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2020年11月14日(土)12:29 PM

ラオスにおける水力発電事業実施ガイドラインについてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの水力発電ガイドラインについて

 

ラオスにおける水力発電事業実施ガイドラインについて

                                   2020 年11月13日
                             One Asia Lawyersラオス事務所
1. 背景
 2018年7月にラオス南部のアッタプー県にある建設中のダムの決壊をきっかけに、ラオス政府は、外国から専門家を呼び、既存のものも含めて建設中のダムの建設基準、品質の監査を行うことになりました。同時に、政府による新規の水力発電プロジェクトの承認審査も保留となりました。一方で、「東南アジアのバッテリー」を目指しているラオスにとっては、ラオス国内の貧困削減というスローガンに基づき、水力発電を使用した、外資主導による近隣諸国への送電事業を推進しています。
  エネルギー・鉱山省は、今後も増加することが予想される水力発電事業に関して、その実施手順を明文化するために、2020年10月9日付で「水力発電事業実施における標準手続きに関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を発行しました。2020年11月3日に官報に掲載、15日後に施行されます。同ガイドラインは、376ページにも及ぶもので、ラオス政府の力の入れようが伺われます。
2. 標準手続き26項目について
ガイドラインでは、水力発電事業の実施事業者の選定から始まり、最終的に政府へ事業引き渡しまでのプロセスにおいて、その手順と課題について、26項目を定めています。。詳細や留意点については、今後アップデートして参ります。
【標準手続き26項目】
1 事業開発者及びプロジェクト主体の審査(ラオス政府による入札は除く)
2 MOUの精査及び承認
3 第1次事業実現可能性調査報告書の承認
4 社会・自然環境影響調査報告書(方法書)の承認
5 社会・自然環境影響評価の対象エリア及びアセス項目の設定に関する詳細な報告書の承認
6 MOUの期限延長について
7 MOUの解除について
8 事業開発契約書の精査及び承認
9 技術・財政面における事業実施可能性調査報告書の承認
10 社会・自然環境影響評報告書(評価書)の承認
11 国内電気料金に関するMOUの締結(電力購入者:ラオス電力公社(EDL))
12 海外送電事業における電気料金に関するMOUの締結(電力購入者:外国の企業)
13 ダム建設設計図の承認
14 社会及び自然環境開発に関する別添資料の承認
15 事業開発契約期限延長について
16 会社設立契約書締結
17 コンセッション契約精査及び承認
18 国内電力売買契約書締結
19 海外送電事業における電力売買契約締結
20 輸入材料リストの補正
21 外国人労働者受け入れ承認(クォーター制)
22 貯水量に関する承認
23 建設工事の監督と検査
24 事業の実施状況及び管理について
25 コンセッション契約の修正について
26 政府への事業譲渡について

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2020年10月16日(金)7:23 AM

海外インフラプロジェクトの法的留意点(アジア新興国のPPP制度)について記事をアップデート致します。

アジア新興国のPPP制度

 

 

海外インフラプロジェクトの法的留意点について

アジア新興国のPPP制度

2020 年10月16日

One Asia Lawyers

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

      • 1.執筆の背景

      前回の記事「海外インフラプロジェクトの法的留意点-アジア新興国編-」[1]にて述べた通り、全世界において、巨大なインフラニーズが存在している。世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[2]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、東南アジア、南アジア、中央アジアにおける案件が活発となっている。また、当Databaseによれば、鉄道、空港、港湾等のセクターと比較して、道路セクターが伸びており、日系企業もグリーンフィールド型、ブラウンフィールド型、運営維持管理業務型を問わず、案件数を増やしている。

      ただし、アジア新興国の傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張している。また予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見される。加えて、それらの地域においてCovid-19の影響は不可避であり、現在、当事務所で対応しているプロジェクトをみても、多くのプロジェクトの事前調査、入札手続き、契約交渉等が長期化したり、政府保証や不可抗力条項、政府補償条約等について一部契約の見直しが生じるような事態も生じており、契約交渉や締結に向けて困難な問題に直面しているという側面もある。

      上記の通り、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、特にアジア新興国においては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいる。上記で述べたリスクとバランスを取りながら、今後、さらに成長可能性が高いPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はアジア各地のPPP法制について比較し、特に重要な10か国の法規制について解説する。

      • 2.アジア各国におけるPPP法制

      1)総論

      前提として、PPPの法的な枠組みとしては、英米法(Common Law)体系か、大陸法(Civil Law)体系かによって、傾向が若干異なる側面がある。英米法体系の国家においては、当事者の一部が政府であったとしても、当事者意思を重視し、そもそも個別具体的な特定のPPP法が存在しない国もある。他方、大陸法系の多くの国々においては、PPP法が制定、または制定準備がなされており、入札手続等のプロセス、官民の権利義務、政府の役割、PPP契約記載事項や紛争時の処理方法等について、個別具体的に規律されている。とはいえ、下表の通り、英米法系の国であっても、最近の傾向としては、詳細なPPP関連法令を整備する国が多くなってきており、各国によってPPP関連法の整備状況は大きく異るといえる。

      なお、その他PPP法の存否に関わらず、公共調達法(Procurement Law、公共調達の方法やプロセス等を規律する方法)、公共財政管理法(Public Financial Management Law、プロジェクト認可基準、予算取得プロセス、財政上の制限事項等を規律する法律)等に加えて、前回の記事で紹介したような外資企業に対する投資規制、土地取得規制、税法、外国人労働規制等が問題となる。

      <東南アジア、南アジアのPPP法の一覧>

      国名

      法令の有無

      特徴

      タイ

      あり

      2019年3月11日施行

      十分に整備されている。内閣承認が必要となり、手続きが厳格

      ベトナム

      あり

       

      2020年にPPP法が国会で遂に可決

      2021年1月1日施行予定となっている

      カンボジア

      なし

      現在、経済財政相が草案を作成中。2021年中の制定を目標としている。

      ラオス

      なし

      PPP法草案

      現在、ラオス計画投資省が草案を公開している。2021年に制定される可能性あり

      ミャンマー

      なし

      PPP法は特に整備されておらず、個別法により対応

      シンガポール

      あり

      PPPガイドブック

      PPPガイドブックにおいて、政策方針と手続等の詳細が規定されている

       

      マレーシア

      あり

      2009年PPPガイドライン

      PPPガイドラインにおいて、PPPに適したプロジェクトの種類、入札を手続きや適格基準、運営モデル、プロジェクト承認のプロセスフローが明確化されている

      フィリピン

      あり

      1994年BOT法施行

      関連細則等十分に整備されている

      インドネシア

      あり

      2015年大統領令38号施行

      複数の法令が存在。

      改定が多く、複雑化している

       

      インド

      あり

      PPP法は存在しないが、PPPガイドライン等が整備されている

      財務省が基本政策を策定、各種ガイドラインやマニュアルを整備されているが、州毎にルールが異なるので、留意が必要

      バングラデシュ

      あり

      2015年PPP法

      2015年にPPP法が施行。PPP事務局が一括してガイドライン等を整備している。

       

      スリランカ

      あり

      PPPガイドライン

      2016年に財務省内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整機能が存在

       

      ネパール

      あり

      2015年PPPガイドライン

      PPP法草案が公開

      2015年のPPPポリシーとガイドラインによって、入札手続きやPPP契約の内容が明確化された

       

      パキスタン

      あり

      2010年PPPガイドライン

      州レベルでPPP規則が存在

      財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、中央PPP関連部署が存在。入札手順等について監督している。その他州レベルで、PPPユニットが設置された

       

      アフガニスタン

      あり

      2016年PPP法

      2016年にPPP法が成立。財務省にPPPユニットがあり、ガイドラインの作成、プロジェクト評価等を実施

      2)タイにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      周辺国と比較しても、タイは先行して、PPP法制を整備し、同法の法的枠組みに従ってプロジェクトを推進している。一般的にPPPスキームが浸透しているといえ、PPP法制定までは、インフラ投資は政府主導で行われてきたが、インフラ投資額は政府予算を越えており、さらに民間インフラ投資を呼び込む必要がある。タイにおいては、入札情報等が適切に公開されており、具体的には、国家経済社会開発委員会が準備するインフラ社会開発マスタープランにおいて、プロジェクトの目的、期限、想定総投資額等について記載されているが、それがPPP委員会で承認されると、民間事業者に公開される仕組みとなっており、適切かつ着実に実施がなされている。下記の通り、基本法やガイドライン等も比較的整備されており、事業参入において得に問題ないが、タイ国内企業の技術力等も年々向上しており、外資企業に関しては価格競争力の部分で劣勢に立たされることが多いといわれている。

      イ 法制度の概要

      タイにおいては、1992年にPPPに関する法律が成立しているが、その後、2013年の改正を経て、2019年3月10日に改正PPP法が成立し、11日から施行している。PPPの適用対象事業は、道路、鉄道、空港輸送、港湾、上下水道、エネルギー事業、病院、教育等の12項目が指定されており、いずれかに該当するインフラや公共サービスに関するPPPプロジェクトと定義されている。また、これらのプロジェクトに関して、50億バーツ以上の事業規模とする必要がある。なお、事業規模が未達であったとしても、PPP委員会が許可する場合は、例外として認められる可能性がある。

