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2020年10月23日(金)6:54 PM

コロナ渦における取締役居住者要件の時限的緩和(ミャンマー/インド)についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

コロナ渦における取締役居住者要件の時限的緩和(ミャンマー/インド)について

 

 

 

 

コロナ渦における取締役居住者要件の時限的緩和(ミャンマー/インド)

2020 年10月23日

One Asia Lawyers

インド事務所/ミャンマー事務所

1 ミャンマーにおける時限的規制緩和

 新型コロナウイルス(以下、「Covid-19」)の感染拡大により、日本に帰国している日本企業の取締役や支店代表が多く存在しており、後述する新会社法の要件を満たすことができず、ミャンマー人スタッフ等を取締役に選任する、又は、支店代表者等に選定するか否かの判断を迫られていました。

そこで、ミャンマー政府(DICA)は、2020年10月20日に会社取締役の居住要件に関する告示(92/2020、以下、「告示」)を発表しております。主な内容として、2018年8月1日に施行した新会社法における取締役居住者要件の例外措置を発表しております。

同告示において、前提として、ミャンマーで設立される会社は、取締役(又は支店代表者)は、最低1名以上、ミャンマーに居住しなければならないことを定めており(会社法第4条(a)(v))、その具体的な居住要件の内容は12ヶ月のうち、183日以上の滞在が要件として求められています(同法第4条(c)(xix))。

この点、同告示によれば、Covid-19の感染拡大防止のため、国際旅客機の乗り入れ禁止措置が開始された3月29日から、政府による公式な入国再開日までは、居住判定期間に算入されないことが明記されており、上記で述べたような対応を特に取る必要はなくなりました。もし本件に関する根拠規定が必要な方は、お気軽に当社にお問い合わせ下さい。

2 インドにおける時限的規制緩和

 インドにおいても、上記ミャンマーと同様の文脈において、取締役の居住要件の緩和がなされております。インド政府は、10月20日に通達(36/2020、No.2/01/2020-CL-V)によれば、「Covid-19の感染拡大を考慮した2013年会社および2008年有限責任パートナーシップに対する特別措置」というタイトルにて、インド会社法第149条に基づき求められる取締役の居住要件の緩和が発表されています。

インド会社法においては、1年間に少なくとも182日以上、少なくとも1名の取締役の居住が求められておりましたが、同通達により2020/2021年の会計年度については、取締役が居住していなくとも法令違反にあたらないことが確認されています。そのため、ミャンマー等と同様に、現地スタッフを取締役に選任する等の議論が行われていましたが、特にそのような対応が不要となりました。もし本件に関する根拠規定が必要な方は、お気軽に当社にお問い合わせ下さい。

 

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します

yuto.yabumoto@oneasia.legal

 

2020年10月23日(金)6:23 PM

スリランカの投資環境および投資規制についてニュースレターを発行しました。

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スリランカの投資環境と投資規制について

 

 

スリランカの投資環境および投資規制の概要

2020年10月23日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

1 スリランカの魅力と投資環境

 スリランカ民主社会主義共和国(以下、「スリランカ」)は、2009年の内戦終結に伴う国内情勢安定化を背景に、投資が拡大しています。特に、戦後のインフラ関連投資が増加しています。また、スリランカ国内には8つの世界遺産が存在しており、外国人観光客も急増していましたが、2019年4月に発生したコロンボでのテロに続いて、コロナ禍において観光業など主要な産業がダメージを受けており、経済の早期回復が望まれるところである。

 ODA関連事業者を除けば、後述するスリランカの地理的優位性に注目した製造業、物流業者、造船業者等の進出やスリランカ独自の強みを活かした事業者(例えば、スリランカ人の手先の器用さを活かした食器等の製造を行う会社やスリランカの天然ヤシを利用する事業者)による投資が行われています。

スリランカとインドの間ではFTAが締結されており、スリランカは、インドプラスワンとして活用されるケースが多いですが、著者としては、今後ASEANプラスワンとして、ASEANからスリランカへの企業進出が増加し、日系企業を含むASEAN企業のインド、中東、アフリカに向けた中継地(ハブ)として機能することを期待しています。

(1)ASEANとアフリカ等を繋ぐ中継地点[1]

 その理由の一つは、ASEANをはじめ、インド、中東、アフリカ等の新興国や欧州に近く地理的優位性があり輸送ハブ拠点として活用できる可能性があります。既にスリランカのコンテナ取扱量は、インド洋に面した主要港湾の中で、インド最大のジャワハルラルネール港に次いで第2位ですが、インド洋の輸送ハブ機能を強化するため、コロンボでは港湾の開発が急ピッチで進んでいます。さらに、インドの港は、場所によって浅く、大型船が着港できないことがあります。その点、コロンボ港の水深は17〜18メートルもあり、スリランカで小型船に積み替えることも可能です。スリランカは、21世紀と22世紀に勃興するであろうASEANとアフリカ諸国の中間に位置しており、今後、さらに港湾が強化されていけば、スリランカの重要性はさらに増していくことが想定されます。

(2)スリランカ人材の魅力

 二つ目の理由は、スリランカの人的な魅力です。筆者がスリランカの人々と接して驚いたのが、信仰深い仏教徒が非常に多いということです。筆者の駐在経験が長いタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー等のASEAN諸国との親和性が高いと感じています。また、スリランカは、日本と同様に、島国の小国で、歴史的に灌漑農業で発展してきた農耕民族の国であり、共存・共栄していく共同体の精神はかつての日本に類似しているところがあり、日本人にとっては親しみあると感じられます。

 さらに、一般的に高い教育水準(例えば、高い識字率等)と高い英語能力を備えており、この点に着目した日系IT企業がスリランカでソフトウェア開発を行っているケースもあります。また、筆者が現地弁護士事務所や会計事務所等を訪問し、業務を行っている限りでは、専門職業人のレベルは、比較的高いと感じました。

 最後に、人件費についてですが、工員の給与は、月額200米ドル弱程度であり、バンコクやマニラの約半分程度であり、カンボジアやミャンマー等とほぼ同水準である点も注目に値します。     

 以上、スリランカは、人口が約2,100万人と少なく、消費市場や製造拠点としての魅力は限定的だと考えられますが、人口が少ない国であっても、シンガポール(ASEAN地域統括拠点として活用)やチリ(南米地域統括拠点として活用)等のように統括拠点として、成功している事例は多く存在します。前述したインド洋の海上交通の要所という地理的長所とスリランカ人の人的魅力を活かして、著者としては、将来的にスリランカがASEANとアフリカ、中東等を繋ぐ統括ハブ、輸送ハブ国家として発展することを期待するばかりです。各種詳細は次に述べる通りです。

3)地理

首都は、スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ、産業の主要都市はコロンボ 。インドの南岸沖に位置する島国であす 。面積は6万5,610平方キロメートルと、北海道よりわずかに小さいです。日本との時差は 3 時間30分。気候は年間を通じて気温が高い熱帯気候。雨季と乾季があり、南部と西部では雨季が4月〜6月と10月〜11月、北部と東部では雨季が10月〜3月と地域によって時期が異なります。 

4)人口・民族・言語

人口は2167万人(2019年[2])。民族は、シンハラ人(74.9%)、タミル人(15.3%)、スリランカ・ムーア人(9.3%)。シンハラ語とタミル語が公用語だが、両言語の連結語として英語が広く使われています[3]。 15歳以上成人の識字率は98%となっています(2019年、世界銀行[4])。

<人口動態[5](人)>

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2019

17,325,773

18,242,912

18,777,601

19,544,988

20,261,737

20,970,000

21,803,000

 

(5) 宗教・暦

仏教徒(70.1%)、ヒンドゥ教徒(12.6%)、イスラム教徒(9.7%)、キリスト教徒(7.6%)。 仏教国であるタイやミャンマーと同様に仏暦を採用しています。仏教・ヒンズー教・イスラム教それぞれの暦に基づく祝祭日が定められているため、年間祝日は25日程度、その多くが毎年変動します。

 (6)国家・政治体制

1972年に英連邦内自治領から完全独立したスリランカでしたが、1983年以降25年以上に渡り,スリランカ北・東部を中心に居住する少数派タミル人の反政府武装勢力である「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が北・東部の分離独立を目指して活動し,政府との間で内戦状態にありましたが、2009年5月に政府軍がLTTEを制圧し終結しました。

内戦終結後、マヒンダ・ラージャパクサ大統領率いるスリランカ自由党(SLFP)を中核とする与党統一人民自由連合(UPFA)が2期に渡り政権を運営。2015年1月に大統領選挙が実施され、前保健相でもあるシリセーナ野党統一候補がマヒンダ・ラージャパクサ大統領を破り当選。シリセーナ大統領は,統一国民党(UNP)と政権を樹立。ウィクラマシンハUNP総裁が首相に就任しました。シリセーナ大統領の5年の大統領任期満了に伴い,2019年11月に大統領選挙が実施され、マヒンダ・ラージャパクサ元大統領の弟であるゴタバヤ・ラージャパクサ・スリランカ人民戦線(SLPP)候補が大統領に就任。実兄マヒンダ・ラージャパクサ元大統領を首相に任命しました。

<行政区分[6]

スリランカの国土は9つの州と25の県に分けられます。9つの州は選挙によって選ばれた州議会により統治されます。25の県には県事務所が設置され、中央政府により任命された県次官が統治します。さらに県は複数のDivision Secretary地区(DS地区)に分割され、DS地区は更に小さなGrama Niladhari地区(GN地区)に分割されます。スリランカ全体では合計256のDS地区と、14,000 ほどのGN地区が存在します。

州都

県数

GDP寄与率(2018)[7]

西部州

コロンボ

3

38.5%

中部州

キャンディ

3

11.8%

北西部州

クルネーガラ

3

11%

南部州

ゴール

3

10%

サバラガムワ州

ラトゥナプラ

2

7.6%

ウバ州

バドゥッラ

2

5.7%

北中部州

アヌラーダプラ

2

5.6%

東部州

トリンコマリー

3

5.7%

北部州

ジャフナ

4

4.1%

 

7)通貨・経済状況

通貨はスリランカルピー(LKR)。1 米ドル=186.01 ルピー(2020 年 9 月2日、スリランカ中央銀行[8])。

<主な経済指標と推移[9]

 

2015

2016

2017

2018

2019

名目GDP(100万LKR)

8,647,833

9,035,830

9,359,147

9,668,600

9,889,379

〃 (100万USD)

63,612.33

62,062.41

61,392.34

59,489.07

55,311.22

1人あたりGDP(LKR)

522,304

565,773

621,531

662,949

688,719

〃       (USD)

3,842

3,886

4,077

4,079

3,852

経済成長率(%)

5.0

4.5

3.6

3.3

2.3

インフレ率(%)

3.8

4.0

7.7

2.1

3.5

US$為替レート

135.95

145.59

152.45

162.53

178.80

 

8)産業

産業別GDP割合は、次の通りです。

<産業別GDP割合[10]

 

2015

2016

2017

2018

2019

農林水産業

8%

7%

8%

8%

7%

食品・飲料・タバコ製造業

8%

7%

6%

6%

6%

衣料・レザー製品製造業

4%

5%

5%

5%

5%

その他製造・エネルギー業

16%

16%

16%

16%

17%

卸売・小売貿易業

11%

11%

11%

11%

11%

物流・倉庫業

12%

12%

11%

11%

11%

金融業

3%

3%

4%

4%

4%

不動産業

6%

6%

6%

6%

6%

国防・行政関連業

6%

6%

6%

6%

6%

その他サービス業

20%

19%

19%

19%

20%

 

2019年3月中旬時点での累計登録企業は次の通りです。

<形態別登録企業>

 

2015

2016

2017

2018

2019

合計

公開株式会社

1,292

55

89

72

44

1,552

非公開株式会社

134,652

14,455

18,139

21,715

17,105

206,066

非営利会社

783

286

396

442

397

2,304

外国企業

100

22

39

49

33

243

 

210,165

 

(9) 外国投資

投資促進機関であるスリランカ投資委員会(BOI)は、1978年に大コロンボ経済委員会(GCEC)として設立され、コロンボ市周辺の開発を行う権限を有しています。その後、1992年には、GCECがBOIとして再編され、国全体を含む権限が付与されました。BOIは、投資家にとって中心的なファシリテーション・ポイントとして機能し、便利さ、簡単なアクセス、情報を提供するように構成されています。

<外国貿易地域/自由港湾/貿易促進>

スリランカには、投資委員会が管理する輸出加工区とも呼ばれる12の自由貿易地域があります。ゾーン内外に所在する輸出志向の企業は、プロジェクト関連の資材を輸入することができ、関税恩典を受けることが可能となっています。

<二国間投資協定及び租税条約>

政府は、米国(1993年5月に発効)、オーストラリア、ベルギー・ルクセンブルク、中国、チェコ、デンマーク、エジプト、フィンランド、フランス、ドイツ、インドネシア、イラン、イタリア、日本、韓国、クウェート(未発行)、マレーシア、オランダ、ノルウェー、パキスタン、ルーマニア、スウェーデン、スイス、タイ、英国およびベトナム(未発行)と投資保護協定を締結しています。また、スリランカは、インド、パキスタン、シンガポールと自由貿易協定(FTA)を締結し、中国とFTA交渉を行っています。インド、パキスタンとのFTAは、物品貿易のみを対象としています。この協定は、製造品及び農産品に対する関税の免税及び特恵を規定しています。

さらに、スリランカは、南アジア自由貿易地域(SAFTA)とアジア太平洋貿易協定(APTA)に加盟しています。スリランカは、85年に米国との二国間租税条約に署名し、2002年に改正されました。このほか、オーストラリア、バングラデシュ、バハレーン、ベルギー、カナダ、中国、チェコ、デンマーク、フランス、フィンランド、ドイツ、香港、インド、イラン、イタリア、日本、韓国、クウェート、マレーシア、モーリシャス、ネパール、オランダ、ノルウェー、オマーン、パキスタン、フィリピン、ポーランド、カタール、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、スウェーデン、スイス、タイ、UAE、英国、ベトナム、セイシェル、ベラルーシ、パレスチナ、ルクセンブルクと二国間協定を締結しています。

2 外国企業の投資規制 

1)投資に関する関係法令

スリランカの投資を促進する主要な法律は、以下の通りです。

法令とその内容

1978年投資委員会法No.4

 

1978年投資委員会法No.4およびその改正は、スリランカへの投資に適用される基本法です。本法は、投資家の「中央円滑化ポイント」として機能するように構成され、投資家と契約を締結する権限を与えられ、投資を誘致するためのインセンティブを提供し、スリランカ投資委員会である国家投資促進機関を設立しています。

2012年金融法No.12(ハブ業務)

 

この法律は、新興貿易拠点としてスリランカの機能を強化し、関連する特定の貿易・サービス活動を促進するために導入されたものです。スリランカが交換可能な外貨での取引を自由に行うことのできる財・サービスの輸出入を促進するため、貿易関連のインフラを整備するため、保税地域等が設置されています。

