートナーがSpecially Designated Natioals(以下、「SDN」)リストにおいて指定される制裁対象者に該当しないかを十分かつ継続的に確認する必要があります。また、安全保障輸出管理規制の観点からは、米国輸出管理規則等において、米国からの直接輸出や米国から第三国を経由してミャンマーに輸出される物品に対する規制強化が発表されており、今後、今まで通り輸出が認められなくなる可能性がある点について留意が必要となっております。

他方、ミャンマー国内からの相談として、①不可抗力の適用の問題、②デモ参加禁止の可否、事業縮小や撤退等による労務上の問題等が挙げられますので、次の通り、解説致します。

(1)不可抗力について

ミャンマーにおいては、ODA等を通じたインフラプロジェクトが多く存在しており、今回の政変に関連して、契約上の義務の履行が困難となった場合に、契約上の不可抗力(以下、「Force Majure」)に該当するかが問題となっております。

まず、契約書上、Force Majeure条項が含まれていない場合の対応は、Doctrine of Frustrationの原理を援用して、履行義務を免除するという方法があると考えられます。Doctrine of Frustrationとは、ナポレオン法典(フランス法)をベースとするForce Majeureに類似した理論であり、英国判例法上において発達した後発的履行不能の原理であり、これが英国法をベースとするミャンマー法にも取り入れられております(Myanmar Contract Act 1872,ミャンマー契約法第56条)。

<ミャンマー契約法56条>

in the event that a contract to do an act which, after the contract is made, becomes impossible, or, by reason of some event which the promissor could not prevent, unlawful, becomes void when the act becomes impossible or unlawful.“

但し、今回の政変の影響により履行が、上記でいう「Impossible」になったと評価できるかは現時点では明確ではなく、Doctrine of Frustrationを主張すれば、相手方からそのような抗弁が出されることが想定されます。今後、軍事政権下で何らかのガイドラインが出される可能性もあり、状況を注視する必要があります。

他方、契約書上、Force Majeure条項が存在する場合は、その規定に従って処理する必要があります。特に、インフラのプロジェクトにおいては、International Federation of Consulting Engineers(国際コンサルティング、エンジニア協会、「FIDIC」)が発行しているピンクブックやゴールドブック等の約款が利用されることが多くなっていますが、その中のForce Majure要件においては、Force Majureの定義が詳細に規定されることが一般的であり、約款においても、例示として「戦争」、「反乱」、「テロ」、「暴動」、「軍による行動」等が規定されており、例示を踏まえると、今回の政変は「Force Majure」にあたる可能性が高いと考えています。

(2)労務上の問題について

また、ミャンマー国内においては、次のような労働に関するご相談を受けることが増えています。

ア デモ参加の禁止規定

従業員の安全を保護する観点から、就業規則上、デモ参加禁止規定を加えられないかという相談を受けています。就業時間中については、就業規則などで就業時間中の政治活動を禁止することは可能と考えられます。一方、就業時間外においては、デモ参加を禁止することは、表現の自由等への制限となり、会社が就業時間外においてもデモに参加することは困難だと考えています。また、デモを理由として休暇申請を行う従業員が増えており、どのように対応すべきか相談を受けていますが、法的には、医療休暇や臨時休暇等には該当しないと考えられ、有給休暇として処理するか、無給休暇として処理するかたちになります。デモの参加を理由として、雇用者が、従業員の有給使用権を制限したり、拒絶することは困難と考えられているため、一方的に拒絶することはないよう慎重に対応する必要があります。

イ 解雇について

今後の状況の悪化を想定して、会社の一時休眠や撤退を検討する企業も増えてきており、整理解雇等に関する相談が増えています。ミャンマーでは、統一労働法典は存在しておらず、解雇補償金に関する規制を除いて、解雇に関する規制が存在していません。そのため、雇用契約や就業規則で定められた内容に従い、処理する必要があります。

まず、解雇に関する事前通知については、労働省発行の雇用契約書の雛形において、1か月前の事前通知が求められており、会社代表者の署名を付した上で、十分に解雇理由を付した書面を送付する必要があります。また、解雇補償金については、雇用および技術向上法第5条4項において、契約期間終了前に契約を解除した場合の処理について規定が存在しています。具体的には、2015年労働省通達第84号において、退職者の勤続年数に応じて、退職直前の月額給与に、下記表記載の通り、勤続年数を基礎に、給与を乗じた金額を解雇補償金として支払う義務を負う旨が規定されています。

【解雇補償金の計算方法】 

勤続年数

解雇補償金の給与割合

6カ月以上  1年未満

50%

1年以上  2年未満

100%

2年以上  3年未満

150%

3年以上  4年未満

300%

4年以上  6年未満

400%

6年以上  8年未満

500%

8年以上 10年未満

600%

10年以上 20年未満

800%

20年以上 25年未満

1,000%

25年以上

1,300%

 

最後に、もっとも相談の多い、整理解雇については、ミャンマー労働関連法上、規定は存在していません。ただし、雇用契約書の雛形においては、以下の記載が存在しており、労働組合が存在していない場合は、職場調整委員会(労働紛争解決法第3条によれば、30名以上の労働者を雇用する使用者は、職場調整委員会を設置する必要があると規定されています)との調整、労働組合が存在している場合は、組合および職場調整委員会との調整が必要となっており、留意が必要となっています。ここでいう「調整(liaise)」は、相談だけでいいのか、委員会からの許可が必要なのかについては明確ではありませんが、一般的に相談および説明で足りると考えられています。ただ、実務的には、整理解雇が行われる場合には、所轄の労働局の担当者が調停に参加したり、実質的には労働局の許可が必要となるようなケースがあるともいわれており、留意が必要となっています。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2021年02月09日(火)6:19 PM

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおけるPPP法制について

 

 

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について

2021年2月9日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

世界において巨大なインフラニーズが存在する中、世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[1]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、南アジアにおける案件が活発となっています。もちろん、傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張していたり、また、予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見されますが、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、南アジアにおいては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいます。今後、さらに成長が見込まれる南アジアのPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はバングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について解説します。

        バングラデシュのPPP法制について

バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしています。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されています。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインが制定され、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設立されています。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されています。そして、ついに2015年9月16日にバングラデシュ初のPPP法が成立しました。

PPP法は、全49条から構成されています。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドライン策定の責任を負っています。また投資家の手続き上の負担軽減を目的として、関連文書の作成を簡略化するためのサンプル文書を作成し提供することもその義務となっています。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されています。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関して規定されており、第17条に従って、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されています。ただし、本規定自体は非常に簡潔な内容に留まるため、具体的な手続きに関しては、今後の細則等の発表が待たれます。