      PPPプロジェクト推進のためには、プロジェクトの具体的な内容を確定し、PPP法に従って、当局から承認を得る必要がある。プロジェクトを実施する政府機関は、コンサルタントを起用し、プロジェクトの調査報告書を作成し、所轄省庁の大臣に提出し、承認を得る必要がある。その上で、PPP委員会での承認と内閣からの承認を得る必要がある。なお、各審査期間については、PPP委員会が定める期間となっており、明確な期間規定は存在しない。

      その後、政府機関は事業者選定委員会を設置し、当委員会は、入札、選定、契約交渉、契約締結等の役割を負う。選定については、PPP法に従い、原則的に入札によって行われる(政府機関や内閣の承認がある場合は、その限りではない。)。選定業者との交渉が終了すると15日以内に、PPP契約ドラフトは検察庁に送付され、45日以内に審査を完了する必要があると規定されている。その後、所轄大臣に提出され、30日以内に審査を完了し、内閣にて審議される流れとなっている。

      以上が簡単なPPP法上の流れとなるが、タイにおいては内閣承認が必要となるため、比較的厳格な審査手続きが取られていると評価できる。

      3)ベトナムにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ベトナムのインフラプロジェクトは、主に政府予算によって行われており、そのため国債や地方債が発行されているが、必要投資額の半分程度であり、民間資金の導入が必須の状態である。また、対外債務比率も上昇しており、政府の意向として、今後さらにPPPプロジェクトを活発化させる可能性が高い。ただし、社会主義国ということもあり、どこまで民間(特に外資)に開放されるか、また運用について適切な対応がなされるかについて動向を注視する必要がある。なお、ベトナム計画投資省において、PPP関連情報が定期的に公開されている[3]

      イ 法制度の概要

      ベトナムの法制度上で「PPP」という文言が登場するのは今から10年前の2010年のことであり、当時はあくまで試験的なPPPプロジェクトに対して試験的に適用する規則という位置づけであった[4]。その後、2015年に政令化され、2018年に政令が全面改正されるなどして少しずつ法令の内容拡充が図られ、2020年6月18日にPPP法が可決され、2021年1月1日から施行予定となっている。今後さらにPPPプロジェクトに対する透明性の向上、不確実性の低減化が図られることが期待される。

      今回の主な改正点としては、投資対象が大きく統一的に整理されており、交通運輸、送電・発電、上下水道、ITインフラ等の規定のみとなっており、対象分野が限定されたといえる。また、契約類型としてBuild Transfer方式が削除されたこと、事業収益について、BOT、BTO、BOO方式のPPP事業収益が契約で定めた計画の75%を下回った場合、減収分の半分を政府が負担する保証制度(他方、PPP事業収益が計画の125%を上回った場合は、増益分を政府と投資家で折半する)が盛り込まれたこと、PPPプロジェクト契約は必ずベトナム法に準拠することなどが挙げられる。主な政令63号と新PPP法の相違は、下表の通りである。

       

      【PPP関連法令の概要比較】

       

      2018年政令

      63/2018/ND-CP)

      2020年PPP法

      制定年

      施行年

      2018年5月4日

      2018年6月19日

      2020年6月18日

      2021年1月1日

      「PPP方式の投資」の定義

      インフラ施設の建設、改造、運営、経営、管理、公共サービスを提供するために、所管国家機関、投資家、プロジェクト企業とで交わされるプロジェクト契約に基づき実現される投資形式

      (第3条1項)

      PPPプロジェクトへの民間投資家の参加を誘致することを目的に、国家と民間投資家のあいだで締結し、履行するPPPプロジェクト契約を通じた有期の協力に基づき実行される投資形式(第3条10項)

      対象

      a)交通運輸

      b)発電所、送電線

      c)公共照明システム、上水道システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、公園、自動車・車両・機械設備の駐車場・置き場、墓地

      d)国家機関庁舎、公務用住宅、社会住宅、再定住住宅

      đ)医療、教育・育成・職業訓練、文化、スポーツ、観光、科学技術・水文・気象、IT応用

      e) 商業インフラ、都市区・経済区・工業団地・産業クラスター・集中IT区インフラ、ハイテクインフラ、インキュベーション施設、技術施設、中小企業を支援するコワーキングエリア

      g) 農業・農村開発、農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス

      h) 首相が決定するその他分野

      (第4条)

      a)交通運輸

      b)送電網・発電所(水力発電所、電力法に基づき国が独占するケースを除く)

      c)利水、上水道、下水道、下水処理、廃棄物処理

      d)医療、教育・訓練

      đ)ITインフラ

      (第4条1項)

      PPP事業として認められる投資額

      規定無し

      (公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類)

      2,000億VND以上             (医療、教育・訓練は1,000億VND以上)

      (第4条2項a,b)

       

      国の参加比率

      規定無し

      インフラ整備・土地収用での国の資金拠出:総投資額の50%

      (第69条1項、2項)

      投資優遇

      投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

      プロジェクト用の輸入品:関税優遇

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

      投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇(第59条)

      投資家、プロジェクト企業:土地使用料、土地賃貸等に関する優遇、および税や土地、投資、その他関連法で定めるその他の優遇

      (第79条)

       

       

       

      4)カンボジアにおけるPPP法制

       

      ア 背景、状況 

      カンボジアにおけるPPP事業は、1990年代から存在し、発電所・空港の設立など相当数の実例が存在している。もっとも、政府の体制、法制度ともに未整備な状態であり、案件ごとにアドホックに、政府と民間のリスク分担なども曖昧なままなされており、投資リスクが高い状況であった。現に、特定の理由なく政府により中途で終了するプロジェクトもあり、PPP投資の障害となっていた。カンボジア政府としてもかかる問題点を認識しており、状況を改善するため、2016年にPPP制度の整備のためのPPPポリシーを策定するとともに、PPPについての包括的な意思決定機関として経済財務省(MEF)主催の省庁横断議会(IMC)を設立した。そして、2017年に、IMCの事務局としてMEFにCentral PPP Unit (CPU)を設置した。さらに現在、MEF主導のもと、PPP法の草案作成が進んでおり、2021年中の制定を予定しているとのことである。また、PPPプロジェクトの手続・手順・要件、各機関の責任や意思決定機関などの詳細を定める標準手順書(SOP)を作成しており、PPP法の制定後速やかに政令として公布することを予定している。

      イ 法制度の概要

      カンボジアにおいて、従来、部分的には2007年コンセッション法や1994年投資法などを適用し、法令が存在しない事項については個別の調整・交渉などにより決定がされてきた。上記で述べたPPP法およびこれに基づく政令による投資の条件や手続き、政府と民間のリスク分担などの透明化・公平化が待たれる。

      5)ラオスにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきており、2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[5]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、PPPに期待する声が高まっている。ただ、ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっている。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられるが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっている。

      イ 法制度の概要

      ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があり、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけている。

      2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっており、2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態である。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれており、同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえる。同法では、PPPの定義、PPPの事業形態、PPPの方式、PPP入札の流れ(下表)等が規定されている。

       

      <PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れ(草案)>

      手続き

      責任者

      初期提案書の作成・提出

      実施政府機関

      初期提案書の検討 (20日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

      民間セクター

      発案書の検討(15日以内)

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

      実施政府機関または民間セクター

      FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

      官民連携推進委員会(計画投資省)

      (国民議会等の承認必要)

      FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

      実施政府機関または民間セクター

      入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

      実施政府機関及び官民連携推進委員会

      入札管理委員会の選定

      財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

      6)ミャンマーにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      近年、ミャンマーにおいて日系企業からはODAのみならず、PPPプロジェクトの実施について多く相談を受けており、著者の感覚として、日系企業のミャンマーでのインフラプロジェクトに関する関心は極めて高い。しかしながら、PPP法制度等の整備は進んでおらず、過去監督機関との交渉や方針転換によりリスクが顕在化したようなケースがあり、特にリスクマネジメントについて十分に考慮する必要がある。そのような状況でも、近年、道路分野等では、民間企業へのBOTプロジェクト等が行われており、徐々にPPPプロジェクトの実績が生じている。また、ミャンマー計画財務省において、PPPプロジェクトを管轄する部署が組成されており、今後のPPP法制度整備や組織体制の拡充が期待される。

      イ 法制度の概要

      ミャンマーにおいては、統一的なPPP法は整備されておらず、公共調達法等の個別法により処理される状態である。計画財務省に照会した限りでは、特段PPP法の整備に対する具体的な動きはないようであるが、民間投資によるインフラ整備、投資については、監督当局内部でも関心が高まっているとのことである。

      7)フィリピンにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      フィリピンでは、1990年にBOT法(後述)が成立する以前の1989年に、同国では初めてとなるBOT(Build-Operate-Transfer)契約がNational Power CorporationおよびHopewell Energy Management Ltd社との間で締結され、ナボタスにおける発電所の建設・操業に関する官民連携プロジェクトが実施された。このように、フィリピンは、PPP分野においてはASEAN諸国では比較的に先行した動きを見せており、インフラ整備は重要な国家課題として位置付けられてきた。しかし、今日におけるフィリピンのインフラ整備状況は世界的に見ても低水準にあり[6]、インフラの未整備が問題点として長く指摘されている。そのような状況下、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領はインフラ向け支出を拡大し、「ビルド・ビルド・ビルド」と呼ばれる大規模なインフラ整備計画[7]を推し進めることで、投資環境の整備や雇用創出、国民所得の向上など一層の経済成長の実現を目指している。PPCセンターによる公表では、2010年以降のPPP件数は41件となっている(2019年4月30日時点)[8]