2017年内国歳入法No.24

 

この法律は、スリランカの税法を簡素化し、投資家に対して、新しいインセンティブ制度を導入しています。本法は、法人所得税率を28%とする一方で、中小企業、物品・サービスの輸出、IT、教育、観光、農業等の特定分野については、14%の減税率を規定しています。

外為法(2017年法律第12)

 

外為法は廃止され(第423章)、スリランカの自由貿易体制が導入されました。外国為替管理は大幅に自由化され、投資家は中央銀行の承認が特に必要な場合を除き、銀行と直接取引することができるようになりました。

土地政策

 

外国人投資家は、最長99年間に渡り、リースベースで用地確保することが認められてるようになりました。外国人株式所有比率が50%未満の場合は、所有権の移転が認められています。

 

2)外資規制

スリランカの外資規制の概要について解説します。スリランカでは、以下で説明する業種を除いて、原則的に外国資本が自由に投資できる設計となっています。スリランカにおいて、外国資本の投資を禁止する事業活動および政府機関の承認を必要とする事業分野の一覧表が作成されています。それらは2016年6月10日付1970/49通達、2017年11月17日付2045/56通達等にて規定されています。まずは、外国企業の禁止事業は次の通りです。

禁止業種一覧

 

禁止業種

1

貸金業(Money Lending、但し、一部例外有り)

2

質屋業(Pawn Broking)

3

100万ドル未満の資本金での小売業(Retail Trade with a capital of less than One Million US Dollars )

4

沿岸漁業(Costal Fishing)

5

セキュリティサービス(Provision of Security Services)

 

<出資比率に関する制限業種>

 スリランカ投資委員会(Board of Investment、BOI)での承認がない限り、下表の業種に対しては、外国資本の出資比率は40%迄しか認められていません。なお、出資比率が40%を超える場合については、BOIから案件毎に承認を得る必要があります。または、いずれかの企業に対する外国投資のより高い割合について、スリランカ投資委員会から特別承認が与えられた場合に限り、認められる可能性があります。

 

出資制限業種

1

スリランカからの輸出について輸出割当制限対象である物品製造

(Production of Goods where Sri Lanka’s exports are subject to internationally determined quota restrictions )

2

茶、ゴム、ココナッツ、ココア、米、砂糖、香辛料の栽培及び第一次加工

(Growing and Primary Processing of Tea, Rubber, Coconut, Cocoa, Rice, Sugar and Spices 
)

3

鉱業及び再生不可能な天然資源の採掘及び第一次加工

(Mining and Primary Processing of Non Renewable National Resources)

4

スリランカの木材を利用した林業(Timber Based Industries using Local Timber)

5

遠洋漁業(Deep Sea Fishing)

6

マスコミ(Mass Communications)

7

教育(Education)

8

貨物運送業(Freight Forwarding)

9

旅行代理店(Travel Agencies)

10

海運代理業(Shipping Agencies)

 

次の業種への投資については、BOIまたは所管する政府機関による承認が必要となっています。

 

承認が必要な業種

1

航空運送業(Air Transportation)

2

沿岸海運業(Coastal Shipping)

3

武器、弾薬、軍事車両等の生産、毒物、麻薬、危険薬物等の生産、通貨、硬貨等の生産(Industry Promotion Actの附属書に記載される業務)

4

宝石の大規模、機械化採掘業(Large Scale Mechanized Mining of Gems)

5

宝くじ(Lotteries)

 

なお、上記以外にも実務的に規制される業種が存在している可能性があり、実際の投資検討の際には、BOI、監督当局や現地法律事務所に確認の上、慎重に規制を検討することが推奨されます。

<優遇税制>

法人所得税(CIT)に関して、2019/2020年の評価年度から、以下の事業分野は法人税免税となります。

法人税免税の業種

農業

IT及びIT関連サービス

サービスの輸出

・スリランカ内外で提供される

・スリランカ国外の者に利用される

・支払いは外貨で受領され、銀行を通じてスリランカに送金される

(商業ハブ活動:フロントエンドサービス、本社業務、輸出物流サービス、輸送業務、貨物輸送業務、船舶の修理、船舶の破砕修理及び海上貨物コンテナの改装が含まれると考えられます。

海外において外貨建てにて稼得し、銀行を経由してスリランカに送金される利益(第三号に掲げるものを除く)

 

なお、その他一定の分野においてはCITの減税措置や付加価値税の免除や関税の免除等も存在しています。

3外国投資奨励制度

BOI[11]法第16条・第17条による認可が存在しており、次のカテゴリーに当てはまる投資活動は、スリランカ投資委員会により認可されます。外国投資家は必ずしもBOIを通して投資をする必要はありません。しかしながら、BOI第16条認可企業となることで、各種政府機関からの許可を得られることがあり、また、関税等の優遇策を得るためにはBOI第17条企業として認可される必要があります。

BOI法第16条認可投資>

 BOI法第16条の下で認可された外国投資の税務優遇措置はありません。同事業は、スリランカの一般の法律に従って運営され、国税法、関税法、外国為替管理法が適用されます。同認可は、次のことを目的とします。

BOI法第16条認可投資目的

海外投資を開始するための支援

外国株式の新会社設立手続き

既存非BOI企業の株式を海外投資家に譲渡または発行する場合

 

現在、第16条の認可を受けるためには、250万ドルの初期投資が必要。これには、100%外国投資または現地企業との共同投資が可能です。

 なお、小売りによる営業活動を行う場合は、外国から最低500万ドルの資金が送金されることが条件となっています。設立予定の会社の資本金は、スリランカの市中銀行に開設された対内投資口座(IIA)を通してスリランカに送金されることが必要とされます。

BOI法第17条認可事業>

BOI法第17条の下では、事業活動の認可や企業との契約締結を行い、投資の最低額やその他指定の要件を満たすことを条件に、内国税管理法や外国為替管理法、関税法等の法律に対する優遇措置が付与されます。

外国企業が子会社を設立する場合

 

BOI法第17条に基づく(優遇税制を受ける)

スリランカ投資委員会(BOI)に投資認可を申請した後、手順に従って定款草案をBOIに提出します。優遇税制の適用条件を満たしていれば、BOIはこれを認可し、外国企業はBOIから得た認可書と併せて、会社登記局に会社設立申請書を提出します。

通常法下で優遇税制を受けない

 BOIの認可を得ずに、会社登記局に、会社設立申請書を直接提出できます。

しかし、事業分野および出資比率に外国資本参加の制限がある場合は、BOI法第16条に基づいて、会社設立前にBOIの承認を受けなければなりません。

 

<BOIへ支払う手数料>

・BOI法第17条に基づく子会社の場合

ア 申請処理手数料:275ドル

イ 認可処理手数料

戦略的開発事業:3,850ドル

その他の事業:2,200ドル

補足契約が発生する場合:550ドル

 

 

プロジェクト別の年間手数料については次のとおりです。

プロジェクト

年間手数料(USD)

通常のプロジェクト

2,750

ホテル、病院、公益事業、観光事業のプロジェクト

– プロジェクト免税機関中の手数料

プロジェクト規模300万ドル未満

3,850

300万以上1,000万ドル未満

7,260

1,000万ドル超

9,680

戦略的開発事業

18,150

ホテル、病院、公益事業、観光事業のプロジェクト

– 免税期間後と軽減税率適用期間の手数料

プロジェクト規模300万ドル未満

2,530

300万以上1,000万ドル未満

6,050

1,000万ドル超

8,470

戦略的開発事業

12,100

ホテル、病院、公益事業、観光事業のプロジェクト

– 免税減税適用実施終了後

1,100

農業関連プロジェクト

940

コイア(ココナッツ)製品関連事業及び手工芸プロジェクト

1,210

 

・BOI法第16条に基づく子会社の場合

ア 申請処理手数料:330ドル

イ 定款の審査費用:170ドル

ウ 年間手数料:400ドル

第16条に基づく企業および非BOI企業のリース契約処理費は11,000ルピー。 ただし、いずれの費用においても、8%の付加価値税が徴収されます。これは会社登録局に支払います。

BOI手続き後の会社設立手続き>

BOI手続き後、会社登記局で会社設立の手続きを行い、会社設立証明書の発行を申請します。その際、商号の決定、会社登記局における商号の予約申請、覚書および定款の草案作成・提出が必要となります。会社登記局に提出する書類は次のとおりです。

提出書類

定款(株主の氏名・住所・職業、取締役の名前・職業・住所、登記上の事務所住所を明記)

様式1:会社登録申請にあたり、会社法(2007年法律第7号)を遵守する旨の宣言書

様式18:取締役就任の同意書

様式19:取締役、秘書役、共同秘書役に就任した者の一覧表

 

会社登記局における登記手数料は次のとおりです。

登記の形態

手数料   (ルピー)

非公開会社(Private Companies)

4,000 

公開企業(Public Quoted Companies)

20,000

その他の企業(非公開企業ではない信託企業や海外企業の連絡事務所)

15,000

自主的に閉業する場合

50,000

 

<最低外国資本金[12]

株式非公開企業および株式公開企業における、最低資本金に関する具体的要件はありません。BOI法第16条認可投資については250万ドル以上、うち、小売業は500万ドル以上の外資出資が必要となっています。

4)経済特区(Special Economic Zone (SEZ)

BOI管理の輸出加工区・工業団地、または政府管理の輸出加工区等が存在します。長期リース契約に基づき利用が可能です。

BOI投資地区一覧[13]

投資地区名

所在地

事業者

サンプール重工業地区

トリンコマリー県

民間

マーワタガマ輸出加工区

クルネガラ県

 

ポルカハウェラ輸出加工区

クルネガラ県

 

ミーリガマ輸出加工区

ガンパハ県

 

カトナヤケ輸出加工区

ガンパハ県

 

ビヤガマ輸出加工区

ガンパハ県

 

ホラナ輸出加工区

カルタラ県

 

シータワカ輸出加工区

コロンボ県

 

コッガラ輸出加工区

カルタラ県

 

ミリッジャウィラ輸出加工区

ハンバントタ県

 

ワトゥピティウェラ輸出加工区

ガンパハ県

 

キャンディ工業団地

キャンディ県

 

ツルヒリヤ繊維団地

ガンパハ県

民間

マルワッタ輸出加工団地

ガンパハ県

 

ワガワッタ投資地区

カルタラ県

新規

スーリヤウェワ投資地区

ハンバントタ県

新規

 

(5) 進出形態

スリランカへの外国企業の進出形態は、2007年法律第7号新会社法(2007年5月3日施行)により、現地法人会社(Incorporated Company)、支社・支店(Registered Overseas Company, Branch Office)、オフショア会社(Offshore Company)、駐在員事務所(Representative/Liaison Office)に分類されます[14]

ア 駐在員事務所(Representative/Liaison Office)

外国企業は駐在員事務所を設置することができますが、そのステータスは支店と同様です。本社のための商品/サービス手配、調査・管理、代理店・商品に関する助言の提供、広報、報告を行いますが、貿易・投資活動はできないため、売り上げは計上できません。事務所の維持に必要な資金を海外から外貨送金する場合は、証券投資口座(Securities Investment Account)を通じて行います。事務所設置後の1カ月以内に、会社登記局に次の必要書類を提出する必要があります。

会社登記に必要な書類

会社定款等の認証謄本

会社役員名簿(氏名、国籍、現住所、兼業の有無)

スリランカに居住する会社代表者の氏名、会社との関係を示す書類

本社住所やスリランカ国内でのビジネスを行う主要地域の供述書

会社の法人格を証明する認証謄本

 

イ 支社・支店(Registered Overseas Company, Branch Office)

外国企業は、スリランカ国内に支店・支社の開設ができますが、開設申請にあたって会社登記局に提出する書類は次のとおりです。

支店・支社登記申請書類

会社登録申請書

会社設立の認証謄本もしくは会社設立の証拠となる書類

(最近の日付で認証を受けること)

会社設立の定款の規定・綱領の認証謄本

ただし、英語で記載されていない場合は、正確な翻訳(英訳)文書が必要

スリランカ居住者(1人または複数)に、当該企業の代理人としての権限を付与する内容の委任状(会社印を押印し認証すること)

申請書提出の事業年度から過去2年間に遡った外国企業の財務諸表の写し

様式44

外国企業の登録事務所または主たる事務所所在地、およびスリランカにおける主たる事務所所在地を記載した供述書

様式45

外国企業の取締役一覧表

様式46

外国企業を代理・代表し、手続・サービスを受ける権限、および外国企業宛に送付される通知を受領する権限を付与されたスリランカ国内居住者(少なくとも1人)の氏名と住所

スリランカ国内で行う事業内容を明記した取締役会決議案の認証謄本

 

ここで言う「認証」とは、次の方法によって書類が真正な謄本であると証明されることを示します。

認証の種類

書類の原本を管理する当該国政府職員による認証

当該国の公証人による承認

当該国で宣誓を執り行う権限を有する者の面前で行う、外国企業の取締役による承認

当該国の政府職員による署名・捺印、当該国の公証人の署名・捺印、または当該国で宣誓を執り行う権限を持つ者の署名・捺印。これらの署名・捺印は、当該国に設置されたスリランカ大使館の職員により認証されます(当該国にスリランカの大使館が存在しない場合、当該国に所在するスリランカの通商代表部またはスリランカ政府代表部により認証を受けます。これも不可能な場合、当該国の司法当局の職員により認証を受けます)。

 

会社登記局は、財務相および通商・消費者問題担当相の承認書を受け取り次第、外国企業に対し、スリランカ国内において営業事務所を開設することを認可する登録証明書を発給します。なお、会社登記局における外国企業拠点登録料は60,000ルピーとなっています。

ウ 有限責任会社(一人会社含む)(Limited Company)

2007年法律第7号新会社法の条項に基づき、外国企業はスリランカ国内に、株式非公開会社(Private Company)および株式公開会社(Public Company)を設立できます。なお、株式非公開会社では、次の制限が設けられています。

  • 株式もしくは債権を一般投資家に公開することはできません。
  • 株主数の上限は50。(従業員、もしくは元従業員で株主であった者の数はこれに含めません。)

登録手続きについては、下段エを参照。

エ 公開会社(Public Company)

株式公開会社については、7名以上の株主が必要です。コロンボ証券取引所に上場できるのはこの形態のみで、財務諸表は一般投資家も閲覧可能です。なお、株式公開会社は、会社登記局(Registrar of Companies)への登記が義務付けられています。

設立予定の会社の資本金は、スリランカの市中銀行に開設された対内投資口座(IIA)を通して、スリランカに送金されることが必要とされます。

<会社登録>

会社の登録(設立)は以下の手順で行われます。

会社登記手順

登録する会社の名称を決め、会社登録局に同名称を保留するよう申請します。

(使用予定の社名が既に登記されていないかどうか、登記局ウェブサイトhttp://www.drc.gov.lk/を通じてオンラインで確認することができます)