また、PPP法では、民間事業者の選定方法(第19条)、当事者間の合意に際するプロジェクト会社設立の必要性(第22条)、汚職および利益相反(第24条および第25条)に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されています。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある規定が明示されています。

        パキスタンのPPP法制について

2億人強の人口を抱えるパキスタンにおいては、膨大なインフラ需要が存在しています。実際に、1990年初頭から道路、高速道路、バス等の交通インフラ、通信、空港、病院、水力発電等のプロジェクトについて、Public Private Partnership(以下、「PPP」)が活用されています。パキスタンにおけるPPP政策は、2007年に承認され、2010年にPublic Private Partnership Policyが閣議決定されました。その後、2017年3月31日にPublic Private Partnership Authority Act(PPPA法)が成立しています。同法では、PPPプロジェクト実施に際して、迅速性と透明性の確保、インフラ投資の推進、規制緩和等が規定されています。なお、州レベルにおいてもPPP規則が制定されています。

また執行監視機関として、財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、Infrastructure Project Development Facility(以下、「IPDF」)というPPPユニットが存在し、PPPプロジェクトの誘致、推進、監視機能を担っていましたが、2017年に解散し、PPPA法第25条に基づき、Public Private Partnership Authority(以下、「PPPA」)として、より大きな権限を与えられています(PPPA法第2章以下)。

同法において、公共部門はインフラサービスのニーズを特定し、国、州、地方の各部門に特化した政策を策定し、それらを監督し、PPPアジェンダを提供することになっています。他方、民間部門の投資家は、プロジェクトを特定し、構想・精査した上で実行し(PPPA法第13条2項)、入札書類やプロジェクト提案書を理事会の承認のために提出する(PPPA法第13条3項)等を担っています。投資家は、PPPAの承認後、PPP契約に基づいてプロジェクトを実施する必要があります。また、PPP契約については、第4章において記載必須事項が定められており、紛争解決規定については、当事者間の合意により自由に設定可能となっています(PPPA法第18条)。

なお、会計年度終了後、120日以内に、PPPAに対して、PPP契約の履行状況、進捗状況等を記載した年次報告書を提出する必要があるので、留意が必要です(PPPA法第28条)。

3     ネパールのPPP法制について

ネパールにおいては、特に1990年初頭から水資源を活用した水力発電等のインフラプロジェクトと電力輸出が国家的産業となっており、ネパール政府は民間投資を活用したプロジェクトのさらなる発展を期待しています。また、近年においては、水力発電や国際送電に加えて、道路、空港、市内公共交通整備プロジェクト等が進んでいます。

このような背景を踏まえ、1992年に水力発電、電力外国投資移転法(Hydropower Policy Electric Act, Foreign Investment & Technology Transer Act、2017年改正)、1999年に道路分野に関するBOT政策(BOT Ploicy on Road Sector)、2001年水力発電政策(Hydropower Development Policy)、公共インフラ、2001年BOT政策(Public Infrastructure Build Operate and Transfer Policy)、2003年民間インフラ投資に関する条例(Private Investment in Infrastructure Build and Operate Ordinance)、2006年インフラ整備・運営民間資金法(Private Financing in Build and Operation of infrastructure Act, BOOT Act)、民間投資法(Private Investments in Infrastructure Act)、2011年投資委員会法(Investment Board Act)、2018年電力規制委員会法(Electricity Regulation Commission Act)等が整備されています。

特に、2015年に閣議決定されたPublic Private Partnership Policy(以下、「PPP政策」)は、PPP契約に関する明確な規制枠組みとガイドラインの必要性を提示しています。また、ネパール財務省は、既存のインフラ整備・運営民間資金法に代わるPPP法案を作成し、2019年3月27日に遂にPPP法(Public Private Partnership Act)が成立。さらに2020年にPPP規則(Public-Private Partnership and Investment Regulations)が成立しています。

PPP法によれば、第2章において、PPPプロジェクトに関する実施監査委員会、その傘下のPPPユニット、投資ユニット、専門家ユニット等の機能、選任方法、等が明確に規定されています。また、第3章においては、PPPの種類(BT、BOT、BOOT、BTO、LOT、LBOT等)等、投資の承認実施手続き等について具体的に規定しています。さらに、第5章では、PPP契約の記載内容、実施や監視内容について規定しています。第6章では、投資家保護、恩典、用地や施設利用等について、規定がなされています。

       スリランカのPPP法制について 

 スリランカにおいては、膨大なインフラ需要がありますが、Public Private Partnership (以下、「PPP」)に関する法令は存在していません。直近では、2016年にスリランカ投資委員会(BOI)傘下のインフラ投資事務局内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整する機能を有しています。

また、スリランカ政府は成長戦略において、PPPを推進する意思表示をし、国内インフラへの国内外の民間投資を奨励しています。

実際に、民間投資家による携帯電話サービス、無線ローカル線システム、公衆電話ネットワークなどの電気通信サービス分野では、すでに事例が存在しています。また、水力発電システムから大規模発電所までの電力セクターへの投資や港湾セクター等への投資も行われており、インフラ投資の機会は、高速道路、公共交通、環境分野など多岐に渡って拡充してきています。今後、PPP 投資アプローチが広く利用されることが期待されるプロジェクトは、運輸、航空、酪農、観光、飲料水供給などといわれており、民間投資奨励のための規制緩和等が検討されています。

PPPプロジェクトは、Build-Own-Operate(BOO)、Build-Own-Transfer(BOT)、またはBuild-Own-Operate-Transfer(BOOT)等のスキームで実施されていることが多くなっています。

ただし、具体的なPPP政策や包括的な法律は制定されておらず、現時点に1998年に発布された民間セクター・インフラ・プロジェクトに関するガイドラインにおいて手続き等が少し触れられている程度であり、こちらが現在のPPPガイドラインに代わるものとして利用されており、個別の条件等は基本的には政府との交渉や契約によると考えられます。

当ガイドラインによれば、インフラプロジェクトに関連する調達プロセスは、民間事業者からの提案依頼書の発行から開始されます。もしくは、民間投資家がスリランカ政府の公募型プロジェクトに提案書を提出することも可能となっています。当該提案書は、インフラプロジェクトを所轄する委員会で評価、審査され、インフラプロジェクトの必要性を検討し、必要性が認められた場合において、その後、関係政府機関によって、公式に入札プロセスに入ることになり、スリランカの公共調達委員会が発行している公共調達マニュアル(Public Procurement Manual)に従って、手続きを進める必要があります。