      イ 法制度の概要

      フィリピンでは、1990年にASEAN諸国では初めてとなる民活インフラ事業の法的枠組みを定めた共和国法6957号BOT法(Build-Operate and Transfer Law, Republic Act No.6957。1994年に共和国法7718号により一部改正された。以下、「改正BOT法」)および同法の実施細則(Implementing Rules and Regulations of R.A. No. 6957 as amended by R.A. No. 7718。以下、「改正BOT法実施細則」といい、改正BOT法とあわせて「改正BOT法等」)が整備されている。また、改正BOT法等を補完するガイドラインとして、国家経済開発庁(National Economic and Development Agency:NEDA)の傘下にあるPPPセンター(PPP Center)より、国家事業マニュアル(PPP Manual for NGAs)、地方事業マニュアル(PPP Manual for LGUs)、セクター毎のガイドライン等が公表されており、また、NEDOからもPPP事業に関するガイドブックが多く発行されている。PPPを主管する政府組織はNEDO傘下にあるPPPセンターであり、PPPセンターは、プロジェクト案件の発掘、実施、管理・モニタリング、地方政府組織を含むプロジェクト実施主体の能力開発・工場など、広くPPPを推進する役割を担っている。

      PPP入札手続については、政府調達改革法(Government Procurement Act, Republic Act No. 9184)が政府機関による物品・サービスの入札プロセスに関するルールを定めている。その他、通行権取得法(Right of Way Acquisition Act, Republic Act No.10572)、下級裁判所による仮処分命令の発行を禁止することで政府インフラプロジェクトの実施・完了を迅速化する法律(Expeditious Implementation and Completion of Government Infrastructure Projects by Prohibiting Lower Courts from Issuing Temporary Restraining Orders, Republic Act No. 8975)、大統領府令432-05号による合弁契約に関するガイドライン(Guidelines on Joint Venture Agreements, Executive Order 432, series 2005)、大統領府令78-12号による全てのPPPおよび合弁事業におけるADRの活用(Use of Alternative Dispute Resolution Mechanisms in all PPP and JV Projects, Executive Order 78, series 2012)など、PPPを推進するために制定された法令・ガイドラインが数多く存する。

      なお、PPP事業が公営事業の管理・運営(operation of public utility)に関わる場合は、1991年外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)および現行の第11次ネガティブリストに基づき、外資保有の上限が40%に制限されており、この点は注意が必要となる。

      改正BOT法等では、PPPの対象事業として、各種交通(道路、鉄道、港、空港など)、電力、通信、ICTシステム・設備、農業、運河・ダム・灌漑、上下水、観光・教育・健康施設など、公共インフラとして通常想定されうる事業セクターが広く含められている。なお、電力については、2001年に成立した産業改革法(Electric Power Industry Reform Act: EPIRA)によって国営電力公社(NPC)の民営化や電力市場の自由化が進められてきた関係から、PPTの対象事業として取り扱われるか否かが法的に必ずしも明確に整理されていないとの指摘があるものの、改正BOT法等ではPPPの対象事業として電力が含まれており、実際にPPPスキームによる電力プロジェクトの検討および実施がなされている。

      対象事業は、政府提案型(Solicited Proposal)と民間提案型(Unsolicited Proposal)に分類され、それぞれ事業および事業者の選定の取扱いが異なる。また、公共側の事業実施主体に応じて、国家事業(政府機関や国営企業による実施)と地方事業(地方政府による実施)に分類される。PPP事業は開発および承認(事業選定)、調達(入札)および実施というフェーズに大別される。まず、事業選定フェーズでは、実効性評価や民間事業者からの意見聴取・交換(マーケット。サウンディング)などを経て案件形成されたパイプラインプロジェクトについて、関連承認機関に対する提案および評価・審査がおこなわれ、NEDAに設置された投資調整委員会(Investment Coordination Committee of the NEDA Board:ICC)または大統領を議長としたNEDA理事会によって承認される(下表参照)。PPP事業の入札は、改正BOT法等のほか、政府調達改革法および政府調達委員会(GPPB)作成のガイドラインに基づき実施される。そして、実施フェーズへと移行し、PPT事業契約を締結(金融機関による融資の最終合意も含む)のうえプロジェクト計画に基づき事業が実施される。

      政府提案型

      国家事業:事業総額が3憶ペソ以下の場合は投資委員会(ICC)による承認が必要とされ、事業総額が3億ペソを超える場合はNEDA理事会の承認が必要となる。

      地方事業:原則として地方議会の承認によって事業選定がおこなわれるが、事業総額が2憶ペソを超える場合はICCによる承認が必要となる。

      承認期限は、承認審査条件が充足した日より30営業日以内とされている。なお、政府提案型の入札実施期間については、具体的な日数・期限は示されていない。

      民間提案型

       

      ICCおよび関係承認機関が審査をおこない承認する。民間事業者による提案後、ICCおよび承認機関による審査を経て入札前の承認がなされるまでの所要期間については、期限の明示がないもの(Open Date)もあり、1年超を要する可能性がある。

      また、入札においては、原提案者以外の者による競合提案を募集し(入札図書公表から60営業日以内)、比較評価のうえ、より優れた事業者を選定する「スイスチャレンジ方式」が採用されている。このスイスチャレンジも含めて、入札所要期間は少なくとも4カ月程度は要する。

      8)インドネシアにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドネシアでは、政府の財源不足によってインフラ投資が十分に行われない期間が、長期間続いたため、特に都市部での交通渋滞をみても明らかな通り、インフラ整備が相当遅れている状態である。複雑ではあるが、PPP法も整備されており、今後の首都移転プロジェクトと関連インフラ整備との関係でもPPPプロジェクトが増加すると考える。また、インドネシアにおいては、国営企業が多く存在しており、国営企業の民営化の進展にも注目されるが、反対も根強く進展速度は緩やかなものになると想定される。なお、政府側の事情による事業計画の変更や遅延等も多く、留意が必要である。

      イ 法制度の概要

      PPPに関する法制度は、ヨドユノ政権下で制定されたPPPに関する大統領令 2005 年第 67 号 が基本的な事項を定めていたところ、 2015年にPPPに関する大統領令2015年38号が制定され、対象セクター範囲が拡大されるとともに、後述のアヴェイラビリティ・ペイメントが導入された。2005年の大統領令は、2015年の大統領令により廃止されたが、2015年大統領令に反しない限りでその実施細則は有効とされている。具体的な内容は以下のとおりである。

      (ア)PPPの定義

      まず、インドネシアにおけるPPPとは、一般的にPPPに関する大統領令に基づき実施される事業を指す。このPPPの実効性確保のため、上記大統領令では「政府保証」及び「政府支援」について規定している。「政府保証」は後述のIndonesia Infrastructure Guarantee Fund(以下、「IIGF」という)を通して、政府契約機関(Government Contracting Agency(GCA))による契約の履行を保証する制度である。「政府支援」はインドネシア政府による「財産的支援」及び「その他の形態による支援」を指し、「財産的支援」には後述のViability Gap Funding(VGF)が含まれる。なお、インドネシアにおいては、上記大統領令に基づくPPPとは別に、公共事業に対する民間開放が行われていることに注意を要する。これらについては、各セクターが個別の法令を規定している。

      (イ)IIGF(Indonesia Infrastructure Guarantee Fund)

      財務省は100%出資して2009年末にIIGFを設立した。IIGFは、PPP 事業において、政府契約機関(GCA)の契約履行を保証しており、民間事業者のリスクを軽減している。 前述のPPP以外の各セクターの官民連携案件においては、政府保証が政府による Support Letter やConfirmation Note といった形態であったため、その内容が必ずしも明確とは言えなかった。IIGFが設立されたことで、民間事業者は、IIGFとの保証内容の協議を通じて保障内容を明確にする形で保証契約を締結することができるようになった。

      (ウ)VGF(Viability Gap Funding)

      VGFは、財務省から供与される PPP 事業に対する財政的支援である。社会的な利益は大きいにも関わらず事業採算性の低い案件に対して、財務省が建設費の一部を支援することにより、PPP 事業としての成立を支援することを目的としている。VGはPPP事業における建設費の一部を中央政府予算から拠出するものであり、現金で供与される。 VGFは、社会的な便益と事業採算性とのギャップを埋めるものであるが、あくまで当該案件の建設費総額の主要(Dominant)な部分を占めない水準とされている

      (エ)アヴェイラビリティ・ペイメント(Availability Payment)

      アヴェイラビリティ・ペイメントは、前述の大統領2015年38 号で新たに導入された制度である。所定の品質でインフラサービス提供される場合に、その対価として、GCAから民間業者に定額の支払を約束する制度である。これにより民間企業者適切な投資リターンを見込んでPPP事業へ参画することを企図している。

      なお、GCAはアヴェイラビリティ・ペイメントについて民間事業者と契約をするが、当該契約の履行保証については、前述のIIGFを利用することになる。他方で、中央政府がGCAとなるアヴェイラビリティ・ペイメントが利用される案件では、前述のVGFを使用することはできない点に注意が必要である。なお、地方政府がGCAになる案件では、アヴェイラビリティ・ペイメントとVGFの併用が可能となっている。