登録予定の会社の定款案を作成します

保留を依頼した会社名の承認を会社登録局から受けます

(申請が却下された場合は、他の名称を再申請すること)

定款案の承認を受け、以下の書類を提出します

・株主の氏名、住所、職業

・役員の氏名、住所、職業

・録予定の会社の登録住所

会社登録局長から定款案の承認を受け、定款最終版を5部印刷します

以下の書式に必要事項を記入し会社登録局に提出します

・フォーム1(2007年会社法第7号に拠る会社登録(設立)申請)

・フォーム18(役員に就任することに同意した者のリスト)

・フォーム19(役員、会社秘書、共同会社秘書就任同意者のリスト

定款および6.のフォームに株主、役員、会社秘書の署名及び公証人の認証を得ます

定款と6.のフォームを会社登録局に提出します

会社登録局より登録証を受け取る。これが会社設立の証となります

10

新規に登録された会社は、設立より30日以内に、設立の旨を一般に告知すること

 

オ オフショア会社(Offshore Company)

外国企業がスリランカ国外で事業活動を行う場合、オフショア会社としての登録が可能です。オフショア会社の登録には、次の書類を会社登記局へ提出する必要があります。

オフショア会社登録必要書類

会社登録申請書

外国企業の定款の認証謄本

外国企業の会社設立許可書の認証謄本(最近の日付で認証を受けること)

外国企業の取締役の一覧表(同一覧表には、取締役の氏名、住所、職業、同企業における任務等を記載します)

外国企業のスリランカ国内における1名以上の代理人の氏名・住所(代理人は、スリランカ国籍を有する国内居住者であり、スリランカにおいて外国企業を代理・代表する権限を付与する委任状を所持していなければなりません)

次の内容を含む外国企業の事務弁護士の書状

・外国企業をスリランカにおいてオフショア会社として登録することが、外国企業の設立国において外国企業によって提起された裁判・その他の法的手続、または外国企業に対して提起された裁判・その他の法的手続に対し、一切悪影響を与えないこと

・外国企業の閉鎖が開始されていないこと

・スリランカにおいてオフショア事業に従事することが、外国企業の設立国において法的な問題がないこと

 オフショア会社に係る諸経費として、初回登録時にスリランカ国内の銀行に15万米ドルを入金する必要があります。オフショア会社の登録は毎年更新が必要で、費用は15万ルピー。外国企業は、会社登録機関よりオフショア会社の登録証明書の発給を受けます。

 

[1] 上記地図は、Wikipediaより転載

[2] スリランカ中央銀行(http://erd.cbsl.gov.lk/erd/presentation/htm/english/erd/sdds/rpt_sdds.aspx#5S

[3] 外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/srilanka/data.html#section1

[4] 世界銀行データベース(https://data.worldbank.org/indicator/SE.ADT.1524.LT.ZS?locations=LK

[5] 世界銀行データベース

[6] スリランカ中央銀行 Provincial Gross Domestic Product – 2018 より

[7] 同上(https://www.cbsl.gov.lk/sites/default/files/cbslweb_images/press_20190925_Provincial_Gross_Domestic_Product_-_2018_e.pdf

[8] スリランカ中央銀行(https://www.cbsl.gov.lk/en/rates-and-indicators/exchange-rates/daily-indicative-usd-spot-exchange-rates

[9] スリランカ中央銀行 Economic and Social Statistics in Sri Lanka 2020より(https://www.cbsl.gov.lk/sites/default/files/cbslweb_documents/statistics/otherpub/ess_2020_e.pdf)

[10] スリランカ中央銀行 Gross Domestic Products Data(https://www.cbsl.gov.lk/en/statistics/statistical-tables/real-sector/national-accounts

[11] JETROコロンボ事務所 (https://www.jetro.go.jp/world/asia/lk/invest_09.html)

[12] JETROコロンボ事務所(https://www.jetro.go.jp/world/asia/lk/invest_02.html)

[13] スリランカBOI「スリランカ投資ガイド」より(http://investsrilanka.com/wp-content/uploads/2019/03/investment_guide_japanese.pdf

[14] JETROコロンボ事務所 (https://www.jetro.go.jp/world/asia/lk/invest_09.html)

 

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します

info@oneasia.legal

 

2020年10月16日(金)7:23 AM

海外インフラプロジェクトの法的留意点(アジア新興国のPPP制度)について記事をアップデート致します。

アジア新興国のPPP制度

 

 

海外インフラプロジェクトの法的留意点について

アジア新興国のPPP制度

2020 年10月16日

One Asia Lawyers

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

      • 1.執筆の背景

      前回の記事「海外インフラプロジェクトの法的留意点-アジア新興国編-」[1]にて述べた通り、全世界において、巨大なインフラニーズが存在している。世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[2]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、東南アジア、南アジア、中央アジアにおける案件が活発となっている。また、当Databaseによれば、鉄道、空港、港湾等のセクターと比較して、道路セクターが伸びており、日系企業もグリーンフィールド型、ブラウンフィールド型、運営維持管理業務型を問わず、案件数を増やしている。

      ただし、アジア新興国の傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張している。また予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見される。加えて、それらの地域においてCovid-19の影響は不可避であり、現在、当事務所で対応しているプロジェクトをみても、多くのプロジェクトの事前調査、入札手続き、契約交渉等が長期化したり、政府保証や不可抗力条項、政府補償条約等について一部契約の見直しが生じるような事態も生じており、契約交渉や締結に向けて困難な問題に直面しているという側面もある。

      上記の通り、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、特にアジア新興国においては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいる。上記で述べたリスクとバランスを取りながら、今後、さらに成長可能性が高いPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はアジア各地のPPP法制について比較し、特に重要な10か国の法規制について解説する。

      • 2.アジア各国におけるPPP法制

      1)総論

      前提として、PPPの法的な枠組みとしては、英米法(Common Law)体系か、大陸法(Civil Law)体系かによって、傾向が若干異なる側面がある。英米法体系の国家においては、当事者の一部が政府であったとしても、当事者意思を重視し、そもそも個別具体的な特定のPPP法が存在しない国もある。他方、大陸法系の多くの国々においては、PPP法が制定、または制定準備がなされており、入札手続等のプロセス、官民の権利義務、政府の役割、PPP契約記載事項や紛争時の処理方法等について、個別具体的に規律されている。とはいえ、下表の通り、英米法系の国であっても、最近の傾向としては、詳細なPPP関連法令を整備する国が多くなってきており、各国によってPPP関連法の整備状況は大きく異るといえる。

      なお、その他PPP法の存否に関わらず、公共調達法(Procurement Law、公共調達の方法やプロセス等を規律する方法)、公共財政管理法(Public Financial Management Law、プロジェクト認可基準、予算取得プロセス、財政上の制限事項等を規律する法律)等に加えて、前回の記事で紹介したような外資企業に対する投資規制、土地取得規制、税法、外国人労働規制等が問題となる。

      <東南アジア、南アジアのPPP法の一覧>

      国名

      法令の有無

      特徴

      タイ

      あり

      2019年3月11日施行

      十分に整備されている。内閣承認が必要となり、手続きが厳格

      ベトナム

      あり

       

      2020年にPPP法が国会で遂に可決

      2021年1月1日施行予定となっている

      カンボジア

      なし

      現在、経済財政相が草案を作成中。2021年中の制定を目標としている。

      ラオス

      なし

      PPP法草案

      現在、ラオス計画投資省が草案を公開している。2021年に制定される可能性あり

      ミャンマー

      なし

      PPP法は特に整備されておらず、個別法により対応

      シンガポール

      あり

      PPPガイドブック

      PPPガイドブックにおいて、政策方針と手続等の詳細が規定されている

       

      マレーシア

      あり

      2009年PPPガイドライン

      PPPガイドラインにおいて、PPPに適したプロジェクトの種類、入札を手続きや適格基準、運営モデル、プロジェクト承認のプロセスフローが明確化されている

      フィリピン

      あり

      1994年BOT法施行

      関連細則等十分に整備されている

      インドネシア

      あり

      2015年大統領令38号施行

      複数の法令が存在。

      改定が多く、複雑化している

       

      インド

      あり

      PPP法は存在しないが、PPPガイドライン等が整備されている

      財務省が基本政策を策定、各種ガイドラインやマニュアルを整備されているが、州毎にルールが異なるので、留意が必要

      バングラデシュ

      あり

      2015年PPP法

      2015年にPPP法が施行。PPP事務局が一括してガイドライン等を整備している。

       

      スリランカ

      あり

      PPPガイドライン

      2016年に財務省内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整機能が存在

       

      ネパール

      あり

      2015年PPPガイドライン

      PPP法草案が公開

      2015年のPPPポリシーとガイドラインによって、入札手続きやPPP契約の内容が明確化された

       

      パキスタン

      あり

      2010年PPPガイドライン

      州レベルでPPP規則が存在

      財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、中央PPP関連部署が存在。入札手順等について監督している。その他州レベルで、PPPユニットが設置された

       

      アフガニスタン

      あり

      2016年PPP法

      2016年にPPP法が成立。財務省にPPPユニットがあり、ガイドラインの作成、プロジェクト評価等を実施

      2)タイにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      周辺国と比較しても、タイは先行して、PPP法制を整備し、同法の法的枠組みに従ってプロジェクトを推進している。一般的にPPPスキームが浸透しているといえ、PPP法制定までは、インフラ投資は政府主導で行われてきたが、インフラ投資額は政府予算を越えており、さらに民間インフラ投資を呼び込む必要がある。タイにおいては、入札情報等が適切に公開されており、具体的には、国家経済社会開発委員会が準備するインフラ社会開発マスタープランにおいて、プロジェクトの目的、期限、想定総投資額等について記載されているが、それがPPP委員会で承認されると、民間事業者に公開される仕組みとなっており、適切かつ着実に実施がなされている。下記の通り、基本法やガイドライン等も比較的整備されており、事業参入において得に問題ないが、タイ国内企業の技術力等も年々向上しており、外資企業に関しては価格競争力の部分で劣勢に立たされることが多いといわれている。

      イ 法制度の概要

      タイにおいては、1992年にPPPに関する法律が成立しているが、その後、2013年の改正を経て、2019年3月10日に改正PPP法が成立し、11日から施行している。PPPの適用対象事業は、道路、鉄道、空港輸送、港湾、上下水道、エネルギー事業、病院、教育等の12項目が指定されており、いずれかに該当するインフラや公共サービスに関するPPPプロジェクトと定義されている。また、これらのプロジェクトに関して、50億バーツ以上の事業規模とする必要がある。なお、事業規模が未達であったとしても、PPP委員会が許可する場合は、例外として認められる可能性がある。

      PPPプロジェクト推進のためには、プロジェクトの具体的な内容を確定し、PPP法に従って、当局から承認を得る必要がある。プロジェクトを実施する政府機関は、コンサルタントを起用し、プロジェクトの調査報告書を作成し、所轄省庁の大臣に提出し、承認を得る必要がある。その上で、PPP委員会での承認と内閣からの承認を得る必要がある。なお、各審査期間については、PPP委員会が定める期間となっており、明確な期間規定は存在しない。

      その後、政府機関は事業者選定委員会を設置し、当委員会は、入札、選定、契約交渉、契約締結等の役割を負う。選定については、PPP法に従い、原則的に入札によって行われる(政府機関や内閣の承認がある場合は、その限りではない。)。選定業者との交渉が終了すると15日以内に、PPP契約ドラフトは検察庁に送付され、45日以内に審査を完了する必要があると規定されている。その後、所轄大臣に提出され、30日以内に審査を完了し、内閣にて審議される流れとなっている。

      以上が簡単なPPP法上の流れとなるが、タイにおいては内閣承認が必要となるため、比較的厳格な審査手続きが取られていると評価できる。

      3)ベトナムにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ベトナムのインフラプロジェクトは、主に政府予算によって行われており、そのため国債や地方債が発行されているが、必要投資額の半分程度であり、民間資金の導入が必須の状態である。また、対外債務比率も上昇しており、政府の意向として、今後さらにPPPプロジェクトを活発化させる可能性が高い。ただし、社会主義国ということもあり、どこまで民間(特に外資)に開放されるか、また運用について適切な対応がなされるかについて動向を注視する必要がある。なお、ベトナム計画投資省において、PPP関連情報が定期的に公開されている[3]

      イ 法制度の概要

      ベトナムの法制度上で「PPP」という文言が登場するのは今から10年前の2010年のことであり、当時はあくまで試験的なPPPプロジェクトに対して試験的に適用する規則という位置づけであった[4]。その後、2015年に政令化され、2018年に政令が全面改正されるなどして少しずつ法令の内容拡充が図られ、2020年6月18日にPPP法が可決され、2021年1月1日から施行予定となっている。今後さらにPPPプロジェクトに対する透明性の向上、不確実性の低減化が図られることが期待される。

      今回の主な改正点としては、投資対象が大きく統一的に整理されており、交通運輸、送電・発電、上下水道、ITインフラ等の規定のみとなっており、対象分野が限定されたといえる。また、契約類型としてBuild Transfer方式が削除されたこと、事業収益について、BOT、BTO、BOO方式のPPP事業収益が契約で定めた計画の75%を下回った場合、減収分の半分を政府が負担する保証制度(他方、PPP事業収益が計画の125%を上回った場合は、増益分を政府と投資家で折半する)が盛り込まれたこと、PPPプロジェクト契約は必ずベトナム法に準拠することなどが挙げられる。主な政令63号と新PPP法の相違は、下表の通りである。

       

      【PPP関連法令の概要比較】

       

      2018年政令

      63/2018/ND-CP)

      2020年PPP法

      制定年

      施行年

      2018年5月4日

      2018年6月19日

      2020年6月18日

      2021年1月1日

      「PPP方式の投資」の定義

      インフラ施設の建設、改造、運営、経営、管理、公共サービスを提供するために、所管国家機関、投資家、プロジェクト企業とで交わされるプロジェクト契約に基づき実現される投資形式

      (第3条1項)

      PPPプロジェクトへの民間投資家の参加を誘致することを目的に、国家と民間投資家のあいだで締結し、履行するPPPプロジェクト契約を通じた有期の協力に基づき実行される投資形式(第3条10項)

      対象

      a)交通運輸

      b)発電所、送電線

      c)公共照明システム、上水道システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、公園、自動車・車両・機械設備の駐車場・置き場、墓地

      d)国家機関庁舎、公務用住宅、社会住宅、再定住住宅

      đ)医療、教育・育成・職業訓練、文化、スポーツ、観光、科学技術・水文・気象、IT応用

      e) 商業インフラ、都市区・経済区・工業団地・産業クラスター・集中IT区インフラ、ハイテクインフラ、インキュベーション施設、技術施設、中小企業を支援するコワーキングエリア

      g) 農業・農村開発、農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス

      h) 首相が決定するその他分野

      (第4条)

      a)交通運輸

      b)送電網・発電所(水力発電所、電力法に基づき国が独占するケースを除く)

      c)利水、上水道、下水道、下水処理、廃棄物処理

      d)医療、教育・訓練

      đ)ITインフラ

      (第4条1項)