 

以 上

[1]  https://ppi.worldbank.org/en/ppi

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年01月26日(火)9:43 AM

タイにおける遅延損害金に係る規則の改定について報告いたします。

遅延損害金に関するアップデート

タイにおける遅延損害金に係る規則の改定

2021年1月26日

One Asia Lawyersタイ事務所

2020年10月28日、タイ中央銀行は遅延損害金の計算方法及び弁済の充当に関する告示第For Kor Ngor. Wor. 245/2563号(以下、「告示」)を発行し、金融機関など金融サービス事業者に適用される遅延損害金に係る規則が改定されました。改定の目的として、中銀ニュース第74/2563号では、①高額な遅延損害金により債務者が弁済できず、システム上での債務残高だけが増加していく仕組みを改定すること、②裁判所での破産手続きを減らすこと、③不良債権の発生を抑えること、④意図せず支払いを遅延してしまった債務者が容易に弁済できるよう支援すること等が挙げられています。告示の概要は以下の通りです。

1.遅延損害金の利率(施行開始日:202141日)

 これまで分割払いやリボ払いの際の遅延損害金の利率については金融サービス事業者が独自に設定することが認められていましたが、告示により、金銭消費貸借契約上の利息の利率に3%以上、上乗せしてはならない、との内容に改定されました。つまり、金銭消費貸借契約上の利息の利率が8%と設定されている場合、遅延損害金の利率は11%以下としなければなりません(契約上の利率が9%だった場合は、遅延損害金の利率は12%以下)。

2.遅延損害金の対象範囲(施行開始日:202141日)

これまでは金融サービス事業者が遅延損害金を計算する際、まだ支払期限に到達していない、つまり、まだ支払遅滞に至っていない債務全額が算定対象に含められ、債務者は一度の支払遅滞で高額な遅延損害金が請求されていましたが、告示により、支払が遅滞している債務(元本)だけを算定対象とするよう改定されました。

 ※図はPDFをご覧ください。

3.弁済時の充当方法(施行開始日:202171日)

 これまで未払債務の一部について弁済がなされた場合、未払債務にかかる全ての遅延損害金及び全ての利息から先に充当され、元本に対する充当は後回しとなっていましたが、告示により、最も長く支払遅滞となっている債務(遅延損害金、利息、元本の順)から先に充当されることになりました。

※図はPDFをご覧ください。

同告示は貸主が金融機関、特別金融機関、ノンバンクの個人向けローン事業者・ナノファイナンス事業者、リース事業者、ハイヤーパーチェス事業者、及び資産管理会社等にのみ適用され、一般の企業が貸付を行う場合には適用されません。

また、上述した1 から3は、告示が定める最低限の基準であって、遅延損害金を請求しない、告示より低い利率を設定する、又は費用からではなく元本から充当するなど、債務者により有利な規則を定めることも可能となっています。

なお、タイ中央銀行は、新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮する債務者数が増加傾向にある現状を踏まえて、上述した中銀ニュースの中で、施行開始日前に発生した遅延損害金についても必要に応じて利息を緩和、又は免除を考慮するよう金融サービス事業者に対し呼びかけています。

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)



2021年01月22日(金)6:28 PM

ラオスのPPP首相令の施行についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスのPPP首相令について

 

ラオスのPPP首相令について

 

2021年1月22日

One Asia Lawyers ラオス事務所

インフラ輸出プラクティスチーム

ラオスにおける官民連携プロジェクト(Public Private Partnership、以下、「PPP事業」)は、2020年6月28日付「ラオスPPP法草案の概要について」にて解説した通り、法整備等が十分に整備されないまま実行されてきました。

昨年末に開通したヴィエンチャン―ワンビエン間のラオス発となる高速道路は、中国企業による50年間のコンセッション事業であり、BOT(Build Operate Transfer)方式によるインフラプロジェクトとなっています。また、医療分野においては、「早期診断・治療による疾病予防」という国が掲げる目標を達成するために、国営の製薬会社と民間企業との連携が重要であるとしている一方で、保健省副大臣は、医療保健分野における、PPP事業の法的な枠組みや立て付けが明確でないため、PPP事業の推進のための法整備の拡充が必要だと述べています。

以上のように、ラオスの新聞や経済ニュース等では、最近、PPPという言葉を目にすることが多くなっており、ラオス政府は、ラオス国内の資金のみでの対応が難しい分野やラオス国内の高度な人材が乏しい分野において、積極的に(外国企業を含む)民間企業との連携を推進すること推奨しています。

2015年頃から検討が始まったPPP法ですが、ようやく2021年1月13日に官報に掲載、掲載後15日後に「官民連携等に関する首相令(以下、「首相令」)」として施行される予定となっています。2020年6月28日付「ラオスPPP法草案の概要について」では、国会審議前の草案の概要を説明致しましたが、大枠の内容については特に大きな変更はありませんでしたが、今回、PPP事業の定義、政府の方針及びPPP事業の承認プロセスについての新たな規定が確認できましたので、それらの点についてご紹介します。

 

  • 1. PPPの定義
  • 定義については、草案と比較すると、対象となる分野について一部修正がありました。首相令第2条によれば、PPP事業とは、「一定の期間において、PPP契約のもと実施される政府と民間の連携事業、又は、民間が政府のプロジェクト[1]に全投資する事業(民間による直接投資[2])をいう。例えば、新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス関連事業、その他、観光、農業、エネルギー、鉱山等の開発事業」と定義しており、今回、具体的な事業内容が追加されており、ラオス政府のPPP事業における具体的な重点分野や産業が明らかになったといえます。

 

  • 2. PPP事業に関する政府の方針 (4)
  • 草案には政府の方針は示されていませんでしたが、以下の通り、PPP事業を推進するために、PPP事業に対する恩典付与の可能性について言及しています。政府は、連携する国内外の民間企業を積極的に支援する方針としており、例えば、関税、税金、労働力、土地使用権、資金源、条件や環境の整備等についても、特別な措置を講じる可能性があると規定しています。

 

  • 3. PPP事業の承認機関について
  • 草案には記載はありませんでしたが、案件別による監督・承認機関が定められています。下記に記載されている案件は、一例となっており、これら以外の案件については、既存の法令等と鑑みて、最終的な監督承認機関が決定されますが、承認に関する一定の基準を示したことは評価できるといえます。

 

1)国会の承認が必要な案件(第28条)

