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2021年09月14日(火)4:31 PM

パキスタンの外国投資規制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

パキスタンの外国投資規制

 

パキスタンの外国投資規制

 

2021年9月14日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

 パキスタン・イスラム共和国(以下、パキスタン)は、2億人を超える人口を擁する市場規模と、豊富な労働力から、外国投資の対象として注目を集めています。

本ニュースレターでは、パキスタンにおける外国投資に関する規制を解説いたします。

なお、2021年9月15日発売の南アジアの法律実務(中央経済社)では、パキスタンにおける会社の設立や運営に加え、労働法、清算法等の法務実務を解説しています。本著の解説セミナーも10月12・13日に開催予定ですので、ぜひご参照ください。

  • 1.パキスタンの概要

インダス川流域の中心にあり、インダス文明の発祥地となったパキスタンは、19世紀に現在のパキスタン、インド、バングラデシュ等を包含した英国インド領として植民地となりましたが、1947年にイスラム教の国としてインドとは別に独立し、その後、東パキスタン部分は内戦を経て1971年にバングラデシュとしてパキスタンから独立しています。

中国の影響も強く、カラコルム・ハイウェイの再整備やグワダル港の開発を含む中国パキスタン経済回廊(CPEC)や、中国の一路一帯構想による経済圏の発展に、大きな期待が寄せられています。

パキスタンの概要

首都

イスラマバード

面積

79.6平方㎞(日本の約2倍)

人口

2億3,818万人(2021年7月推計)(米国中央情報局)

言語

パンジャブ語(48%)、シンド語(12%)、サライキ語(10%)、ウルドゥー語(国語、8%)等

民族

パンジャブ人、シンド人、パシュトゥーン人、バローチ人

パンジャブ人が人口の過半数を占める

宗教

イスラム教(国教、96.4%)、ヒンドゥー教、キリスト教、ゾロアスター教など

政体

連邦共和制

通貨

パキスタンルピー(PKR)

GDP

約2,842億ドル(2019年)(IMF)

イスラム教の国であり、ヒジュラ暦(略称A.H.)を使用するため、西暦とは年が異なり、西暦2021年8月10日にヒジュラ暦1443年が始まっています。会計年度は7月から6月です。

  • 2.外国企業の投資規制

パキスタンの外国投資を規制する法律として、「外国民間投資(促進・保護)法」[1]と「経済改革保護法」[2]があり、投資促進機関としては、パキスタン投資庁(Board of Investment(BOI))が投資に関する申請や許認可を管轄します。

外国投資についての規制は少ないとは言え、一部の分野を除き、ほぼすべての分野が外国投資に開放さており、最低資本金も2013年に規制が廃止されています。

  • (1) 外資規制

規制業種に関し、パキスタンでは、インフラ関連産業、サービス業を含むほとんどの業種が外資に開放されていますが、以下の産業に関しては、政府の許可が必要とされます。

①       兵器、弾薬

②       高性能爆薬

③       放射性物質

④       有価証券、通貨、貨幣の製造・印刷

⑤       酒類,アルコール類(工業用を除く)の製造所の新設

出資比率については、ほとんどの業種において100%の外資参入が認められますが、航空(49%まで)、金融・保険(49%まで)、農業(60%まで、ただし農業経営法人は外資100%が認められている)などの分野では、外資の出資割合に上限が定められます。

最低資本金も現在は規制されていません。

国外送金に関しては、外為規制に従い、利益・配当を投資元に送金することが可能です。ただし、各種手続きが円滑でなく、遅延が生じることも少なくありません。

土地の取得・所有については、パキスタン政府の許可が必要となるものの、外資100%であっても認められます。なお、土地のリースをする場合は、通常50年間の契約が可能であり、その後の延長も可能です。

  • (2) 投資奨励措置

奨励産業として、食品加工業、交通インフラ・物流業、縫製業、自動車産業、IT産業、建設・住宅事業、観光業が挙げられています。

パキスタンの投資奨励措置には、外資と内資で特段の区別は設けてられておらず、主に所得税法に基づく税の優遇措置が適用されます。

ただし、所得税法や税率は頻繁に改正されており、歳入庁がその都度通達(Statutory Regulatory Orders)を発出しているため、同庁のウェブサイト等で最新の規制を確認することが求められます。

【主な投資奨励措置】

小規模会社[3]に対する法人所得税減税措置:

2021年度は22%、2022年度21%、2023年度以降20%(通常の会社の法人所得税率は29%)

資本財の輸入に対する税金の減免:

パキスタン国内で製造されていない工場設備、機械、機器の輸入関税、これらの輸入に関する売上税が引下げられる。

タックスクレジットの付与:

雇用を創出した製造業者、新卒者を雇用した納税者、(2022年6月30日までに)上場した会社、新設工場・設備機械に投資した納税者等に対しタックスクレジットが付与される。

加速減価償却:

最初の税務年度において工場設備および機械(中古製品、輸送用車両、家具等は対象外)の減価償却率を25%(指定の農村地域・未開発区域における事業設立の場合は90%)とすることが認められる。

 

【特定事業分野に対する優遇措置】

発電プロジェクトに対する免税措置:

パキスタンで設置された発電プロジェクトから得た利益・売上に対する税金の免除

コンピューターソフトウェアの輸出、IT産業に対する免税措置:

2025年6月30日までにコンピューターソフトウェアの輸出、ITサービス、IT Enabledサービス(ITES)から得られた利益・売上に対する税金の免除

精油事業に対する免税措置:

2018年7月1日から2023年6月30日までに精油事業から得た利益・売上について、一定要件を満たすことを条件に税金免除

低価格住宅プロジェクトに対する免税措置:

低価格住宅プロジェクトから得た利益・売上について、一定要件を満たすことを条件に50%の免税

液化天然ガス事業に対する免税措置:

液化天然ガス基地の運営者および所有者は、生産から5年間、利益・売上に対する税金の免除

  • (3) 輸出加工区・経済特区・輸出志向型企業に対する優遇措置

輸出企業向けのための工業用地として、1989年に最初の輸出加工区(Export Processing Zone)がカラチに設置され、現在は、カラチ、リサルプール、サイアルコット、サインダックの輸出加工区が稼働しています。輸出加工区の入居企業は、設備・機械・原材料に関する税金および関税の免除、無期限の損失繰越等の優遇措置を享受できます。

パキスタンには現在約20の経済特区(Special Economic Zone)が承認を受けています。経済特区に入居する企業は、10年間の所得に対する税金の免税(2020年6月30日以降に生産を開始した企業については5年間)、経済特区での工場の建設資材、工場に設置する機械類の輸入関税の免除(一度限り)といった優遇措置を受けられます。

生産品の輸出を行う「輸出志向型企業」に対しては、輸出加工区や経済特区に関連する優遇措置とは別に、輸出商品の製造に必要な資本財や投入財(機械・原材料等)の輸入および現地調達について、関税の免除(原材料に関する使用期間は24カ月、車両・スペアパーツの保持期間は10年間)等の優遇措置が設けられています。

  • (4) 進出形態

パキスタンへの進出形態としては、株式会社(公開、非公開、単独株主)、支店、駐在員事務所、有限責任パートナーシップ(LLP)があり、その中でも、非公開株式会社による進出が一般的です。

株式会社の設立等を監督する官庁は、証券取引委員会(Security and Exchange Commission of Pakistan (SECP))であり、オンライン上で様式取得や申請が可能です。

他方、外国企業の支店または駐在員事務所の設立は、BOIによる認可を取得した後に、SECPに登録することとなります。

 

 

現地法人

支店

駐在員事務所

LLP

事業範囲

パキスタン法人として外資規制の範囲内で事業実施が可能。

特定の契約(プロジェクト)履行のための形態。契約範囲外の活動は不可。実務上は建設、インフラ、銀行、航空、海運等に限定。

調査、販促活動等に限定。営業活動・商業活動は不可。

組織体(bodies corporate)として合法的に行うことができる活動等

手続

SECPに登記

BOIに許可申請後、SECPへ登録

SECPに登記

特記事項

非公開株式会社の形態が一般的

認可期間は3~5年。更新が可能

パートナー2名以上。代表パートナーはパキスタン居住の個人

 

会社法上の公開会社、非公開会社、一人株主会社の株主数、取締役数は以下のとおりです。

 

公開会社(非上場)

非公開会社

一人株主会社

株主数

3人以上

2人以上50人以下

1人

取締役数

7人以上

2人以上

1人以上

株式譲渡制限

制限なし

制限あり

 

一人株主会社は、外国人であっても設立できるとされています。

 

その他、会社の設立や運営、関連法務実務に関しては、『南アジアの法律実務』(中央経済社)において解説していますのでご参照ください。

以上

[1] Foreign Private Investment(Promotion and Protection)Act, 1976

[2] Protection of Economic Reforms Act, 1992

[3] 小規模会社の要件は次のとおり:1)2007年7月以降に会社法に基づいて設立され、2)資本金および資本準備金が6,000万PKRを超えず、3)従業員数が年間で250人を一度も上回らず、4)年間売上高が2.5億PKRを上回らない、5)既存の会社の分割または事業再編によって成立したわけではない会社

 

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal

 

2021年08月13日(金)8:59 PM

インド「個人情報保護法案」とEU「一般データ保護規則(GDPR)」の比較についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

「個人情報保護法案」と「一般データ保護規則(GDPR)」の比較について

 

 

インド「個人情報保護法案」とEU「一般データ保護規則(GDPR)」の比較

 

2021年8月13日

One Asia Lawyers 南アジアプラクティスチーム

 

インドでは、個人情報の保護に関し、現行法制よりも格段に厳しい規定が盛り込まれた2019年個人情報保護法案(Personal Data Protection Bill, 2019)」の動向が注視されています。同法案は、EU域内における個人情報保護や取扱いを定めた「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、以下「GDPR」)」をモデルにしつつ、インド独自の規制や企業への義務を含みます。そのため、既に他国でGDPRや類似規制を遵守した事業を行っている企業であっても、インドで個人情報を扱う場合には、インドの新法案に基づく社内体制の整備や情報取扱の運用等、一定の対応が必要となります。本ニュースレターでは、2019年個人情報保護法案と、GDPRの相違点にフォーカスし、企業に求められる対応について解説します。

なお、2021年4月9日付ニュースレターでは、同法案の概要や審議状況、可決された際のインパクトを解説しました。その後、同法案に関する報告書が2021年7月の雨季国会(Monsoon Session)で提出され、その内容を踏まえた法案の審議が国会で予定されていましたが、報告書の提出が再び延期され、次回2021年11月~12月の冬季国会(Winter Session)での提出とされることが決まっています。企業にとっては対策を講じる準備期間が増えたことになりますが、現行法制よりも厳格化することは必須であると考えられるため、今後も注視が必要となります。

 

  • 1.2019年個人情報保護法案の概要

2019年個人情報保護法案は、個人情報を包括的に保護し,そのためのデータ保護局を設置することを目的としており、成立すれば、個人情報の取扱いを規定するインドでは初めての統一的な法律となります。

同法案の適用対象は、以下のとおりであり、インドで個人情報を扱う外国企業も含まれます(同法案2)。

【2019年個人情報保護法案の適用対象】

(a)    インド国内で取得、開示、共有、またはその他の方法で処理された個人情報の処理[1]

(b)    政府(the State)、インド企業、インド国民、インドで設立・創設(incorporated or created)された個人または団体による個人情報の処理

(c)    インド国外のデータ管理者(data fiduciary)またはデータ処理者(data processor)[2]による、(i)インド国内の個人(data principal、データ主体)に対する商品・サービス提供を行う組織的活動(systematic activity)または、(ii)インド国内の個人に関するプロファイリングに関連して行う、個人情報の処理

※なお、匿名化されたデータ(anonymised data)は、適用の対象外となります。

したがって、インドに拠点をもつ日系企業はもちろん、オフショアであっても、インド国内で商品・サービス提供を行う企業は、同法案の規定を遵守することが義務付けられます。

データ管理者が遵守すべき主な義務や規定は以下のとおりです。

【主な義務・規定】

ü  個人情報の取得・処理目的の制限:本人が同意した目的、必要な範囲内で、プライバシー確保の上で処理するものとする(5条、6条)

ü  個人情報の取得に関する通知:取得の際には、本人に対し、規定の情報を含む通知を行う(7条)

ü  個人情報の保持制限・処理終了時の削除義務:処理目的に必要な期間を超えて保持せず、処理の終了時には削除する(8条)

ü  本人の同意取得:個人情報の処理の開始時に本人の同意を得る(11条)

ü  未成年者の年齢確認および保護者の同意取得:未成年者(18歳未満)の個人情報は、処理開始前に年齢を確認し、親・保護者の同意を得る(16条)

ü  データ主体の権利行使要求への対応:データ主体の権利に基づき、処理状況照会、削除・訂正・開示制限等を求められた場合、所定期間内に応じる(17~21条)

ü  プライバシーポリシーの策定と公開:個人情報の管理や処理技術等、規定の内容を含むプライバシーポリシーを策定し、当局の認証を得た上で、自社および当局のウェブサイトに公開する(22条)

ü  透明性維持:個人情報処理の透明性を維持するために必要な措置を講じ、規定の情報を公開する(23条)

ü  セキュリティ保護措置:非識別化・暗号化の使用、誤用・不正アクセス等の防止措置、等の措置を実施する(24条)

ü  個人情報侵害の報告:侵害の状況に応じ、当局に報告する(25条)

ü  第三者への委託契約締結:データ処理を委託する際は契約を締結する(31条)

ü  苦情処理メカニズムの具備および「苦情処理責任者」の設置:苦情受理から30日以内に解決する(32条)

ü  国外転送規制およびデータローカライゼーション:「重要個人情報」は国外転送禁止。「機密性の高い個人情報」は一定条件下でのみ国外転送可能、ただしデータはインド国内サーバに保管する(33条、34条)

 

ただし、以下については一部またはすべての規定の適用が免除となります(同法案35~39)。

【規定が免除となる対象】

(a)     政府機関(any agency of the Government)[3]

(b)     犯罪予防・捜査・起訴目的、個人的・家庭内使用目的、報道目的

(c)      インド国外の個人(data principals not within the territory of India)の個人情報

(d)      研究・統計目的

(e)    個人情報の処理が自動化(automated)されていない小規模事業体(small entity)

 

一部の規定の適用が免除となる「小規模事業体」の定義は、事業体の年間売上高や個人情報の処理量等を踏まえ、今後規則により定められることとされていますが、企業が負うべき義務[4]の多くが免除となります。現行の法規制では小規模事業体を免除する規定は設けられていないため、新法案の施行は、小規模事業体にとっては、一部規制の緩和となると言えます。

 

  • 2.GDPRとの主な相違点

GDPRは、2016年5月に発行し、2018年5月に施行された、EU域内で取得した個人情報を保護するための統一的な規制であり、インドの新法案はGDPRをベースとしているとされています。しかしながら、インド独自の義務が規定されている点や、規制当局であるデータ保護局(Data Protection Authority of India,以下「DPA」)の裁量が大きく多くの下位規則や定義を定める権限を有する点等、GDPRと異なる点も少なからずあります。

実務上、特に重要となる規定について、インドの個人情報保護法案と、GDPRの主な相違点は以下のとおりです。

 

  • (1)追加義務

2019年個人情報保護法案では、データ管理者は、個人情報を取得する際(at the time of collection)、または取得源が本人からではない場合には可能な限り速やかに、本人に通知(notice)することが義務付けられます(同法案7)。

【通知に含むべき情報】

①      個人情報を処理する目的

②      取得する個人情報の性質・分類

③      データ管理者の身元・連絡先詳細(「データ保護責任者」がいる場合はその連絡先を含む)

④      本人同意を撤回する権利と手続

⑤      (該当する場合は)同意を取得せずに個人情報を処理する根拠等

⑥      情報取得源(本人からの取得でない場合)

⑦     共有される(shared)可能性のある個人または事業体(他のデータ管理者・データ処理者を含む)

⑧      個人情報の国外移転にかかる情報

⑨      情報保持期間、または未定の場合は保持期間決定の基準

⑩      データ主体の持つ権利と行使手続

⑪      苦情処理の手続き

⑫      DPAへの苦情申立の権利と手続

⑬      データ・トラスト・スコアの評価、等

 

