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2021年03月03日(水)11:33 AM

日本における会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)の施行についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)の施行について

 

日本:会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)の施行について

2021年3月3日

One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia
パートナー弁護士 古田 雄哉
同 江副  哲
同 栗田 哲郎

1.はじめに

 令和元年12月4日に成立し、同11日に交付された会社法の一部を改正する法律の一部(株主総会資料の電子提供制度を除いた部分)が令和3年3月1日から施行されます。 

 令和3年3月1日から施行される内容としては、①株主総会における株主提案権の制限、②取締役の報酬に関する規律の見直し、③役員等のための会社補償、D&O保険に関する手続規定の新設、④上場会社等における社外取締役設置の義務化、⑤株式交付制度の創設等があります。

本稿においては、今回の改正点について解説します。

2.株主総会における株主提案権の制限

 株主は、株主総会において議案を提出することができます(法304条)。そして、株主(取締役会設置会社においては議決権の1%または300個(公開会社では6ヶ月間)を保有する株主)は、取締役に対し、株主総会の日の8週間前(定款で引き下げ可)までに、提出しようとする議案の要領を株主に通知するよう請求することができます(法305条1項)。

 従前は、この“要領通知請求権”について特に個数の上限はありませんでした。そのため、一部の株主により多数の要領通知請求がなされ、会社のコスト負担や運営上の負担の増加が問題視されていました(濫用的株主提案)。

 そこで新法では、取締役会設置会社の株主が要領通知請求をする場合において、当該株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときは、10を超える数に相当することとなる数の議案については要領通知をすることを要しないとされました(改正後法305条4項)。なお、どれを10を超えるものとするかは、取締役が決めることとされていますが、株主が優先順位を定めていた場合はこれに従うことになります(改正後法305条5項)。

3.取締役の報酬に関する規律の見直し

 取締役の報酬については、定款で定めがない場合は株主総会の決議でこれを定めることとされていますが(法361条1項)、個々の取締役ごとに報酬額を定める必要は無く、取締役全員に対する報酬の総額のみを定め、各取締役の報酬については取締役会設置会社においては取締役会に一任することが一般的でした。

 この点、今回の改正では、上場会社等(①公開会社でありかつ大会社である監査役会設置会社であって、金融商品取引法第24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を提出している会社②監査等委員会設置会社)においては、定款又は株主総会決議で個々の取締役の報酬の定めをしていない場合、取締役会において取締役個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定める必要があるとされました(改正法361条7項)。

 これまでは、取締役会で代表取締役に再一任して代表取締役が報酬を決定するということも多く行われてきましたが、この決定方針は事業報告で開示をすることが必要とされており(規則121条6号)、恣意的な報酬決定に一定の歯止めがかかり、経営の透明化に資することが期待されています。

 当該規制が該当する会社については、次の株主総会で報酬についての議案が上程される場合はこの決定方針の説明をすることが求められますので、早急な対応が必要になります。

4.役員等のための会社補償、役員等賠償責任保険(D&O保険)に関する手続規定の新設

 会社補償とは、役員等がその職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任のある追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用や、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における損失の全部又は一部を会社が当該役員等に対して補償することをいいます。そしてこのような場合に備えて加入するのがD&O保険です。

これまでの会社法では条文上規定がなかったものが、今般の改正で明文化されることになりました。

 ⑴ 会社補償契約について

 会社補償契約をするには、取締役会設置会社においては取締役会決議によっておこなう(非設置会社は株主総会)こととされました(法430条の2第1項柱書)。なお、補償契約に基づき補償を受けた取締役は、遅滞なく取締役会に報告をすることとされています(同条4項)。

  補償契約によって補償される費用は以下とされています(同条1項1号2号)。

   ① 当該役員等が職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、
    又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
    ※ただし、通常要する費用を超える部分は補償なし(同条2項1号)。

   ② 当該役員等が職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における
    賠償金または和解金
    ※ただし、悪意重過失がある場合は除く(同条2項3号)。    

 ⑵ 役員等賠償責任保険(D&O保険)契約について

 また、株式会社が役員等賠償責任保険を契約するにあたっては、その内容の決定は株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の決議によらなければならないとされました(改正法430条の3)。

 ここでいう役員等賠償責任保険とは、株式会社が保険者との間で締結する保険契約のうち、役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が店舗することを約するものであって、役員等を被保険者とするものをいうとされています。ただし、当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるもの(自動車保険等)は除くとされています。

5.上場会社等における社外取締役設置の義務化

 公開会社であり、かつ大会社である監査役会設置会社であって金融商品取引法第24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を提出している会社においては、社外取締役の設置が義務化されました(改正法327条の2)。