  • 事業規模が3億米ドルを超える案件
  • 政府の出資額が200億キープ(約200万米ドル)以上
  • 原子力発電所の建設案件
  • 国の保護林及び保全林に影響する案件
  • 自然環境に大きな影響を与える案件(自然の水循環経路への影響、500家族以上の住民移転、1万ha以上の土地コンセッション事業など)
  • 特別な措置が必要な案件

 

2)県レベルの国民議会の決議が必要な案件(第28条)

  • 政府の出資額が200億キープ以下の案件
  • 100ha以下の荒廃林地に影響する案件
  • 1事業につき30~200haの不毛林地に影響する案件
  • 150ha以下の荒廃林地を最大30年間、リース又はコンセッションする案件
  • 自然環境に影響する案件

 

3)政府が承認する案件(第28条)

  • 政府が出資しない案件
  • 国の保護林及び保全林に影響しない案件
  • 自然環境に大きな影響を与えない案件及び500家族以下の住民移転など
  • 事業規模が3億米ドルを超えない案件
  •  

[1] 自然資源、政府の資産及び利権を使用した既存のインフラ開発や公共サービスの提供又は新規開発プロジェクト(Green field投資)

[2] 案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、プロジェクトの経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、政府のプロジェクト開発において、民間セクターが投資の全責任を持つかたちで参入し、政府から支援を受ける投資形態。

 

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年01月14日(木)9:32 AM

ラオスにおける国営企業のガバナンスについてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの国営企業について

 

ラオスにおける国営企業のガバナンスについて

 

2021年1月14日

One Asia Lawyers ラオス事務所

1.背景

ラオス国内には100社以上の国営企業が存在していますが、経営不振に陥っている国営企業の株式を民間企業に売却したり、民間に払い下げる動きが出ています。会社法では、国営企業に関する詳細は定められておらず、ガバナンスに関する規定が明確に定められていません。そこで、今回、昨年9月28日付で発行された「国営企業の取締役会に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」)」は、過去に発行された国営会社の株主や取締役の選任に関する規則をさらに詳細に規定したガイドラインとなっています。同ガイドラインは、昨年12月23日に官報に掲載、15日後に施行されています。ラオスにおける官民連携型のプロジェクト事例が増えてきており、国営のガバナンスについて、今回共有致します。

2.国営企業の定義

本ガイドライン第3条によれば、国営企業とは「政府が設立した事業体、全会一致で他の企業から国に事業体を移行、他の企業の株式を購入したことにより、政府が株式の51%以上を保有する事業体」と定義されています。

3.取締役会について

政府が100%の株式を保有する国営企業(以下、「100%国営企業」)においては、取締役会が、事業上の意思決定機関となっています。他方、政府が50%以上の出資しているが、100%国営企業ではない場合は、株主総会が、事業上の業務意思決定機関となります(第2条、4条)。

取締役会は、基本的には、議長、副議長、取締役会監督委員会の5人以上のメンバーで構成されています。メンバー総数の少なくとも10%は、女性が含まれる必要があります(第2条)。なお、任期は3年間で、再任も可能となっていますが、財務省又は株主総会による内部評価を経た上で、再任される必要があります(第20条)。

(1)議長・副議長(第4条)

議長は、財務大臣より選出・任命されます。副議長については、100%国営企業の場合は、財務大臣より選出・任命され、民間企業が出資している国営企業の場合(以下、「官民合弁」)は、政府関連機関及び株主の全会一致により、民間より選出されます。

(2)マネージング・ダイレクター(以下、「MD」)について(第4条)

MDは、取締役会より選任されます。場合によっては、財務大臣の任命により、副議長又は取締役会監督委員長が兼任することも可能です。官民合弁(政府が51%以上、99%以下の出資)の場合は、財務大臣が、候補者の中からMDを選出し、株主総会によって正式に任命します[1]

4.取締役会の開催について

取締役会の開催回数については、定款で定めることが可能となっています。通常、国営企業の場合、取締役会普通決議は、1年間に少なくとも最低2回開催されなければなりません(第11条)。

また、定足数は、取締役の過半数以上と規定されています。議決要件は、議決に参加できる取締役の半数以上の賛成が必要となっています(第11条)。また、書面で作成された取締役会決議書の作成、保管も必要です(第11条)が、こちらはラオス会社法と同様の内容です。

5.株主総会について

官民合弁(政府が51%以上、99%以下の出資)の場合は、株主総会が、業務上の意思決定機関となり、開催回数については、定款に定める必要がありますが、少なくとも、1年に1回以上開催する必要があります。

普通決議要件は、株主総会に出席した株主の3分の2以上の賛成、かつ、賛成した株主が総株式数の80%以上を保有する必要があり(第26条)、株式会社等の特別決議要件と同じ要件となっています。

[1] 政府が保有する株式が51%以下の事業体の場合は、民間より候補者を選出し、株主総会により決定されます。

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2021年01月07日(木)11:04 AM

バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンにおける個人情報保護法のアップデートについてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおける個人情報保護法のアップデートについて

 

 

バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンにおける個人情報保護法のアップデート

2021年1月07日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

南アジアにおいても、近年、個人情報保護の対応に関する法規制が整備されつつあります。そのような状況を踏まえて、今回、バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンの個人情報保護法の導入状況やアップデートを共有します。

1.   バングラデシュにおける個人情報保護法について

 現在時点(2021年1月)において、バングラデシュでは、個人情報の侵害に対する包括的な法的保護は存在していません。バングラデシュでは、国家のデジタルセキュリティを確保し、デジタル犯罪の特定、防止、抑止等に関する法律を制定することを目的とし、2018年に「デジタルセキュリティ法」[1]が成立しており、同法において違法な個人情報の収集及び使用についての罰則規定を設けています。

同法第 26 条は、ID情報の収集および使用に関連する犯罪を規定しています。第 26 条1項に基づき、本人の明示的な同意のないID情報の不正使用(ID情報の不正な収集、販売、所持、供給)は犯罪と定義されています。なお、同意の取得方法等の手続きについては、明確な規定は存在しません。同法に違反した場合、5 年を超えない期間の懲役または 50万タカの罰金、またはこれらが併科されます。そして、ここでいうID情報には、氏名、生年月日、父母の氏名、国籍、署名、国民ID、出生・死亡登録番号、指紋、パスポート番号、銀行口座番号、運転免許証、E-TIN番号、電子またはデジタル署名、ユーザー名、クレジットまたはデビットカード番号、声紋、網膜画像、虹彩画像、DNAプロファイルが含まれると規定されています。