      PPP事業として認められる投資額

      規定無し

      (公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類)

      2,000億VND以上             (医療、教育・訓練は1,000億VND以上)

      (第4条2項a,b)

       

      国の参加比率

      規定無し

      インフラ整備・土地収用での国の資金拠出:総投資額の50%

      (第69条1項、2項)

      投資優遇

      投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

      プロジェクト用の輸入品:関税優遇

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

      投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇(第59条)

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料、土地賃貸等に関する優遇、および税や土地、投資、その他関連法で定めるその他の優遇

      (第79条)

       

       

       

      4)カンボジアにおけるPPP法制

       

      ア 背景、状況 

      カンボジアにおけるPPP事業は、1990年代から存在し、発電所・空港の設立など相当数の実例が存在している。もっとも、政府の体制、法制度ともに未整備な状態であり、案件ごとにアドホックに、政府と民間のリスク分担なども曖昧なままなされており、投資リスクが高い状況であった。現に、特定の理由なく政府により中途で終了するプロジェクトもあり、PPP投資の障害となっていた。カンボジア政府としてもかかる問題点を認識しており、状況を改善するため、2016年にPPP制度の整備のためのPPPポリシーを策定するとともに、PPPについての包括的な意思決定機関として経済財務省(MEF)主催の省庁横断議会(IMC)を設立した。そして、2017年に、IMCの事務局としてMEFにCentral PPP Unit (CPU)を設置した。さらに現在、MEF主導のもと、PPP法の草案作成が進んでおり、2021年中の制定を予定しているとのことである。また、PPPプロジェクトの手続・手順・要件、各機関の責任や意思決定機関などの詳細を定める標準手順書(SOP)を作成しており、PPP法の制定後速やかに政令として公布することを予定している。

      イ 法制度の概要

      カンボジアにおいて、従来、部分的には2007年コンセッション法や1994年投資法などを適用し、法令が存在しない事項については個別の調整・交渉などにより決定がされてきた。上記で述べたPPP法およびこれに基づく政令による投資の条件や手続き、政府と民間のリスク分担などの透明化・公平化が待たれる。

      5)ラオスにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきており、2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[5]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、PPPに期待する声が高まっている。ただ、ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっている。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられるが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっている。

      イ 法制度の概要

      ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があり、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけている。

      2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっており、2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態である。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれており、同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえる。同法では、PPPの定義、PPPの事業形態、PPPの方式、PPP入札の流れ(下表)等が規定されている。

       

      <PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れ(草案)>

      手続き

      責任者

      初期提案書の作成・提出

      実施政府機関

      初期提案書の検討 (20日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

      民間セクター

      発案書の検討(15日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

      実施政府機関または民間セクター

      FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      (国民議会等の承認必要)

      FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

      実施政府機関または民間セクター

      入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

      実施政府機関及び官民連携推進委員会

      入札管理委員会の選定

      財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

      6)ミャンマーにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      近年、ミャンマーにおいて日系企業からはODAのみならず、PPPプロジェクトの実施について多く相談を受けており、著者の感覚として、日系企業のミャンマーでのインフラプロジェクトに関する関心は極めて高い。しかしながら、PPP法制度等の整備は進んでおらず、過去監督機関との交渉や方針転換によりリスクが顕在化したようなケースがあり、特にリスクマネジメントについて十分に考慮する必要がある。そのような状況でも、近年、道路分野等では、民間企業へのBOTプロジェクト等が行われており、徐々にPPPプロジェクトの実績が生じている。また、ミャンマー計画財務省において、PPPプロジェクトを管轄する部署が組成されており、今後のPPP法制度整備や組織体制の拡充が期待される。

      イ 法制度の概要

      ミャンマーにおいては、統一的なPPP法は整備されておらず、公共調達法等の個別法により処理される状態である。計画財務省に照会した限りでは、特段PPP法の整備に対する具体的な動きはないようであるが、民間投資によるインフラ整備、投資については、監督当局内部でも関心が高まっているとのことである。

      7)フィリピンにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      フィリピンでは、1990年にBOT法(後述)が成立する以前の1989年に、同国では初めてとなるBOT(Build-Operate-Transfer)契約がNational Power CorporationおよびHopewell Energy Management Ltd社との間で締結され、ナボタスにおける発電所の建設・操業に関する官民連携プロジェクトが実施された。このように、フィリピンは、PPP分野においてはASEAN諸国では比較的に先行した動きを見せており、インフラ整備は重要な国家課題として位置付けられてきた。しかし、今日におけるフィリピンのインフラ整備状況は世界的に見ても低水準にあり[6]、インフラの未整備が問題点として長く指摘されている。そのような状況下、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領はインフラ向け支出を拡大し、「ビルド・ビルド・ビルド」と呼ばれる大規模なインフラ整備計画[7]を推し進めることで、投資環境の整備や雇用創出、国民所得の向上など一層の経済成長の実現を目指している。PPCセンターによる公表では、2010年以降のPPP件数は41件となっている(2019年4月30日時点)[8]

      イ 法制度の概要

      フィリピンでは、1990年にASEAN諸国では初めてとなる民活インフラ事業の法的枠組みを定めた共和国法6957号BOT法(Build-Operate and Transfer Law, Republic Act No.6957。1994年に共和国法7718号により一部改正された。以下、「改正BOT法」)および同法の実施細則(Implementing Rules and Regulations of R.A. No. 6957 as amended by R.A. No. 7718。以下、「改正BOT法実施細則」といい、改正BOT法とあわせて「改正BOT法等」)が整備されている。また、改正BOT法等を補完するガイドラインとして、国家経済開発庁(National Economic and Development Agency:NEDA)の傘下にあるPPPセンター(PPP Center)より、国家事業マニュアル(PPP Manual for NGAs)、地方事業マニュアル(PPP Manual for LGUs)、セクター毎のガイドライン等が公表されており、また、NEDOからもPPP事業に関するガイドブックが多く発行されている。PPPを主管する政府組織はNEDO傘下にあるPPPセンターであり、PPPセンターは、プロジェクト案件の発掘、実施、管理・モニタリング、地方政府組織を含むプロジェクト実施主体の能力開発・工場など、広くPPPを推進する役割を担っている。

      PPP入札手続については、政府調達改革法(Government Procurement Act, Republic Act No. 9184)が政府機関による物品・サービスの入札プロセスに関するルールを定めている。その他、通行権取得法(Right of Way Acquisition Act, Republic Act No.10572)、下級裁判所による仮処分命令の発行を禁止することで政府インフラプロジェクトの実施・完了を迅速化する法律(Expeditious Implementation and Completion of Government Infrastructure Projects by Prohibiting Lower Courts from Issuing Temporary Restraining Orders, Republic Act No. 8975)、大統領府令432-05号による合弁契約に関するガイドライン(Guidelines on Joint Venture Agreements, Executive Order 432, series 2005)、大統領府令78-12号による全てのPPPおよび合弁事業におけるADRの活用(Use of Alternative Dispute Resolution Mechanisms in all PPP and JV Projects, Executive Order 78, series 2012)など、PPPを推進するために制定された法令・ガイドラインが数多く存する。

      なお、PPP事業が公営事業の管理・運営(operation of public utility)に関わる場合は、1991年外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)および現行の第11次ネガティブリストに基づき、外資保有の上限が40%に制限されており、この点は注意が必要となる。

      改正BOT法等では、PPPの対象事業として、各種交通(道路、鉄道、港、空港など)、電力、通信、ICTシステム・設備、農業、運河・ダム・灌漑、上下水、観光・教育・健康施設など、公共インフラとして通常想定されうる事業セクターが広く含められている。なお、電力については、2001年に成立した産業改革法(Electric Power Industry Reform Act: EPIRA)によって国営電力公社(NPC)の民営化や電力市場の自由化が進められてきた関係から、PPTの対象事業として取り扱われるか否かが法的に必ずしも明確に整理されていないとの指摘があるものの、改正BOT法等ではPPPの対象事業として電力が含まれており、実際にPPPスキームによる電力プロジェクトの検討および実施がなされている。

      対象事業は、政府提案型(Solicited Proposal)と民間提案型(Unsolicited Proposal)に分類され、それぞれ事業および事業者の選定の取扱いが異なる。また、公共側の事業実施主体に応じて、国家事業(政府機関や国営企業による実施)と地方事業(地方政府による実施)に分類される。PPP事業は開発および承認(事業選定)、調達(入札)および実施というフェーズに大別される。まず、事業選定フェーズでは、実効性評価や民間事業者からの意見聴取・交換(マーケット。サウンディング)などを経て案件形成されたパイプラインプロジェクトについて、関連承認機関に対する提案および評価・審査がおこなわれ、NEDAに設置された投資調整委員会(Investment Coordination Committee of the NEDA Board:ICC)または大統領を議長としたNEDA理事会によって承認される(下表参照)。PPP事業の入札は、改正BOT法等のほか、政府調達改革法および政府調達委員会(GPPB)作成のガイドラインに基づき実施される。そして、実施フェーズへと移行し、PPT事業契約を締結(金融機関による融資の最終合意も含む)のうえプロジェクト計画に基づき事業が実施される。

      政府提案型

      国家事業:事業総額が3憶ペソ以下の場合は投資委員会(ICC)による承認が必要とされ、事業総額が3億ペソを超える場合はNEDA理事会の承認が必要となる。

      地方事業:原則として地方議会の承認によって事業選定がおこなわれるが、事業総額が2憶ペソを超える場合はICCによる承認が必要となる。

      承認期限は、承認審査条件が充足した日より30営業日以内とされている。なお、政府提案型の入札実施期間については、具体的な日数・期限は示されていない。

      民間提案型

       

      ICCおよび関係承認機関が審査をおこない承認する。民間事業者による提案後、ICCおよび承認機関による審査を経て入札前の承認がなされるまでの所要期間については、期限の明示がないもの(Open Date)もあり、1年超を要する可能性がある。

      また、入札においては、原提案者以外の者による競合提案を募集し(入札図書公表から60営業日以内)、比較評価のうえ、より優れた事業者を選定する「スイスチャレンジ方式」が採用されている。このスイスチャレンジも含めて、入札所要期間は少なくとも4カ月程度は要する。

      8)インドネシアにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドネシアでは、政府の財源不足によってインフラ投資が十分に行われない期間が、長期間続いたため、特に都市部での交通渋滞をみても明らかな通り、インフラ整備が相当遅れている状態である。複雑ではあるが、PPP法も整備されており、今後の首都移転プロジェクトと関連インフラ整備との関係でもPPPプロジェクトが増加すると考える。また、インドネシアにおいては、国営企業が多く存在しており、国営企業の民営化の進展にも注目されるが、反対も根強く進展速度は緩やかなものになると想定される。なお、政府側の事情による事業計画の変更や遅延等も多く、留意が必要である。

      イ 法制度の概要

      PPPに関する法制度は、ヨドユノ政権下で制定されたPPPに関する大統領令 2005 年第 67 号 が基本的な事項を定めていたところ、 2015年にPPPに関する大統領令2015年38号が制定され、対象セクター範囲が拡大されるとともに、後述のアヴェイラビリティ・ペイメントが導入された。2005年の大統領令は、2015年の大統領令により廃止されたが、2015年大統領令に反しない限りでその実施細則は有効とされている。具体的な内容は以下のとおりである。

      (ア)PPPの定義

      まず、インドネシアにおけるPPPとは、一般的にPPPに関する大統領令に基づき実施される事業を指す。このPPPの実効性確保のため、上記大統領令では「政府保証」及び「政府支援」について規定している。「政府保証」は後述のIndonesia Infrastructure Guarantee Fund(以下、「IIGF」という)を通して、政府契約機関(Government Contracting Agency(GCA))による契約の履行を保証する制度である。「政府支援」はインドネシア政府による「財産的支援」及び「その他の形態による支援」を指し、「財産的支援」には後述のViability Gap Funding(VGF)が含まれる。なお、インドネシアにおいては、上記大統領令に基づくPPPとは別に、公共事業に対する民間開放が行われていることに注意を要する。これらについては、各セクターが個別の法令を規定している。

      (イ)IIGF(Indonesia Infrastructure Guarantee Fund)

      財務省は100%出資して2009年末にIIGFを設立した。IIGFは、PPP 事業において、政府契約機関(GCA)の契約履行を保証しており、民間事業者のリスクを軽減している。 前述のPPP以外の各セクターの官民連携案件においては、政府保証が政府による Support Letter やConfirmation Note といった形態であったため、その内容が必ずしも明確とは言えなかった。IIGFが設立されたことで、民間事業者は、IIGFとの保証内容の協議を通じて保障内容を明確にする形で保証契約を締結することができるようになった。

      (ウ)VGF(Viability Gap Funding)

      VGFは、財務省から供与される PPP 事業に対する財政的支援である。社会的な利益は大きいにも関わらず事業採算性の低い案件に対して、財務省が建設費の一部を支援することにより、PPP 事業としての成立を支援することを目的としている。VGはPPP事業における建設費の一部を中央政府予算から拠出するものであり、現金で供与される。 VGFは、社会的な便益と事業採算性とのギャップを埋めるものであるが、あくまで当該案件の建設費総額の主要(Dominant)な部分を占めない水準とされている

      (エ)アヴェイラビリティ・ペイメント(Availability Payment)

      アヴェイラビリティ・ペイメントは、前述の大統領2015年38 号で新たに導入された制度である。所定の品質でインフラサービス提供される場合に、その対価として、GCAから民間業者に定額の支払を約束する制度である。これにより民間企業者適切な投資リターンを見込んでPPP事業へ参画することを企図している。

      なお、GCAはアヴェイラビリティ・ペイメントについて民間事業者と契約をするが、当該契約の履行保証については、前述のIIGFを利用することになる。他方で、中央政府がGCAとなるアヴェイラビリティ・ペイメントが利用される案件では、前述のVGFを使用することはできない点に注意が必要である。なお、地方政府がGCAになる案件では、アヴェイラビリティ・ペイメントとVGFの併用が可能となっている。

      (オ)事業者選定方法

      PPP 案件における事業者選定は原則、公募入札方式(Public Tender)で行われる。しかしPPP に関する大統規則2015 年3号により、例外的に直接指名 (Direct Appointment)の可能性についても規定された。 すなわち、対象事業が特定条件(対象となるインフラが既に当該事業者により運転されている場合、当該技術を提供できるのが当該事業者のみの場合、当該事業者が事業に必要な土地を概ねまたは完全にコントロールしている場合)を満たす場合、または、事前資格審査をした結果、通貨事業者が1グループのみの場合には、事業者を直接指名することができる。

      実務上は、最初に公募による事前資格審査が行われ、通過事業者が2グループ以上の場合は原則通り公募入札方式で選定が行われ、通過事業者が1グループのみだった場合には直接指名手続に進むことが認められている。