通知の内容は、GDPRとほぼ同じ(GDPR13条、14条)ですが、取得した個人情報の共有先(⑦)を示す必要がある点は、GDPRでは規定されておらず、インドにおいては追加で求められることとなります。すなわち、個人情報の処理業務を外部にアウトソースする場合には、当該データ処理者の情報も事前に通知に含むといった対応が必要となります。

 

  • (2)個人情報処理時の本人同意取得義務

個人情報の処理を開始する際(at the commencement of processing)には、必ず本人の同意(consent)を得る必要があり、同意を取得しない限り、処理を開始することはできません(同法案11条)。本人の同意は、以下の要件を満たしていないと無効とされるため、また、GDPRと同様に本人の同意を得たことを証明する責任はデータ管理者側にある(同法案11条(5))ため、同意取得にかかる記録は適切に保管する運用を整える必要があります。

【個人情報の処理における本人同意取得時の要件】

①      (インド契約法14条に基づき強制や詐欺等の影響にない)自由な(free)意思のもとの同意であること

②      (同法案7に基づく)通知を受けていること

③      処理目的に関し本人が同意の範囲(scope of consent)を決められるという観点で具体的(specific)であること

④      積極的な肯定(affirmative action)により明確に示されていること

⑤      同意をする時と同じように、同意を容易に撤回ができること

 

これらに加え、「機密性の高い個人情報(Sensitive personal data)」[5]の処理に際しては、さらに「明示的に(explicitly)」本人同意を得る必要があります(同11条(3))。

【機密性の高い個人情報の処理における本人同意取得時の要件】

①      著しい損害を与える可能性のある処理の目的または操作であると本人に通知した後に、

②      文脈や行動からの推測ではなく、明確な言葉により(in clear terms)、

③      目的、操作、使用について、別途同意する選択肢(choice of separately consenting to)を本人に与えた後

 

ただし、国家機能を遂行する目的(緊急医療対応、災害援助等)や、企業の人事労務目的(雇用、解雇、福利厚生、勤務管理、業績評価等)のために必要な場合には、本人の同意を取得せずに個人情報(機密性の高い個人情報を除く)の処理が認められています(同法案12条、13条)。

また、「合理的な目的(reasonable purposes)」がある場合にも、本人の同意なしに個人情報の処理ができることがある(同法案14条)と規定されており、不正行為防止、内部告発、M&A、債務の回収、公開されている個人情報、検索エンジンの運営等が例示されています。さらに、この本人同意なしで個人情報を扱える「合理的な目的」は、DPAが定義するものと規定されています。

GDPRにおいても、正当な目的があり適切な保護措置がされる場合には本人の同意なしで処理が認められるものの、その可否判断は管理者の責任とされています(GDPR6条4)。

インドの新法案の特徴的な点として、後述するDPAの権限の大きさが挙げられますが、この「合理的な目的」をDPAが規定する項目である点も、DPAの裁量を示していると言えます。

 

  • (3)データ管理者の分類と追加義務

インドの新法案の主要な特徴として、「重要データ管理者(significant data fiduciary)」「ソーシャルメディア仲介業者(social media intermediary)[6]、「保護者データ管理者(guardian data fiduciary)」という分類を導入しており、これに該当するデータ管理者は、追加義務を負う点が挙げられます。

いずれも、GDPRには存在せず、インド独自の規制です。

 

分類

分類の基準・方法

追加義務

重要データ管理者

(a)処理される個人情報の量、(b)処理される個人情報の機密性、(c)データ管理者の売上高、(d)データ管理者の処理による損害のリスク、(e)新技術の使用、(f)  その他、処理により弊害を引き起こす要因がある場合、等の要素を考慮した上で、DPAが判断し、重要データ管理者として分類するもの(同法案26条(1))。

1)      DPAへの登録義務

2)      データ保護の影響評価(data protection impact assessment)の実施とDPAへの提出義務(27条)

3)      取得・移転・消去等の重要処理やデータ保護影響評価等の最新かつ正確な記録(records)の維持管理義務(28条)

4)      独立データ監査人による監査を受ける義務

5)      「データ保護責任者(data protection officer)」の設置義務

ソーシャルメディア仲介業者

ソーシャルメディア仲介業者のうち、(a)利用者数が規定の閾値以上であり、かつ(b)その活動が民主主義、国家の安全保障、公序良俗等に重大な影響を与えている・与える可能性がある場合、連邦政府がDPAと協議の上で、「重要データ管理者」であるとの通知がなされるもの(同法案26条(4))。

1)      重要データ管理者としてのすべての義務

2)      ユーザーが自らアカウントを認証できる機能の付与義務

3)      実証可能で目に見える「認証済みバッジ(demonstrable and visible mark of verification)」の提供義務

保護者データ管理者

(a)未成年者を対象とした商業用ウェブサイトまたはオンラインサービスを運営するデータ管理者、または(b)大量の(large volumes)未成年者の個人情報を処理するデータ管理者は、DPAが別途定める規則で「保護者データ管理者」と分類されるもの(同法案16条(4))。

1)      児童のプロファイリング、追跡(tracking)、行動監視、児童を対象としたターゲット広告、および児童に重大な損害を与える可能性のあるその他の個人情報の処理の禁止

 

このように、分類の具体的な指標や閾値が不明であり、DPAにより判断・分類されるものであるため、現時点ではデータ管理者が自身で該否を判断することが難しいものの、追加的に追う可能性のある義務については事前に把握しておくことが推奨されます。

 

  • (4)監査の実施義務

監査は、GDPRにはないインド独自の義務であり、特徴の一つと言えます。

「重要データ管理者」に分類されると、プライバシーポリシーおよび個人情報処理の運用に関し、毎年、独立データ監査人(independent data auditor)による監査を受ける必要があります。

監査人は、データ管理者の法令遵守状況に関し、通知の明確性・有効性、プライバシーポリシーの有効性、セキュリティ保護措置等の項目により評価します。データ監査の評価に基づき付与される「データ・トラスト・スコア」は公開されるスコアとなります。

なお、データ監査人の選任方法は示されていないものの、人材自体は、関連分野における専門知識を有し、独立性や適格性を備えた者を、DPAが登録することとされています。

 

  • (5)担当者設置義務

新法案では、現行法にも規定される「苦情処理責任者」に加え、GDPRの規定する概念と類似する「データ保護責任者」の設置が義務付けられています。

「苦情処理責任者(an officer designated for this purpose)」

データ管理者は、データ主体による苦情(grievance)の申立てを受ける「苦情処理責任者」を任命する必要があります(同法案32)。現行法[7]においても苦情処理責任者(Grievance Officer)の設置は義務付けられており、名前と連絡先をウェブサイトで公開することとされています。新法案では、選任における具体的な要件は定められていないものの、「重要データ管理者」については、後述の「データ保護責任者」が兼務するものとされ、その場合はインドに拠点を有するものを任命する必要があります。

「データ保護責任者(Data Protection Officer)」

データ管理者のうち、「重要データ管理者」はさらに、「データ保護責任者」1名を任命する必要があります(同法案30)。これは、新法案で新たに導入されたものであり、GDPR(37~39条)上の「データ保護オフィサー(Data Protection Officer)」の概念を踏襲していると見られ、職務も類似しています。

インドの新法案においては、データ保護責任者は、本法案に関しデータ管理者を代表する者(represent the data fiduciary under this Act)であり、法令に基づく義務の遂行に関し、データ管理者への助言や監視を行うとされ、「苦情処理責任者」も兼務することとなります。

インド独自かつ厳格化された規制として、データ保護責任者は、インドに拠点を置く(based in India)者でなければならないと規定されています。そのため、複数国で展開している企業であっても、インド事業に関してはインド居住者をアサインしなければならず、人事配置に影響を及ぼし得る規制強化と言えます。

その他、資格・経験等の要件は規則により定められることとされています。

 

  • (6)データローカライゼーション

新法案において、個人情報の国外転送に関する扱いは、個人情報の性質・分類に応じて規定されます。

「重要個人情報(critical personal data)」[8]

重要個人情報(定義は未規定)は、インド国内でのみ処理することが認められ、インド国外に転送することは、緊急医療対応等の例外を除き、禁止されます(同法案33(2))。

重要個人情報の定義は,連邦政府が通達により別途規定するものとされています。

「機密性の高い個人情報」

機密性の高い個人情報は、以下の条件を満たす場合にのみインド国外への転送が認められるものの、当該個人情報は引き続きインド国内のサーバに保管(continue to be stored in India)しなければなりません(同33(1),34(1))。

  • 別途同意する選択肢を本人に与える等(同11(3))、本人からの明示的な同意(explicit consent)を得ていること、かつ、
  • DPAが承認した契約またはグループ内スキーム(intra-group scheme)に基づく転送、または、
  • 連邦政府がDPAと協議の上で承認した他国やその国の事業体、または国際組織への転送、または、
  • その他DPAが承認した転送

なお、現行法である2011年機密個人情報規則においては、「機密性の高い個人情報」を他社(インド国内・国外問わず)等に移転することに関し、移転先がインド法と同等の措置(プライバシーポリシーの公開、本人同意取得、ISO27001等の適切な安全対策)を講じていることを条件に、可能とされています(同規則7)。新法案では、重要個人情報については国外転送が原則禁止され、機密性の高い個人情報についても、国外転送の要件をクリアしたとしてもインド国内サーバでのデータ保管が規定(いわゆるデータローカライゼーション義務)され、規制が強化されています。

これは、国外転送の要件を満たしていない場合にのみデータローカライゼーションが求められるGDPRの規定よりも厳しいと言えます。

 

  • (7)規制当局の権限

新法案が草案とおり施行されると、個人情報の管理や同法案の執行を担うDPA(データ保護局)が設立されます(同法案41条)。DPAは、個人の利益の保護、個人情報の悪用防止、法令遵守の確保等の措置を講じる機能を有する他、規定違反行為の停止・修正要求、立入検査、不正データ等の押収を行う権限を持つとされます(同法案54条、55条等)。その他、多くの条項においてDPAが追加の要件や定義を規定することや、下位規則を公布することを認めており、GDPRにおける各国のDPAが有する権限に比して、インド新法案上のDPAの権限および影響は非常に大きいと言えます。

DPAの委員長および委員は官房長官を含む上級公務員のみで構成され、政府が任命・解任権を有する(42条)ことから、DPAの独立性についても疑問視されています。

 

  • 3.まとめ・企業に求められる対応

インドにおいては、包括的な個人情報保護法は存在せず、現行法における保護規定についても十分に遵守されていないと言われています。そのような状況から、EU各国に一律に効力をもつGDPRと同水準の法律が導入されるとなると、企業には負担の増加ともなり得ます。

法案可決時期が不透明ではあるものの、実務上の影響がとりわけ大きい以下に関しては、早期に対策検討を始めることで混乱を回避することが肝要となります。

プライバシーポリシーbyデザインの策定(22条):

新法案における「プライバシーポリシー(Privacy by design policy)」は、GDPRにおける「データ保護バイデザイン・バイデフォルト(Data protection by design and by default)」に類似する概念と見られます。すなわち、事後的な措置や救済策によるプライバシー保護に優先し、初期設定としての予防策という位置付けとなるプライバシー保護策を策定することが求められます。現行法上も、プライバシーポリシー(privacy policy)の策定と公開が義務付けられていますが、規定される項目は、個人情報の取得・利用目的、合理的なセキュリティ対策等であり、必要最低限の内容と言えます。

一方、新法案では、以下を含むことと規定され、GDPRでのポリシー同様、予めデータ主体の権利が保護されるための仕組みを構築するという理念が根底にあると見られます。

事業において既に実装している適切な技術的対策や組織的措置は、プライバシーポリシーに落とし込む他、個人情報を扱う業務全体のフローをレビューし、各工程でのリスク分析と対策方針を検討しておくとが肝要です。

【プライバシーポリシーに含むべき内容】

①      データ主体への危害を予測、特定、回避するために設計された、経営的・組織的・ビジネス慣行および技術的システム

②      データ管理者の義務

③      個人情報の処理に使用される技術が商業的に認められている、または認定された基準に準拠していること

④      あらゆる革新を含む企業の正当な利益が、プライバシーを損なうことなく達成されること

⑤      個人情報の取得から削除までの、処理全体におけるプライバシーの保護

⑥      透明性のある方法で個人情報を処理すること

⑦      個人情報処理の各段階においてデータ主体の利益を考慮すること

 

個人情報の分類

新法案で導入されるいわゆるデータローカライゼーションの規定では、「重要個人情報」はインド国内でのみ処理することができ、「機密性の高い個人情報」は一定の要件を満たす場合にのみインド国外に転送できるが、データはインド国内に保管する必要があります。また、その他の個人情報については、特段の規制は設けられていないため、国外への転送は可能と解されます。

また、個人情報を処理する際の本人の同意取得に関しても、「機密性の高い個人情報」を処理する場合は、追加的要件が規定されます。

このように、個人情報の分類により取るべき措置が異なり、よって運用の見直しや処理システムの改変が必要となる可能性があります。しかしながら、「重要個人情報」の定義は現時点で不明確であり、また、「機密性の高い個人情報」もDPAにより対象範囲が追加されることもあり得ます。そのため、まずは自社が扱う個人情報をマッピングし、整理と把握をしておくことで、今後規定される基準値や要件に応じて個人情報の再分類を容易にする対策も考えられます。

その上で、データローカライゼーション義務に備え、複数国の情報を単一の拠点やクラウド上で処理・保管している場合には、「機密性の高い個人情報」や「重要個人情報」(に相当し得る機微な情報)が含まれないことを確認する、またはインドの個人情報に関してはインド国内のサーバ上で管理し、インド国外からのアクセスを制御するなどの対策を検討する必要があります。

[1] 同法案上、「処理」は、個人情報に対し行われる操作を意味し、取得、記録、組織化、構造化、保管、変更、使用、索引付け(indexing)、送信等による開示、制限、消去等の操作を含みます。

[2] 同法案上、「データ管理者」は個人情報の処理の目的および手段を決定する者、「データ処理者」はデータ管理者に代わり個人情報を処理する者を指します。

[3] 政府が関係機関の適用を免除できる規定であるため、こうした権限の付与は悪用につながる危険性があるとの指摘もあります。

[4] 法案では、個人情報取得時の本人への通知義務(7条)、保持制限および処理終了時の削除義務(9条)、プライバシーポリシー策定義務(22条)等、基本的な義務を含む18の条項が免除となるとされています。

[5] 財務情報、健康に関する情報、公的な識別子、性生活、性的指向、生体情報、遺伝子情報、トランスジェンダーの状態、インターセックスの状態、カーストまたは部族(tribe)、宗教的・政治的な信念や所属(affiliation)、その他当局が追加規定する分類、と定義され(同法案3条(36))、GDPR9条に定める「特別な種類の個人データ(Special categories of personal data)」や日本法の「要配慮個人情報」と近い概念。

[6] 「2人以上のユーザー間のオンライン交流を可能にし、情報の作成、アップロード、共有、普及、修正、またはアクセスを可能にする仲介者であるが、主に以下は含まれない。(a)商業的取引、(b)インターネットへのアクセスを提供、(c)サーチエンジン、オンライン百科事典、電子メールサービス、オンラインストレージサービスなどの性質を持つもの」(同法案26説明)。

[7] 「2011年情報技術(安全措置及び手続き並びに機密個人データ・情報)規則(Information Technology (Reasonable Security Practices and Procedures and Sensitive Personal Data or Information) Rules), 2011」5条(9)

[8] 新法案で導入された、一段高い規律の対象となる個人情報の分類。ただし、重要個人情報の定義は、通達により別途規定されるため、現時点では具体的な要素は定められていません。

以 上

 

 

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2021年07月13日(火)9:24 PM

インドの消費者保護(EC)規則案についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

インドの消費者保護(EC)規則案について

 

 

インドの消費者保護(EC)規則案について

 

 

2021年7月15日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

インドでは、2020年7月に新消費者保護法(The Consumer Protection Act, 2019)[1]が施行されています。

また、同法の下位規則として、Eコマース(EC)に関する「消費者保護(EC)規則」(The Consumer Protection (E-Commerce) Rules, 2020、以下「EC規則」)[2]も同年同月に発行しており、翌2021年5月には、通知により改正規則[3]も発行されています。