2018年デジタルセキュリティ法の施行後、電気通信、電子商取引、フィンテック、銀行等の事業者は、第26条を遵守するためID情報を取り扱うにあたり、その個人から同意を得なければならなくなり、現地実務において大きな影響が生じました。また、バングラデシュ政府は、デジタルセキュリティ法第60条に基づき、この法律の目的を達成するための細則の策定作業を進めています[2]

 

2.  ネパールにおける個人情報保護法について

ネパール憲法は、基本的な人権として情報の保護とプライバシーの権利を規定しています。これらの権利を保護するため、2018年に個人プライバシー法(「プライバシー法」)が成立しました。このプライバシー法は、他国の個人情報保護法と異なり、個人情報の収集、保管、利用に関する規定だけでなく、全ての個人は、住居、財産、文書、データ、通信、性格に関するプライバシー権を有することを定め、法律で定められた場合を除き、その権利が侵されないことを定めています。

プライバシー法では、以下の情報を個人情報として詳細に定義しています。

(1) カースト、民族、出生、出自、宗教、肌の色または婚姻の有無。

(2) 学歴または学歴資格。

(3) 住所、電話番号、電子メールアドレス。

(4) パスポート、市民権証明書、国民IDカード番号、運転免許証、有権者IDカード、または公的機関が発行したIDカードの詳細。

(5) 個人情報の記載がある送受信された手紙

(6) 拇印、指紋、網膜、血液型、その他の生体情報

(7) 犯罪歴または犯罪行為または刑の服務のため課せられた刑の詳細

(8) 何らかの決定の過程で、専門家により表明された意見や見解

そして、法律で定める場合を除き、個人情報を収集することは禁止しています(プライバシー法第23条1項)。もっとも、調査、研究又は世論調査を目的とする場合、その目的などの一定事項を通知し、その個人の同意を得た上で、個人情報を収集することがでます(プライバシー法第23条2項~4項)。

また、プライバシー法で禁止されている行為を行った場合、懲役刑や罰金刑が科されます。

以上のとおり、ネパールのプライバシー法は、他国の個人情報保護法に比べ、プライバシー保護に重点を置いた法律であり、個人情報の利用については、調査、研究又は世論調査を目的として同意を得た場合に限定されています。ゆえに、一般企業による個人情報の利用の範囲が不明瞭といわざるを得ません。

 

3.  パキスタンにおける個人情報保護法について

 現時点(2021年1月)では、パキスタンにおいて、個人情報保護法等の包括的なデータ保に関する具体的な法律は存在していません。もっとも、2020年4月、パキスタンの情報技術通信省は、2020年パキスタン個人データ保護法草案(以下、「草案」)を発表しています[3]。この草案はまだパキスタン議会に提出されていないものの、今後、議会において可決されれば、大統領の同意を得て公布されることになります。

 

法案の主な内容は次の通りです[4]。草案によれば、個人情報保護法が施行されてから6か月以内に、政府はパキスタンの個人データ保護局を設立しなければならないと規定しており、同局は、データ主体の利益を保護すること、個人データの保護を確保すること、個人データの悪用を防止すること、データ保護に関する意識の向上を促進すること、苦情を受けるけること等の責任を負っています。

また、具体的な個人データの保護規定については、EU一般データ保護規則(GDPR)を踏襲しつつも、管理者及び処理者の登録制度などパキスタン独自の規定が置かれています。

まず、個人データについて、データ主体に直接または間接的に関連する情報であって、その情報から識別または識別可能なもの、または、データ管理者が保有する情報およびその他の情報から識別可能なものをいい、個人を特定できない匿名化されたデータや暗号化されたデータ、または仮名化されたデータは、個人データではないとしています。GDPRでは匿名化は不可逆的な処理が必要であるが、仮名化されたデータは個人を特定するために必要な情報と付き合わせれば個人を特定できるのでなお個人データとされているところ、パキスタンの草案では暗号化や仮名化された情報は個人データではないとしている点が特徴的といえます。

また、生体認証データや健康に関する情報、宗教などの機微情報だけでなく、アクセス制御に関するデータ(ユーザー名および/またはパスワード)、銀行口座、クレジットカード、デビットカード、その他の決済手段の詳細などの金融情報、パスポート情報を含めて「機密性の高い個人データ」と定義され、ほかの個人データとは区別している点も特徴的です。

さらに、GDPRと同様、個人データを取得・処理・開示するデータ管理者やデータ管理者にかわりデータを処理するデータ処理者についても規定されています。なお、草案では、個人データ保護局にデータ管理者とデータ処理者の登録制度を考案・策定する権限を与えているので、草案がそのまま法律として成立し施行されれば、データ管理者とデータ処理者の登録制度が導入される可能性が高いといえます。

データ管理者は、個人データの収集および処理について、データ対象者に書面による通知を行わなければなりません。加えて、個人データの取得・処理・開示については、原則として本人の同意が必要であり、同意は本人の希望を自由に与えられ、具体的で、十分な情報を提供された上で、かつ明確に意思表示されたものでなければなりません。なお、個人データの国外移転については、転送先の国においてパキスタンと同等の法的保護を受けることができることが要件となっていますが、転送にあたっての手続の詳細については法律で明記されていません。また、個人データが漏洩した場合など個人データの侵害があった場合、データ管理者は72時間以内に個人データ保護局に報告しなければなりません。

以上のとおり、パキスタンの草案は、GDPRを踏襲している部分が多く、その解釈にあたってはGDPRやそのガイドラインが参考になるといえるでしょう。

 

4.  スリランカにおける個人情報保護法について

現時点(2021年1月)では、スリランカにおいて、包括的な個人情報保護規定は存在していません。ただし、スリランカのデジタルインフラ・情報技術省は、2019年にデータ保護とサイバーセキュリティを管理するサイバーセキュリティ法案[5]と個人情報保護法案[6]の草案を作成しています。 これらの草案は、新たなサイバーセキュリティと個人情報の保護に関する問題に対処するための規制の枠組みを構築することを目的として起草されています。

サイバーセキュリティ法案は、サイバー攻撃から重要な情報や重要なサービスを守るために、スリランカ政府内に「サイバーセキュリティ機関」を設立することを規定しています。サイバーセキュリティ法案の直後に発表された個人データ保護法案は、個人情報を保護し、個人情報の処理を規制することを目的としており、憲法上の権利であるプライバシーの権利にも対応できる内容となっています。

(1)2019年スリランカ個人情報保護法案[7]