       

      9)インドにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドは、世界でもっとも多くのPPP事例が存在しており、特に道路と空港セクターを中心に一般的に浸透している。モディ政権下においても積極的にPPPプロジェクトの活用が図られている。ただし、州レベルの規制やガイドライン等に基づき、運用が行われており、統一的なPPP法制度がなく、州レベルのローカルルールや恣意的な運用により、外資が参入することは困難なことが多いといわれている。また、政府や監督省庁による計画変更や事業遅延等も生じていることに加えて、現地企業との価格競争を踏まえると、外資企業のプロジェクト推進については困難なことが多いと評価できる。

      イ 法制度の概要

      インドにおいて、連邦政府レベルで統一的なPPP法は存在していない。基本的には、財務省が基本政策を策定し、各種ガイドラインやマニュアルを整備している。具体的には、以下に示す一定の規則、手続き、マニュアル等が整備されている。PPPプロジェクトにおける事前資格基準、調達プロセス、調達者と入札予定者との間の契約事項などについて規定を定めている。

      • 2017年一般的財務規則 (General Financial Rules, 2017)
      • 1978年財務権限委譲規則(Delegation of Financial Powers Rules, 1978)
      • 2017年物品公共調達規則(Manual for Procurement of Goods, 2017)
      • 中央監察委員会ガイダンス(Central Vigilance Commission Guideline)

      その他、個別に①高速道路、②上下水道、③港湾、④廃棄物管理、⑤都市交通の5つのセクターに特化した規則等が存在している。その上で、州政府が個別具体的な政令や規則等を策定し、運用を行っている。また、州レベルの法制度の整備状況は州ごとに異なっており、公共インフラへの民間投資を含むインフラに関する法的枠組みを明確に規律している主な州は以下の通りである。

       

      法規定 

      Andhra Pradesh

      The Andhra Pradesh Infrastructure Development Enabling Act 2001

      Bihar

      The Bihar Infrastructure Development Enabling Act 2006

      Gujarat

      Gujarat Infrastructure Development Act 1999 amended in 2006

      Haryana

      Haryana PPP Policy

      Karnataka

      The Karnataka Infrastructure Policy 2007 amended in 2015 and Guidelines for Procurement of PPP Projects through the Swiss Challenge Proposals Route, 2010

      Punjab

      The Punjab Infrastructure Development and Regulation Act 2002

      Tamil Nadu

      Tamil Nadu Infrastructure Development Act, 2002

      Uttar Pradesh

      Uttar Pradesh Infrastructure and Industrial Investment Policy, 2012

      West Bengal

      The West Bengal Policy on Infrastructure Development through PPP 2003

       

      インドでのPPPにおいては、Public Private Partnership Approval Committee (PPPAC、「PPP評価委員会」)が、その中核を担っている。PPP評価委員会は、内閣経済委員会(CCEA)傘下の中央省庁/中央公共セクター事業(CPU)/法定当局またはその管理下にある事業体から構成されている。PPPAC評価委員会発行のプロジェクト査定・評価・承認のための手順[9]は次の通りである。

       

      ①監督機関は、PPPにおいて実施されるプロジェクトを策定し、適切な資格を持ったコンサルタントの支援を得て、フィジビリティ・スタディとプロジェクト契約の準備を行う必要がある。

      ②必要に応じて、監督機関で議論した内容をPPP評価委員会へ提出するプロジェクト提案書に添付する必要がある。

      ③PPP評価委員会の承認のために、行政庁は、フィジビリティ・スタディ報告書とともに、所定のフォーマットで作成されたプロジェクト提案書を提出する必要がある。

      ④ PPP評価委員会は、提出された書類を関係省庁に展開し、3週間以内に関係省庁との会合を開き、プロジェクトの原則的承認の可否を決定する。

      ⑤原則承認後、行政省は資格審査(RFQ)を提出し、資格のある入札者をリストアップすることが可能となる。そして、提案要請書とすべての契約書の草案を作成する必要がある。

      ⑥最終的な承認を得るため、事前に指定されたフォーマットで作成された提案書をPPP評価委員会に送り、PPP評価委員会の全メンバーの審査を受ける。

      ⑦Niti Aayog(政策委員会)、法律省、およびその他の関係省庁は、意見書をPPP評価委員会に送り、その意見書は行政省に転送される。

      ⑧PPP評価委員会の審査のために、PPP評価委員会の覚書付きの調達書類と契約書の全てを提出する必要がある。

      ⑩PPP評価委員会は、関係当局の最終承認を得るためにプロジェクトを推薦するか、または、PPP評価委員会で更検討するために、行政省にプロジェクトの修正の再提出を提案する。

      ⑪PPP評価委員会の承認後、最終承認のため、監督機関に最終プロジェクトを付託する必要がある。

       

      なお、PPP契約書の作成に際して、以下の条項を必ず記載する必要があるので、注意が必要である。

      ①契約日とコンセッション期限

      ②民間事業者の義務、権利や制限(提供されるサービスと履行義務の説明を含む)

      ③公的主体の義務と権利、プロジェクト収入スキームと支払方法等

      ④履行監視のための要件と手続きや不履行時の処理方法

      ⑤紛争解決規定、不可抗力等の標準条項

       

      10)バングラデシュにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしている。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表し、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されている。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインを制定し、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設置されている。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されている。そして、2015年9月16日には、バングラデシュ初のPPP法が成立している。

       

      イ 法制度の概要

      PPP法は、全49条から構成される。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドラインの策定の責任を負っている。また投資家の手続き上の負担を低減化するために、関連文書のサンプルを作成し、提供することもその義務となっている。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されている。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関する規定が存在している。特に第17条では、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されている。ただし、規定自体は非常に簡単な内容となっており、今後の細則等の発表が待たれる。

      また、PPP法第19条では、民間事業者の選定方法、第22条では、当事者間の合意に際して、プロジェクト会社の設立要件や方法等が明記されており、第24条および第25条は、汚職および利益相反に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されている。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある条項が明示されている。

       

      1. 最後に

      新興アジアにおけるインフラ需要は膨大である。ただし、PPPプロジェクトを成功させるためには、PPPプロジェクトが実現可能な環境を整備することが不可欠である。その意味では、PPPプロジェクトを促進するための政策、法的、制度的枠組みの設計や強化等といった政府のアクションが絶対的に必須である。アジア新興国において、上記で述べた通り、2010年に入り、徐々にPPP法制度の制定やPPPガイドラインを策定やPPP専門部署を設置が進んでいることが確認できたのではないだろうか。しかしながら、リスクマネジメントの観点からは、制度等の拡充等のともに、財政的支援や保険制度等の整備が次のステージでは必要となってくるのは間違いない。次回は、アジア新興国におけるPPPプロジェクトの潜在的なリスクマネジメントに対する対応策や偶発債務の管理方法等への対案を検討するため、先進国におけるPPPプロジェクト事例を整理紹介し、アジア新興国でのPPPプロジェクトに活かしていきたい。

以上

本記事やご相談に関するご照会は、以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

 

2020年10月15日(木)10:17 AM

ネパールの投資環境および投資規制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ネパールの投資環境および投資規制について

 

 

ネパールの投資環境および投資規制について

2020年10月14日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

1 はじめに ネパールの基礎知識

 

ネパールでは 1996 年から 2006 年まで紛争が続いていましたが、その後の民主化運動を経て、政府は 2013 年からインフラ整備などの計画を進めています。しかしながら、このような状況の中、2015 年 4 月に起きた ネパール大地震の影響は甚大でした。ネパール政府は地震からの復興をめざし、外国企業による投資を誘致する活動を積極的に行っています。ネパールは、急成長している経済大国 インドと中国の間に位置し、地理的な重要な拠点となっています。また、ネパールは北側の山岳と南側の平野地帯で構成されており、豊富な水資源に恵まれており、水力発電のポテンシャルが非常に高いといわれています。ヒマラヤ、湖、河川、 生物多様性などの自然遺産が豊富で、観光、トレッキング、エコツーリズム等の可能性もあります。ネパールの人口は約 3,000万人、労働人口(15 歳から 65 歳)が 6 割以上を占めており、首都圏や都市部を中心に英語が話せる人の割合が高く、人件費は近隣国と比較して廉価です。以上のような観点から、今後のネパールの発展が期待されています。

 

 (1)  地理について

ネパール連邦民主共和国は,国土面積14.7万平方キロメートル(北海道の約1.8倍)の内陸国です。地理的には東西に長く南北に狭いです。世界最高峰のエベレスト(標高8,848m)擁するヒマラヤ山脈から標高100mにも満たないタライ平原まで急激に高度が変わるのが特徴です。首都のカトマンドゥはこの落差激しい南北の中間の丘陵エリアにあり,標高はおよそ1,400mです。北はヒマラヤ山脈に沿って中国と,南は肥沃な平野部でインドと長い国境を接しており,急成長する両大国の大規模な市場へのアクセスが容易です。インドとの間では無関税アクセスが,中国へは約8,000品目の無関税アクセスが認められています。

またヒマラヤ山脈に代表される世界的な観光資源に恵まれているほか,その豊富な水量・急峻な地形を利用した水力発電の高いポテンシャルが見込まれています。

 

(2)  人口・民族・言語について

人口約3,000万人を擁し,その57%が生産年齢人口にあります。安価で豊富な労働力があるのが強みとなっています。

 

<人口動態[1](人)>

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2018

18,905,478

21,576,071

23,941,110

25,744,500

27,013,212

27,015,031

28,087,871

100以上の民族が暮らし,言語も90を超えるとされていますが,公用語はネパール語です。英語教育が施されており,ビジネス関係者は英語話者が多いです。

 

(3)  宗教・暦について

ヒンドゥー教徒が最も多く(81.3%),仏教徒(9.0%),イスラム教徒(4.4%)と続きます。ヒンドゥーと仏教の混合も見られます。現在,ヒンドゥー教は国教ではありません。

正式な暦としてビクラム暦が使われています。西暦(グレゴリオ暦)と同じく1年は365日で12の月に分かれていますが,各月の日数は流動的であり,西暦とは新年も年度の区切りも異なります[2]。公的手続の際には留意する必要があります。

 

(4)  国家・政治体制について

1996年からおよそ10年間続いた内戦の末,2008年に王政が廃止されました。現在は複数政党による連邦民主共和制です。国家元首は大統領とされますが,議会に選出された首相が行政の長として議会に責任を負います。連邦議会は上下院からなります。国土は7つの州に分割されており,各州に州議会が置かれています。

 

<行政区分[3]

Provinces[4]

州都

Districts

人口(2011

GDP寄与率(2018/19)[5]

第1州

Biratnagar

14

4,534,943

15%

第2州

Janakpur

8

5,404,145

13%

Bagmati州(旧第3州)

Hetauda[6]

13

5,529,452

41%

Gandaki州

Pokhara

11

2,403,757

8%

Lumbini州

Bhalubang

12

4,499,272

13%

Karnali州

Birendranagar

10

1,570,418

4%

Sudurpaschim州

Dhangadhi

9

2,552,517

6%

           

 

(5) 通貨・経済状況について

通貨はネパール・ルピー(NRs)

1ネパール・ルピー=約0.965円(2016/2017年度平均値,ネパール中央銀行(別称ネパール・ラストラ銀行(Nepal Rastra Bank(以下、「NRB」))

 

<主な経済指標と推移[7]

 

2014/15

2015/16

2016/17

2017/18

2018/19

名目GDP(100万NRs)

2,130,150

2,253,163

2,674,493

3,031,034

3,464,319

〃 (100万US$)

21,410

21,186

25,181

29,041

30,501

1人あたりGDP(NRs)

76,201

79,528

93,141

104,152

117,455

〃       (US$)

766

748

877

998

1,034

経済成長率(%)

3.3

0.6[8]

7.9

6.3

6.5

インフレ率(%)

7.2

9.9

4.5

4.2

4.9

US$為替レート

99.49

106.35

106.21

104.37

113.58

 

(6) 産業について

産業別GDP割合は,多い方から農林業が26.50%,卸売業が14.37%,不動産業が11.53%,建設業が7.77%,運送業が7.23%となっています。農業の占める割合はやや減少傾向にある一方で,金融業,不動産業の割合が緩やかに増加しています。

 

<産業別GDP割合(%)[9]

 

2014/15

2015/16

2016/17

2017/18

2018/19

農林業

31.27

31.08

29.14

27.58

26.50

水産業

0.47

0.53

0.51

0.49

0.48

鉱業

0.60

0.56

0.58

0.61

0.60

製造業

6.03

5.82

5.48

5.54

5.59

エネルギー業

1.12

1.02

1.25

1.23

1.25

建設業

7.06

6.80

7.18

7.55

7.77

卸売業

14.69

14.11

13.55

13.95

14.37

ホテル・レストラン業

2.05

2.00

1.95

2.04

2.05

運送業

8.37

8.06

7.55

7.23

7.23

金融業

4.64

5.19

5.54

6.31

6.32

不動産業

8.47

9.21

10.95

11.32

11.53

社会サービス業

2.61

2.54

2.84

2.66

2.71

教育業

6.56

6.82

7.11

7.12

7.06

医療・社会福祉業

1.67

1.62

1.74

1.68

1.75

その他

4.39

4.65

4.63

4.71

4.78

 

2019年3月中旬時点での累計登録企業は210,165社,うち非公開株式会社が206,066社とほとんどを占めます。外国企業は243社となっています。

 

<形態別登録企業[10]

 

2014/15

2015/16

2016/17

2017/18

2018/19

合計

公開株式会社

1,292

55

89

72

44

1,552

非公開株式会社

134,652

14,455

18,139

21,715

17,105

206,066

非営利会社

783

286

396

442

397

2,304

外国企業

100

22

39

49

33

243

 

210,165

 

(7) 外国投資について

2011年に投資庁を設置し,海外向けの投資プロモーションを実施する等[11],外国投資を誘引する姿勢を明確にしています。

 

<過去10年の外国投資額推移>
※グラフはPDFをご覧ください。

 

累積投資額ベースで見る主要な投資分野は,1件あたりの投資額が大きなエネルギー業(42.16%)がトップであり,これに投資件数の多いサービス業(18.72%),製造業(18.60%),観光業(14.10%)が続きます。農業は国内主力産業ですが,累積投資額は2.25%にとどまっています。

 

<産業別外国投資(2018/19までの累積)>

 

件数

外国投資額(100NRs

割合()

農林業

284

6,611.82

2.25

建設業

46

2,983.01

1.02

エネルギー業

81

123,822.97

42.16

IT

59

1,281.02

0.44

製造業

1,167

54,628.47

18.60

鉱業

72

7,981.01

2.72

サービス業

1,610

54,985.00

18.72

観光業

1,503

41,413.38

14.10

合計

4,822

293,706.68

100

 