いずれも、事業者に対し新たな義務が追加されており、日系企業にも一定の影響があるものでした。

今般、インド政府は、EC規則を、さらに厳格化する内容で改正案[4]を発表しました。

本ニュースレターでは、一連の規制による影響を解説いたします。

 

1.2019年消費者保護法の概要

インドにおいて、消費者の保護や製造者の責任等を規定する消費者保護法は、1986年に制定され、数回の改正を重ねていましたが、近年の商取引形態の変化にも対応する形で、2020年7月に新法が施行され、それに伴い旧法が廃止となっています。

消費者保護法は、旧法からの変更点として、主に以下が挙げられます。

 

  • 消費者の定義における「オンライン購入」の追加:

同法の保護対象となる消費者の定義において、製品購入・サービス利用の手段として「電子的手法によるオンライン(online transactions through electronic means)」が追加され、EC取引が適用対象となることが明確化(同法2条7項)

 

  • 製造物責任(Product liability)の追加:

製造者の「無過失」責任が明示的に規定(同法2条34項、82-87条)

製品・サービスの欠陥(defective product/ deficiency in services)により消費者に生じた損害は、その製造者・販売者・サービス提供者が補償する責任を負うとされ、特に製品の製造者(product manufacturer)に関しては、製品保証説明に過失や不正(negligent or fraudulent)がなかったとしても、製造物責任を負うと規定(同法84条2項)

 

  • 事業者への罰則強化
  • 虚偽または誤解を招く広告により消費者の利益を害した場合、2年以下の禁固または100万ルピー以下の罰金(初犯以降は5年以下、500万ルピー以下まで罰則加重)(同法89条)
  • 異物(adulterant)混入製品や、偽造品(spurious goods)の製造・販売・輸入等を行った場合、消費者に生じた影響の程度に応じた罰則が規定。消費者死亡の場合は無期禁固および100万ルピー以上の罰金、および初犯の場合はライセンス停止(最大2年間)、2回目以降はライセンス没収(同法90条、91条)

 

  • 中央消費者保護局(Central Consumer Protection Authority)の設置:

消費者権利の侵害、不公正な取引、虚偽広告等に対し、調査、申立て、リコール・停止措置命令、罰金を科す権限を有する行政機関の新設(同法10、16、18、20、21条等)

 

  • 調停手続き(Mediation)の導入:

消費者紛争の迅速な解決手段として、調停委員(Mediator)による当事者間の紛争和解を図る制度の導入(同法74-81条)

とりわけ、新消費者保護法において、EC取引が同法の適用対象となることが明示的に規定されたことで、EC取引に関わる事業者の責任範囲が相当程度変わることとなりました。

2.2020年EC規則・2021年改正規則

2019年消費者保護法の施行と同時に、インド政府は、同法に基づく「消費者保護(EC)規則」を2020年7月23日通知し、同日施行しました。

また、2021年5月15日付け通知にて、EC事業者に対する追加義務を規定する改正もなされています。

同規則は、EC取引に関わるすべての商品・サービス、事業体に適用されるものであり、インド国内向けに商品・サービスを提供している外国企業も含まれます。

同規則は、EC取引に関わる事業者を、以下のように分類、定義しています。

 

  • EC事業者(e-commerce entity)

EC取引のためのデジタル機能やプラットフォームを所有・運営・管理する事業者

  • マーケットプレイス型EC事業者(marketplace e-commerce entity)

買主・売主間の取引を促進するためのデジタル/電子ネットワーク上のITプラットフォームを提供するEC事業者

  • 在庫型EC事業者(inventory e-commerce entity)

商品・サービスの在庫を保有し、それらを消費者に直接販売するEC事業者

※なお、インドFDI政策(Foreign Direct Investment Policy)上、外国企業による在庫型EC取引モデルへの投資は認められていません。

  • 出品者(seller)

消費者保護法における「製品販売者」を指すが、同規則では主にECサイト上に商品・サービスを販売・提供する事業者を指す

 

その上で、各事業者に対する義務を規定しています。主な内容は以下のとおりです。

 

EC事業者(同規則4条)

①      消費者保護法および規則の遵守を確保するための、インド居住の統括責任者(Nodal Officer or an alternate senior designated functionary)の設置

※2021年5月の改定にて追加された義務

②      EC事業者の名称・住所・顧客ケアおよび苦情処理責任者(Grievance Officer)の連絡先の表示

③      苦情処理手続きの規定、苦情処理責任者の設置

④      消費者の一方的な商品キャンセルでも、キャンセル料金を課すことの禁止

⑤      商品購入に対する消費者の明示的な同意の記録

⑥      その他、不正取引の禁止、輸入商品の輸入元情報の表示、関連法に基づく合理的期間内の返金、不当な価格操作の禁止、消費者間差別の禁止等

マーケットプレイス型EC事業者(同規則5条)

①      商品等の説明・写真等が、実物の外観・性質・品質等の特徴に合致することを、出品者(seller)に確保させること

②      出品者、返品、返金、交換、配送、苦情処理手続、支払方法、解約等に関する情報のECサイト上への明示

③      商品・出品者のランキングを決定するアルゴリズムの説明

④      出品者間との関係を規定する規約の制定

⑤      知的財産権の侵害により削除された商品を繰り返し出品する出品者の記録

マーケットプレイス出品者(同規則6条)

①      消費者を装った商品レビュー投稿の禁止

②      商品の瑕疵、公告記載内容との不一致、配送遅延等を理由とする返品・返金の拒否の禁止

③      苦情処理責任者の設置

④      商品の広告内容と実物の特性・使用条件等が一致させること

⑤      価格の内訳、使用期限、原産地、交換・返品・返金ポリシー、配送方法、保証等の商品詳細情報の明示

⑥      その他、不正取引の禁止、EC事業者との書面締結、出品者の名称・住所・納税番号等のEC事業者への提供等

在庫型EC事業者(同規則7条)

①      交換・返品・返金ポリシー、保証内容、配送方法、支払方法、価格の内訳、苦情処理手続等の明示

②      消費者を装った商品レビュー投稿の禁止

③      商品の広告内容と実物の特性・使用条件等が一致させること

④      商品の瑕疵、公告記載内容との不一致、配送遅延等を理由とする返品・返金の拒否の禁止

⑤      自社が販売する商品の真正性を保証する場合には、当該商品の真正性に関し適切な責任を負うこと

 

このように、ECサイトでの取引において、消費者が不利益を被る状況を改善することを主な目的としているため、EC事業者側には大幅な義務の増加となりました。

3.改正規則案と規制強化の背景

2021年6月21日、インド政府は、各事業者の義務や禁止事項を大幅に増やす形で、EC規則を改定する方針であることを発表しました。

背景の一つには、消費者からのEC取引に関連する苦情が依然として多いことが挙げられます[5]。消費者ヘルプライン(National Consumer Helpline)に寄せられる毎月平均7万件の苦情のうち、EC関連の苦情が22%を占めており、これは苦情件数上位5分野の中で最も高い割合となっています(銀行業8.7%、電気通信7.7%、電子製品4.7%、耐久消費財3.7%)。

EC関連苦情の総数自体も年々増加しており、2020年7月にEC規則が施行されたにもかかわらず、2020年4月から2021年2月までの11カ月間のEC関連苦情件数は18.8万件と、EC規則施行前の前年度15.4万件からさらに22%増えていることになります[6]

また、AmazonやFlipkartのような外国資本の大手マーケットプレイス型EC事業者の台頭により、インド国内の中小企業やKirana(家族経営等の零細商店)が廃業に追い込まれているとして、小売業界団体である全インド商人連盟(Confederation of All India Traders )等複数の業界団体が政府に対し働きかけを行っていることも背景にあると言えます[7]

これらの企業は、自社ECサイト上での大幅な値引き(Deep discounting)や、検索結果の上位に優先的出品者(preferred sellers)が表示されるよう検索バイアスのある結果表示(Preferential Listing)、特定のブランド等との独占的な契約(Exclusive Tie-ups)などの不正行為により、非優先的出品者に不利益を与えている疑いがあるとして、インド競争委員会(CCI)が調査を命じています[8]

今般の改正規則案には、以下が含まれます。

  • 法令遵守・苦情処理責任者の設置(規則案5条5項(a)~(c))

苦情処理に関する現行の「苦情処理責任者(Grievance Officer)」を強化した体制が義務付けられます。すなわち、以下の要件でポストを任命することとなります。

  • 法令遵守責任者(Chief Compliance Officer)

法令遵守の責任者。EC事業者の管理職または上級従業員(managerial personnel or such other senior employee)から任命する必要があり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

  • 統括連絡担当者(Nodal Contact Person)

法執行機関と役員との24時間365日の調整役(24×7 coordination with law enforcement agencies and officers)。法令遵守責任者との兼務は不可。EC事業者の従業員(employee)であり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

  • 常駐苦情処理担当者(Resident Grievance Officer)

EC事業者の従業員(employee)であり、インド居住者かつインド国籍の者であることが要件。

 

  • 輸入品販売における規制追加(規則案5条7項)

輸入品・サービスをECサイト上で販売する場合は、フィルター機能による原産国検索システム提供、購入時の原産国通知、国産品の代替品提案、国内商品・出品者に差別的でない公正な商品ランキングの提供等が、EC事業者に義務付けられています。

 

  • EC事業者による不正な大規模値下げセール(Flash Sale)の禁止(規則案5条16項)

フラッシュセールとは、特定の商品・サービスについて、大幅な値下げや魅力的なオファー等で一定期間行うセールであり、EC事業者の管理下にある特定の出品者のみ(only a specified seller or group of sellers managed by such entity)が当該セールで販売できるよう組織されたものを指します。

規則案では、EC事業者が技術的手段により出品者をコントロールし、一般の出品者の業務を不正に妨害するようなセールの開催を禁止しています。出品者自身によるフラッシュセールは規制対象外であると解されます。

 

  • マーケットプレイス型EC事業者のフォールバック責任(Fall back liability)の追加(規則案6条9項)

規則案では、出品者の過失・不作為等により、消費者が注文した商品・サービスを提供できずに、消費者に損失を与えた場合、(出品者ではなく)マーケットプレイス型EC事業者がその責任、そのわち「フォールバック責任」を負うとし、当該事業者の責任範囲を実質的に増加する規定を追加しています。

 

  • 関連企業の優遇の規制(規則案6条6項)

マーケットプレイス型EC事業者が、自社の関連当事者や資本関係等のある関連企業(related parties and associated enterprises)に対する優先的な行為を禁止しています。具体的には、自社のECプラットフォームで得た情報を、関連企業等の不当な利益のために使用しないこと、関連企業等をECサイト上の出品者として登録しないこと、EC事業者が自ら行えないことを関連企業等に代行させないこと、とされています。

 

  1. 企業への影響

改正規則案は、15日間の意見公募を予定し7月6日を締切としていましたが、改正後の影響が大きいことなどから、業界関係者による期限延長を求め、7月21日まで意見受付が延長されました[9]

 

また、改正規則案の意見公募と同時期に、EC業界に対する監督強化の一環として、インド政府は、「電子商取引のためのオープンネットワーク(Open Network for Digital Commerce、「ONDC)」を立ち上げ、諮問委員会(advisory council)を設置しました[10]。ONDCは、独占行為の起こりにくい公平なネットワークを整備することを目指し、諮問委員会はその設計と導入促進に必要な施策について助言する役割をもちます。諮問委員会のメンバーは9名で、以下の組織から幹部が1名ずつ参加しており、EC業界大手の関係者は含まれません。

  • 国家保健機関(National Health Authority)
  • IT大手Infosys
  • インド品質評議会(Quality Council of India)
  • ベンチャーキャピタル大手Avaana Capital
  • デジタル・インディア・ファウンデーション
  • インド決済公社(National Payments Corporation of India)
  • 中央証券保管機関(National Securities Depository Limited)
  • 全インド商業連盟(The Confederation of All India Traders)
  • インド小売業協会(Retailers Association of India)

このように、EC業界に対する規制は、特に外資大手企業に対し厳格化する方針であると言えます。

しかしながら、規則案が草案の内容でそのまま施行された場合は、日系企業を含むEC事業者すべてに適用されることとなり、規制を遵守した社内体制の整備やECシステムの再設計といった対策を講じる必要が生じると予想されます。

本ニュースレター執筆時点では改正規則案は意見公募中であり、どのような改正がなされるのか、今後も注視し、最新情報を提供いたします。

[1] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/CP%20Act%202019.pdf

[2] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/E%20commerce%20rules.pdf

[3] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/Consumer%20Protection%20%28E-Commerce%29%20%28Amendment%29%20Rules%2C%202021.pdf

[4] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/file-uploads/latestnews/Comments_eCommerce_Rules2020.pdf

[5] https://www.pib.gov.in/PressReleseDetailm.aspx?PRID=1704938

[6] https://static.pib.gov.in/WriteReadData/specificdocs/documents/2021/mar/doc202131541.pdf

[7] https://www.financialexpress.com/industry/sme/karnataka-hc-to-hear-petitions-from-amazon-flipkart-cci-in-jan-against-alleged-marketplace-malpractices/2146766/lite/
https://www.hindustantimes.com/business/traders-body-says-agitational-approach-needed-if-mncs-are-not-reined-in-101623762226295.html
 等

[8] カルナータカ高等裁判所は2021年6月11日の判決で、AmazonおよびFlpkartによる、CCI調査に対する異議申立てを却下し、CCIによる調査実施を支持しています。http://karnatakajudiciary.kar.nic.in/judgements/WP_3363_2020_connected_matters.pdf

[9] https://consumeraffairs.nic.in/sites/default/files/file-uploads/latestnews/CommentseCommerce_Rules2020_upto_21July2021.pdf

[10] https://dipp.gov.in/sites/default/files/pressRelease_ONDC_06July2021.pdf

以 上

 

 

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2021年07月13日(火)4:06 PM

ナイジェリアの投資規制と法制度について報告いたします。

ナイジェリアの投資規制と法制度について

 

 

 

ナイジェリアの投資規制と法制度について


                                    2021年7月15日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

0 はじめに

コロナ渦においても、多くの日系企業様より海外におけるインフラプロジェクトのご相談を継続的に受けており、アジア地域を越えてアフリカ地域へのご相談が増えております。また、アジア地域(主にインド)からアフリカ地域へのご相談も徐々に増加しており、インフラ輸出リーガルプラクティスチームと南アジアプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行うことに致しました。今後、アジア地域からアフリカ地域に関心のある日系企業や投資家様向けに継続的にアフリカ地域のニュースレターを発行して参ります。今回は、ナイジュリアに焦点をあてて、各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

 

<ナイジュリアの概要>

国名

ナイジェリア連邦共和国

首都

アブジャ(Abuja)

ISO国名コード

NGA

面積

92.4万平方キロメートル

人口

2億96万人(2019年)[1]

言語

英語(公用語)、各民族語(ハウサ語、ヨルバ語、イボ語等)

民族

ハウサ、ヨルバ、イボ等

宗教

イスラム教(北部)、キリスト教(南東部)、伝統宗教(全土)

政治体制

政体:連邦共和制(大統領制)

国家元首:ムハンマド・ブハリ(H. E. Mr. Muhammadu Buhari)大統領(2019年5月就任、任期4年)

政府

(1)首相 なし

(2)外相 ジオフリー・オンエアマ外務大臣

議会:二院制(国民議会、上院)

通貨

ナイラ(Naira, NGN)

 

1. 地理

ナイジェリアは約92.4万平方キロメートル(日本の2.5倍)の国土面積を有し、ベナン、ニジェール、チャド、カメルーンと国境を接し、南は大西洋のギニア湾に面する西アフリカの国である。南部の熱帯雨林、中央部の広大なサバンナ、北部の乾燥したステップ、東部の高原地帯と幅広い気候帯に位置し、高い農業ポテンシャルを有すると言われる。また、後述のとおりアフリカ一の産油国でもある。

歴史的には、英国保護領であったナイジェリア北部と南部が1914年に合併してできた国土を継承しており、現在は36の州および連邦首都地区(FCT)から構成されている。