      (オ)事業者選定方法

      PPP 案件における事業者選定は原則、公募入札方式(Public Tender)で行われる。しかしPPP に関する大統規則2015 年3号により、例外的に直接指名 (Direct Appointment)の可能性についても規定された。 すなわち、対象事業が特定条件(対象となるインフラが既に当該事業者により運転されている場合、当該技術を提供できるのが当該事業者のみの場合、当該事業者が事業に必要な土地を概ねまたは完全にコントロールしている場合)を満たす場合、または、事前資格審査をした結果、通貨事業者が1グループのみの場合には、事業者を直接指名することができる。

      実務上は、最初に公募による事前資格審査が行われ、通過事業者が2グループ以上の場合は原則通り公募入札方式で選定が行われ、通過事業者が1グループのみだった場合には直接指名手続に進むことが認められている。

       

      9)インドにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      インドは、世界でもっとも多くのPPP事例が存在しており、特に道路と空港セクターを中心に一般的に浸透している。モディ政権下においても積極的にPPPプロジェクトの活用が図られている。ただし、州レベルの規制やガイドライン等に基づき、運用が行われており、統一的なPPP法制度がなく、州レベルのローカルルールや恣意的な運用により、外資が参入することは困難なことが多いといわれている。また、政府や監督省庁による計画変更や事業遅延等も生じていることに加えて、現地企業との価格競争を踏まえると、外資企業のプロジェクト推進については困難なことが多いと評価できる。

      イ 法制度の概要

      インドにおいて、連邦政府レベルで統一的なPPP法は存在していない。基本的には、財務省が基本政策を策定し、各種ガイドラインやマニュアルを整備している。具体的には、以下に示す一定の規則、手続き、マニュアル等が整備されている。PPPプロジェクトにおける事前資格基準、調達プロセス、調達者と入札予定者との間の契約事項などについて規定を定めている。

      • 2017年一般的財務規則 (General Financial Rules, 2017)
      • 1978年財務権限委譲規則(Delegation of Financial Powers Rules, 1978)
      • 2017年物品公共調達規則(Manual for Procurement of Goods, 2017)
      • 中央監察委員会ガイダンス(Central Vigilance Commission Guideline)

      その他、個別に①高速道路、②上下水道、③港湾、④廃棄物管理、⑤都市交通の5つのセクターに特化した規則等が存在している。その上で、州政府が個別具体的な政令や規則等を策定し、運用を行っている。また、州レベルの法制度の整備状況は州ごとに異なっており、公共インフラへの民間投資を含むインフラに関する法的枠組みを明確に規律している主な州は以下の通りである。

       

      法規定 

      Andhra Pradesh

      The Andhra Pradesh Infrastructure Development Enabling Act 2001

      Bihar

      The Bihar Infrastructure Development Enabling Act 2006

      Gujarat

      Gujarat Infrastructure Development Act 1999 amended in 2006

      Haryana

      Haryana PPP Policy

      Karnataka

      The Karnataka Infrastructure Policy 2007 amended in 2015 and Guidelines for Procurement of PPP Projects through the Swiss Challenge Proposals Route, 2010

      Punjab

      The Punjab Infrastructure Development and Regulation Act 2002

      Tamil Nadu

      Tamil Nadu Infrastructure Development Act, 2002

      Uttar Pradesh

      Uttar Pradesh Infrastructure and Industrial Investment Policy, 2012

      West Bengal

      The West Bengal Policy on Infrastructure Development through PPP 2003

       

      インドでのPPPにおいては、Public Private Partnership Approval Committee (PPPAC、「PPP評価委員会」)が、その中核を担っている。PPP評価委員会は、内閣経済委員会(CCEA)傘下の中央省庁/中央公共セクター事業(CPU)/法定当局またはその管理下にある事業体から構成されている。PPPAC評価委員会発行のプロジェクト査定・評価・承認のための手順[9]は次の通りである。

       

      ①監督機関は、PPPにおいて実施されるプロジェクトを策定し、適切な資格を持ったコンサルタントの支援を得て、フィジビリティ・スタディとプロジェクト契約の準備を行う必要がある。

      ②必要に応じて、監督機関で議論した内容をPPP評価委員会へ提出するプロジェクト提案書に添付する必要がある。

      ③PPP評価委員会の承認のために、行政庁は、フィジビリティ・スタディ報告書とともに、所定のフォーマットで作成されたプロジェクト提案書を提出する必要がある。

      ④ PPP評価委員会は、提出された書類を関係省庁に展開し、3週間以内に関係省庁との会合を開き、プロジェクトの原則的承認の可否を決定する。

      ⑤原則承認後、行政省は資格審査(RFQ)を提出し、資格のある入札者をリストアップすることが可能となる。そして、提案要請書とすべての契約書の草案を作成する必要がある。

      ⑥最終的な承認を得るため、事前に指定されたフォーマットで作成された提案書をPPP評価委員会に送り、PPP評価委員会の全メンバーの審査を受ける。

      ⑦Niti Aayog(政策委員会)、法律省、およびその他の関係省庁は、意見書をPPP評価委員会に送り、その意見書は行政省に転送される。

      ⑧PPP評価委員会の審査のために、PPP評価委員会の覚書付きの調達書類と契約書の全てを提出する必要がある。

      ⑩PPP評価委員会は、関係当局の最終承認を得るためにプロジェクトを推薦するか、または、PPP評価委員会で更検討するために、行政省にプロジェクトの修正の再提出を提案する。

      ⑪PPP評価委員会の承認後、最終承認のため、監督機関に最終プロジェクトを付託する必要がある。

       

      なお、PPP契約書の作成に際して、以下の条項を必ず記載する必要があるので、注意が必要である。

      ①契約日とコンセッション期限

      ②民間事業者の義務、権利や制限(提供されるサービスと履行義務の説明を含む)

      ③公的主体の義務と権利、プロジェクト収入スキームと支払方法等

      ④履行監視のための要件と手続きや不履行時の処理方法

      ⑤紛争解決規定、不可抗力等の標準条項

       

      10)バングラデシュにおけるPPP法制

      ア 背景、状況

      バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしている。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表し、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されている。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインを制定し、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設置されている。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されている。そして、2015年9月16日には、バングラデシュ初のPPP法が成立している。

       

      イ 法制度の概要

      PPP法は、全49条から構成される。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドラインの策定の責任を負っている。また投資家の手続き上の負担を低減化するために、関連文書のサンプルを作成し、提供することもその義務となっている。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されている。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関する規定が存在している。特に第17条では、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されている。ただし、規定自体は非常に簡単な内容となっており、今後の細則等の発表が待たれる。

      また、PPP法第19条では、民間事業者の選定方法、第22条では、当事者間の合意に際して、プロジェクト会社の設立要件や方法等が明記されており、第24条および第25条は、汚職および利益相反に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されている。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある条項が明示されている。

       

      1. 最後に

      新興アジアにおけるインフラ需要は膨大である。ただし、PPPプロジェクトを成功させるためには、PPPプロジェクトが実現可能な環境を整備することが不可欠である。その意味では、PPPプロジェクトを促進するための政策、法的、制度的枠組みの設計や強化等といった政府のアクションが絶対的に必須である。アジア新興国において、上記で述べた通り、2010年に入り、徐々にPPP法制度の制定やPPPガイドラインを策定やPPP専門部署を設置が進んでいることが確認できたのではないだろうか。しかしながら、リスクマネジメントの観点からは、制度等の拡充等のともに、財政的支援や保険制度等の整備が次のステージでは必要となってくるのは間違いない。次回は、アジア新興国におけるPPPプロジェクトの潜在的なリスクマネジメントに対する対応策や偶発債務の管理方法等への対案を検討するため、先進国におけるPPPプロジェクト事例を整理紹介し、アジア新興国でのPPPプロジェクトに活かしていきたい。

以上

本記事やご相談に関するご照会は、以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

 

2020年10月12日(月)2:43 PM

ラオスにおける模造品対策についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの模造品対策について

 

ラオスにおける模造品対策について

2020 年10月9日

One Asia Lawyers ラオス事務所

ラオスは、自国生産可能な物品等が少なく、日用品をはじめ、食品、電気機器、バイク、車、建設資材等に至るまで、多くの商品が隣国のタイ、ベトナム、中国などから輸入されている状態です。特に、模造品であっても、廉価なため購入することに抵抗を感じる人は少ないといった状態です。他方、数年前において、ラオスにおいて大手企業の飲料メーカーの模造品がラオス国内に出回り、模倣品を取り扱う業者に対して、知的財産権の侵害に基づき刑罰が科せられた事例も出てきております。

こうした知的財産分野の法整備がさらに進めば、日系企業のラオスでの事業展開や事業進出も容易になるのではないかと感じます。

ラオスにおいて、知的財産権を監督する科学技術省知的財産局が主催する知的財産フェアーでは、模造品と本物の判別の仕方など紹介することで、消費者に啓蒙活動を行うなど「経済社会を持続的に発展させるために、まずは知的財産について知るところから始めよう!」と呼びかけています。今回は、企業の知的財産権が侵害されたときの対応について、法的な視点から基本的な情報を共有致します。

 

1.模造品防止に関する法律は?