2018/19年度の時点までの累積投資額で見る対ネパール投資国は,中国(香港,台湾含む)(42%),インド(32.04%)の2カ国が他を大きく引き離し,イギリス(4.61%),韓国(4. 61%),アメリカ(3.09%)と続きます。日本は第8位(1.05%)となっています。

 

2018/19までの上位投資国(累積額)[12]

順位

国名

件数

投資額(100NRs

割合()

1

中国(香港,台湾含む)

1,556

123,363.00

42.00

2

インド

781

94,111.04

32.04

3

イギリス

196

13,549.11

4.61

4

韓国

354

12,323.75

4.20

5

アメリカ

413

9,063.07

3.09

6

シンガポール

51

4,517.39

1.54

7

モーリシャス

11

3,434.70

1.17

8

日本

272

3,076.21

1.05

9

アラブ首長国連邦

20

2,984.51

1.02

10

スイス

60

2,920.01

0.99

 

その他

1,108

24,363.54

8.30

 

合計

4,822

293,706.68

100

 

 

2 ネパールの投資規制について

 

(1) 関係法令

2016年産業企業法(Industrial Enterprises Act 2016、以下「産業法」)が投資一般に関する規定を設け,外国投資については,2019年外国投資・技術移転法(Foreign Investment and Technology Transfer Act 2019(2075、以下「外国投資法」)により規定されています。従って,外国投資の際には、この2つの法律を参照した上で,現地会社関連規制については会社法(Companies Act 2006および2017年改正)に則って設立および運営を行うことになります。

 

(2) 外資規制

外国投資家が現地法人を設立するためには,その事業活動が,(ⅰ)産業法の「産業」(「ポジティブリスト」)の分類に含まれること,(ⅱ)外国投資法のネガティブリストに該当しないという要件を満たす必要があります[13]

 

(ⅰ)産業法上のポジティブリスト

外資に限らず,ネパールで事業を行うためにはIEAに基づく登録が必要となります。登録申請から15日以内に証明書が発行され,この証明書に記載された日から事業を開始することになり,事業開始は報告する義務があります。また、輸出業に関しては,製品のうち少なくとも60%を輸出しなければなりません。

 

ただし,爆発物や武器関係,貨幣の生産に関連する産業,タバコやアルコールに関連する産業,鉱石類の生産や石油掘削に関連する産業,無線通信機器を製造する産業は,産業大臣が議長を務める産業投資促進委員会(Industry and Investment Promotion Board)の許可が必要となります[14]

 

なお,投資家は登録証の記載通りに事業を開始しなければならず,その責任で事業開始の事実を当局に通知しなければなりません。これを怠ると登録が抹消される可能性があります。

 

IEAの列挙する「産業」の分類は下記の通りです。以下をいわゆる「ポジティブリスト」といいます。

 

 固定資産による分類

1

零細産業

(Micro Industry)

-投資家を含む最大9人の従業員

-年間売上高500万NRs以下

-電力適用値20 KV以下

-固定資産500,000NRs以下

2

家内産業

(Cottage Industry)

-伝統的技術を使用していること

-電力適用値20 KV以下

-IEAのAnnex2参照

3

小規模産業

(Small Industry)

-ミクロ産業および家内産業以外の産業で,固定資産が1億NRs以下のもの

4

中規模産業

(Medium Industry)

-固定資産1億NRsを超え2億5,000万NRs以下の産業

5

大規模産業

(Large Industry)

-固定資産が2億5,000万NRsを超える産業

 

 産業別の分類

1

エネルギー産業(Energy based Industry)

水力,風力,太陽光,石炭,天然油,燃料またはガス,バイオマス,および類似のエネルギー生産産業でエネルギーを生成する産業; エネルギー伝送,配送

2

製造業

(Manufacturing industry)

原材料,補助原材料,半加工原材料の利用または加工産業

3

農業・林業

(Agro and Forest based industry)

養蚕・絹の生産,園芸,果物の加工,鳥を含む畜産,乳業,養鶏業,漁業,茶/コーヒーの栽培と加工,ハーブ加工,野菜の種の栽培,野菜の栽培と加工,組織培養,温室,養蜂,蜂蜜生産,ゴム栽培,園芸および生産,冷蔵・農産物市場,リースホールド森林,農林業等の農業または森林製品に基づく産業

4

鉱業

(Minerals based industry)

鉱物の発掘またはその加工に基づく産業,ただし金属を除く

5

建設産業

(Construction

based industry)

道路,橋,トンネル;ロープウェイ,鉄道,路面電車,トロリーバス,ケーブルカー,モノレール,スライディングカー;航空と空港;カンファレンスセンター;廃棄物管理;給水・配水;灌漑;スポーツ複合施設とスタジアム;駐車場と駐車施設;輸出加工区;カーゴ・コンプレックス;下水処理場;経済特区;電話塔,光ファイバーネットワーク,衛星,衛星伝送センター;家屋・団地;映画スタジオ;商業ビル

6

旅行産業

(Tourism based industry)

ツーリストハウス,モーテル,ホテル,リゾート,レストラン; 旅行代理店,ツアーオペレーター,ヒーリングセンター,カジノ,マッサージ,スパ; アドベンチャーツーリズム; ゴルフコース,ポロ,ポニートレッキング,ハイキング; 村落観光,ホームステイ,エコツーリズム; 文化・宗教・会議・スポーツ旅行;エンターテインメント部門;自然保護;マウンテンフライト

7

情報通信産業

(Information, transmission and

communication

 based industry)

テクノロジーパーク,ITパーク,バイオテクノロジーパーク,ソフトウェア開発,コンピューターおよび関連サービス,データ処理,サイバーカフェ,デジタルマッピング,BPO,データマイニング,クラウドコンピューティングなどのIT産業

インターネット,電気通信,テレポートサービス,衛星の設置と運用,衛星伝送センター,VSAT,ブロードバンド,光ネットワーク,衛星ネットワークなどの通信産業

FMラジオ,デジタルラジオサービス,デジタルテレビ,衛星テレビ,ケーブルテレビ,IPTVおよびオンラインサービス,デジタルケーブルテレビ,ネットワーク,自宅直送衛星サービス,MMDSネットワーク,録音スタジオ,印刷メディア,エンターテイメントサービスなどの伝送産業など

8

サービス業

(Service based industry)

ワークショップ,印刷メディア,コンサルティングサービス,ジンニング・ベイリングビジネス,映画撮影,建設ビジネス,公共交通ビジネス,写真,病院,養護施設,教育および訓練機関,図書館および博物館サービス,実験室,航空サービス,スポーツサービス,非農業 冷蔵,家の配線,電気設備およびメンテナンス,廃棄物管理サービス,貨物および宅配便サービス,広告サービス,包装および補充サービス,外国人雇用サービスなど

 

3)外国投資奨励制度

 

外国投資法の規定によれば,外国投資を行うためには,以下の承認を取得する必要があります。

 

(ⅰ)外国投資法第15条に基づく産業省産業局(Department of Industry、以下「DOI」)の承認(「DOI承認」)

 

(ⅱ)外国投資法第16条では,外国投資家は,DOI承認を受け次第,正規の資金源からネパールに送金されることを明記した申告書をネパール中央銀行(NRB)に提出しなければならないと規定されています。したがって,外国投資法によればNRB承認は別途必要ではなく通知で足りると考えられます。

 

ただし,承認権限者は,投資額やプロジェクト費用によって異なります。固定資産60億NRs未満の産業への外国投資の提案は,DOIによって承認される一方,60億NRs以上外国投資またはプロジェクト費用の提案は,ネパール投資委員会(Investment Board Nepal、以下「IBN」 ) (首相を長とするハイレベルの理事会)によって承認されます。外国投資に関する承認制度は,下表の通りです。

 

外国投資額または事業費

申請先

承認者

事前通知

固定資産が60億NRs未満の業種

DOI

DOI

NRB

固定資産が60億NRs以上の業種

DOI

IBN

NRB

 

 

<手続>※図はPDFをご覧ください。

外国投資の承認および現地法人の設立に関する一般的な流れは,以下の通りです。なお,ネパール政府はワンストップサービスセンターを設置しており,現地法人の外国投資登録

申請はすべて同センターを経由して処理されます。

<所要時間>

新会社・新産業の承認・登録にかかる時間は,約60日となっています。ただし,IBNの承認が必要な場合には,最長90日を要することがあります。

 

<最低外国資本金>

ネパール政府は,官報によって外国投資の最低額を5,000万NRsとしています。ただし,この金額は一括で払い込む必要はなく,一般にNRBへの通知日から2年以内に段階的に払い込めばよいことになっています。また,この2年の制約は厳格なものではありません。DOI/NRB等の機関の承認・条件により,そのビジネスにおける資本金の必要性が考慮されます。なお、現地法人設立ではなく、外国法人の支店を設置する場合には、運用上5,000万NRsが免除されています(2020年9月末日現在)。

 

<承認の効果>

外国投資法第43条によると,承認機関による海外投資の承認は,ビジネスがネパール国内に存続している限りは有効であすが,下記の場合に効力を失うとされています。

(a) 合理的な理由なく,承認から2年間で海外投資をネパールへの持ちこみを開始しなかった場合

(b) 登録された承認済海外投資事業の株式売却により,必要な割合の所有率をネパール投資家に移転した場合

(c) 海外投資として承認を受けた産業やその産業のために設立した会社の債務不履行により登録が失効した場合

 

<外国投資額の振替および記録>

(a) 設立前費用

外国企業は,ネパール中央銀行(NRB)への通知前に投資を行うことはできません。ただし,外国親会社は,当該承認前に,適切な銀行チャネルを通じて,現地代表者または代理人の名義で,払込済資本総額の1%を上限として払込をすることができます。この金額は,登録費用および運転前経費に充当され,ネパールの現地会社の登録に伴い資本金として計上されなければならないとしています。

 

(b) 外国投資の払込および記録

現地会社は,ネパールのライセンス「A」(商業銀行)または「B」クラス(開発銀行)の銀行機関に銀行口座を開設することができます。現地会社の取締役会は,その決議により,銀行口座の開設およびその実行を担当する代表者を指名しなければなりません。現地会社のみが外国親会社から資金を受け取り,これをNRBに記録できます。

 

(4) 経済特区(Special Economic Zone (SEZ)

外資の誘引や輸出業の発展を企図して経済特区(Special Economic Zone (SEZ))が指定されています。Bhairahawaが指定されたのを皮切りに,Simara,Panchkhal,Biratnagar,Kaspilvastu,Jumla,Dhangadi,Nuwakot,Nepalgunj,Jhapa,Dhanusha,Rautahat,Siraha,Gorkhaの14のエリアが対象となって順次整備が進められていますが,先んじて整備が行われたBhairahawa を除けば,2019年時点では多くのエリアがまだ運用段階にありません。

 

SEZでは各種の税制上の優遇(期間ないしエリアに応じた所得税全額免除ないし半額免除,VAT免除)がある他,労働法の適用を回避できる(労働組合やストライキの禁止)等のメリットがあります。投資額の下限が指定され,また生産品のうち一定割合の輸出が義務付けられています。

 

経済特区一覧[15]

経済特区名

所在地

面積(ha

Bhairahawa

(第5州)Rupandehi district, Bagaha V.D.C

36.8

Simara

(第2州)Bara district, Simara

564

Panchkhal

(第3州)Hokse V.D.C, Panchkhal

50

Biratnagar

(第1州)Amaduwa V.D.C of district Sunsari and Biratnagar Sub-Metropoli!an city, Morang

200

Kapilvastu

(第5州)Sauraha V.D.C, Kapilvastu

64

Jumla

(Karnali州)Pandugupha V.D.C, Jumla

47

Dhangadi

(Sudurpaschim州)Shreepur V.D.C, Haraiya

180

Nuwakot

(第3州)Ratmate, Jilling

70

Nepalgunj

(第5州)Naubasta V.D.C

348

Jhapa

(第1州)Ratuwamai Forestry Land,Topganchhi V.C.D Ward no. 5, district Jhapa

300

Dhanusha

(第2州)Umaprempur V.D.C

55

Rautahat

(第2州)Jhunkhunwa V.D.C

106

Siraha

(第2州)Gobindapur V.D.C

106

Gorkha

(Gandaki州)Deurali V.D.C

60

 

IEAは,これらの産業の種類や特性ごとの税制等について定めています。

 

<産業別優遇税制>

製造業は,所得税の20%のタックス還付(減税)が受けられ,道路,橋,トンネル,ロープウェイ,路面電車,トロリーバス,空港,工業団地,インフラ複合体を開発している建設産業は,所得税の40%の還付を受けられます。

 

遠隔地または未開発地域の産業は,果樹ベースのブランデー,サイダー,ワイン生産産業を除き,操業から10年間,それぞれ所得税の90,80,70%の還付が認められます。除外されている果物ベースのブランデー,サイダー,ワイン生産産業は,同じく操業日から10年間,所得税の40%の還付けられます。

 

10億NRs以上で設立され,年間500人以上の直接雇用者を擁する製造業は,操業日から5年間,所得税が免除されます。その後3年間は,所得税の50%の還付が受けられます。既存の製造業であっても,設備容量を25%以上増やして10億ネパール・ルピーに達し,500人以上の直接雇用をしている場合は,増加で得られる所得に対して同様の免税を受けることができます。

 

ネパール暦2080年のChaitra の月(2024年4月中旬)末までに操業を開始する水資源,太陽,空気,バイオマスからのエネルギーの生成・送達・配布を行うエネルギー産業者は,操業から10年間,所得税が免除され,その後も5年間は50%の還付を受けられます。

ネパール暦2075年のChaitra の月(2019年4月中旬)末までに操業を開始する石油または天然ガスおよび燃料の発掘・探査に携わる場合は,操業から7年間,所得税を免除され,その後3年間は50%の還付を受けられます。

 

20億NRs以上で設立された観光産業と,ホテル,リゾートなどのMunicipalityやsub-Municipality以外に50億NRs以上で設立されたインフラベースの観光産業は,操業から5年間,所得税が免除され,その後も3年間は50%の還付を受けられます。既存の観光産業であっても,設備容量を25%以上増やして20億NRsに達した場合は,増加で得られる所得に対して同様の免税を受けることができます。

 

テクノロジーパーク,バイオテクノロジーパーク,およびソフトウェア開発,データ処理,サイバーカフェ,デジタルマッピングなどのITパークに設立された産業などの情報通信産業は,所得税の50%の還付を受けられます。

 

300人以上のネパール人を直接雇用する製造業,情報通院産業は,所得税の15%の還付を受けられます。1,200人以上のネパール人を雇用していれば,所得税の25%の還付を受けられます。 その雇用者の半数が女性,ダリット,障害者である場合,さらに15%加算されます。

 

製品の輸出を行うあらゆる製造業は,その輸出にかかる所得に対して25%の所得税免除が受けられる可能性があります。

 

(ii) 外国投資法上のネガティブリスト(FITTA Schedule)