首都は、1991年にラゴスから遷都されており、現在のアブジャは1970年代から計画都市として整備が行われた。アブジャは地理的にナイジェリア中央に位置し、政治の中心であり政府組織や多くの大使館がある一方、ラゴスはナイジェリア南西端のベニン湾岸に位置し、工業・商業・文化の中心地であり、経済特区もラゴスに集中している[2]。もっとも、ラゴス・アブジャ間の国内線は通常時であれば1日20便前後の運行がある。

 

2.     人口

ナイジェリアの人口は2億人を超え、アフリカでは最大、世界でも第7位の人口規模を誇る。生産年齢人口は全人口の60.6%と、豊富な労働力を有する。
南部にはキリスト教徒が、北部にはイスラム教徒が多い。ハウサ人、ヨルバ人、イボ人が三大民族とされる、ナイジェリアには300以上の民族がいると言われ、地域、民族、宗教間の複雑な対立や軋轢による課題を抱えている。人口動態(1,000人)

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2019

95,212

107,948

122,284

138,865

158,503

181,137

200,964

 

3.           国家・政治体制

1960年に英国から独立し、1963年に共和制に移行したナイジェリアの内政は、頻発する軍事クーデター(1993年までに7回)やビアフラ内戦(Biafran War、1967~1970年。イボ人を主体とした分離独立宣言を発端とし、石油利権等もからみ国際社会が干渉することとなった内戦)により、不安定な政情が続いた。
1999年の大統領選挙でオバサンジョ元国家元首(国民民主党PDP候補)が就任し、文民政府を発足、民政への移行を果たした。2003年の大統領選挙でも再立候補しており、再選されている。
なお、2期目立候補の際、それまで制憲議会で検討されていた大統領の「地域輪番制」に関しても議論がなされたが、現職大統領の再選を禁止する法規制がなかったため、連続2期目の大統領職に就任した。
この間、国民融和や国軍の脱政治化など政治・経済改革を推進したものの、反政府組織による武装闘争の頻発等、依然として治安は不安定な状態が続いていた。スンニ派過激組織ボコ・ハラムの活動が本格化したのもこの時期である。

2015年の大統領選では、最大野党であった全進歩会議(APC)へと政権交代が起こり、ブハリ大統領が就任、2019年に再選している。ボコ・ハラムやIS系のテロ組織対策を含む治安対策、汚職対策、石油依存からの経済多角化等の経済対策を優先課題として位置付けている。しかしながら、トランスペアレンシー・インターナショナルによる2020年の腐敗認識指数[3]では、ナイジェリアは180か国中149位である。2016年の136位から後退しており、改善に向け課題は多いと言わざるをえず、ビジネス進出においてはリスクを認識した上で必要な対策を充分に講じることが肝要となる。

 

各州の人口と、国家歳入に占める割合は以下のとおり。

 

State

州都

人口(2017年)[4]

国家歳入寄与率(2020年)[5]

Abia

Umuahia

3,714,024

1.1%

Adamawa

Yola

4,230,946

0.6%

Akwa Ibom

Uyo

5,451,278

2.4%

Anambra

Awka

5,506,577

2.1%

Bauchi

Bauchi

6,500,468

1.0%

Bayelsa

Yenagoa

2,268,582

0.9%

Benue

Makurdi

5,716,538

0.8%

Borno

Maiduguri

5,827,153

0.9%

Cross River

Calabar

3,850,352

1.2%

Delta

Asaba

5,635,041

4.6%

Ebonyi

Abakaliki

2,869,320

1.0%

Edo

Benin

4,220,455

2.1%

Ekiti

Ado-Ekiti

3,255,436

0.7%

Enugu

Enugu

4,391,700

1.8%

Gombe

Gombe

3,240,675

0.7%

Imo

Owerri

5,381,708

1.3%

Jigawa

Dutse

5,804,169

0.7%

Kaduna

Kaduna

8,216,037

3.9%

Kano

Kano

13,007,402

2.4%

Katsina

Katsina

7,796,844

0.9%

Kebbi

Birnin Kebbi

4,419,195

1.1%

Kogi

Lokoja

4,453,797

1.3%

Kwara

Ilorin

3,178,837

1.5%

Lagos

Ikeja

12,487,836

32.1%

Nasarawa

Lafia

2,512,286

1.0%

Niger

Minna

5,524,931

0.8%

Ogun

Abeokuta

5,189,990

3.9%

Ondo

Akure

4, 651, 129

1.9%

Osun

Osogbo

4,682,057

1.5%

Oyo

Ibadan

7,796,670

2.9%

Plateau

Jos

4,185,428

1.5%

Rivers

Port Harcourt

7,262,756

9.0%

Sokoto

Sokoto

4,976,087

0.9%

Taraba

Jalingo

3,054,208

0.6%

Yobe

Damaturu

3,274,478

0.6%

Zamfara

Gusau

4,492,846

1.4%

Federal Capital Territory

Abuja

3,421,848

7.0%

 

4.           法制度

ナイジェリアの法制度は、植民地時代の影響による英国法、ナイジェリアの立法府が制定した法律、慣習法(Customary Law)、イスラム法(Sharia、シャリーア法)で構成される。1999年ナイジェリア憲法が最高法規である。

司法機関の最上位はナイジェリア最高裁判所であり、下位裁判所として、控訴裁判所(Court of Appeal)、高等裁判所、治安判事を含む第一審裁判所がある。

なお、国際仲裁に関しては、後述するNIPC法により、紛争解決手続きのために国際仲裁機関を利用することができると定められている(同法26条)。

また、ナイジェリアは投資紛争解決国際センター(ICSID)条約の批准国であるため、紛争解決の際に同センターでの仲裁手続きを行った場合は、同センターの仲裁判断が、ナイジェリア最高裁判所の判決と同等の効力を持ち、裁判所への不服申立はできないと定められている。

また、憲法により、シャリーア法控訴裁判所(a Sharia Court of Appeal)または慣習法控訴裁判所(Customary Court of Appeal)を各州が必要に応じ設置できると規定されている(275条、280条)。

 

ビジネスに関連する主要な法規制には以下が挙げられる。

  • 2020年会社及び関連事項に関する法律(Companies and Allied Matters Act, CAMA、以下「会社法」)[6]
  • ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act, NIPC)法[7]
  • 外国人土地取得法(Acquisition of Lands by Aliens Law)[8]
  • 法人所得税法 (Companies Income Tax Act)

 

中でも、ナイジェリアでのビジネス実施において必須となる法人設立について規定する会社法は、2020年に30年ぶりに改正されており、外国投資の項で後述するとおり、ナイジェリアへのビジネス進出や法人の運営を容易にする方針で改定がなされている。

 

5.           通貨・経済状況

通貨はナイラ(Naira)、1USドル=409.67(2021年6月現在)[9]。
ナイジェリアの2019年のGDPは約4,481億ドルとアフリカ最大であり、サブサハラアフリカ全体のGDP(1.8兆ドル)[10]の25%を占める経済規模を有する。ただし、人口も最大であるため、1人当たりGDPは2019年に2,230ドルであり、いまだ世界銀行の低中所得国(Lower middle income)に分類されている。(なお、アフリカ第2の経済大国(2019年の名目GDP約3,500憶ドル)南アフリカの1人当たりGDPは6,000ドル前後で、高中所得国に分類されている。)

また、ナイジェリアは、2019年にアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定に署名している。AfCFTAは、アフリカ域内での貿易活性化等を目的とし、AfCFTA下では、センシティブ品目など一部例外を除き、加盟国間での物品、サービス、投資に対する関税が段階的に撤廃され、貿易ルールも共通化される。コロナ禍により運用開始が延期されていたが、2021年1月から開始された。ナイジェリアで製造や販売を行う場合は、アフリカ域内で原材料等を安価に調達することや、域内で市場を拡大できる可能性が大きくなる。

 

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2015

2016

2017

2018

2019

名目GDP(100万USドル)[11]

 486,803

 404,650

 375,746

 397,190

 448,120

1人当たりGDP(USドル)[12]

 2,687

 2,176

 1,969

 2,028

 2,230

GDP成長率[13]

2.7%

-1.6%

0.8%

1.9%

2.2%

 

6.           産業

アフリカ最大の石油生産国であり、主要産業は農業、情報通信サービス(Telecommunications & Information Services)原油・天然ガス。そのうち、農業がGDPの4分の1を占め、原油は7%前後である。GDPの11%を占める情報通信サービス産業は近年著しく成長しており、2020年には14.7%の伸びを記録している[14]。他方、総輸出額の約7割が原油であり[15]、外貨獲得手段の多角化は課題である。

 

主な産業

(詳細分類から主な産業を抽出)

名目GDP

2020年、ナイラ)

実質GDP成長率(2020年)

GDP寄与率

農林水産業

37,241,609

2.2%

24.4%

卸・小売り

21,106,384

△8.5%

13.9%

製造業

19,539,550

△2.8%

12.8%

情報通信サービス

16,808,637

12.9%

11.0%

建設

11,639,482

△7.5%

7.6%

鉱業(原油含む)

10,851,766

△8.5%

7.1%

不動産

8,678,134

△9.2&

5.7%

金融・保険

4,737,826

9.4%

3.1%

全体

152,324,071

△1.9%

100%

 

7.           外国投資

ナイジェリアには、2019年時点で47社の日系企業が拠点を設けている[16]。世界銀行の「Doing Business 2020」[17]では世界190カ国中131位、サブサハラアフリカ48カ国中では17位であり、ビジネス環境が整っているとは言い難い。しかしながら、2019年146位から順位を上げており、特に会社設立手続きに要する時間の短縮、オンラインプラットフォームの改善、建設許可の取得手続きの簡素化といった取り組みがなされている[18]。また、2020年の会社法改正により、外国投資家にとってビジネス進出の環境は徐々に改善されることが望まれる。

 

  • 進出形態

ナイジェリアの会社法上、ナイジェリア国内での事業を企図する外国企業(every foreign company having the intention of carrying on business in Nigeria)は、特定の国家プロジェクト実施等の場合を除き、必ずナイジェリア内国法人を設立する必要がある(法78条1項)。当該法人が設立されない限り、事業を行うこと、事業所(a place of business)を置くこと、(法人設立関連の文書受領目的を除く)手続きや郵送等のための住所を持つことは認められない。

そのため、本社のある外国籍のまま、ナイジェリアに「支店」や「駐在員事務所」を置くといった選択肢はなく、すべての企業はまず法人を設立することとなる。

同時に、会社法の定めを遵守し、ナイジェリア現地企業同様の法人運営が求められる。

法人の登録は商事委員会(Corporate Affairs Commission, CAC)に対し行う。

 

会社の形態は以下の6種類が規定されている。

 

  • 有限責任会社(Company Limited by Shares:Ltd)
  • 有限責任保証会社(Company Limited by Guarantee:Ltd/Gte)
  • 無限責任会社(Unlimited Liability Company)
  • パートナーシップ(Partnership)
  • 個人事業/商号(Business Names)
  • インコーポレーテッド・トラスティ(Incorporated Trustee)

 

なお、①、②、③は、非公開(Private)公開(Public)のいずれの形態もとることができる。

非公開会社と公開会社の主な要件は以下のとおり。

 

 

非公開会社

公開会社

発起人(株主)の人数

1名以上(法18条2項)

※2020年の改正により最低人数が2名から1名に緩和

2名以上(法18条1項)

株主人数の上限

50名未満(22条3項)

上限なし

株式の譲渡・売却

制限あり(22条2項)

以下は認められない。

  (i)   全株主の同意なく、会社資産の過半数を売却すること

 (ii)   他の株主に対する株式の買取の提案をせずに、第三者へ株式を売却すること

(iii)   第三者への株式の過半数を売却すること(株式を買い取る者が既存株主の持ち分を全て同じ条件で買い取ると申し出た場合を除く)

制限なし

最低株式資本額( amount of the

minimum issued share capital)(法27条2項(a))

10万ナイラ以上

※なお、2020年の改正により従来の「授権資本( authorized share capital)」[19]最低額の規制は廃止された。

※ただし、外国人割当て(Expatriate Quota)取得の際に株式資本1,000万ナイラが必要となる

200万ナイラ以上

※授権資本最低額の規制も左記同様に廃止

※左記同様

取締役(271条1項)

2名以上

(小規模会社は1名以上)

2名以上

ただし、3名以上の独立取締役の任命が必要(法275条)

監査役(Auditor)(法401条1項)

必須(1名以上)

※小規模会社は、年次会計監査が免除の特例あり(法402条)

必須(1名以上)

秘書役(Secretary)(法330条1項)

必須(1名)

※小規模会社は免除の特例あり

必須(1名)

株主総会の開催場所(法240条)

テレビ会議等の電子的会議開催も可能(同条2項)

※2020年の改正により容認

ナイジェリア国内での物理的開催

株主総会の書面決議(法259条)

可能

不可

 

また、非公開会社のうち、以下の条件を満たす会社は、「小規模会社(Small Company)」と定義され、コンプライアンス要件が緩和される(法394条)。ただし、株主が全員ナイジェリア人である必要があるため、活用する日系企業は限定的となる。

 

小規模会社の適格要件

ü  非公開会社であること

ü  売上高が1億2,000万ナイラ以下であること

ü  純資産が6,000万ナイラ以下であること

ü  株主に外国人(alien)がいないこと

ü  株主に政府系機関の任命者がいないこと

ü  取締役が株式の過半数を保有していること

 

小規模会社に対するコンプライアンス要件の緩和

ü  取締役の人数の下限を1名に緩和(法271条1項)

ü  年次株主総会開催の免除(法237条1項)

ü  秘書役任命義務の免除(法330条1項)

ü  少ない開示項目での財務諸表(modified financial statements)の提出(法393条1項)

ü  会計監査の免除(法402条1項)

 

会社の各形態の概要は以下の通り。

 

  • 有限責任会社(法21条1項(a)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務はその保有株式のうち払込み前の資本に限られる形態。非公開の有限責任株式会社が、外国投資家に最も利用される。

 

  • 有限責任保証会社(法21条1項(b)、26条等)

主に非営利組織で利用される形態。会社の収入および財産が会社の株主に支払われたり、譲渡されたりせず、事業推進のためにのみ使用される場合は、有限責任会社ではなく、有限責任保証会社として登録する。

 

  • 無限責任会社(法21条1項(c)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務が無制限である形態。無限責任会社の場合は、財務諸表を当局に提出する義務がなく(法388条4項)、また、公告する必要がない(398条)。

 

  • パートナーシップ(法746条~810条)

2020年の改正で導入された形態であり、Limited Liability Partnership(LLP)およびLimited Partnership(LP)の2種類がある。パートナーシップの形態は、これまでラゴス州でのみ登録が認められていたものの、連邦法やその他の州法の下では独立した組織体として見なされていなかったため、この改正により外国投資家による参入に際し、より柔軟な選択肢が増えたと言える。

LLPは、2名以上のパートナーにより組織体として登録ができる(法748条1項)。パートナーの国籍要件は明言されておらず、最低1名がナイジェリア居住者であればよいと規定されている(法749条1項)。

LPは、パートナー数が20名以下に限定され(法795条2項)、会社の全債務に対し責任を負う「ジェネラル・パートナー」を最低1名、その他の「リミテッド・パートナー」を最低1名置く必要がある(同条3項)。

 

  • 個人事業/商号(法814条)

個人(individual)であっても、個人事業の商号として登録することができる。商号は一人または複数の個人による保有が可能であり、最低資本金の定めはない。

 

  • インコーポレーテッド・トラスティ(法823条)

文化・宗教・教育・慈善活動等の目的で設立する団体や協会等の組織に活用される形態。2名以上の管財人(Trustee)を任命する。

 

なお、上記以外にも2020年の改正では以下のとおり変更がなされており、これから新規投資を検討する投資家にとっても、既に法人を設立している投資家にとっても、参入や経営上のメリットの大きい改正となったと言える。

 

  • 社印(Common Seal)の作成義務の撤廃(法98条)
  • 認証(authentication)が必要な文書への電子署名(electronic signature)の認容(法101条)
  • オンラインでの譲渡証書による株式譲渡(electronic instrument of transfer)の認容(法175条1項)
  • 登記当局に登録する書類(Any document required to be filed with the Commission for registration)のオンライン提出の認容(法860条)

 

  • 投資規制

会社法に基づき設立された法人は、ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act、以下「NIPC法」)[20]の規定により、100%外国資本であっても、ほとんどの分野においてナイジェリアの会社と同様にビジネスを行うことができる(NIPC法17条)。ただし、NIPC法において、以下の業種は、外国資本の有無に関わらず「ネガティブリスト」として投資が禁止される(法31条)。