内容はほぼGDPRを踏襲しています。

例えば、データ主体について、名前、識別番号、位置情報、オンライン識別子、または自然人の身体的、生理学的、遺伝的、心理的、経済的、文化的、社会的アイデンティティに固有の1つ以上の要素を含むがこれらに限定されない識別子を参照することにより、直接的または間接的に識別可能な個人、と定義しており、データ主体及び個人データについてGDPRとほぼ同様の定義がなされています。

また、個人データを適法に取扱いできる場合や、センシティブデータの取扱い、同意取得の条件、国外移転、データ主体の権利、データ管理者およびデータ処理者の義務等についてGDPRとほぼ同じ内容となっています。

この法案において特徴的な点は、データ管理者が登録制である点です。データ管理者になろうとする者は、処理する個人データや個人データのカテゴリー、処理目的、開示先等を所定の様式に記載して個人情報保護局に申請し、登録料を支払ってデータ管理者の登録をしなければなりません。この登録は1年ごとに更新する必要があります。

また、ダイレクトマーケティングでの個人データの利用についても規定しており、データ主体から明確な同意があれば、エンドユーザーの個人データを利用して、インターネットや、電話でダイレクトマーケティングを行うことができる旨規定しています。

(2)2019年サイバーセキュリティ法案[8][9]

スリランカサイバーセキュリティ法案において、サイバーセキュリティ機関が設置される予定となっており、当機関には次のような機能が委ねられる予定となっています。具体的には、国家サイバーセキュリティ戦略、基準の策定、情報保護のための戦略と計画の策定、サイバーセキュリティに関する中心的な窓口機能等を果たすことが規定されています。

 

5.  ブータンにおける個人情報保護法について

現時点(2021年1月)では、ブータンには、個人またはその他の団体の個人データの保護に関する別途の統一的な法律は存在しません。しかしながら、ブータン政府は、2006年に制定された情報技術、通信及びメディアに関する規則を改正し、2018年1月8日に「情報通信及びメディアに関する法律(以下、「ICMA法」)を制定しています。同法は、データ保護、サイバーセキュリティや電波通信及びその他の関連分野に関する規定を定めたものです[10][11]。本法第17章では、オンラインまたはオフラインのプライバシーの保護に関する規定を置き、データ保護について具体的に定めています。

ICMA法は、すべての情報通信技術およびメディア・セクター、ならびにICTおよびメディア・サービスおよび施設の提供者およびユーザーに適用されます。すべてのICT・メディア設備およびサービス提供者は、プライバシーポリシーを策定し、個人情報(機密性の高い個人情報を含む)が収集または要求されるウェブサイトおよび場所に、当該方針を掲載しなければなりません。サービスプロバイダー、ベンダー、ICTまたはメディア施設は、適切で意図された目的のためにのみ、個人情報の収集、使用および保管を制限するものとします。利用者又は消費者からの申出があったときは、当該役務提供者は、その収集及び保存している情報を撤回又は削除する義務を負います[12][13]

サービスプロバイダー、ベンダー、ICT、またはメディア施設は、利用者や消費者の個人情報(機密性の高い個人情報を含む)を第三者に転送した場合であっても、引き続きそれらの個人情報に対する保護責任を負うと規定されています[14][15]

所有、管理、または運用するするコンピュータまたはネットワーク、データベースまたはソフトウェアにおいて、個人データ/情報(機密性の高い個人データ/情報を含む)を取り扱う者が、合理的なセキュリティの実施および保守を怠り、それにより個人に損害を与えた場合、その個人データの取扱者は、裁判所の決定に基づいて、生じた損害を被害者に賠償する責任を負います[16]

また、他人の個人データ/情報(機密情報を含む)にアクセスし、その者の同意なしに、または契約に違反して、その者に損害を与えるおそれがあることを意図しながら、または、知りながら、当該データ/情報を第三者に開示した者は、刑罰に処せられる旨規定されています[17]

 

                                         以 上

[1]https://www.cirt.gov.bd/wp-content/uploads/2018/12/Digital-Security-Act-2018-English-version.pdf

[2]https://www.thedailystar.net/opinion/human-rights/news/bangladesh-steps-the-data-protection-regime-1726351

 

[3]https://www.moitt.gov.pk/SiteImage/Downloads/Personal%20Data%20Protection%20Bill%202020%20Updated.pdf

[4]https://iclg.com/practice-areas/data-protection-laws-and-regulations/pakistan

 

[5]http://www.mdiit.gov.lk/images/Cyber_Security_Bill_2019-05-22_LD_Final_Version.pdf

[6]http://www.mdiit.gov.lk/images/Legal_framework_for_proposed_DP_Bill_11th_June_2019_-_revised_FINAL_ver3.pdf

[7]https://www.ikigailaw.com/new-era-of-data-protection-regulation-in-south-asia/

[8]https://www.cert.gov.lk/Downloads/Cyber_Security_Bill_2019-05-22_LD_Final_Version.pdf

[9]https://www.ikigailaw.com/new-era-of-data-protection-regulation-in-south-asia/

[10]https://www.nab.gov.bt/assets/uploads/docs/acts/2018/ICMActofBhutan2018.pdf

[11] APAC地域のデータ保護に関する論文

[12] ICMA法第337条

[13] ICMA法第339条及び第340条

[14] ICMA法第342条

[15] ICMA法第343条

[16] ICMA法第387条

[17] ICMA法第388条

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2020年12月25日(金)12:34 PM

ラオスにおける信用保証会社についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの信用保証会社について

 

ラオスにおける信用保証会社について

2020 年12月25日
One Asia Lawyers ラオス事務所

1. 背景
2020年9月のニュースレターにおいて、民法典に基づいた担保制度について解説いたしました。その中で、人的担保制度について述べましたが、それと関連して、2020年12月21日付けで信用保証会社に関する合意(以下、「本合意」)が中央銀行から発行されましたので、概要をご紹介いたします。

2. 法律上の定義
本合意第3条によれば、信用保証会社が提供するサービスとは、「債務者が債権者に対して契約に基づいて債務が履行できなくなった場合、債務者に代わって清算することを保証するために債権者に対して信用保証書を発行することにより、債務者の義務を保証するサービス」と定義されます。

3. 会社設立について
信用保証業者に関する許可取得要件は次の通りとなっています。

(1)登録資本金
最低登録資本金は、1,000億キープ(約1,000万米ドル)以上と規定されています。現物出資は許容されていますが、登録資本金額の25%を超えることはできません(財産評価会社による評価額を基準として判断)。また、登録資本金は、ラオス中央銀行の口座に預金する必要があります(第12条)。