ネパールにおいては、次の分野の投資については、外国企業の参入が制限されています。

 

1

養鶏,漁業,養蜂,果物,野菜,油糧種子,豆類,乳業,その他の主要な農業生産部門

2

家内産業および小規模産業,

3

個人サービス事業(ヘアカット,仕立て,運転など),

4

武器,弾薬,弾丸および砲弾,火薬または爆発物,および核兵器,生物兵器,化学兵器(N.B.C.)を製造する産業,原子力および放射性物質を生産する産業,

5

不動産事業(建設業を除く),小売業,宅配便,地元のケータリングサービス,両替商,送金サービス,

6

旅行代理店,観光に携わるガイド,トレッキングと登山ガイド,ホームステイを含む農村観光,

7

マスコミュニケーションメディア(新聞,ラジオ,テレビ,オンラインニュース)およびネパール言語の映画産業,

8

経営,会計,エンジニアリング,法律相談サービスおよび語学トレーニング,音楽トレーニング,コンピュータートレーニング事業,

9

外国投資が51%を超えるコンサルティングサービス。

 

[1] 世界銀行人口動態予測より

[2] 新年は4月中旬に,行政年度は7月中旬に始まります。

[3] Central Bureau of Statics(SBC): Provincial Statistic,Ministry of Finance (MoF): Economic Survey 2018/19より

[4] 7州に分割後,東から第1~7州の順に番号が割り振られ,順次州名が決められます。

[5] 2018/19のデータは推定値。以下同様。

[6]首都カトマンドゥは第3州に位置します。

[7] MoF: Economic Survey 2018/19,CBS: National Accounts of Nepal 2018/19より

[8] 2015/2016に起きた大地震とインド国境封鎖の影響で一旦滞ったものの,翌年から高い成長率をみせています。

[9] CBS: National Accounts of Nepal 2018/19より

[10] MoF: Economic Survey 2018/19

[11] 近年は2017年,2019年に「ネパール投資サミット」が開催されています。

[12] Department of Industry: Industrial Statistics(2018/19)より

[13] 2019年に改正されており,従前は外国投資の対象になっていたものもネガティブリストに含まれています。

[14] ただし,これらの産業の中には後述のネガティブリストによって外国投資自体が規制されているものがあるので併せて参照する必要があります。

[15] Special Economic Zone Development Committee資料より

 

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2020年09月25日(金)5:55 PM

バングラデシュの投資環境、外資規制、税制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

バングラディシュの投資環境、外資規制、税制について

 

 

バングラデシュの投資環境、外資規制、税制について

2020年9月25日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

1.バングラデシュの投資環境

 

バングラデシュは、魅力的な国だ。空港に到着すると、群衆のように人が押し寄せる。空港を出立すると、交通渋滞ですぐに微動だにできなくなる。さすが、世界で一番人口密度が高い国だ。魅力はとにかくバングラデシュの人達で、意外と思われるかもしれないが、基本的に穏やかで優しい人達が多いと感じる。バングラデシュ独自の文化、アート、音楽等も独自なものが多く、均一化する世界で明らかにそこにしかない価値観や独自性を有している素晴らしい国だと思う。

バングラデシュは、ベンガル語で「ベンガル人の国」を意味する。著者と関係の深いメコン川のように大河ガンジス川を有し、豊富な水資源を基礎に、農作が活発で、黄金のベンガルと呼ばれた。現代では若年労働者と低廉な労働力を求め、多国籍製造関連事業者から熱視線を浴びており、今後のさらなる発展に期待だ。今回は、基礎編として、バングラデシュの概況、投資環境、投資規制や基礎的な税制について紹介する。

まず、バングラデシュの概要は下表の通り。

<バングラデシュの概要>

正式国名

バングラデシュ人民共和国

(the People’s Republic of Bangladesh)

地理

バングラデシュの首都はダッカ(人口約 1,204 万人、2018/19年[1]) であり、西と北はインド、東はインドとミャンマーに接し、南はインド洋に面している 。面積 147,569k m2で日本の約 4 割の広さ、国土の約 9 割が低地であることから、雨季(6-10月頃)には、サイクロンにより国土の約 1/3 が冠水することがある[2]

国土面積

約14万7000平方メートル(日本の約40%程度)

首都

ダッカ

人口

人口は1億6,365万人[3](2019年)であり、特徴として国土が狭く人口密度が高い 。

時差

日本とは-3時間の時差

民族

民族は、ベンガル人が約 98%、ミャンマーとの国境に仏教系少数民族が居住。

言語

公用語はベンガル語、ビジネス関係者は英語話者も多い。 15歳以上成人の識字率は73.91%とされている(2018年、UNESCO[4])。

宗教

同国の9 割近くがイスラム教徒、ヒンズー教徒が 1 割弱、少数の仏教徒とキリスト教徒が存在する。同国憲法においては、信教の自由が認められている。

通貨

通貨はタカ(taka)、補助通貨はパイサ。1 米ドル=84.5 タカ(2020 年 9 月 1 日現在、バングラデシュ中央銀行)。

なお、国家会計年度は毎年 7 月 1 日から翌年 6 月末まで 。

在留邦人

バングラデシュにおける在留邦人 946 人[5] となっている。

政治体制

バングラデシュは、1971年パキスタンから独立、その後20年に渡る軍事政権から1991年平和裏に民主化に移行、憲法改正により議員内閣制へ。以降、5 年ごとに総選挙が実施され、その都度、政権が交代 。2009 年 前野党のアワミ連盟が総選挙に大勝し政権奪還、ハシナ氏が首相に就任、アワミ連盟のジルル・ラーマン氏が大統領に就任。2013年ラーマン大統領が逝去した後、与党アワミ連盟アブドゥル・ハミド氏が大統領就任、現在に到っている(大統領は象徴的な存在で、政治実権はないとされる)。  

国会は一院制で「Jatiya Sangsad」(国民議会)と呼ばれる。350 議席、任期 5 年、議員は小選挙区制選挙にて選出。国土は8つの管区に分かれているが、管区の下の県(2019年時点、56県[6])が実質的な行政主体となっている。

 

続いて、経済についてだが、下表の通り、着実にGDP自体は毎年10%近くが増加し、一人あたりGDPも年々着実に伸ばしている。今後、さらなる成長が期待される。

産業については、ニットをはじめとした衣類製造を主とする軽工業が輸出の主力であり、2020年1月時点の経済成長率は8.5%と順調に成長していたが、COVID-19等の影響により、主力の衣類輸出が18.2%減少、経済成長率は4.5%と下方修正されている状態である[7]

<主要な経済指標[8]

 

2014-15

2015-16

2016-17

2017-18

2018-19

名目GDP (Tk. In billion)

15158.0

17382.6

19758.2

22504.8

25361.8

名目GDP (USD in billion)

195.079

221.415

249.711

274.039

302.571

一人当たり実質GDP (Tk. )

96004

108378

122152

137518

153917

一人当たり実質GDP (USD)

1,002.38

1,062.04

1,127.27

1,203.21

1,821.50

経済成長率 (%)

6.55

7.11

7.28

7.86

8.13

インフレ率 (%)

5.9

6.7

6.3

5.6

4.5

対USD為替レート

77.80

78.40

80.59

83.75

84.50

 

また、産業についても製造業が最も多く24.21%を占め、次いで卸売業(13.88%)、運送業(10.98%)、農林業(10.11%)と続く。製造業の主力は衣類品(ニット含む)となっている。

<産業別GDP割合[9]

 

2014-15

2015-16

2016-17

2017-18

2018-19

農林業

12.32

11.70

11.12

10.67

10.11

水産業

3.69

3.65

3.61

3.56

3.50

鉱業

1.68

1.77

1.80

1.78

1.77

製造業

20.16

21.01

21.74

22.85

24.21

エネルギー業

1.42

1.50

1.52

1.54

1.57

建設業

7.16

7.26

7.36

7.50

7.59

卸売業

14.08

13.99

14.01

13.95

13.88

ホテル・レストラン業

0.75

0.75

0.75

0.75

0.47

運送業

11.43

11.31

11.26

11.13

10.98

金融業

3.38

3.39

3.45

3.45

3.45

不動産業

6.81

6.64

6.49

6.31

6.13

行政・国防

3.49

3.63

3.70

3.71

3.65

 

 

2 バングラデシュの投資規制と外資規制

(1) 投資関連状況の概要

バングラデシュは、特に農業、衣料品・繊維製品、皮革・皮革製品、軽工業、エネルギー、情報通信技術(ICT)、インフラストラクチャー分野において、積極的に外国からの投資を求めている。政策上は、外国人投資家と自国民投資家に差別を行うことなく、法人税の減税や様々な投資優遇措置を提供している。産業別外国投資と出資上位国は下表の通り。

<産業別外国投資(2020年)[10]

産業

金額(100万USD)

割合

通信

81.24

14%

建設

78.11

13%

エネルギー業

67.14

12%

縫製・衣料生産業

55.05

9%

貿易業

46.62

8%

食品生産業

45.8

8%

金融

40.32

7%

ガス石油

25.79

4%

コンピュータソフト・IT

19.94

3%

皮革

10.42

2%

化学薬品

10.41

2%

その他

101.33

17%

 

<出資上位国(2020年)[11]

国名

出資額(100万USD)

割合

イギリス

117.8

20%

中国(香港、台湾含む)

73.9

13%

ノルウェー

68.93

12%

インド

53.04

9%

UAE

51.23

9%

米国

49.94

9%

シンガポール

42.72

7%

タイ

37.64

6%

韓国

22.04

4%

マレーシア

20.16

3%

 

(2) 関係法令、監督省庁

バングラデシュで外国人が現地法人を設立し事業を行うためには、商業登記所での登録、及び、バングラデシュ投資開発庁(BIDA)(旧投資委員会)の審査・承認を得る必要がある。BIDAは外資企業の登録、登録企業への外国人労働許可の審査発行、駐在員事務所や支店の設立認可、海外からの資金調達の許可など、外資出資に関するサービスを担っており、2018年2月、バングラデシュ議会は「ワンストップサービス法案2018」を可決し、ビジネスや投資の登録プロセスのさらなる合理化と効率化を目指している。

(3) 投資可能業種、及び規制業種[12]

外国人はほとんどの種類の事業実施し、会社を設立し、所有し、運営し、持分を処分することができるが、以下4分野については政府による投資対象となっている。

<政府による投資対象分野>

政府投資対象分野

武器・国防関連機器

植林・国有地における機械的伐採

原子力エネルギーの製造

紙幣印刷、造幣

 

また、以下22分野については関係省庁の許認可を要すると規定されている。

<許認可を要する分野>

許認可を要する分野

深海部における漁業

銀行及び金融業

保険業

電気生産、供給業

天然ガス・石油採掘、精製及び供給業

石炭採掘、精製及び供給業

その他鉱物資源の採掘、精製及び供給業

大規模インフラ事業(例:高架道路、高架高速道路、モノレール、経済特区、内陸コンテナ倉庫及び物流倉庫)

原油精製業(リサイクル、燃料として使用された石油の潤滑油としての再精製)

天然ガスその他の鉱物資源を原材料として利用した中・大規模産業

通信サービス(携帯電話サービス及び固定電話)

衛星チャンネル

運輸・旅客運送業

海運業

海港・深海港業

VOIP・IP電話

海岸に堆積した重質鉱物を利用した産業

爆発物製造業

酸製造業

化学肥料製造業

産業汚泥および汚泥を原材料として利用する産業

砕石業

深海部における漁業

銀行及び金融業

保険業

電気生産、供給業

天然ガス・石油採掘、精製及び供給業

石炭採掘、精製及び供給業

その他鉱物資源の採掘、精製及び供給業

大規模インフラ事業(例:高架道路、高架高速道路、モノレール、経済特区、内陸コンテナ倉庫及び物流倉庫)

原油精製業(リサイクル、燃料として使用された石油の潤滑油としての再精製)

天然ガスその他の鉱物資源を原材料として利用した中・大規模産業

 

(4) 出資比率[13]

原則、外資100%での出資が可能である。但し、業種によっては、出資金額、出資比率についての規制がある。外国資本の合弁は民間部門、公共部門とも可能となっている。なお、一部物流関連業、保険業、人材派遣業等については、外資出資比率に関する制限があるので、留意が必要である。

 (5) 外国企業の土地所有の可否[14]

外国企業でも会社登記すれば、土地所有権を所有できる。ただし、外国人個人の所有は不可。

土地を購入する際は、印紙税の納付、税や登記手数料等の必要な手続きを行った上で、手続きを行う必要がある。なお、輸出加工区(EPZ)の場合は、購入は不可能であるが、長期(30年間)使用権を取得可能である。

(6) 資本金に関する規制[15]

原則、金融業やその他特定の業種以外であれば、最低資本金の規制は存在しない。なお、金融業については、政府の特別許可が必要であり、次の資本金の最低額を設定しているので、留意が必要である。

  • 銀行:40億タカ
  • 一般保険:4億タカ
  • 生命保険:3億タカ
  • その他特殊保険:1,500万タカ
  • その他の金融機関:10億タカ

 

(7) 投資奨励措置[16]

法人税免除、輸出加工区(EPZ)進出企業への主な優遇措置、その他主な優遇装置(輸出指向産業・輸出関連産業、 IT・ソフトウエア会社向け含む)など。

(i)法人税免除

2019年7月~2024年6月の間に、事業を開始する以下の特定産業については、法人税の減免措置が与えられる可能性がある。

<法人税免税措置対象特定業種>

法人税免除恩典のある特定業種

原薬、放射性医薬品

自動車製造業

避妊具、ゴムラテックス

基礎化学製品、化学染料

基礎電子部品(例:抵抗、キャパシタ、トランジスタ、電子回路)

自転車製造業(自転車部品も含む)

天然肥料

バイオテクノロジーを利用した農産品

ボイラー(部品も含む)

コンプレッサー(部品も含む)

自動ハイブリッドホフマン・クリーン技術を採用したレンガ

コンピューターのハードウェア

家具製造業

家電機器(ブレンダ―、炊飯器、電子レンジ、電子オーブン、洗濯機、電磁調理器、水フィルターなど)

殺虫剤、農薬

石油化学製品

医薬品

LEDテレビ

革・革製品

携帯電話

プラスティックリサイクル業

バングラデシュ産の野菜、果物の加工

放射能利用産業

繊維機械

組織移植

玩具製造業

タイヤ製造業

政府官報による通知で指定される業種

インフラ事業

深海港

高架高速道路

輸出加工区

高架道路(フライオーバー)

ガスパイプライン

ハイテク・パーク

情報通信技術ビレッジ、またはソフトウェアテクノロジーゾーン

ITパーク

大型水処理プラントおよび水供給パイプライン

LNGターミナル

携帯電話電波塔

モノレール

都市圏高速鉄道

再生可能エネルギー

港(海/河川)

有料道路・橋

地下鉄

廃棄物処理プラント

その他、政府官報による通知で指定されるインフラ施設

 