なお、CACに加え、NIPCへも登録が必要である[21]

 

投資が一律禁止される業種

 (a)   武器・弾薬等の製造業

 (b)   麻薬および向精神薬の製造・販売業

 (c)   軍事・準軍事的な衣類および携行品の製造(警察、税関、出入国管理、刑務所業務に関する衣類および携行品を含む)

 (d)   その他連邦評議会(The Executive Council of The Federation)が随時決定する業種

 

出資比率については、NIPC法は制限を設けていないものの、分野ごとの規制により、外資の出資規制が定められている。

 

外国人による投資が認められない業種

 (a)   民間警備会社(Private Guard Companies)

 (b)   国内海上輸送業(Domestic Coastal Carriage Transport)

 (c)   法律サービス業(Legal Services)

 

外国人による出資比率が規制される主な業種[22]

石油・ガス

入札において、ナイジェリア人が51%以上の株式を保有する会社が優先される

技術コンサルティング

外資比率は45%まで

広告

外資比率は25%まで

国内海上輸送サービス(Domestic Coastal Carriage Services)

外資比率は40%まで(100%の現地資本が免除されたナイジェリア輸送会社のみ)

放送(Broadcasting)

外資比率は49%まで

 

  • 外国人労働許可

ナイジェリアにおいて設立した法人で外国人を雇用(日本本社からの駐在員派遣等)する場合は、外国人雇用枠を確保する必要がある。これは「Expatriate Quota(外国人割当)」と呼ばれ、内務省(Ministry of Interior)に対し発給を申請する。

ナイジェリアは政策としてナイジェリア人の雇用を奨励しており、そのため、内務省は、外国人割当の申請を受けても、当該ポジションに就くことができるナイジェリア人が存在すると判断した場合、外国人雇用を承認しないという絶対的な裁量権を有する。承認されない場合、当該ポジションに現地のスタッフを雇用することになるため、申請にあたっては、当該ポジションが外国人である絶対的な必要性を示す必要がある。

また、外国人割当を取得するために、1,000万ナイラ(約270万円)の最低資本金が必要となることが一般的である。これは、会社法27条の定める最低株式資本額(非公開会社であれば10万ナイラ)とは別であり、外国人雇用枠1人分につき1,000万ナイラ、4人分の場合は約2,000万ナイラなどと求められる。ただし、資本額に対する雇用枠の数についても、内務省の裁量により判断されることとなる。また、産業分野によってはさらに要件が厳しくなる場合もあり、例えば石油・ガス産業は、下級・中級幹部職(junior and intermediate cadres)にはナイジェリア人のみの雇用が義務付けられ、管理職のうち5%のみに外国人の雇用が認められる。

 

  • 優遇制度

ナイジェリアには、外資系企業のみに対する租税減免等の優遇措置はないものの、国の戦略的分野や指定地域への投資を促進するため、内国企業と同じ条件のもと、各種優遇措置の枠組みが設けられている。

主な制度は以下のとおり。

 

  • パイオニア・ステータス優遇制度

産業開発(所得税軽減)法(Industrial Development (Income Tax Relief) Act)に基づき、パイオニア産業・商品として認定された会社は、3年間の法人所得税免税(最長2年間延長可能)を受けられる[23]。この「パイオニア・ステータス・インセンティブ」制度は、99もの業種[24]が対象産業として指定されており、幅広い企業による活用が期待できる。

パイオニア産業は、A)農業、B)鉱業、C)製造、D)電力・ガス、E)廃棄物管理、F)建設、G)e-コマース、H)情報・通信、I)写真撮影、J)金融、K)管理サービスに分類され、各産業に対象となる業種(合計で99)と商品がリストされている。

 

  • 利益の非課税措置

法人所得税法 (Companies Income Tax Act、以下「CITA」)は、利益(profits)が非課税となる要件を定めている(23 条1項)。非課税となる主な利益は以下のとおり。

  • 製造業の小規模会社が操業開始後5年間に受け取る配当金
  • 輸出による収入がナイジェリアに送還され、原材料、工場、設備、予備部品の購入にのみ使用される場合の、輸出品に関する会社の利益
  • 輸出用製品の製造に必要なインプットのみを供給している会社の利益
  • 輸出加工区または自由貿易区の中で設立された会社の利益

 

  • 研究開発費の控除

CITAに基づき、商業化を目的とした研究開発事業費に対し、20%の投資税控除が認められる(26条)。

 

  • 農村地域への投資に対する優遇措置

CITAに基づき、会社が取引や事業を目的として、地方において電気、水道、舗装道路、電話等の設備投資行った場合、当該支出額の一定割合が「農村投資手当(Rural investment allowance)」として認められる(同法34条)。

当該措置の適用対象となる設備投資は、公共施設・設備から20km以上離れた場所であることが条件となる。

半径20㎞以内に以下の設備がない地域で、上記設備投資を行った場合の控除率は以下のとおり。

なお、控除は、適用となる設備投資が完了した年の利益に対して行わる。

 

  • 電気なし: 50%
  • 水道なし: 30%
  • 舗装道路なし: 15%
  • 電話なし: 5%
  • いずれの設備もなし: 100%

 

  • 産業分野別の優遇措置

農業・農業関連、鉱物資源、製造業、観光・ホスピタリティ、石油・ガスの分野に関しては、セクター個別の各種優遇制度が存在している。

例えば観光・ホスピタリティ産業では、5年以内に観光関連施設の建設・拡張に投資されることを条件に、交換可能通貨による所得の25%が課税免除となる(CITA37条)。

また、石油・ガス産業では、石油会社が支払うロイヤルティに対し、原油等の産出地域と価格に応じ二段階でのロイヤルティの率を規定している[25]。すなわち、ベースライン・ロイヤルティとして、水深200メートル以上での産出は10%のロイヤルティが適用され、フロンティアおよび内陸部での産出は軽減税率として7.5%が適用となる。ベースラインに加え、1バレルあたりの価格に基づき、以下のとおりロイヤルティが適用される。

 

20ドル未満:0%

20~60ドル:2.5%

61~100ドル:4%

101~150ドル:8%

151ドル以上:10%

 

  • 輸出加工区(EPZ)優遇措置

ナイジェリア輸出加工区庁法(Nigerian Export Processing Zones Authority Act、以下「NEPZA法」)に基づき、EPZへの進出企業は、法人所得税・関税等のすべての税金が免除される(8条)。また、輸出のための原材料・設備輸入にかかる関税も免除となる(12条)。さらに、前述の外国人雇用割当についても、EPZ進出企業においては規制適用外となり、必要な雇用許可を申請することで、外国人を雇用することができる(18条1項h、20条)。現在運営されているEPZは10州で25区ほどあり、うち13区がラゴスに設置されている[26]

 

  • 州独自の投資優遇措置

外国投資に関する規制や、為替管理、法人設立等の規制はすべて連邦政府が管轄するが、いくつかの州では、州独自の投資促進機関やユニットを設置し、投資家が州内に投資を行うためワンストップ窓口の提供や、関係機関との連携を行う。

ラゴスでは、The Office of the Sustainable Development Goals & Investment(通称Lagos Global)を設置し、住宅、小売り、ICT、電力、運送、ヘルス、観光、環境の8分野を投資奨励分野と位置付けており、例えば住宅分野では、PPP参加者への法定費用の補助や、土地の権利書のファスト・トラックでの発行といったインセンティブを提供している[27]

[1] 国連世界人口推計2019年 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] ナイジェリア輸出加工区庁 (Nigerian Export Processing Zones Authority) https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[3] https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/nga

[4] Nigerian Investment Promotion Commission “Book of States 2020” : https://nipc.gov.ng/wp-content/uploads/2021/04/Book-of-States-final.pdf?

[5] ナイジェリア統計局 “Internally Generated Revenue At State Level (Q4 & Full Year 2020)” https://nigerianstat.gov.ng/elibrary

ナイジェリアの2020年度国家歳入約1.3兆ナイラ(約3.5億円)に対する、各州内歳入が占める割合

[6] https://www.cac.gov.ng/wp-content/uploads/2020/12/CAMA-NOTE-BOOK-FULL-VERSION.pdf

[7] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[8] http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/nig150979.pdf

[9] ナイジェリア中央銀行 https://www.cbn.gov.ng/rates/ExchRateByCurrency.asp

[10] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZG&most_recent_value_desc=true

[11] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=NG

[12] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=NG

[13] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=NG

[14] ナイジェリア国家統計局 Nigerian Gross Domestic Product Report (Q1 2021)

[15] ナイジェリア国家統計局 Foreign Trade in Goods Statistics (Q1 2021)

[16] 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[17] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[18] 世界銀行 “Doing Business 2020: Nigeria” https://www.doingbusiness.org/en/data/exploreeconomies/nigeria

[19] 「authorised share capital(授権資本)」は、定款に記載された、会社が発行することのできる株式の総数であり、廃止された1990年会社法では、その最低額が、非公開会社は1万ナイラ、公開会社は50万ナイラと規定されていた(旧法27条2項a)。授権資本のうち、会社の設立時には25%以上を発行する必要があった(同項b)。言い換えると、会社は将来の割り当てのため、未発行の株式を保持することができていた。なお、会社設立以降は、取締役会の決議により(株主総会の決議を経ずに)授権資本の範囲で株式を発行することができた(旧法117条)。

[20] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[21] NIPCワンストップ投資センターにおいて、会社設立に関連する手続きを行える。https://www.nipc.gov.ng/

[22] 世界銀行 “2019 Investment Policy and Regulatory Review: Nigeria” https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/33596/Nigeria-2019-Investment-Policy-and-Regulatory-Review.pdf?sequence=1&isAllowed=y

[23] https://www.nipc.gov.ng/pioneer-status-incentive/

[24] 2017年8月付で通知されたパイオニア産業リストhttps://www.nipc.gov.ng/ViewerJS/#../wp-content/uploads/2019/01/Gazetted-List-of-Pioneer-Industries-and-Products.pdf

[25] ロイヤルティの率は、以前は産出する海域の水深に応じて設定されていた(オンショア:20%、水深1,000メートル超:0%等)が、2019年の法改正(深海・内陸沿岸部生産分与契約法(Deep Offshore and Inland Basin Production Sharing Contract (Amendment) Act)により、価格と生産量に基づく二段階方式のロイヤルティ制度に変わっている。

[26] https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[27] https://lagosglobal.org/incentives

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
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2021年06月17日(木)5:46 PM

インドの取締役会運営規制改正について― 年次財務報告書承認等の取締役会のテレビ会議での開催が恒久的に可能に―ニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

取締役会運営規制改正について

 

 

インドの取締役会運営規制改正について

― 年次財務報告書承認等の取締役会のテレビ会議での開催が恒久的に可能に―

 

2021年6月17日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 インドに駐在しない日本人取締役にとって、インド法人をリモート環境でどのように管理するかという点は、多くの日系企業が課題として抱えています。

とりわけ取締役会の運営は、会社法によりテレビ会議でも開催が認められているものの、年次財務諸表の承認といった一定の重要事項については、テレビ会議では決議することが制限されていました。

この制限に関し、インド企業省は2021年6月15日、当該規定を削除する旨の通知を発表しました。

これにより、これまで対面方式での開催が義務付けられていた年次財務報告書等の重要事項の承認についても、今後はテレビ会議やその他の視聴覚手段によって取締役会を実施することが可能となりました。

  1. 取締役会運営に関する規則

インドにおける取締役会運営に関しては、「2013年会社法」(Companies Act, 2013、以下「法」)および、その下位規則である「2014年会社(取締役会および権限)規則」(Companies (Meetings of Board and its Powers) Rules, 2014、以下「規則」)に、具体的な規定が定められています。

テレビ会議(video conferencing or other audio visual means)については、取締役の参加が確認でき、日時および手続の様子を録画したデータを保存する等の手続を履践すれば、その開催が認められていました(法第173条2項、規則第3条)。

ただし、規則4条において、テレビ会議では決議できない事項が以下のとおり指定されていました。

 

(1)        年次財務報告書の承認

(2)        取締役会報告書の承認

(3)        目論見書の承認

(4)        監査委員会会議の実施

(5)        合併、統合、分割、買収等組織再編の実施の承認

 

  1. コロナ禍における規制緩和措置

上記のように、テレビ会議で決議できる事項には制限がありましたが、インド政府は、新型コロナウィルスの影響下、物理的な対面形式での会合開催が困難であることを考慮し、規則4条で制限される事項についても、テレビ会議での決議を認める緩和措置を講じました。

当該緩和措置は、2020年12月31日付で発出され、その後2021年6月30日まで措置が延長されていたため、今後も緩和措置の延長がなされるのかについては、その動向が注目されていました。

  1. テレビ会議による取締役会開催の恒久的緩和

このような状況の中、上記緩和措置の期限となる6月30日を前に、インド企業省は、6月15日付通知[1]において、規則4条を削除するとの発表をしました。

これにより、これまで禁止されていた以下の事項についても、テレビ会議で取り扱うことができることとなります。

(1)        年次財務報告書の承認

(2)        取締役会報告書の承認

(3)        目論見書の承認

(4)        監査委員会会議の実施

(5)        合併、統合、分割、買収等組織再編の実施の承認

 

今般の改正は、日系企業、特に今般のコロナ禍において日本人取締役が退避・再退避している企業や、取締役が遠隔地に駐在する企業にとって、大きな規制緩和と言えます。

なお、テレビ会議による取締役会に際する手続、すなわち、セキュリティ対策や本人確認、議事録や録画データの保管等については、規制緩和後も遵守が必要です。

ただし、取締役のうち1名はインド居住者(前年にインドに182日以上滞在)である必要があるとする規定(法149条3項)については、恒久的な撤廃はなされていない点に留意が必要です。すなわち、コロナ禍において、期間限定で居住要件が緩和(2019年度、2020年の期間においては罰則を科さない)されているものの、続く2021年度における緩和措置が現時点では公表されていないため、緩和措置の延長や規制撤廃が行われない限り居住要件があると解されます。

 

[1] 企業省2021年6月15日付通知https://www.mca.gov.in/bin/dms/getdocument?mds=zwpAcIfQhKOgB8vwf%252FztbA%253D%253D&type=open

同規則は、「2021年会社(取締役会および権限)規則」(Companies (Meetings of Board and its Powers) Amendment Rules, 2021)と改正されています。

以 上

 

 

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2021年04月09日(金)9:47 PM

インドの個人情報保護法案2019と審議状況についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

インドの個人情報保護法案2019と審議状況について

 

 

インドの個人情報保護法案2019と審議状況について

2021年4月9日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

インドでは、個人情報を包括的に保護することを目的とした法案(以下、「2019年個人情報保護法案」)が、本記事執筆時点で、国会で承認されていません。現時点でのインドにおける個人情報に関する既存の法規制、個人情報保護法案の審議状況、そして可決された際のインパクトについて解説します。

※南アジア各国の個人情報保護法制については、2021年1月7日付ニュースレターをご覧ください。

 

1 2000年情報技術法・機密個人データ規則

本記事執筆時点において個人情報保護法は成立していないものの、 個人情報に関してインドで全く規制がないわけではありません。すなわち、個人情報保護法が成立していないから、個人情報保護に留意しなくて良いというわけではありません。

具体的には、2000年情報技術法(Information Technology Act, 2000)[1] およびその下位法令である2011年情報技術(安全措置及び手続き並びに機密個人情報)規則 [2](以下、「機密個人データ規則」)において、規制があります。金融、電気通信、医療等、産業分野ごとに存在する各規制の中で、データ取扱いに関し規定しているものがあるため、併せて確認する必要があります。

 

とりわけ重要なのが、以前より施行されている機密個人データ規則が機密性の高い個人情報(sensitive persona data)を特定し、その取扱いについて規定している点です。すなわち、機密性の高い個人データとは、個人を特定することができる情報のうち、以下の個人情報を指します(同規則3条)。

(ア)        パスワード

(イ)        金融情報(銀行口座、カード情報等)

(ウ)        身体的、生理的及び精神衛生的状態

(エ)        性的指向

(オ)        医療記録及び履歴

(カ)        生体情報

(キ)        企業のサービス提供のために提供された上記に関する詳細情報

(ク)        適法な契約等に基づき、法人が加工または保存するために取得した上記に関する情報

 