 

模造品の流通禁止に関する法令は、次のような法律が存在しております。

(1)2010年6月30日付 消費者保護法(第02号/国会)

※商工業省の消費者保護に対する責任や消費者保護の観点から商工業省の権能について規定しています。

(2)2017年5月17日付 刑法典(第26号/国会)

※知的財産権に関連して他人に損害を与えた者に対する禁固刑/罰金刑等が明示されております。

※模倣品等を製造、販売した者に対する禁固刑/罰金刑等が明示されております。

(3)2017年11月15日付 知的財産法(第38号/国会)

※商標権を侵害する商品を販売し、広告又は輸入または輸出する行為を規制しています。

(4)2018年12月6日付 民法典(第55号/国会)

※不法行為に関する一般規定が規定されています。

 

2.模造品の被害に遭った場合の救済措置の方法は?

 

ラオスにおける模倣品対策の対応については、調停的措置、行政的措置と法的措置の三つの方法が存在しております。ラオスの実務においては、まずは調停的な措置をまずは取った上で改善されない場合に行政措置を取り、それでも解決しない場合に法的措置を取るといったことが一般的です。

 

 

調停的措置

行政的

実施内容

模造品販売者と直接面談、和解交渉行う

実施当局が迅速に模造品を押収

実施機関

・MOIC(郡レベル)

・村役場(村長)

・科学技術省知的財産局(IPD)

・治安維持省

メリット

・実施が容易

・低コスト

・特別対策チームが編成される

(警察、財務省などがメンバー)

デメリット

・一時的な措置となり、一定の期間が過ぎると模造品に関する被害が繰り返される傾向にある

・組織構築に1か月から3か月程度の時間が生ずる

・高コスト

 

 3.調停的措置と実施行政機関

 

調停的措置については、①村役場による調停、②商工業省による調停、指導があります。①については、村長に要請書を提出し、村長を調停人として、村役場で当事者による交渉の場を設けることができます。しかしながら、実際には、模造品販売業者は、警告書を無視して、村長が招集する会議に参加しないことが多くあります。また、②商工業省(MOIC)による調停や指導は、MOIC内の国内貿易局に通知することになります。彼らの機能は、消費者を模造品被害から保護することが主な役割となりますので、違反業者に対する指導等により模造品の販売を停止させることができることがあります。

 

4行政的措置/法的措置と実施行政機関

 

知的財産法に基づき、科学技術省知的財産局が監督行政機関となり、科学技術大臣の特命決定に従い、治安維持省(警察)、財務省、および関連する当局をメンバーとした、特別な対策チームが編成されます。同チームは、警察もメンバーに入っているため、模造品を直ちに差押え、場合によっては現行犯逮捕も可能です。このような措置をとることで、ほかの模造品販売店への警告となる効果がありますが、チームの組織化にかかる費用はすべて、依頼者が負担する必要がありますので、相当の費用と時間がかかるため、実際に利用されるケースは多くありません。

 

また、知的財産法に基づき、民事訴訟と刑事訴訟の両方を行うことができます。実務上は、刑事事件として警察の捜査を受けると同時に、不法行為法に基づく民事事件として損害賠償を請求することが一般的です。なお、上記3または4の措置を経ていない場合、裁判所自体を受理しないことが多いため、留意が必要です。また、原告が警察に被害届を提出する等の刑事告訴も可能ですが、過去の経験上、相当の時間を要します。

 

 5.その他(税関による水際措置)

その他知的財産法に基づき、模造品を輸入販売している会社に対して、明確な証拠がある場合、税関が模造品の輸入を一時的に差し止めることが可能となっています。過去、何件か水際措置に関する判例が存在しております。

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

2020年09月23日(水)3:25 PM

ラオスにおける担保制度についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの担保制度について

 

ラオスにおける担保制度について

2020 年9月23日

One Asia Lawyers ラオス事務所

 

1.担保権を規定する法令

ラオスにおける担保権については、契約履行担保法に規定されています。2020年5月に新民法典(以下、民法)が施行され、一部の条項は民法の中に集約されました。但し、一部契約履行担保法の効果が継続していると思われる箇所もありますが、今回は、新民法に基づいたラオスの担保制度について解説いたします。

2. 物的担保制度について

民法第521条によれば、①動産に対する担保、②不動産に担保、③権利に対する担保が法定されており、動産、不動産や特定の権利について、担保設定が可能となっています。

<担保設定可能な動産、不動産、権利一覧表>

対象物

内容

登記の要否

動産

・貴重品

・機械

・乗用車

・倉庫にある商品又は生産に使用する原材料

・農作物

・消費財

・契約当事者が合意するその他の動産等

財務関連機関で登録

不動産

・個人、法人又は組織の土地使用権

・(コンドミニアム/アパート)のユニット所有権、構造物、例えば、家、ビル、建物など

・関連する法律または契約の定めに基づく、賃貸借契約または土地コンセッション契約上の財産

郡の天然資源環境事務所にて登録

権利

・売掛債権

・譲渡性のある金融証券

・銀行預金

・知的財産権

・契約当事者が合意するその他の権利

特に定めなし

 

担保設定契約は、必ず書面である必要があり、主たる契約書に含めることも、別途担保契約を作成してもよいと定められています。また、対象契約は、公証役人又は村長から認証を受け、かつ、証人の署名が必要となる点に留意が必要です(民法第557 条)。契約履行担保法では、少なくても3名の証人の署名が必要と規定されていましたが、民法では、証人の人数についての規定は削除されています。

なお、不動産担保は、土地が存在する郡に所在する天然資源環境事務所での登記、動産に対する担保は財務関連機関で登録が必要となります(民法第562条)。

また、担保契約は、関連する機関にて登記したのちに正式に有効となります(契約履行担保法第31条)。担保を有する債権者は、担保を有さない他の債権者、又は、その物に関して自己より後に担保を有した債権者に先んじて、優先的に弁済を受けることができると規定されています(民法第524条)。

3.人的担保制度について

民法第 558 条によれば、保証契約は、合意に従い保証人の責任の範囲等設定可能と規定されています。但し、保証人は元本のみを返済する義務を負っています。民法第559条では、保証人を複数設定する共同保証制度が定められておます。連帯保証に関しては、内容を確認する限り、タイやカンボジアで設定されているような特殊な制限や規制(タイは個人の場合、そもそも連帯保証が無効、カンボジアの場合、連帯保証人に連帯保証額を手書きで記載させないと無効等)は特になく、自由に設定可能と解釈できます。

以 上

 

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
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2020年08月31日(月)2:48 PM

ラオスにおける土地法の改正内容についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスの土地法の改正について

 

ラオスの土地法の改正について

2020 年8月31日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

ラオスにおける土地法は1997年に成立していますが、その後、2003 年に一部改正されています。近年、外国企業によるラオスへの投資が増加する一方で、ラオス国内での紛争が増加しております。ラオス裁判所のデータによると、事件数は2017年23,690件から2018年26,809件に増加しております。その中でも、当社のラオス法弁護士によれば、不動産に関連する紛争が増加傾向であるとのコメントを得ております。特に、不動産開発事業者の開発プロジェクトが途中で頓挫する等で、不動産やコンドミニアム等の購入者に対する損害が生じるような事象が社会問題化しています。また、今回の改正においては、2020年5月に施行された民法典(特に所有権、地役権、地上権、担保権)と整合性を取ることも一つの改正の目的となっています。このような事情から、土地法の改正は喫緊の課題でありました。約6年の月日をかけて改正に取り組んでいましたが、ついに2019年6月21日に国会にて承認され、2020年8月12日に官報に掲載されました。官報掲載日(8月12日)から15日後に施行しています。

 

改正土地法は、全188条から構成されており、その半数以上が新規条文となっており、画期的な内容となっています。そのため、外国人投資家にも大きな影響が生じると考えておりますので、段階的にその内容を紹介して参りたいと思っています。但し、いくつかの改正内容については、意味が曖昧であったり、趣旨が不明確であるものも散見されます。そのため、当局に数度確認しておりますが、明確な回答が得られない点もありますので、当局の見解のフォローや具体的な手続き等についても今後時間をかけて調査して参りたいと考えています。

 

今回は、改正の中でも外国投資や外国企業に主に影響を与えうる外国人や外国法人による土地のリース規制、外国人の土地使用権の利用やコンドミニアムに関する規制等を中心に解説いたします。

 

  • 2.外国人の土地使用権について

下記(改正前)の表のとおり、旧法においては「外国人(※脚注を参照)」でも、いわゆる投資目的でラオスに住んでいる外国人は、他の「外国人」とは異なる土地のリース期間が設定されていました。今回の改正により、下記(改正前)の表の灰色の部分が削除され、全ての「外国人」が同じ条件に統一されています。また、2018年に投資奨励法が改正され、コンセッションの期間が99年から50年に短縮されたこともあり、その整合性を取るために、政府から土地をコンセッションして開発する経済特別区域の場合には、75年から50年に改正されています(第118条、第120条)。

 