(2)取締役会
取締役会は、議長、副議長、役員(取締役)より構成されます。役員は5人以上、7人以下と規定されています。役員の中から、マネージング・ダイレクター(MD)及び副MDを選出する必要があります。なお、MDは取締役会の議長、副議長になることはできません。なお、任期は3年間で、再任も可能となっています(第18条)。

(3)取締役会監督委員会及びリスクマネジメント委員会
リスクマネジメント委員会は、取締役会の役員から3人選出され、その中の一人は取締役会監督委員会の委員長である必要があります(第20条、第21条)。

4. 事業許可取得要件
本合意第7条によれば、信用保証会社を設立しようとする者は、商工省、都・県商工局等で企業登録を行った後、ラオス中央銀行金融機関管理局(以下、「金融局」)より事業許可書を取得する必要があります。事業許可取得に必要な書類の中には、FSをはじめ多くの書類を要求されますが、すべてラオス語で作成する必要があります。

また、合弁契約書・株主間契約書、定款は、公証役場又は登録機関で認証・登録済みであること、外国語からラオス語へ翻訳した文書については、公証役場又は翻訳会社からの認証があることが求められています(第8条)。

なお、金融局は、完全に揃った書類を受理後、30日以内に審査結果を通知します。金融局は書類の審査と同時に、株主としての以下の要件を満たしているかどうかについても審査します(第9条)。

<株主が法人の場合(第10条)>
(1)3年以上利益が継続して出ているビジネス(利益が継続して出ていること)及び累積赤字でないこと
(2)財政状況が安定していること
(3)自身の会社の株主構成が明確であること
(4)マネーロンダリング又はテロ資金供与に関わるブラックリストに登録されていないこと

<株主が個人の場合>
(1)資金源が十分かつ明確であること
(2)大株主(10%以上保有)の場合、適切な資格と実務経験を有していること
(3)刑事事件に関する犯罪歴(横領、詐欺等)がないこと
(4)マネーロンダリング又はテロ資金供与に関わるブラックリストに登録されていないこと

5. 事業内容
信用保証会社は、保証業務のほかに、ラオス中央銀行及び関連する機関より許可を得た別の事業を行うことが可能です(第25条)。
信用保証会社は、個人に対しては、登録資本金額の最大15%、信用運用資金の最大80%を保証範囲とすることが定められています。他方、グループに対しては、登録資本金額の最大20%までが保証範囲となっています。
また、保証額総額は、登録資本金の最大15倍までと規定されています(第26条)。

6. 罰則規定
本合意の規定に違反した場合、2回目の警告と同時に200万キープから2,000万キープ又は1日100万キープの罰金が科せられます。3回目の警告の後、是正されない場合は、180日間の事業停止又は会社役員の除名等を中央銀行より命じられます。それでも、改善されない場合は、最終的には事業許可証のはく奪及び会社の清算が命じられる可能性があります(第49条)。

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2020年12月29日(火)10:48 AM

タイにおけるICO規制に関するアップデートについて報告いたします。

ICO規制に関するアップデート

 

タイにおけるICO規制に関するアップデート

2020年12月11日

One Asia Lawyers

フィンテック・ICOプラクティスチーム

1 はじめに

現在、タイにおいて、資金調達手段としてInitial Coin Offering[1](以下、「ICO」)が利用される環境が整ってきています。タイにおいても暗号資産の交換・取引が活発化しており、当事務所に寄せられる相談も増加しております。当事務所において、タイのICOポータル事業許可の取得支援の経験等を踏まえて、タイにおけるICO規制の概要とポイントを共有します。

仏暦2561年(2018年)、タイでは暗号資産事業に関する緊急勅令が発布され、2018年3月13日に施行されています[2](以下、「本勅令」)。本勅令は、暗号資産に関連する活動や事業を監督・監視する目的で制定され、タイ王国証券取引委員会(以下、「SEC」)に本勅令に基づく監督・監視の権限を与えています。

ICOの公募手続については、本勅令第19条の規定により、ICOの発行者は、SECの承認を受けたICOポータルサービスプロバイダー(以下、「ICOポータル」)を通じて公募手続きを行うこと規定されています。

2019年に、ICOポータル事業者の第1号許可申請があり、SECの許可を得て運用を開始しております。現時点で、タイにおけるICOポータル許可事業者は、Longroot (Thailand) Co, Ltd.、T-BOX (Thailand) Co, Ltd.、SE Digital Co, Ltd.、BiTherb Co, Ltd.の4社となっており、さらにそのうちの3社がすでに運営を開始しています。ただし、タイで実際に承認されたICOプロジェクトは今のところはまだありません。

ICOポータル事業者の申請が増加しており、一部の事業者が運営を開始したことに加え、SECやAnti-Money Laundering Office (以下、「AMLO」)など暗号資産取引の透明性を監督する2つの規制当局の知見が蓄積されてきていることから、来年以降、実際のICO事案が承認される可能性が高いと考えています。今後、資金調達を希望するタイの小中規模企業の多くがICOを資金調達の一つの手段として利用していくのではないかと期待しています。

2 ICOポータルとは何か、その役割

ICO ポータルとは、新規に発行されたIOCの募集を円滑に行うための電子システムを提供する事業者を意味します。ICOポータル事業者は、ICOポータル事業者としての運営を開始する前に、SECを監督する財務省からICOポータルのライセンスを取得しなければなりません。その申請プロセスについては、後述の「申請プロセス」においてご紹介します。

ICOポータル事業者の役割には、提供されるICOの特性や発行者の適格性についてデューデリジェンスを実施することや、SECに対して、ICO申請書を提出する前に、登録明細書や目論見書案、その他ICOポータルを通じて開示される情報の正確性を確保することなどが含まれています。

3 申請プロセス

 ICOポータル事業者として事業を運営するためには、ICOポータルライセンス(以下、「ライセンス」)を取得しなければならず、ライセンスを取得するためには、SECに申請書を提出する必要があります。 実務上、申請手続は以下のようなステップを踏むことになります。

(1)SECへの問い合わせ

ICOポータル事業を運営しようとする企業(以下、「事業者」)は、まずSECに問い合わせを行う必要があり、この問い合わせの後、SECは事業者のプロジェクトを担当するチームを任命し、事業者に助言を提供したり、場合によっては会議を設定したり、電子メールや電話等でヒアリング等を行い、初期相談を行います。担当チームの選任から相談までには、2~4週間程度の期間が必要となります。担当チームは、(i)タイでの会社設立などの法律上の資格、事業者の最低資本金、(ii)AMLOなどの関連規制機関への照会、(iii)申請書の作成と提出に必要な書類など、一般的な情報やライセンス取得までの流れを事業者に詳細に伝えます。過去の経験上、SEC担当者の対応やサポート等は、基本的に丁寧で、申請準備に対する障害等は特にありませんでした。