このように、機密性の高い個人データを扱う場合、外国企業・インド企業に関わらず、同規則に則った措置を講じる義務を負います。具体的には、①プライバシーポリシーの策定と公開(同規則4条)、②当該データ使用目的に関する本人の同意取得(同5条1項)、③個人情報苦情処理役員(Grievance Officer)の設置と公開(同5条9項)等を含みます。

2  2019年個人情報保護法案とその審議状況

2019年12月には、個人データの保護を規定し、そのためのデータ保護局を設置することを目的として、個人情報保護法案(Personal Data Protection Bill)が議会に提出されました。この法案の内容を精査するために、国会議員(上院・下院)30名で構成される合同委員会[3]が組織され、業界各社(Facebook, Google, Airtel, Flipcart等)との会合も設けられていますが、これまでに審議が4回延期されるなどし、本原稿執筆時点でいまだ委員会報告書が国会に提出されていません。その背景としては、1)国家安全保障やテロ対策の観点から公的機関が個人の同意なくして個人情報を収集できる例外を広範に認めるべきか、2)厳格な個人情報保護がインドで現実的に可能か、といった点について、未だコンセンサスが得られていないためとも言われています。

特に、同法案35条から40条において、連邦政府は、公的機関を本法案の適用から除外する権限を有する旨の規定がなされていますが、こうした制約のないアクセス権は悪用につながる危険性があると指摘する専門家もいます。

また、41条から56条においては、個人データの管理や同法案の執行を担うデータ保護局(Data Protection Authority of India、「DPA」)の設立が規定されていますが、DPAの委員長および委員は、官房長官を含む上級公務員のみで構成され、政府が任命・解任権を有する(42条)ことから、その独立性が疑問視されています。

コロナ禍においても、インド政府が国民のプライバシーを保護する義務を十分に果たしておらず、逆に監視国家に傾きつつあるとの懸念が高まっています。インド政府は、COVID-19拡大防止対策として追跡アプリ「Aarogya Setu」を開発し、国民に使用を義務付けましたが、杜撰なデータ保護対策に批判が集中しました。アプリ使用の義務化についてはその後撤回されたものの、収集された個人データの保存先やアクセス権保有機関については不透明であるとされています。

加えて、同法案が、国会情報技術委員会(the Parliamentary Committee on Information Technology)ではなく、合同委員会に審議が付託されていることに対し、一部で反発する声もあり、世論は揺れていると言えます。

合同委員会による報告書の提出は、雨季国会(Monsoon Session:7月-9月)の第1週(2021年7月頃)となる見込みで、その報告書の内容にしたがって必要な修正を加えた法案が国会で審議される予定であるものの、数ある重要法案の中で、同法案が雨季国会中に通過する公算は高いとは言えない状況にあります。仮に雨季国会での法案成立が見送られた場合は、次の冬季国会(2021年11月-12月)での法案成立が目指されることになります。

いずれにしても、大きな修正を経ないで本法案が近く可決されると、以下に紹介するとおり、機密性の高い個人データをインド国外に移転することが原則として禁止されるなど、インドで個人データを扱う外国企業にも一定の影響が及ぶこととなり、その動向が注目されています。

 同法案の主な規制には以下が含まれます。

3   個人情報のインド国外移転の厳格化

いわゆるデータローカライゼーションにかかる義務が規定されることとなります。現行の機密個人データ規則においては、機密性の高い個人データを他社(インド国内・国外問わず)等に移転することに関して、移転先が上記同等の措置を講じていることを条件に、可能とされていました(同規則7条)。一方、新法案では、機密性の高い個人情報は原則として国外移転が禁止され、当局に許可を得た場合にのみ認められるとされています。さらに、重要な個人データ(critical personal data)に関しては、インド国内でのみ処理されるものとされます(同法案33条、34条)。このため、当該データはインド国内のサーバに保存し、海外からのアクセスを制御するなどの対策を講じる必要が生じると予想されます。

 

4   独立データ監査人による監査義務

新法案は、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation 、「GDPR」)のコンセプトをもとにしつつ、インド独自の規定として、独立データ監査人(independent data auditor)による監査を毎年受けることを義務付けています(同法案29条)。

 

5   罰則

新法案により規定される上記義務に違反した場合の罰則も規定されており、例えば33、34条(越境データ移転)の規定に違反した場合は、(i)1億5千万ルピー、または(ii)全会計年度の全世界売上高の4%(4% of its total worldwide turnover)のいずれか高い方が科せられることとなります(同法案57条)。また、29条(独立データ監査人による監査)の規定違反には、5千万ルピーまたは前会計年度の全世界売上高の2%のいずれか高い方が科せられます(同条)。

 

以上のように、現段階では施行時期が不透明ではあるものの、施行されると一定の対応が必要となるため、同法案の動向を注視するとともに、法案通り可決することを想定した社内体制の整備を進めることが薦められます。

[1] https://www.indiacode.nic.in/bitstream/123456789/1999/3/A2000-21.pdf

[2] 「Information Technology (Reasonable Security Practices and Procedures and Sensitive Personal Data or Information) Rules, 2011」https://www.wipo.int/edocs/lexdocs/laws/en/in/in098en.pdf

[3] 「Joint Committee on the Personal Data Protection Bill, 2019 」http://loksabhaph.nic.in/Committee/CommitteeInformation.aspx?comm_code=73&tab=1

以 上

 

 

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2021年03月31日(水)9:08 PM

ネパールの会社法についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ネパールの会社法について

 

 

ネパールの会社法について

 

2021年3月31日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 ネパールでは、2020年に産業企業法成立、2019年に外国投資法改正、2017年に会社法改正と、ビジネスに関する規制が変化しています。世界銀行による「ビジネスのしやすさ指数2020」においては、南アジア8か国中では、インド、ブータンに次ぐ3位、全世界190か国中94位と、課題は残るものの前年の110位から16位ランクを上げています[1]

ネパール投資の際に参照すべき2つの法律を解説した、2020年12月18日付「ネパールの投資環境と2020年産業企業法投資規制について」に続き、今回は、実際に現地法人等の設立手続きや運営の際の準拠法となる2017年会社法について解説します。

 1 2017年会社法改正の概要

2017年の改正においては、企業の参入と撤退を容易にすること等を目的として、約60の条項が改正または新設されています。例えば、第9条(ka)では、非公開株式会社の最大株主数を従来の50人から101人に引き上げられており、これにより、非公開の形態をとりたい会社もより多くの株主からの投資を得られることとなりました。その他、2017年改正法では、以下のように、ネパールにおける企業運営上の重要な変更がなされています。

 

旧規定

改正規定

非公開会社の定時株主総会

(76条5項)

該当なし

(76条1項から4項で公開会社の定時株主総会開催を規定)

公開会社のみ義務であった定時株主総会開催が、非公開会社にも適用拡大。

公開会社への強制転換。

(13条1項(b))

非公開会社の株式の25%以上が1社以上の公開会社によって引き受けられた場合、当該非公開会社は公開会社に強制転換される。

削除

非公開会社の株主数(9条(ka))

50人以下

101人以下

株主総会のテレビ会議開催

(68、80条)

該当なし

テレビ会議(video conference)等が開催方法として追加

公開会社の取締役(86条2項)

性別の規定なし

女性株主のいる公開会社に対する、1名以上の女性取締役選任義務付け。

 

2 拠点設立手続き

日本企業がネパールでの事業を検討する場合、現地法人、外国法人の支店(Branch Office)、駐在員事務所(Liaison Office)のいずれかを設置することが一般的です。

  • (1)現地法人

現地法人は、ネパール会社法に基づき設立される、非公開会社(Private Limited Company)又は公開会社(Public Limited Company)を指し、外資規制上許可されている分野において事業活動を行うことができます。最低資本金は、公開会社の場合は1,000万ネパール・ルピー(NPR)(約940万円)と定められ(11条)、非公開会社には最低資本金の定めはありません。

ただし、公開・非公開にかかわらず、外国投資法に基づき、外国企業は最低投資額として5,000万NPR(約4,700万円)が必要となります。

日本企業が現地法人を設立する際は、非公開会社の形態をとることが一般的です。

会社設立手続き

会社設立には、投資額や事業費に応じ、産業省産業局(DOI)又はネパール投資委員会(IBN)での外国投資許可を取得した上で、登記事務所(Office of the Company Registrar)への登記を行います。また、歳入局(Inland Revenue Department)への税務登録を行い、永続会計番号(Permanent Account Number、PANナンバー)の取得も必要となります。

年間売上高が500万NPR以上の会社は、付加価値税(VAT)登録も行います。

  • (2)支店

支店は、外国企業のネパール国内拠点であり、当該外国籍のままとなります。原則としてネパール国内で許可されている事業活動を行うことができますが、その内容は、親会社の設立国における事業内容と類似した内容の範囲に限定されます。

支店を運営するための投資は外国投資とはみなされないため、外国投資認可は不要ですが、投資予定額に応じた支店登録手数料が定められています。

  • (3)駐在員事務所

駐在員事務所は、外国企業のネパール国内連絡拠点としての機能であり、当該外国籍のままとなります。収入を得るものを含むビジネス活動は認められません。設立には、会社登録事務所において、支店と同様の登録手続きを行います(154条3項)。

支店・駐在員事務所の設立手続き

ネパールで支店又は駐在員事務所を登録するには、管轄する政府当局から承認を取得する、又は関係機関と合意書を締結することが必要となります(154条2項)。この合意書締結の相手方機関に関し、会社登録事務所は、政府機関である必要があるとの見方をしてきました。しかしながら、この見解は管轄登録事務所により異なることがあり、政府機関ではなく民間企業との合意書提出に基づき、支店の登録が完了している事例も見受けられます。そのため、確実に且つ無駄なく手続きを行うために、想定する合意締結相手方に関し、管轄登録事務所において事前の確認をすることが肝要です。

登録時の手数料は投資予定額に応じて定められており、例えば投資額1千万NPR(約940万円)以下の場合は登録料1万5千NPR(約1万4千円)、2億NPR超3億NPR以下の場合は10万NPR等。投資額が未定の外国企業には一律で10万NPRの登録料が適用されます。

 

現地法人

支店

駐在員事務所

 

非公開会社

公開会社

株主数

上限101名

最低7名(上限なし)

株式の一般公募

不可

可能

取締役数

上限11名

3名以上11名以下。女性株主がいる場合は、1名以上の女性取締役設置が必要。

法人格

内国法人

内国法人

外国法人

外国法人

活動範囲

原則制限なし

原則制限なし

許可された範囲での事業又は取引が可能

収入を生じさせる活動(income earning activity)は不可

最低資本金

最低資本金の定めなし。

1,000万NPR

規定なし

規定なし

最低投資額

5,000万NPR

5,000千万NPR

規定なし

(支店は外国投資とみなされない)

規定なし

(駐在員事務所は外国投資とみなされない)

 

  • 外国人とネパール人の従業員雇用比率

ネパールでは、WTO協定を受諾しており、技術職及び管理職における外国人の雇用比率は15%まで認められています[2]。従業員を雇用する際は、ネパール人の人数が85%以上となるよう調整が必要となります。

3 会社の運営と機関

  • (1)株式
    • ①株式の割当

公開会社は株式の引受を公募する場合、株式発行終了日から3か月以内に株式を割り当てるものとされますが、少なくとも50%が売却されない場合には、割当は行えないと定められています(28条)。

 

  • ②株式の額面価額

株式の額面価額は、非公開会社の場合は定款に定めるものとし、公開会社の場合は1株当たり50NPR、または定款に定めるそれ以上の金額(10で割り切れる金額)とします(27条)。

 

  • ③配当金

配当は、配当実施の決定から原則として45日以内に株主に分配されなければならないとされます(182条)。

 

  • (2)機関
    • ①株主

非公開会社の株主数は最大101名(9条1項)、公開会社は最低7名(上限の定めなし)の株主数を必要とします(9条2項)。

 

  • ②株主総会

会社は、会社法に基づく定時株主総会(annual general meeting)の開催が義務付けられ、また必要に応じて臨時株主総会(extra-ordinary general meeting)を開催します。

定時株主総会

原則として毎年、会計年度終了後6か月以内に開催、設立後の第一回定時総会は事業開始許可日から1年以内に開催する必要があります。

(定足数)

株主総会の定足数(quorum)は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は割当株式総数の50%以上を占める3名以上の株主の出席が必要です(73条)。

(招集)

招集通知は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は原則として21日前までに送付することとされます(67条)。

(総会までに提出する報告書)

定時株主総会開催の少なくとも21日前までに、会社の株式や財務状況等の所定の事項を記載した報告書を作成し、監査を受けた上で、登記事務所に提出することが義務付けられています(78条)。

(議事録)

総会の議事録は、開催後30日以内に株主に送付するか、又は全国日刊紙への掲載が義務付けられます(75条)。

臨時株主総会

臨時株主総会は、取締役(会)が必要と判断した場合、監査役が要求した場合、または、払込資本の10%以上の株式を保有する株主もしくは総株主数の25%以上の株主が要求した場合に、開催されます(82条)。

定足数、議事録については定時株主総会と同様の規定が適用されますが、招集通知は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は15日前までの送付が必要となります(67条)。

普通決議の決議事項及び決議要件:

普通決議(Ordinary resolution)の主な決議事項は、取締役らの選解任、決算報告、授権資本範囲内での増資、決議要件は、出席株主の議決権の過半数と定められます(74条3項)。

特別決議の決議事項及び決議要件

特別決議(Special resolution)の主な決議事項は、減資、会社の商号・事業目的の変更、合併等(83条)、決議要件は、出席株主の75%以上と定められます(74条3項但書)。

 

  • ③取締役

(取締役の要件・義務)

取締役の国籍や居住地について規定はなく、日本に居住する日本人のみが取締役に就任することも可能です。

ただし、前述のとおり、公開会社で株主に女性が含まれる場合は、女性の取締役を少なくとも1名任命することが義務付けられます(86条2項)。

また、会社の定款に取締役就任にあたり保有すべき株式数が記載されている場合は当該数の株式を、明記する規定がない場合は、少なくとも100株を保有することが義務付けられます(88条)。

(選任・解任・任期)

取締役は、株主総会により任命され(87条)、任期は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は4年を超えないものとされます(90条)。

株主総会において解任された取締役は、取締役会において再任することができず、また、解任された取締役の後任として選任された者の任期は、解任された者の本来の任期をもって満了となります(90条)。

他方、任期満了により退任した者は、取締役に再任する資格を有します(90条3項)。

 

  • ④取締役会

取締役会(Meeting of Board)は、非公開会社の場合は定款の定めに従い、公開会社の場合は、1年に少なくとも6回開催しなければならず、且つ会議の間隔は3か月を超えないものとされています(97条)。

取締役会の定足数は全取締役の51%以上とされ、また、代理人の出席は認められません(同条)。

すべての取締役会において、議事録を作成し、出席した取締役の51%以上が署名した上で、保管する必要があります。

 

  • ⑤監査役

すべての会社は、監査役を選任することが義務付けられます(110条)。

監査役は株主総会で任命され、次の総会までしか在任できません(111条)。

また、公開会社の場合、監査役は連続3期を超えて選任されてはならないとされます。

 

  • (3)会計書類作の成及び報告

公開会社の取締役会は、毎年定時総会開催の30日前までに、非公開会社の場合は会計年度の終了後6か月以内に、貸借対照表、損益計算書、及びキャッシュフロー計算書を作成し、取締役会の承認及び監査を受けたものを、少なくとも5年間保管する義務を負います(109条)。

また、資本金が1,000万NPR以上または年間売上高が1億NPR以上の非公開会社、及びすべての公開会社は、上記の財務諸表に加え、事業の状況、準備金組入金、配当支払額、その他定められた財務状況に関する事項を記載した報告書を別途作成する必要があります(同条)。

 

以上

[1] 世界銀行 Doing Business: https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[2] https://www.wto.org/english/tratop_e/tpr_e/s381_e.pdf

 

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2021年03月04日(木)6:02 PM

アフガニスタン、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、

ブータン、モルディブにおける汚職関連規制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおける汚職関連規制について

 

 