(ii) 製造業に対する減税措置

2019年7月~2024年6月までに、市外において製造を開始した工場については、製造開始後の10年間20%の税制恩典措置が受けられる可能性がある。同様に、2019年7月~2024年6月までに、市内から市外へ移管した工場は、10年間20%の税制恩典が受けられる可能性がある。なお、既存の市外の製造工場は、2019年6月まで10%の税制恩典が受けられる。

<民間電力会社に対する法人税減税措置>

期間

法人税減税率

設立当初の5年間

100%

次の3年間

50%

次の2年間

25%

 

<経済特区(Bangladesh Economic Zones Authority:BEZA)およびハイテク・パークに対する減免措置>

BEZAおよびハイテク・パークデベロッパー会社は、次の減税が受けられる(S.R.O. No. 227-law/Income Tax/2015およびS.R.O. No. 229-law/Income Tax/2015、2015年7月8日発行)。

期間

法人税減税率

設立当初の10年間

100%

11年目

70%

12年目

30%

 

BEZAおよびハイテクパーク内に設立した企業に対して、次の減税が受けられる(S.R.O. No. 226-law/Income Tax/2015およびS.R.O. No. 228-law/Income、2015年7月8日発行)。

期間

法人税減税率

設立当初の3年間

100%

4年目

70%

5年目

30%

6年目

60%

7年目

50%

8年目

40%

9年目

30%

10年目

20%

 

なお、既存ビジネスの再編もしくは分離分割による事業、既存ビジネスで設置された機械や設備の移設による事業は、これら減税措置の対象外となり、既存事業の拡張の場合も、これら減税措置の対象外となるので、留意が必要である。新規事業を別法人で行う場合には、免税措置を適用可能である。また、免税措置を受けた法人は、免税となった所得の30%以上を免税期間中に再投資しなければならない。

(iii) 輸出加工区(EPZ)

1980年12月の輸出加工区法(The Export Processing Zone Act、以下「EPZ」)により規定されている。現在、バングラデシュには8か所の輸出加工区(EPZ)があるが、首都ダッカおよび第2の都市チッタゴン周辺のEPZ5件は既に手狭な状態となっている。

EPZ内の工場で、2012年1月以降に登録した企業について、法人税の減税措置がある(期間及び減税率は地区によって異なる)。

その他、EPZ進出企業へは以下のような主な優遇措置がある。

  • 建築資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除
  • 原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除
  • 配当課税の免除
  • 一般特恵関税制度が利用可能
  • 機械および工場に対する加速度償却の許可
  • ロイヤルティー、技術指導料、コンサルティング料の送金許可
  • EU、カナダ、ノルウェー、オーストラリア等への割当無制限の免税措置
  • 資本金、配当の本国への送金許可
  • 海外からの外貨ローンの自動承認
  • 非居住者外貨預金の許可 等

 

 

 

 

. バングラデシュの税制

(1)法人税

バングラデシュの法人課税制度は次の通り、規定されている。

会社の性質

バングラデシュ法人

非公開会社

 

当該課税年度の利益または損失にかかわらず、税務年度のすべての源泉所得からの会社の総受取額に対して計算される最低課税

0.6〜2.0%

(製造業については、最初の三年間は0.1%)

配当所得(全法人共通)

20%

支店利益税

20%

その他の特定企業

上場会社*

25%(例外あり)

たばこ製造会社

45%

銀行・保険・金融会社(上場)

37.5%

銀行・保険・金融会社(非公開)

40%

マーチャントバンク

37.5%

携帯電話事業会社

45%

特定SRO (自主規制団体)

既製服輸出業

国際的なグリーンビルディング認証を受けた工場

12%

10%

※タバコ、ビディ(インドタバコ)、ザルダ(刻みタバコ)等各種たばこ製品の製造事業から生じる収益に対しては、2.5%の課徴金が課せられる。

<キャピタルゲイン課税>

バングラデシュで事業を行っている企業は、資本資産の譲渡から生じるキャピタルゲインに対して15%を支払う義務がある

 

(2) 個人所得税

所得税を申告するよう特に規定されたすべての個人は、課税年度の終了(6月30日)後、11月30日までに、年次申告書を提出しなければならない。料率や居住者の定義は下表の通り。

 

(3)租税条約

外国人投資家は、二国間租税回避条約(以下、「租税条約」)に基づき、二重課税を回避することが可能である。バングラデシュ歳入庁は、バングラデシュにおける外資投資を促進するため、外国との二重課税協定の交渉を行う権限を有している。

バングラデシュが現在租税条約を締約している国は、日本(1991年2月、二重課税防止に関する二国間協定締結)のほか、ベルギー、カナダ、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、インド、イタリア、マレーシア、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、シンガポール、韓国、スリランカ、スウェーデン、タイ、オランダ、英国、米国、ノルウェー、トルコ、フィリピン、ベトナム、インドネシア、スイス、モーリシャス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ミャンマー、ベラルーシ、クウェート、バーレーンの34カ国となっている。

 

(4)税務申告(Tax Return)

税務申告とは、課税所得の申告書を所定の書式で税務副長官に提出するプロセスをいう。各所得税の納税者または申告を指定された者は、所得税申告書を、税務署または歳入庁ウェブサイト(www.nbr-bd.org)から無償で入手することができる。所得税額を計算した後、各申請者はPO(ペイメントオーダー)またはシャラン(主に南アジアで使用される銀行小切手)の形式で、その金額を国に預託し、署名・確認済みの申告書と必要書類を、該当する税務当局に提出する。

法人または個人は、所得年度終了翌日に税務申告書を提出しなければならない。提出期限は、税務副長官が2か月を限度として延長することができ、さらに当局の承認により、さらに2か月延長することが可能である。

法人の場合の課税日は、所得年度終了後7か月目の15日、または所得年度終了後の9月15日のいずれか早い日となる。個人の納税日は、所得年度終了後の11月30日となっている。

 

(5)付加価値税(VAT)[17]

2019年7月にVAT法改定。基本的に15%となっているが、一部例外が存在している。例えば、①衣類品の購入:5%、②スーパーでの購入:5%、③車庫および車修理業、造船所、輸送・運搬コンストラクター(石油製品以外):10%、④建設会社、家具の製造、信用格付:7.5%、⑤家具の流通、調達プロバイダー、輸送・運搬コントラクター(石油製品)、⑥入札商品購入、⑦IT対応サービス:5%等である。

年間売上3000万タカ以上の全ての事業者は、VAT登録を行い、定められた料率に基づきVATを支払う義務がある。年間売上3000万タカ以下の場合は、売上高の4%を売上税(Turnover Tax)として納税する。

なお、VATは毎月15日を基準として毎月納税を行う。VATの還付についても翌月15日までに申請を行うものとする。現在VAT納付申請は手作業で処理されているが、オンラインによるVAT申請プロジェクトが進んでおり、将来的にはオンライン申請が可能になると期待されている。

(6)輸入税

バングラデシュ国内の貨物の輸入に対しては、一般に関税、付加価値税、前払所得税等といった税金が課される。統一関税制度は、物品の輸入に対して輸入税を課すために用いられる。バングラデシュに輸入された製品のHSコードに基づき、関税率が決定される。

(7)嗜好税(Supplement Duty)

バングラデシュに輸入される高級品または非必需品に対して、10%から500%の追加関税が課される可能性がある。また、国内で生産され、供給される非必需品または社会的に望ましくない物品にも、5%から65%の範囲の追加税が課される可能性がある。

[1] ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト(https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/basic_01.html

[2] 同上

[3] 世界銀行ウェブサイト (https://data.worldbank.org/country/bangladesh?view=chart)

[4] UNESCO (http://uis.unesco.org/en/country/bd)

[5] 海外在留邦人数調査統計(令和元年版)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000043.html)

[6] バングラデシュ統計局 (http://www.bbs.gov.bd/site/page/2888a55d-d686-4736-bad0-54b70462afda/-)

[7] 米国務省投資レポート2019 (https://www.state.gov/report/custom/d67ebeb418/)及び ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト(https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/)

[8] バングラデシュ財務省 Bangladesh Economic Review 2019(https://mof.portal.gov.bd/sites/default/files/files/mof.portal.gov.bd/page/f2d8fabb_29c1_423a_9d37_cdb500260002/D.%20Appendices%20%28English-2019%29.pdf) 

USDデータは世界銀行データベース(https://data.worldbank.org/country/bangladesh?view=chart

為替レートはバングラデシュ銀行データベースより 各年6月末日の基準レート(https://www.bb.org.bd/econdata/exchangerate.php

[9] バングラデシュ財務省 Bangladesh Economic Review 2019 より

[10] バングラデシュ銀行データ (https://www.bb.org.bd/econdata/fdi.pdf

[11] バングラデシュ銀行データ (https://www.bb.org.bd/econdata/fdi.pdf

[12]  ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト(https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/invest_02.html)

[13] ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト (https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/invest_02.html)

[14] ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト (https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/invest_02.html)

[15] 同上

[16] ジェトロ ダッカ事務所 ウェブサイト (https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/invest_03.html)

[17] ジェトロ ダッカ事務所ウェブサイト ( https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/invest_04.html) 及びバングラデシュ歳入庁 (http://nbr.gov.bd/regulations/acts/vat-acts/eng)

 

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2020年05月28日(木)5:28 PM

COVID-19に関するインド労働法の修正について報告いたします

COVID-19に関するインド労働法の修正

 

COVID-19に関するインド労働法の修正

2020年5月27日

One Asia Lawyers南アジア/Acumen Juris

賃金減額および解雇に関する規制の緩和

COVID-19感染拡大はインド財務省により自然災害とみなされているものの、インド連邦政 府は、災害管理法2005年第10(2)(l)条に基づき、2020年3月20日及び2020年3月29日付の通達 を通じて、解雇は回避されるべきこと、COVID-19のために稼働できない従業員は勤務中と みなされ、賃金減額は禁止されるべきことを明確に指示していた。連邦政府の通達を受けて、 同様の措置がインドの多くの州政府によって採用された。 その後、上記の通達について、インド最高裁判所に異議が申し立てられ判断が待たれていた が、2020年5月17日付けの内務省の命令は、災害管理法第10 (2)(l)条に基づいて発出された命 令はすべて、2020年5月18日から効力を停止するとした。したがって、1947年の産業紛争法 を含む適用法に規定された手続きに従う限り、2020年5月18日以後は、労働者の解雇および 賃金減額は可能になったと解釈しうる。 もっとも、ロックダウン期間中に使用者が賃金を減額し、従業員を解雇することを禁止する 州固有の措置は、一部の州では依然として適用可能であるため、州固有の法律および命令を分析する必要があることに留意が必要である。

労働法に関する州固有の規制・規制緩和 

インドの州政府は、COVID-19の経済・産業への影響を最小限に抑えるために、必要な措置 を講じている。インドの一部の州では、労働法規を緩和するための暫定措置を公表した。 マディヤプラデシュ州(MP州)は、一定の条件の下でロックダウン期間中の操業再開を認められた工場/店舗及び商業施設の労働者に対する賃金/給与の支出について通達を発行し、労働者が自発的に欠勤した場合、経営者は、「ノー・ノー・ペイ」原則に基づいて、欠勤に相当する賃金減額が可能であることを明記した。 MP州はさらに、1948年工場法に基づき登録された州内の工場について、2020年4月20日以降の3ヶ月間、労働時間の制限規定(第51、52、54、55、56条)の適用を排除した。すなわち、州内の工場では、残業賃金の支払等の規定に従う限り、労働時間を延長できることになる。

さらに、MP州は、5月5日以降に登録された新規工場に対して、通知日以後の1,000日間、1947年労働争議法の一定の規定の適用を除外し、使用者の利益に配慮された。例えば、レイオフに関しては第VB章のレイオフ手続きに従わなければならないが、第25M条に基づく政府の事前許可を申請する必要はない。

マハラシュトラ州政府は、1948年工場法第65条(2)に関して、州内の工場に対し、8時間労働等の労働時間の制限規定(第51、52、54、56条)の適用を排除した。:すなわち、以下の条件に従う限り、労働時間の延長をすることができる。

A) 超過勤務手当は、通常の賃金の倍額で支払われる;
B) 作業時間の変更が工場の安全に影響を及ぼさないことを確実にする
C) いかなる日の労働時間も12時間を超えてはならない;
D) いかなる日の労働時間も、休暇を含め13時間を超えてはならない;
E) いかなる週の総労働時間も60時間を超えてはならない;
F) 労働者は、連続して7日間の時間外労働を与えられるべきではない;
G) 一クオータ(3か月)の総労働時間が115時間を超えてはならない;
H) 工場職員は、コロナウイルスの拡散を防止するために必要なあらゆる予防措置を講じる べきである;
I) 工場内の製造工程において、2人の作業員の間に安全な距離があり、マスクの使用が 義務付けられていること;
J) 上記緩和期間は、2020年6月30日まで、1948年工場法第64条に規定されているものと みなされる。

グジャラート州、ラジャスタン州、ハリヤナ州、ヒマチャルプラデシュ州、アッサム州およびウッタラカンド州を含む他の多くのインド州は、マディヤプラデシュ州およびマハラーシ ュトラ州同様の、使用者に対する一時的救済措置を講じている。

なお、これらの暫定措置については、労働者の利益を害する恐れがあるため、インド最高裁判所において訴訟が係属中であり、効力を否定される可能性があることに留意する必要がある。

Uttar Pradesh州でも、通達13 /2020/ 502 / XXXVI-03202030 (Sa.)/2020TCにおいて、マハラ シュトラ州同様、労働時間の制限規定の適用を排除していたが、その後当該措置および通達を撤回した(労働時間の制限規定が原則通り適用される)。 

本記事に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal
藪本 雄登

 

2020年01月21日(火)4:30 PM

南アジア各国の新法の状況を報告致します。

 

インド→インド会社法2019の総まとめ

ネパール→ネパール2019年の動き

 

2019年01月23日(水)1:02 PM

ASEAN各国の新法状況をご報告いたします。

 

【シンガポール】決算サービス法案
【タイ】労働者保護法・刑事手続法関連の改正及びIBC制度の創設
【マレーシア】外国人社会保険義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する改正法
【ベトナム】サイバーセキュリティー法の施行
【インドネシア】OSSシステムのBKPMへの移管
【フィリピン】外資規制緩和の最新動向
【ミャンマー】競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資撤廃
【カンボジア】労働法のアップデート
【ラオス】付加価値税法の改正
【日本】労働基準法の一部改正

 

2019新年版ニューズレター

2018年01月11日(木)4:44 PM

ASEAN各国の新法の状況をご報告いたします。

 

シンガポール→ダウンロード

タイ→ダウンロード

マレーシア→ダウンロード

ベトナム→ダウンロード

インドネシア→ダウンロード

フィリピン→ダウンロード

ミャンマー→ダウンロード

ラオス→ダウンロード

日本→ダウンロード