(2)申請書提出

事業者はSECの担当チームと協議した後、以下のように実施を含めた申請準備を行います。通常、このプロセスでは、法律の遵守を審査し、事業者の問題を構造化するための法務担当者や、ITシステムを運用するためのIT専門家などの専門家から適切なサポートを得る必要があります。なぜなら、SECの担当者の知識レベルは相当高く、専門家のサポートを得て回答しなければ、対処が難しい場合が多いからです。なお、申請の前段階で相当な体制構築が求められており、初期段階で一定程度の投資が必要になる点には留意が必要です。具体的な内容は次の通りです。

① 法律上の最低要件

(i) タイでの会社設立、 (ii) 最低登録資本金500万バーツ(約1700万円)を満たすための資本の投下、およびSECが要求するその他の条件(規則が要求する事務所や体制の構成等)を満たす必要があります。

② 組織体制

ビジネスモデル、株主構成、会社組織、スタッフの情報など、組織に関連する書類を作成し、組織実態が存在することを説明する必要があります。

③ 必要な方針・体制の整備

方針及び制度については、ICO ポータル事業は SEC の監督下にある暗号資産に関連する事業であり、また AMLO の監督下にある金融機関とみなされるため、方針及び制度の実施は、以下のように SEC 及び AMLO の規制に関連するものとなります。

ア SECの規制に基づく方針・体制については、募集に関する方針・体制、BCP(事業継続計画)の策定、コンプライアンス体制、コンプライアンス管理、デューデリジェンスポリシーやマニュアル等の作成、運営上必要な方針・体制を整備する必要があります。

イ AMLOの規定に基づく方針・体制については、取引監視、マネーロンダリングのリスク管理、顧客のデューデリジェンス、KYC(顧客確認)制度など、マネーロンダリング対策に関する方針・体制を整備する必要があります。

(3)審査と監査

申請後、ライセンシーの許可を受けた事業者は、その許可を受けた日から180日以内にSECからの営業許可を受けなければ、営業活動を行うことができません。この営業許可を取得するためには、事業者はSEC及びAMLOが要求するシステム及び方針を実施し、一般に公開するための準備をしなければなりません。その実施完了後、事業者はSEC及びAMLOにシステム及び方針の準備ができているかどうかを監査するための立入検査を要求しなければなりません。

SEC及びAMLOが指定する期日において、監査が行われますが、著者の経験上、2日間に渡る長丁場の監査ではありましたが、日本の金融庁等との監査のイメージとは異なり、基本的にカジュアルな雰囲気の中、友好的なかたちで進んでいきました。

ITシステムと各種ガイドライン等の準備ができている場合、SECは営業許可書を発行して交付し、営業許可を受けた事業者はその後、営業することができます。しかしながら、ITシステムやガイドライン/マニュアル等に修正すべき点があるとSECが判断した場合、SECは追加または修正すべき点を通知し、事業者は追加または修正したガイドライン等やITシステムを修正し、再度SECに提出又は説明を行い、同期限(免許取得日から180日)内に再確認して承認を受けなければなりません。

当事務所の経験を踏まえると、完全なライセンス及び営業許可の取得に要する期間については、問い合わせ開始から運用開始までには、全体で1~2年程度必要となるのではないかと考えています。

4    ICOポータル事業運営の重要なポイント

ICOポータル事業運営上、事業者は以下の点に注意する必要があります。なお、以下は一例となっております。

(1)資格維持

資格の維持に関して、細かい規定が存在しており、それらの規定を十分に理解する必要があります。例えば、流動資産を500万バーツ以下にしないこと、運営システムを法律の要件以下に変更しないこと、法律で禁止されている性質を有する役員を任命しないこと等があります。要件を満たさない、法令に違反等する場合は、SECの命令により、営業許可の停止または取り消し等の措置を受ける可能性があります。

(2)責任制限または免除

事業者は投資家との間で、事業者のサービスの提供によって投資家に生じた損害について、責任の制限または免責等の契約を締結してはならないと規定されており、留意が必要です。

(3)データの保管

事業者は、ICOポータルの運営に関連する情報を、少なくとも3年間、保持しなければなりません。2021年から個人情報保護法の施行もあり、SECやAMLOもデータの管理について、関心が高く、十分なデータ管理体制を構築する必要があります。

(4)ライセンス料

事業者はSECに年間10万バーツ(約35万円)のライセンス料を支払わなければなりません。

(5)SECへの報告

事業者がICOやICO発行者が法律や規制に違反している、またはその可能性があることを発見した場合、当該事業者はそのようなプロジェクトや発行者を指導し、速やかにSECに報告しなければなりません。

(6)AMLO への報告

事業者は、業務中の指定者の移動及び不審な取引について、少なくともAMLO に報告するとともに、毎年、報告書を作成し、AMLO に提出する必要があります。

5    最後に

ICO事業を運営しようとする事業者は、運営を開始する前にSECに申請書を提出して営業許可を取得しなければならず、申請書を作成するためには、SECやAMLOの規定に準拠した社内規定やシステムを導入する必要があるため、前述の通り、法律の専門家やITの専門家などの専門家の支援体制を十分に構築する必要があります。前述の通り、SECやAMLOの知見レベルは高く、相当な専門性のあるチームを組成することが重要だと考えております。

また、今後、監督当局やICOポータル事業者の信頼が高まり、資金調達を希望するタイの小中規模企業の多くがICOを資金調達の一つの手段として活用されることを期待しており、引き続き、動向をフォローして参ります。

 

[1] ICOとは、新規暗号資産公開を意味します。ICOは「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」と呼称されることもあり、企業が暗号資産を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う、資金調達手段の一種です。これまでは、企業は株式を発行し、IPO(株式の新規上場)を行ってきましたが、株式を上場するためには多くの審査等の相当な労力とコストが生じていましたが、ICOでは、比較的少ないコストで、より円滑に資金調達を行うための手段として注目されています。

[2] 「タイにおける暗号資産取引・ICO規制について」One Asia Lawyersニュースレター 2018年版

https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/fd9c820eae4b9c84989d5602858a773c.pdf

以 上

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

kazutaka.mori@oneasia.legal (森 和孝)
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)


Older Posts »