アフガニスタン、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、

ブータン、モルディブにおける汚職関連規制について

2021年3月4日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

南アジアにおいても、近年、汚職に関する法規制が整備されつつあります。そのような状況を踏まえて、今回、アフガニスタン、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブにおける汚職関連規制について共有します。

 1.アフガニスタンにおける汚職関連規制について

  アフガニスタンは、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数において、180か国中165位であり、汚職が日常的に行われていると言える。外国企業にとって汚職の問題は、許認可、政府調達、規制要件、税務等について、事業を行う上での大きな障害として指摘されている。アフガニスタンに関する多くの報告書では、汚職が社会全体に蔓延していることを示しており、市場経済の発展を阻害する要因の一つとされている。その一例として、国境横断における組織的な汚職が挙げられる。アフガニスタンの役人は、貨物を過小評価したり、適切に通関処理しなかったりすることと引き換えに賄賂を受けており、これが違法品の密輸や合法品の違法取引の温床となっている。

 アフガニスタンは、国連の汚職防止条約に署名(2004年)し、批准(2008年)しており、ガーニ大統領は、汚職防止の取り組みに力を注力している。特に、調達や税関の改革などで一定の成果を上げているといわれている。2016年には、政府は汚職事件を調査・裁判するための「反汚職司法センター(Anti-Corruption Justice Center、以下、「ACJC」)」を開設している。ACJCは、軍事事件と民事事件を扱っており、その中には、都市開発省の財務顧問が20年の禁固および8,600万アフガニ(約1.2億円)の罰金で有罪判決を受けるなど、大規模な汚職事件も挙げられる。アフガニスタンにおける汚職は依然として大きな問題ではあるが、ACJCによる汚職事件の追求を始めとして、徐々に改善することが期待されている。

2.スリランカにおける汚職関連規制について

  スリランカは、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数において、180か国中94位に位置しており 、汚職リスクは中程度に高い状態である。

スリランカの主要な汚職に関する法令は、刑法(Panel Code)と贈収賄法(Bribery Act) である。これら法律は、職権乱用行為、贈収賄またはその未遂行為を犯罪類型化している。

また、1994年の贈収賄・汚職疑惑調査委員会法(The Commission to Investigate Allegations of Bribery or Corruption Act, 1994) は、贈収賄法の下において、贈収賄や汚職の疑惑を調査し、汚職防止に対する監視・執行機関としての常設委員会の設置を規定しており、実際に設立がなされ執行を担っている 。

 贈収賄法においては、贈収賄の防止と処罰が明記されており、同法第70条では、公務員の贈収賄について、10年未満の懲役または10万ルピー未満の罰金、またはその併科が課されると規定されている。いわゆるファシリティペイメントと贈収賄の間には明確な区別がなく、何かしらの便益を得ることを目的に贈答品等を提供することも贈賄にあたるため、留意が必要である。なお、商業賄賂については、規定はなされていない。

3.ネパールにおける汚職関連規制について

  ネパールは、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数において、180か国中、117位となっており 、ある程度の汚職が存在している。

 ネパールにおける主要な汚職に関する法律は、2002年の汚職防止法(Prevention of Corruption Act)である 。 同法では、公共部門と民間部門の両方で、汚職、贈収賄、職権乱用等を禁止し、 犯罪類型化している。いわゆるファシリティペイメントと贈収賄の間には明確な区別がないため、何かしらの便益を得る意思をもって行われる贈答等も全て贈収賄に含まれる点について、留意が必要である。

 職権濫用調査委員会法(The Commission for the Investigation of Abuse of Authority Act, 1991)と合わせて、汚職防止法は、政府職員、大臣、国会議員、公務員等に対して、自身と家族の収入と資産を申告することを義務づけている。 ただし、申告書を提出しなかった場合の制裁は存在しておらず、執行は十分になされていない状態である。

 また、執行機関として、職権濫用調査委員会(The Commission for the Investigation of Abuse of Authority、CIAA) が存在しており、汚職を抑制するための最高機関である。CIAAは、ネパール憲法第238条および239条に基づき、公職者を調査する権限を与えられている。

 なお、汚職防止法の対象者は、公務員のみであり、商業賄賂に関する規定は存在していない。贈収賄者に対する罰則は、贈収賄額に応じて、公務員である場合は以下のとおり、公務員以外であればその半分と定められている。

a) 2万5,000ルピー未満の場合: 3か月を超えない期間の禁固刑

b) 2万5,000以上、5万ルピー未満の場合: 3か月以上、4か月未満の禁固刑

c) 5万以上、10万ルピー未満の場合: 4か月以上、6か月未満の禁固刑

d) 10万以上、50万未満の場合: 6か月以上、1年6か月未満の禁固刑

e) 50万以上、100万ルピー未満の場合:1年6か月以上、2年6ヶ月未満の禁固刑

f) 100万以上、250万ルピー未満の場合:2年6か月以上、4年未満の禁固刑

g) 250万以上、500万ルピー未満の場合:4年以上、6年未満の禁固刑

h) 500万ルピー以上、1000万ルピー未満の場合:6年以上、8年以下の禁固刑

i) 1000万ルピー以上の場合:8年以上、10年以下の禁固刑

 4.パキスタンにおける汚職関連規制について

  パキスタンは、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナル腐敗認識指数において、180か国中124位となっており 、 あらゆる部門や機関で汚職が横行している状態である。汚職防止に関する法律は、パキスタン刑法(Panel Code)、汚職防止法(The Prevention of Corruption Act)、国家説明責任条例(National Accountability Ordinance, NAO)となっている。

 パキスタンの反汚職のための組織である国家説明責任局(The National Accountability Bureau(NAB)は、NAOの下に設立され、パキスタン国内の汚職問題を調査し、監督している。しかしながら、資金不足と人員不足に悩まされており、その機能は限定的と評価されている。

 パキスタン刑法では、贈収賄は違法とされており 、同法の下では、贈収賄行為は、1年以上の懲役、罰金、またはその併科が課される。また、汚職防止法 は、2017年に改正されており、パキスタンにおける贈収賄と汚職の防止のために制定されている。同法は、パキスタン全土に適用され、パキスタンのすべての市民および公務員に適用される 。国家説明責任条例 (NAO)は、汚職や腐敗行為の撲滅を目的とし、汚職行為や他の関連事項で告発を受ける等の機能を有すると規定されている。NAOは、公共部門と民間部門の両方の汚職を犯罪類型化し、汚職に関する最高刑を14年の懲役と罰金、資産の没収を伴う厳罰を規定している。

 なお、ファシリティテーションペイメントや少額の贈答等の例外規定等は存在しておらず、また、バングラデシュにおいて商業賄賂に関する規定については存在していない。

5.バングラデシュにおける汚職関連規制について

  バングラデシュは、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数においては、180か国中146位であり 、南アジアにおいてはアフガニスタンに次ぐ最低ランクである。

バングラデシュの汚職を規定する主な法律は、刑事法(Panel Code)、刑事訴訟法(Code of Criminal Procedure)、汚職防止法(The Prevention of Corruption Act)、汚職防止委員会法(Anti-Corruption Commission Act)等となっている 。

 刑法 においては、恐喝、職権乱用、贈収賄等を犯罪類型化しており、 刑法第161、162条では、贈贈収賄について、3年以上の懲役、または罰金、またはその併科が課されると規定されている。また、汚職防止法 では、贈収賄や汚職を効果的に防止するための規定を設定しており、公務員の汚職行為に対する犯罪行為をより詳細に規定している 。さらに、刑事訴訟法 では、汚職に関する刑事犯罪に関する手続きを規定している。なお、ファシリティテーションペイメントや少額の贈答等の例外規定等は存在しておらず、また、バングラデシュにおいて商業賄賂に関する規定については存在していない。

 腐敗防止委員会法 は、国やその他による腐敗行為を防止し、他の特定の犯罪のための調査を行うことを目的とした、独立した腐敗防止委員会(Anti-Corruption Commission、ACC)の設置が規定されている。本法施行後、実際にACCが設置されている。ACCの主な機能は、汚職防止法に基づき、違反行為に対する調査や執行を行うこと、また、汚職防止措置、施策を見直し、その効果的な実施について通達を発布する等の権限が与えられている。

 しかしながら、前述のとおり、実際にはバングラデシュにおいて汚職は一般的に行われており、社会のあらゆるレベルで蔓延しているといわれている。

6.ブータンにおける汚職関連規制について

 ブータンでの汚職状況は、南アジア諸国との比較では低く押さえられている他、2020年のトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数においても、世界180か国中24位にランクされる 。公務員が国家と国王に奉仕するという思想は、公務員の不可欠な要素であり、腐敗の抑制に寄与してきた。しかしながら、公共調達部門において汚職の存在が囁かれたことがあり、ブータンは、包括的な法的汚職防止枠組みを整備し、会計監査の基準を国際的なレベルに引き上げることに重点を置くなど、汚職を制限する努力が見られる。2006年の汚職防止法は、公共分・民間部門ともに適用され、公職の濫用、マネーロンダリング、横領、贈収賄、外国公務員の贈賄を犯罪として規律しており、また、公務員に強制的な資産申告を義務付けている。汚職防止委員会(ACC)は、汚職防止に関する意識を高め、汚職担当官を調査し、訴追するために効果的に活動を行っていると評価されている。ACCはオンライン・インテグリティ・コースを提供しており、1000人以上の公務員がこれを修了している(Transparency International, 2015)。ACCが調査した汚職事件の有罪率は92%となっている 。

7.モルディブにおける汚職関連規制について

 モルディブでの腐敗行為は社会のあらゆるレベルに存在し、経済成長を脅かしている。しかしながら、トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数においては、2019年に180カ国中130位であった順位が、2020年にはスコアを29から14ポイント伸ばし、75位にランクしている。

汚職防止のために制定された最初の法律は、2000年8月31日に制定された「汚職防止・禁止法(Prevention and Prohibition of Corruption Act)」[1]である。この法律は、公職における汚職行為を防止・禁止するための法的規定と国家機関のガイドラインを規定するもので、贈収賄と不当な金銭的利益を定義し、処罰を規定している。同法では、贈収賄の申し出・受諾、職権を利用した不当な利益の獲得等の違反行為を防止・禁止し、それら違反行為によって得た財産や資金を没収するための手続きを概説している。罰則は、違反した行為に応じ、6ヶ月から10年の禁固刑、流刑(banishment)、または自宅禁固(House arrest)となっている。

 また、2008年憲法第199条~208条に基づき、汚職防止委員会(Anti-Corruption Commission)が設立され、2008年9月24日に「汚職防止委員会法」(ACCA)[2]が制定されている。ACCAは、汚職防止・禁止のための独立した機関であり、汚職防止・禁止法の執行、汚職疑惑の調査、関係当局への改善勧告等の機能を有する。

 なお、モルディブはOECD贈収賄防止条約の締結国ではないものの、国連贈収賄防止条約の締約国である。

 このように役人の汚職に対する刑事罰を規定しているものの、その執行力は弱いものであったが、前述のとおり、最新の腐敗認識指数では腐敗の度合いが低くなるなど、徐々に状況は改善されていると見られる。

8.各国の腐敗認識指数について

 上記7カ国およびインドの腐敗認識指数について、過去3年間の推移は以下のとおりである[3]。180カ国中のランキングであり、数字が大きいほど、腐敗の度合いが高いことを示す。

 

 

アフガニスタン

スリランカ

ネパール

パキスタン

バングラデシュ

ブータン

モルディブ

インド

2020年

165位

94位

117位

124位

146位

24位

75位

86位

2019年

173位

93位

113位

120位

146位

25位

130位

80位

2018年

172位

89位

124位

117位

149位

25位

124位

78位

 

[1] http://acc.gov.mv/en/wp-content/uploads/2015/08/PPC-Act2000.pdf

[2] http://acc.gov.mv/en/wp-content/uploads/2015/08/ACC-Act2008.pdf

[3] https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/nzl

以 上

 

 

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2021年02月09日(火)6:19 PM

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおけるPPP法制について

 

 

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について

2021年2月9日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

世界において巨大なインフラニーズが存在する中、世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[1]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、南アジアにおける案件が活発となっています。もちろん、傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張していたり、また、予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見されますが、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、南アジアにおいては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいます。今後、さらに成長が見込まれる南アジアのPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はバングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について解説します。

        バングラデシュのPPP法制について

バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしています。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されています。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインが制定され、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設立されています。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されています。そして、ついに2015年9月16日にバングラデシュ初のPPP法が成立しました。

PPP法は、全49条から構成されています。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドライン策定の責任を負っています。また投資家の手続き上の負担軽減を目的として、関連文書の作成を簡略化するためのサンプル文書を作成し提供することもその義務となっています。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されています。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関して規定されており、第17条に従って、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されています。ただし、本規定自体は非常に簡潔な内容に留まるため、具体的な手続きに関しては、今後の細則等の発表が待たれます。

また、PPP法では、民間事業者の選定方法(第19条)、当事者間の合意に際するプロジェクト会社設立の必要性(第22条)、汚職および利益相反(第24条および第25条)に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されています。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある規定が明示されています。

        パキスタンのPPP法制について

2億人強の人口を抱えるパキスタンにおいては、膨大なインフラ需要が存在しています。実際に、1990年初頭から道路、高速道路、バス等の交通インフラ、通信、空港、病院、水力発電等のプロジェクトについて、Public Private Partnership(以下、「PPP」)が活用されています。パキスタンにおけるPPP政策は、2007年に承認され、2010年にPublic Private Partnership Policyが閣議決定されました。その後、2017年3月31日にPublic Private Partnership Authority Act(PPPA法)が成立しています。同法では、PPPプロジェクト実施に際して、迅速性と透明性の確保、インフラ投資の推進、規制緩和等が規定されています。なお、州レベルにおいてもPPP規則が制定されています。

また執行監視機関として、財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、Infrastructure Project Development Facility(以下、「IPDF」)というPPPユニットが存在し、PPPプロジェクトの誘致、推進、監視機能を担っていましたが、2017年に解散し、PPPA法第25条に基づき、Public Private Partnership Authority(以下、「PPPA」)として、より大きな権限を与えられています(PPPA法第2章以下)。

同法において、公共部門はインフラサービスのニーズを特定し、国、州、地方の各部門に特化した政策を策定し、それらを監督し、PPPアジェンダを提供することになっています。他方、民間部門の投資家は、プロジェクトを特定し、構想・精査した上で実行し(PPPA法第13条2項)、入札書類やプロジェクト提案書を理事会の承認のために提出する(PPPA法第13条3項)等を担っています。投資家は、PPPAの承認後、PPP契約に基づいてプロジェクトを実施する必要があります。また、PPP契約については、第4章において記載必須事項が定められており、紛争解決規定については、当事者間の合意により自由に設定可能となっています(PPPA法第18条)。

なお、会計年度終了後、120日以内に、PPPAに対して、PPP契約の履行状況、進捗状況等を記載した年次報告書を提出する必要があるので、留意が必要です(PPPA法第28条)。

3     ネパールのPPP法制について

ネパールにおいては、特に1990年初頭から水資源を活用した水力発電等のインフラプロジェクトと電力輸出が国家的産業となっており、ネパール政府は民間投資を活用したプロジェクトのさらなる発展を期待しています。また、近年においては、水力発電や国際送電に加えて、道路、空港、市内公共交通整備プロジェクト等が進んでいます。

このような背景を踏まえ、1992年に水力発電、電力外国投資移転法(Hydropower Policy Electric Act, Foreign Investment & Technology Transer Act、2017年改正)、1999年に道路分野に関するBOT政策(BOT Ploicy on Road Sector)、2001年水力発電政策(Hydropower Development Policy)、公共インフラ、2001年BOT政策(Public Infrastructure Build Operate and Transfer Policy)、2003年民間インフラ投資に関する条例(Private Investment in Infrastructure Build and Operate Ordinance)、2006年インフラ整備・運営民間資金法(Private Financing in Build and Operation of infrastructure Act, BOOT Act)、民間投資法(Private Investments in Infrastructure Act)、2011年投資委員会法(Investment Board Act)、2018年電力規制委員会法(Electricity Regulation Commission Act)等が整備されています。