<改正前>

賃貸人

賃借人

制限

ラオス政府

※削除

外国人居住者[1]もしくは無国籍者[2]、または、それらによる団体

30年を超えない範囲で、活動の方式・規模・条件に応じて設定可能

なお、政府の承認に基づいて延長可能

ラオス国民

※削除

20年を超えない範囲で設定可能

なお、当該土地を所轄する県または首都の役所の承認の下、契約者双方の合意に基づき延長が可能

ラオス政府

ラオス人民民主共和国内において投資を行う外国人

50年を超えない範囲で、活動やプロジェクトの方式・規模・条件に応じて設定可能

なお、政府との合意に基づいて延長が可能

ラオス国民

30年を超えない範囲で、活動やプロジェクトの方式・規模・条件に応じて設定可能

なお、県または首都の役所の申請によって、天然資源環境省土地管理局の承認が得られれば、契約者双方の合意に基づいて延長が可能

経済特定区域および経済特別区域

※削除

土地の賃借や免許権取得は75年を超えない範囲で設定可能

なお、国民議会の承認に基づいて延長が可能

 

<改正後>

賃貸人

賃借人

制限

ラオス政府

(土地コンセッションを含む)

 

外国人居住者、無国籍者、外国人[3]、外国籍のラオス人または、それらによる団体

50年を超えない範囲で、活動の方式・規模・条件に応じて設定可能。

なお、プロジェクト/活動の評価及び政府又は地方自治体の承認のもと、政府又は国民議会の合意に従い延長可能(120条)。

賃借者に対して政府土地権原書発行される(119条)。

 

ラオス国民

 

外国人居住者、無国籍者、外国人、外国籍のラオス人およびそれらによる団体

30年を超えない範囲で設定可能

なお、地方自治体、天然資源環境課の合意のもと、村役場および公証役場、土地を管轄する郡の天然資源環境事務所の認証を得れれば、賃貸期間を延長することが可能(117条)。

 

ラオス政府

各国の大使館や国際機関

 

99年を超えない範囲で、政府同士、ラオス政府と国際機関の合意に基づいて設定可能

なお、外務省からの要請に基づき、天然資源環境省及び関連する地方自治体との協議により延長可能(120条)。

 

  • 3.コンドミニアムに関する規定

ラオスにおいては、前述の通り、コンドミニアムの開発や建設等が続いていますが、今までコンドミニアム開発や区分所有権に関する規定は存在しておりませんでした。このたび、改正土地法第4条29項において、「コンドミニアム」の概念がラオスにおいて、はじめて定義されています。その定義は「事業者がコンドミニアム建設用地として政府に対象の土地を登録し、政府よりコンドミニアム建設許可が得られた複数の部屋を有する高層の建築物」とし、その登記及び購入に関して、下記のとおり定めております。

 

  • (1)コンドミニアム事業者の要件

 

コンドミニアムを建設しようとする国内外の個人又は法人の事業者(以下、「ディベロッパー」)は、以下の許可証を関連する省庁より取得する必要があると規定されています。

 

ア コンドミニアム業事業許可(許可取得元:計画投資省ワンストップサービス)

イ 建設許可(許可取得元:公共事業運輸局)

ウ コンドミニアム建設用地の土地の登録(許可取得元:県レベルの天然資源環境課)

 

上記以外については、その他周辺国でみられるようなエスクロー規制やコンドミニアム開発事業者に対する詳細かつ厳格な要件は確認できておりません。また、ウの建設用地の登録に関しては、県レベルの天然資源管理省は、申請書を受理後、10営業日以内に完了しなければならないと規定されています(第108条)。建設用地が政府の分譲地であったり、個人や法人からリースした土地である場合、登録上の名義は、賃貸人の保持する土地権原書の保有者の名義となるため、事業者やディベロッパーの名称では、登録できないため、留意が必要となっています(第108条)。

 

(2)コンドミニアムの土地の使用権及びユニットの所有権

 

今回の改正において、ラオスにおいてはじめて、いわゆる区分所有権に関する規定が第132条に定められております。ポイントとしては、コンドミニアムのユニット購入者がラオス国籍者である場合、コンドミニアムの土地面積に対するユニットの面積の割合に従って、分譲される土地の使用権(いわゆる、日本でいう敷地利用権)と契約に基づき購入したユニットの所有権を保有することができます。一方、外国人や外国法人が購入した場合、上記のいわゆる敷地利用権は、外国人に対して付与されないと規定されており、注意が必要です。つまり、敷地利用権を取得することができないため、コンドミニアムが滅失等した場合において、どのような処理となるのか等、別途検討が必要となります。また管理組合の設置等についても言及がないため、今後の細則の整備等の動向に注視が必要です。なお、コンドミニアムのユニット所有者は、天然資源環境課において、所有権の登録を行うことになりますが、また詳細な手続きについては明確に定められていない状態であり、今後フォローを行っていきたいと思います。

 

.      土地権原書の発行について

 

不動産へ投資する際に重要となる土地権原書については、今までは県レベルの土地管理局より発行されていましたが、今後は手続きの迅速化を図るため、土地が存在する場所により近い管理組織である郡レベルの天然資源環境事務所より発行されることになっております(第170条)。

また、コンピューター上で管理された国家土地データベースに一般市民がアクセスできるシステムを導入することが規定されており、導入が非常に楽しみであります(第91条)。

 

なお、投資家やディベロッパーが、旧土地法を準拠として土地に関する契約を政府と締結している場合、その契約期間が満了するまで、これまでの条件で契約を継続することができると規定されています(第188条)。

以 上

[1] ラオス国籍以外の国籍を保有し、ラオス国内に居を構えて長期的に滞在している外国人

[2] ラオス領土内に暮らしている国籍を持たない外国人

[3] ラオス国籍以外の国籍を保有し、ある任務のため、契約に基づき、もしくは期限付きで、一時的ないし長期的に滞在している外国人

 

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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
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2020年07月01日(水)3:22 PM

ラオスのPPP法草案の概要について報告いたします

PPP法草案について

 

ラオスのPPP法草案の概要について

2020 年6月28日

One Asia Lawyersラオス事務所

インフラ輸出プラクティスチーム

  • 背景

アジアにおいては、インフラ整備の充実、加速が課題となっており、そのためには巨大な資本の投下が必要となっています。特に、ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきました。2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[1]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、官民連携プロジェクト(Public Private Partnership、以下、「PPP事業」)に期待する声が高まっています。

 

ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっています。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられますが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっています。

 

例えば、株式会社JALUXと豊田通商株式会社は、ラオス政府と運営事業契約を締結し、1994年から約20年間にわたり、ラオス現地法人「Lao-Japan Airport Terminal Services Co., Ltd.」の運営に携わっています。これは、日本企業が海外において取り組む初の空港ターミナル運営民営化プロジェクトとなっています[2]。同プロジェクトでは、日本企業の持つノウハウにより、空港管理・運営がなされ、ラオス政府に対する円借款により、国際線ターミナルの拡張と国内線ターミナルの新設、駐車場の整備を行い、機能が強化されています。

 

また、PPP発電事業の例としては、2006年から関西電力株式会社がラオス政府から独占開発権を取得して実施しているナムニアップ水力発電プロジェクトがあります。現地法人「ナムニアップ1パワーカンパニー」が2013年にラオス政府と27年間の売電及び事業権契約を締結し、一定期間管理・運営を行って資金を回収した後、公共側に施設を譲渡する方式をとっています[3]

特に、電力発電に関しては、官民連携のモデルケースとして成功している実績があり、ラオス政府としては、その成功体験を、電力分野のみならず、公共施設の維持管理、医療分野、教育分野等においても実現させたいという思惑があります。

 

ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があります。同法では、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけています(2019年1月10日付けネガティブ事業及びコンセッション事業リストの承認に関する首相令(No03))

2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっています。2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態です。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれています。同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえます。

  • コンセッション事業の中のPPP

前提として、投資奨励法(2017年4月施行)では、コンセッション事業を以下のように定義しています。

 

【第 41 条 コンセッション事業 】

コンセッション事業とは、あるビジネスの開発と推進のために、投資家が政府から法律に基づき運営許可を受けた事業である。たとえば土地コンセッション、SEZ・輸出加工工業区 開発、鉱山採掘、電力エネルギー開発、航空業、通信事業などがある。コンセッション事業リストは政府によって規定される。

 

政府は、下記の表のとおり7分野23業種をコンセッション事業と定めています。コンセッション事業上の政府が奨励する分野に該当すれば、土地利用の外資規制や税制の恩典が得られる可能性があります。

 

【コンセッション事業リスト】

No

分野(業種の数)

1

農業・林業(4業種)

 

植林・果樹栽培のための国土のコンセッション(天然ゴムを除く)

 

灌木、食糧、工芸作物、生薬その他の栽培のための国土のリース/コンセッション

 

畜産のための国土のリース/コンセッション など

2

鉱業・採石(3業種)

 

鉱物採掘と加工、原油とガスの調査採掘 など

3

電力エネルギー(2業種)

 

特定の電力生産事業(水力、石炭、風力、太陽光、廃棄物、その他)

 

送電コンセッション など

4

PPP事業(1業種)

5

経済特区開発(1業種)

6

事業のための政府の土地リース又はコンセッション(5業種)

 

インフラ開発、公益事業、建物の建設、サービスのための国土のリースコンセッション(例えば:ショッピングセンター、ホテル、ゲストハウス、レストラン、公園、学校、病院、市場、運輸ステーション など)

 

国家・地方レベルの自然、文化、歴史観光地開発

 

スポーツのための国土コンセッション/リース など

7

国の所有権を利用した様々なサービス事業(7業種)

 

空港の建設と地上サービス、取水、上水の生産、水道の供給

 

輸送事業(ロジスティック、ドライポート など)

 

有線・無線通信事業、衛星通信事業 など

 

  • PPPの定義

投資奨励法、コンセッション事業リスト及び現在草案中のPPP法の中では、PPP事業を「事業価値のある新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス関連事業」と定義しているのみで、分野や必要資本額等は限定されていません。一般的には、PPPの中にコンセッションが含まれることが多いですが、ラオスの場合は、上記の通り、コンセッション事業リストの中にPPPが含まれるので、少し特殊な体系といえると考えます。

 

  • PPP事業の形態

一般的に政府主導型及び民間提案型の二つの形態に分けられますが、PPP法草案では、以下の通り定義されています。

 

(1) 政府による直接連携

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、民間セクターと連携してプロジェクト開発のために政府が直接投資する形態を意味しています。

 

また、日系企業のラオス政府との合弁又は国営企業への出資に際して、国営企業と民間企業との相違が問題となります。この点、ラオスにおける国営企業の定義は次の通りです。会社法上の国営企業の定義は、政府が50%以上資金を投資している企業または、他の形態の企業が全会一致で国のものとなった企業を意味すると規定されています(会社法第196条)。

 

国営企業と民間企業との一番の相違は、取締役会の議長が、政府の職員である必要があり、会社に常駐することが義務づけられている点にあります(会社法第199条)。一般的に、財務省の国営企業管理局が会社の重役を選任する役割を担っているといわれています。それ以外は大きな相違はないと理解しておりますが、会社法上は、国営企業の機能に関する詳細が明示されておりません。なお、別途規定する細則が存在していますが、現行の会社法が改正される前の会社法(2005年)を根拠としたものであり、それに取って代わる細則は現時点では、発行されていない状況です。

 

(2) 民間による直接投資

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、プロジェクトの経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、政府のプロジェクト開発において、民間セクターが投資の全責任を持つかたちで参入し、政府から支援を受ける投資形態を意味します。

 

  • PPPの方式

PPP法草案では、下記の各方式について、次の通り、Design Build Finance Operate (DBFO)、Design Build Operate (DBO)、Build Operate Transfer (BOT)、Build Own Operate Transfer (BOOT)、Build Own Operate (BOO)、Build Transfer Operate (BTO)、Build Lease Transfer (BLT)、Build Transfer (BT)、Operate and Maintenance (O&M)といった方法が明示されています。

 

  • PPPの準備、検討及び入札

同草案によれば、PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れは以下の通りです。

手続き

責任者

初期提案書の作成・提出

実施政府機関

初期提案書の検討 (20日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

民間セクター

発案書の検討(15日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

実施政府機関または民間セクター

FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

官民連携推進委員会(計画投資省)

(国民議会等の承認必要)

FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

実施政府機関または民間セクター

入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

実施政府機関及び官民連携推進委員会

入札管理委員会の選定

財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

 

  • PPP契約書とその内容

計画投資省は、実施政府機関と協力して、プロジェクトの開発者として選定された民間セクターとPPP契約書の内容について協議することになっています。入札における落札後、30日以内に契約書を完成させる必要があります。

ワンストップサービス室はPPP契約草案とプロジェクトの詳細を民間連携推進委員会へ提案します。草案を修正する必要がある場合は、計画投資省は、同委員会が規定する期間内で、実施政府機関及び民間セクターと協議して、草案を修正及び変更します。

 

また、PPP契約書の基本的な記載事項は次の通りと定められています。なお、PPP法及びその他ラオスの法令に違反しない限り、上記以外で必要な条件を追加で規定することが可能です。

(1)プロジェクトの範囲及び業務内容

(2)契約当事者と事業主体者の責任

(3)各当事者のプロジェクトのリスクに対する責任

(4)民間セクターの関税及び税金の納税義務

(5)土地使用権、プロジェクト実施地へのアクセス及び便宜について

(6)技術、品質、安全面に関する実務規定

(7)建設期間、事業開始日、ビジネス及び維持管理

(8)財政、保証、精算及び契約不履行の場合の罰則規定

(9)契約書の単価の再検討、修正

(10)プロジェクトに問題が起こった時の政府及び民間の立ち入り検査をする権利

(11)契約書の再検討、修正及び変更

(12)技術面を含めたプロジェクトの範囲及び業務内容の条件変更

(13)プロジェクト追跡調査及び報告

(14)予備費に関する計画

(15)紛争解決

(16)契約期間

(17)準拠法

(18)プロジェクト管理

 

  • PPP契約締結のプロセス

同草案によれば、契約締結までの手順は、以下の通りとなっています。

 

  • 県・ヴィエンチャン都の計画投資課は、政府及び地方自治から契約締結の許可を取得します。
  • ワンストップサービス室は、政府及び地方自治体から契約締結の許可を取得後5日以内に、書面にて実施政府機関と民間セクターに対して通知を出します。
  • 民間セクターが通知を受け取った後、15日以内にワンストップサービス室へPPP会社[4]設立の許可申請を行います。
  • 政府の代表である県・ヴィエンチャン都の計画投資課とPPP会社の代表である民間セクターは、契約締結が許可された後、30日以内に署名式を行う必要があります。

 

以上のように、PPP草案においては、今まで不明確であったPPPプロジェクトの実施プロセスについて明示された点について評価できると考えます。今後のPPP草案の修正や施行予定等については未定ではありますが、引き続き状況を注視していく必要があると考えます。

 

                                             以 上

[1] file:///C:/Users/Windows%2010/Downloads/8th_NSEDP_2016-2020.pdf

[2] 豊田通商株式会社HPより引用(https://www.toyotatsusho.com/press/detail/180809_004232.html

[3] 関西電力株式会社HPより引用(https://www.kepco.co.jp/corporate/international/generate/laos.html

[4] PPP事業を実施するためにラオスの法令に則って入札により選定された法人又は法人グループにより設立された会社

 

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2020年07月01日(水)12:45 PM

ラオスにおける電気通信・インターネット利用者保護について報告いたします

電気通信・ネット利用者保護について

 

 

 

ラオスにおける電気通信・インターネット利用者保護について

 

2020 年6月25日

 One Asia Lawyers ラオス事務所

  • 背景

ラオスにおいては、電気通信法(2011年)及び消費者保護法(2010年)が存在していますが、電話及びインターネット等の利用者の保護に関する具体的な規定はありませんでした。ラオスでは、2004年ぐらいからタイ系資本とラオス政府の合弁会社であるラオ・テレコム(LTC)と国営のラオス電気通信公社(ETL)がインターネット接続サービスを開始しています。移動電話に関しては、主にLTC、ETL、ベトナム資本のUnitel、Beeline Lao(LTCの傘下となる予定)の4社がサービスを提供しています。各社サービスの質にもばらつきがありますが、ネット接続スピードの不安定性、データ使用量に見合わない料金を請求されるなど、問題も出てきているようです。今回、電気通信・インターネット利用者保護に関する大臣合意が郵便電気通信省より発行され、2020年5月25日に官報に掲載、15日後に施行されています。その概要をご紹介します。

 

  • 営業電話等の規制

ラオスでは、営業目的で電話をかけてくる通信関連業者は少ないですが、限度を超えると迷惑行為とみなされます(同合意第8条)。時間帯及び回数に対する制限が以下の通り、規定されています。

 

1.月曜日から金曜、8時から17時まで、営業目的の電話又は通信関連の広告をショートメッセージサービスにて(SMS)配信することを禁止する

2.営業電話又はSMS配信は、消費者一人につき、月に10回までとする

3.1日3回以上の営業電話又はSMS配信を禁止する

4.商品やサービスを宣伝する目的で電話又はSMS配信する必要があるものは、電気通信会社より許可を取得する必要がある

 

利用者相談窓口の設置

政府は、インターネットサービス、通信に関する商品[1]、迷惑電話等に困っている消費者に対して相談窓口を設置しております。

 

1.電気通信会社に直接相談する

2.県・ヴィエンチャン都の郵便電気通信課に直接相談する

3.電話相談窓口は、商工業省(1510)、首相府事務所(1516)及び国民議会(156)の3か所で受け付けています。

4.インターネットで相談する場合:www.Icp.gov.la (商工業省)

 

通信関連サービス業者が自社の商品・サービス等にクレームを受けた場合、7営業日以内に解決し、両者の側の立会人を含めた署名付きの覚書を交わす必要があります。なお、消費者が相談したにも関わらず、問題が解決されない場合、県・ヴィエンチャン都の郵便電気通信課へ解決を要請することが可能となっています。

 

 

[1] 電話及びネットSIMカード、固定電話・移動電話回線システム、ネットサービス、プリペイドカード等を指します。

                                             以 上

 

 

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2020年06月09日(火)10:01 AM

ラオスにおける投資家の経歴証明審査について報告いたします

経歴証明審査について

 

投資家の経歴証明審査について

2020 年 6 月 8 日
One Asia Lawyers ラオス事務所

2019 年 2 月 1 日から施行されている「 企 業 登 録 に 関 す る 合 意(No.0023)」の中では、
会社設立時の必要書類は、原則、①企業登録申請書 ②事業内容表明書、 ③会社設立契約書
のみと規定されています。