特に、2015年に閣議決定されたPublic Private Partnership Policy(以下、「PPP政策」)は、PPP契約に関する明確な規制枠組みとガイドラインの必要性を提示しています。また、ネパール財務省は、既存のインフラ整備・運営民間資金法に代わるPPP法案を作成し、2019年3月27日に遂にPPP法(Public Private Partnership Act)が成立。さらに2020年にPPP規則(Public-Private Partnership and Investment Regulations)が成立しています。

PPP法によれば、第2章において、PPPプロジェクトに関する実施監査委員会、その傘下のPPPユニット、投資ユニット、専門家ユニット等の機能、選任方法、等が明確に規定されています。また、第3章においては、PPPの種類(BT、BOT、BOOT、BTO、LOT、LBOT等)等、投資の承認実施手続き等について具体的に規定しています。さらに、第5章では、PPP契約の記載内容、実施や監視内容について規定しています。第6章では、投資家保護、恩典、用地や施設利用等について、規定がなされています。

       スリランカのPPP法制について 

 スリランカにおいては、膨大なインフラ需要がありますが、Public Private Partnership (以下、「PPP」)に関する法令は存在していません。直近では、2016年にスリランカ投資委員会(BOI)傘下のインフラ投資事務局内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整する機能を有しています。

また、スリランカ政府は成長戦略において、PPPを推進する意思表示をし、国内インフラへの国内外の民間投資を奨励しています。

実際に、民間投資家による携帯電話サービス、無線ローカル線システム、公衆電話ネットワークなどの電気通信サービス分野では、すでに事例が存在しています。また、水力発電システムから大規模発電所までの電力セクターへの投資や港湾セクター等への投資も行われており、インフラ投資の機会は、高速道路、公共交通、環境分野など多岐に渡って拡充してきています。今後、PPP 投資アプローチが広く利用されることが期待されるプロジェクトは、運輸、航空、酪農、観光、飲料水供給などといわれており、民間投資奨励のための規制緩和等が検討されています。

PPPプロジェクトは、Build-Own-Operate(BOO)、Build-Own-Transfer(BOT)、またはBuild-Own-Operate-Transfer(BOOT)等のスキームで実施されていることが多くなっています。

ただし、具体的なPPP政策や包括的な法律は制定されておらず、現時点に1998年に発布された民間セクター・インフラ・プロジェクトに関するガイドラインにおいて手続き等が少し触れられている程度であり、こちらが現在のPPPガイドラインに代わるものとして利用されており、個別の条件等は基本的には政府との交渉や契約によると考えられます。

当ガイドラインによれば、インフラプロジェクトに関連する調達プロセスは、民間事業者からの提案依頼書の発行から開始されます。もしくは、民間投資家がスリランカ政府の公募型プロジェクトに提案書を提出することも可能となっています。当該提案書は、インフラプロジェクトを所轄する委員会で評価、審査され、インフラプロジェクトの必要性を検討し、必要性が認められた場合において、その後、関係政府機関によって、公式に入札プロセスに入ることになり、スリランカの公共調達委員会が発行している公共調達マニュアル(Public Procurement Manual)に従って、手続きを進める必要があります。

 

以 上

[1]  https://ppi.worldbank.org/en/ppi

 

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2021年01月07日(木)11:04 AM

バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンにおける個人情報保護法のアップデートについてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおける個人情報保護法のアップデートについて

 

 

バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンにおける個人情報保護法のアップデート

2021年1月07日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

南アジアにおいても、近年、個人情報保護の対応に関する法規制が整備されつつあります。そのような状況を踏まえて、今回、バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ブータンの個人情報保護法の導入状況やアップデートを共有します。

1.   バングラデシュにおける個人情報保護法について

 現在時点(2021年1月)において、バングラデシュでは、個人情報の侵害に対する包括的な法的保護は存在していません。バングラデシュでは、国家のデジタルセキュリティを確保し、デジタル犯罪の特定、防止、抑止等に関する法律を制定することを目的とし、2018年に「デジタルセキュリティ法」[1]が成立しており、同法において違法な個人情報の収集及び使用についての罰則規定を設けています。

同法第 26 条は、ID情報の収集および使用に関連する犯罪を規定しています。第 26 条1項に基づき、本人の明示的な同意のないID情報の不正使用(ID情報の不正な収集、販売、所持、供給)は犯罪と定義されています。なお、同意の取得方法等の手続きについては、明確な規定は存在しません。同法に違反した場合、5 年を超えない期間の懲役または 50万タカの罰金、またはこれらが併科されます。そして、ここでいうID情報には、氏名、生年月日、父母の氏名、国籍、署名、国民ID、出生・死亡登録番号、指紋、パスポート番号、銀行口座番号、運転免許証、E-TIN番号、電子またはデジタル署名、ユーザー名、クレジットまたはデビットカード番号、声紋、網膜画像、虹彩画像、DNAプロファイルが含まれると規定されています。

2018年デジタルセキュリティ法の施行後、電気通信、電子商取引、フィンテック、銀行等の事業者は、第26条を遵守するためID情報を取り扱うにあたり、その個人から同意を得なければならなくなり、現地実務において大きな影響が生じました。また、バングラデシュ政府は、デジタルセキュリティ法第60条に基づき、この法律の目的を達成するための細則の策定作業を進めています[2]

 

2.  ネパールにおける個人情報保護法について

ネパール憲法は、基本的な人権として情報の保護とプライバシーの権利を規定しています。これらの権利を保護するため、2018年に個人プライバシー法(「プライバシー法」)が成立しました。このプライバシー法は、他国の個人情報保護法と異なり、個人情報の収集、保管、利用に関する規定だけでなく、全ての個人は、住居、財産、文書、データ、通信、性格に関するプライバシー権を有することを定め、法律で定められた場合を除き、その権利が侵されないことを定めています。

プライバシー法では、以下の情報を個人情報として詳細に定義しています。

(1) カースト、民族、出生、出自、宗教、肌の色または婚姻の有無。

(2) 学歴または学歴資格。

(3) 住所、電話番号、電子メールアドレス。

(4) パスポート、市民権証明書、国民IDカード番号、運転免許証、有権者IDカード、または公的機関が発行したIDカードの詳細。

(5) 個人情報の記載がある送受信された手紙

(6) 拇印、指紋、網膜、血液型、その他の生体情報

(7) 犯罪歴または犯罪行為または刑の服務のため課せられた刑の詳細

(8) 何らかの決定の過程で、専門家により表明された意見や見解

そして、法律で定める場合を除き、個人情報を収集することは禁止しています(プライバシー法第23条1項)。もっとも、調査、研究又は世論調査を目的とする場合、その目的などの一定事項を通知し、その個人の同意を得た上で、個人情報を収集することがでます(プライバシー法第23条2項~4項)。

また、プライバシー法で禁止されている行為を行った場合、懲役刑や罰金刑が科されます。

以上のとおり、ネパールのプライバシー法は、他国の個人情報保護法に比べ、プライバシー保護に重点を置いた法律であり、個人情報の利用については、調査、研究又は世論調査を目的として同意を得た場合に限定されています。ゆえに、一般企業による個人情報の利用の範囲が不明瞭といわざるを得ません。

 

3.  パキスタンにおける個人情報保護法について

 現時点(2021年1月)では、パキスタンにおいて、個人情報保護法等の包括的なデータ保に関する具体的な法律は存在していません。もっとも、2020年4月、パキスタンの情報技術通信省は、2020年パキスタン個人データ保護法草案(以下、「草案」)を発表しています[3]。この草案はまだパキスタン議会に提出されていないものの、今後、議会において可決されれば、大統領の同意を得て公布されることになります。

 

法案の主な内容は次の通りです[4]。草案によれば、個人情報保護法が施行されてから6か月以内に、政府はパキスタンの個人データ保護局を設立しなければならないと規定しており、同局は、データ主体の利益を保護すること、個人データの保護を確保すること、個人データの悪用を防止すること、データ保護に関する意識の向上を促進すること、苦情を受けるけること等の責任を負っています。

また、具体的な個人データの保護規定については、EU一般データ保護規則(GDPR)を踏襲しつつも、管理者及び処理者の登録制度などパキスタン独自の規定が置かれています。

まず、個人データについて、データ主体に直接または間接的に関連する情報であって、その情報から識別または識別可能なもの、または、データ管理者が保有する情報およびその他の情報から識別可能なものをいい、個人を特定できない匿名化されたデータや暗号化されたデータ、または仮名化されたデータは、個人データではないとしています。GDPRでは匿名化は不可逆的な処理が必要であるが、仮名化されたデータは個人を特定するために必要な情報と付き合わせれば個人を特定できるのでなお個人データとされているところ、パキスタンの草案では暗号化や仮名化された情報は個人データではないとしている点が特徴的といえます。

また、生体認証データや健康に関する情報、宗教などの機微情報だけでなく、アクセス制御に関するデータ(ユーザー名および/またはパスワード)、銀行口座、クレジットカード、デビットカード、その他の決済手段の詳細などの金融情報、パスポート情報を含めて「機密性の高い個人データ」と定義され、ほかの個人データとは区別している点も特徴的です。

さらに、GDPRと同様、個人データを取得・処理・開示するデータ管理者やデータ管理者にかわりデータを処理するデータ処理者についても規定されています。なお、草案では、個人データ保護局にデータ管理者とデータ処理者の登録制度を考案・策定する権限を与えているので、草案がそのまま法律として成立し施行されれば、データ管理者とデータ処理者の登録制度が導入される可能性が高いといえます。

データ管理者は、個人データの収集および処理について、データ対象者に書面による通知を行わなければなりません。加えて、個人データの取得・処理・開示については、原則として本人の同意が必要であり、同意は本人の希望を自由に与えられ、具体的で、十分な情報を提供された上で、かつ明確に意思表示されたものでなければなりません。なお、個人データの国外移転については、転送先の国においてパキスタンと同等の法的保護を受けることができることが要件となっていますが、転送にあたっての手続の詳細については法律で明記されていません。また、個人データが漏洩した場合など個人データの侵害があった場合、データ管理者は72時間以内に個人データ保護局に報告しなければなりません。

以上のとおり、パキスタンの草案は、GDPRを踏襲している部分が多く、その解釈にあたってはGDPRやそのガイドラインが参考になるといえるでしょう。

 

4.  スリランカにおける個人情報保護法について

現時点(2021年1月)では、スリランカにおいて、包括的な個人情報保護規定は存在していません。ただし、スリランカのデジタルインフラ・情報技術省は、2019年にデータ保護とサイバーセキュリティを管理するサイバーセキュリティ法案[5]と個人情報保護法案[6]の草案を作成しています。 これらの草案は、新たなサイバーセキュリティと個人情報の保護に関する問題に対処するための規制の枠組みを構築することを目的として起草されています。

サイバーセキュリティ法案は、サイバー攻撃から重要な情報や重要なサービスを守るために、スリランカ政府内に「サイバーセキュリティ機関」を設立することを規定しています。サイバーセキュリティ法案の直後に発表された個人データ保護法案は、個人情報を保護し、個人情報の処理を規制することを目的としており、憲法上の権利であるプライバシーの権利にも対応できる内容となっています。

(1)2019年スリランカ個人情報保護法案[7]

内容はほぼGDPRを踏襲しています。

例えば、データ主体について、名前、識別番号、位置情報、オンライン識別子、または自然人の身体的、生理学的、遺伝的、心理的、経済的、文化的、社会的アイデンティティに固有の1つ以上の要素を含むがこれらに限定されない識別子を参照することにより、直接的または間接的に識別可能な個人、と定義しており、データ主体及び個人データについてGDPRとほぼ同様の定義がなされています。

また、個人データを適法に取扱いできる場合や、センシティブデータの取扱い、同意取得の条件、国外移転、データ主体の権利、データ管理者およびデータ処理者の義務等についてGDPRとほぼ同じ内容となっています。

この法案において特徴的な点は、データ管理者が登録制である点です。データ管理者になろうとする者は、処理する個人データや個人データのカテゴリー、処理目的、開示先等を所定の様式に記載して個人情報保護局に申請し、登録料を支払ってデータ管理者の登録をしなければなりません。この登録は1年ごとに更新する必要があります。

また、ダイレクトマーケティングでの個人データの利用についても規定しており、データ主体から明確な同意があれば、エンドユーザーの個人データを利用して、インターネットや、電話でダイレクトマーケティングを行うことができる旨規定しています。

(2)2019年サイバーセキュリティ法案[8][9]

スリランカサイバーセキュリティ法案において、サイバーセキュリティ機関が設置される予定となっており、当機関には次のような機能が委ねられる予定となっています。具体的には、国家サイバーセキュリティ戦略、基準の策定、情報保護のための戦略と計画の策定、サイバーセキュリティに関する中心的な窓口機能等を果たすことが規定されています。

 

5.  ブータンにおける個人情報保護法について

現時点(2021年1月)では、ブータンには、個人またはその他の団体の個人データの保護に関する別途の統一的な法律は存在しません。しかしながら、ブータン政府は、2006年に制定された情報技術、通信及びメディアに関する規則を改正し、2018年1月8日に「情報通信及びメディアに関する法律(以下、「ICMA法」)を制定しています。同法は、データ保護、サイバーセキュリティや電波通信及びその他の関連分野に関する規定を定めたものです[10][11]。本法第17章では、オンラインまたはオフラインのプライバシーの保護に関する規定を置き、データ保護について具体的に定めています。

ICMA法は、すべての情報通信技術およびメディア・セクター、ならびにICTおよびメディア・サービスおよび施設の提供者およびユーザーに適用されます。すべてのICT・メディア設備およびサービス提供者は、プライバシーポリシーを策定し、個人情報(機密性の高い個人情報を含む)が収集または要求されるウェブサイトおよび場所に、当該方針を掲載しなければなりません。サービスプロバイダー、ベンダー、ICTまたはメディア施設は、適切で意図された目的のためにのみ、個人情報の収集、使用および保管を制限するものとします。利用者又は消費者からの申出があったときは、当該役務提供者は、その収集及び保存している情報を撤回又は削除する義務を負います[12][13]

サービスプロバイダー、ベンダー、ICT、またはメディア施設は、利用者や消費者の個人情報(機密性の高い個人情報を含む)を第三者に転送した場合であっても、引き続きそれらの個人情報に対する保護責任を負うと規定されています[14][15]

所有、管理、または運用するするコンピュータまたはネットワーク、データベースまたはソフトウェアにおいて、個人データ/情報(機密性の高い個人データ/情報を含む)を取り扱う者が、合理的なセキュリティの実施および保守を怠り、それにより個人に損害を与えた場合、その個人データの取扱者は、裁判所の決定に基づいて、生じた損害を被害者に賠償する責任を負います[16]

また、他人の個人データ/情報(機密情報を含む)にアクセスし、その者の同意なしに、または契約に違反して、その者に損害を与えるおそれがあることを意図しながら、または、知りながら、当該データ/情報を第三者に開示した者は、刑罰に処せられる旨規定されています[17]

 

                                         以 上

[1]https://www.cirt.gov.bd/wp-content/uploads/2018/12/Digital-Security-Act-2018-English-version.pdf

[2]https://www.thedailystar.net/opinion/human-rights/news/bangladesh-steps-the-data-protection-regime-1726351

 

[3]https://www.moitt.gov.pk/SiteImage/Downloads/Personal%20Data%20Protection%20Bill%202020%20Updated.pdf

[4]https://iclg.com/practice-areas/data-protection-laws-and-regulations/pakistan

 

[5]http://www.mdiit.gov.lk/images/Cyber_Security_Bill_2019-05-22_LD_Final_Version.pdf

[6]http://www.mdiit.gov.lk/images/Legal_framework_for_proposed_DP_Bill_11th_June_2019_-_revised_FINAL_ver3.pdf

[7]https://www.ikigailaw.com/new-era-of-data-protection-regulation-in-south-asia/

[8]https://www.cert.gov.lk/Downloads/Cyber_Security_Bill_2019-05-22_LD_Final_Version.pdf

[9]https://www.ikigailaw.com/new-era-of-data-protection-regulation-in-south-asia/

[10]https://www.nab.gov.bt/assets/uploads/docs/acts/2018/ICMActofBhutan2018.pdf

[11] APAC地域のデータ保護に関する論文

[12] ICMA法第337条

[13] ICMA法第339条及び第340条

[14] ICMA法第342条

[15] ICMA法第343条

[16] ICMA法第387条

[17] ICMA法第388条

 

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