しかしながら、実際は、企業登録時に、投資家の経歴証明を治安維持省へ提出し、その結果
(いわゆる、ブラックリスト審査)をもって、企業登録が完了するという手続きがなされて
いました。

ブラックリスト審査の結果を取得するまでには、最短で3か月、時には半年から1年間待たせ
られることもありました。政府による企業登録方法の簡略化が進む一方で、同審査に関して
は、これまで何ら方針が示されてこなかったため、企業登録にかかる日数は、実質的には何
も変わっておらず、政府の推し進める投資環境改善の足枷になっていました。

このような状況において、ようやく、2020年6月2日に商工業省より、新規で会社を設立する
場合、企業登録書を取得した後に、投資家1の経歴書を治安維持省へ提出する手順へと変更
するとの通知がありました。

治安維持省は、ブラックリスト審査を通過しなかった投資家に対してのみ、商工業省へその
理由を通知します。

なお、既存の会社においては、企業登録内容(投資家情報)に変更がある場合、これまでどお
り、治安維持省へ新しい投資家の経歴書を提出します。その結果を取得後に、企業登録証の発
行元において、企業登録情報の変更手続きを開始することが可能ですので、ご留意下さい。


以 上

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2020年06月05日(金)1:24 PM

ラオスにおける会社更生手続きの概要について報告いたします

会社更生手続きの概要について

 

ラオスにおける会社更生手続きの概要

2020 年 6 月 5 日
One Asia Lawyers ラオス事務所
藪本 雄登
内野 里美

ラオスにおける会社更生については、1994 年の破産法において、債権者又は債務者が破産申し立てを行った後に、裁判所に対し提案する 3 つの選択肢(①会社更生手続き、②事業売却手続き、③破産清算手続き)の中の一つとして規定されていました。今回の改正により、債務者等が会社更生申し立てを行うことが可能となったため、法令名も「会社更生及び破産法」と改題され(以下、改正破産法)、2020 年 5 月 25 日に官報に掲載、15 日後に施行される予定になっております。なお、同法は、商業銀行、預金型マイクロファイナンス金融機関及び保険会社については、適用の対象範囲外となっております。

1 会社更生手続きの申立について

会社更生を、裁判所に対して申し立てるための資格を有する主体は、次の通りです。
(1) 財政面において窮地の状態に直面しており、支払いの期限が到来した債務を返済することが
できない企業、又は破産の状況にはまだ陥っていないものの、近い将来、財政面において窮地
の状態に直面し、債務を返済することができないことが予測される企業
(2) 上記(1)の状況にある企業が、会社更生及び破産の申し立てを行っていない場合、その企業
の議決権を行使することができる株主で、全決議権の最低 20%以上を有する株主の代表
(3) 財政面において困難な状況にあり、債務返済不能に陥った組合の組合員
なお、当該組合員は、全組合員の 5 分の 1 を代表すること
なお、債権者、労働者、労働組合等から裁判所に通じて、破産申し立てを受けた企業は、答弁
書の中で、会社更生の請求を行うことが可能となっています(改正破産法第 8 条)。
また、会社更生の申し立てを受けた人民地方裁判所(各県+ヴィエンチャン都に 1 か所)の商事
部は、直ちに申し立ての審理を行う必要があると規定しています。


2 更生開始決定

裁判所は、申立書受理後、5 日以内に、債権者及び債務者に対し、債務に関する証拠書類等を提
出するよう通知を出します。裁判所からの通知を受理後、15 日以内に、債権者と債務者は、債
権整理に必要な書類を提出する必要があります。裁判官が、これらの書類を受理して、15 日以
内に検討し、会社更生を実行する合理的な理由があると判断した場合、申立を受理し、会社更
生の開始決定を行います(改正破産法第 17 条)。
その場合、債務者保護の観点から、債権者、契約締結者及びその他関係者は、裁判所の許可な
く、債務者又は債務者の財産に対して、過去に実施してきたもの、今後実施されるものも含め
訴訟手続、財産の占有、押収などの法的な行為は停止する必要があります。(改正破産法第 18 条、いわゆる Automatic Stay といわれる措置となります。)。

3 管財人の選任

会社更生開始後、裁判所は、管財人名簿に基づき、管財人を選任します。1 回目の債権者集会に
おいて管財人が承認されたのち、管財人は、債務者及び債権者の要請により、更生計画を作成
します。

4 更生計画案の作成・提出

債権者集会において決議された会社更生に関する決議書を裁判所が承認後、90 日以内に、債務
者及び/又は管財人は、更生計画案を裁判所及び、債権者集会に提出する必要があります(改正
破産法第 47 条)。更生計画の実施期間は、3 年を超えない範囲で実行されます(改正破産法第 53
条)。

5 更生計画案の承認

更生計画案は、債権者集会において承認されなければなりません(改正破産法第 49 条)。その承認の要件は、次の通りとなっています。


(1)総債権額の 2/3 以上を有する債権者又は債権者代理人の過半数以上の賛成
(2)賛成者の中には、有担保債権者と無担保債権者の両方がいること

なお、債権者集会において承認後、その結果を裁判所に報告し、裁判所は、その内容を承認し
た後、会社更生計画実施命令を通知します(改正破産法第 50 条)。

6 会社更生手続の終了

裁判所は、申し立てした会社が、更生計画実施期間終了までに、更生計画の実施がされたと判
断した場合は、会社更生手続の終了を決定し、同時に管財人の任務も終了します。他方、更生
計画実施期間中に、会社更生計画の実施が不完全と判断された場合、破産又は、債権者、管財
人に要請により、会社更生計画の修正又は継続を宣告します(改正破産法第 57 条)。
ただし、更生期間中において、裁判所が再生できないと判断した場合は、いつでも破産宣告を
行うことができます(改正破産法第 57 条)
なお、中小規模・零細企業に関する会社更生についても、同法の中で別途規定されています
(改正破産法第 58 条から 74 条)。こちらは別途ニュースレターにて、改めて解説する予定にし
ております。

以 上

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satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

 

2020年05月19日(火)10:22 AM

ラオスにおける警備業について報告いたします

警備業について

 

ラオスにおける警備業について

2020 年 5 月 18 日
One Asia Lawyers ラオス事務所
藪本 雄登
内野 里美

1. 新首相令の背景

現在ヴィエンチャン市内には、数社の警備会社がありますが、配属された警備員の問題行動(遅刻、窃盗、怠慢等)が生じるケースがあると聞いており、警備会社及び警備員をどこまで信用できるのかわからないという声が聞こえてきます。警備業は、その業務の性質上、治安維持省及びラオス人民革命党の指導の下、業務を行う必要があるため、実務上、外国人の参入が 困難である分野であると認識されていました。そのような状況の中、今回、2020 年 3 月 2 日付けで「警備業に関する首相令(以下、「首相令」)」が発行されています。5 月 6 日に官 報に掲載され、15 日後の 5 月 21 日より施行される予定となっています。その内容を確認 する限り、外資規制は存在するものの、外国人の参入も可能であることが明文化されました。
その背景には外資を活用したラオス国内の警備業のサービスレベルの向上を実現するための措置ではないかと予想します。本ニュースレターでは、首相令の内容を踏まえ、警備会社に関する各種規制を解説致します。

2. 法律上の定義規定

首相令第 2 条によれば、警備業とは、 「ネガティブ事業リスト内の業種に該当し、個人、法人及び組織に対して、安全、治安、規律に関するサービスを提供することを任務として設立された法人」と定義されます 
また、①その他関連法令については、国家治安維持法(2013 年)の中で、警備業に関する具体的な記載はなく、②2019 年 1 月 10 日付「ネガティブ事業及びコンセッション事業リストの承認に関する首相令(No03/PM)の中で、ネガティブ事業として規定されています。 つまり、外国人の投資が禁止されているわけではありませんが、登録資本金や会社の形態等、 投資条件が規定されています。

3. 登録資本、外資規制及びその他制限

首相令第 7 条によれば、警備業について最低資本金及び外資規制が次の通り、明示されています。

(1)最低登録資本金は、10 億キープ(約 1,300 万円)以上とされており、預託金として、5 億キープ以上を銀行へ預ける必要があると規定されています。
(2)外国人は、最大 49%までしか株式を保有することができないと明示されています。
(3)会社名は、「Security(ຮັ ກສາຄວາມປອດໄພ)」を記入する必要があります。
(4)ラオスで出生したラオス国籍が Managing Director 又は取締役会議長である必要があります。
(5)外国人の場合、個人での会社設立は求められません。
(6)外国人との合弁会社の場合、外国人投資家(株主)は、10 年以上の警備関連の経験が必要です。
(7)ラオスの治安維持当局が株主ではない場合、警察官をアドバイザーとする必要があります。
(8)会社設立後、すぐに事業活動を開始、6 か月以内に、無線局を設置する必要があります。
(9)会社設立後 1 年後には、顧客との契約件数が 5 件以上、スタッフの数は最低 20 名以上、3 年後には 100 人以上雇用する必要があります。 その他細々とした規制がありますが、ご関心のある方は以下までお問い合わせください。

 なお、同首相令に違反した場合、管轄当局から許可なく事業を行った場合など、最大で 70,000,000 キープ(約 75万円)の罰金が科せられる場合もありますので、ご留意ください(同首相令第 70 条)。 

以 上

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