改正前の同条では、社外取締役の設置をしない場合は株主総会でその理由を説明しなければならないとされるに留まっていましたが、改正法では社外取締役の設置が義務化されました。なお、東証上場企業においてはすでに99%近くの株式会社が社外取締役を設置しているとのことであり、実務上の影響は少ないものと思われます。

 また、社外取締役の業務執行について、社外性を失わないようにする規定についても新設されました(改正法348条の2)。これによれば、株式会社(指名委員会等設置会社は除く)と取締役との利益が相反する状況にあるときその他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なう恐れがあるときは、都度取締役の決定(取締役会設置会社においては取締役会)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるとされ(同条1項)、この場合は社外取締役の社外性が失われないこととされました。ただし、委託を受けた社外取締役が、業務執行取締役の指揮命令の下、委託された業務を執行した場合はこの限りではないとされています(同条3項)。

6.株式交付制度の創設

 株式交付とは、株式会社が他の株式会社をその子会社とするために、当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対してその株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいうとされており(改正法2条32の2号)、本改正で新設された制度です。

 類似の手続としては株式交換(法2条31号)が挙げられますが、株式交換は完全親子会社化のための制度であったため、完全親子会社とまではすることは望まないが、株式取得の対価として親会社の株主を交付したい場合に利用することが想定されます。

7.まとめ

 今回の改正では取締役の報酬に関する規定、会社補償、D&O保険、社外取締役の設置等、取締役に関する制度の見直しが多くなされました。はやければ次回株主総会には対応が必要な事項もありますので、改正内容を正確に把握することが重要となります。

 

以上

2021年02月09日(火)11:50 AM

日本における工事現場での事故に対する発注者責任についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

日本における工事現場での事故に対する発注者責任

日本における工事現場での事故に対する発注者責任

2021年2月8日

One Asia Lawyers

弁護士法人One Asia大阪オフィス

代表パートナー弁護士 江副 哲

1.はじめに

 工事現場で死傷事故などが発生したときに、その賠償責任はいったい誰が負うのかという問題について、発注者の誤った指示など不適切な対応が原因で事故が起こった場合、施工者だけでなく発注者も民事上の賠償責任を負う恐れがあります。また、場合によっては、刑事責任も問われる可能性もあります。では、具体的にどのような場合に発注者が賠償責任を負うのかについて、発注者の責任を認めた裁判例を基に解説します。

2.裁判例① ~作業員の負傷事故に対する賠償責任~

 道路工事中に発生した作業員の負傷事故で、発注者である津市の賠償責任を繰り返し認めた判決は、その一例で、側溝の掘削作業中に隣接する既設の石積み擁壁が崩落し、作業員が擁壁と掘削面との間に挟まれて重傷を負ったという事故になります。この事故では、最初の訴訟で敗訴した津市が、作業員にいったん賠償金を支出し、続いて、市と元請の施工者である勢和建設(津市)との間で、その賠償金の負担について再度、法廷で争うという異例の展開となりました。

 まず、訴外で既に2200万円の賠償金を勢和建設から受け取っていた同社の作業員が、市だけを相手取り損害賠償を求めて提訴し、その後、津地裁の一審判決(2017年5月)と名古屋高裁の控訴審判決(同年12月)のいずれも市の責任を認め、損害賠償の支払いを命じています。市は裁判の過程で、設計図書で指定しない仮設や施工方法などは、自主施工の原則で受注者が選択するものだと説明し、発注者が施工方法などの選択について注文を付けることは許されないと主張していました。しかし、裁判所は、石積み擁壁の根入れ位置が、設計図書では掘削溝の底面よりも深かったが、実際には底面まで達していなかったことを市の工事担当者が把握していたと指摘し、自主施工の原則を前提としても、施工者に具体的な安全対策を指示せず、安全が確保されるまで工事を一時中止させる義務を怠ったとして、市の過失を認めました。

 この判決を受け、市は被災した作業員に賠償金9300万円を支払いましたが、判決内容に納得せず、勢和建設に賠償金の負担を要求し、市が同社に発注していた別の工事5件分の請負代金の支払いを止め、事実上、賠償金相当額を負担させるという強硬な対応を取ったところ、これに勢和建設が反発し、市に対して請負代金を請求する訴訟提起に至りました。この訴訟では、津地裁の一審判決(20年1月)、名古屋高裁の控訴審判決(20年8月)ともに、勢和建設が擁壁について安全対策を講じるよう市に指示されながら対策を取らなかったことを理由に、同社の過失を認定しました。一方で、市に対しても、擁壁の危険性を認識したのに具体的な対策を指示せず、施工者の対策状況を確認していないことから、監督権限不行使の過失があると認定、市の過失割合を2割と判断しました。さらに控訴審では、市は施工者から擁壁の崩落回避のための提案を受けながら、それを採用せず代替案も示さなかったという経緯を指摘し、市が具体的な指示をしなかった点だけで責任があるとはいえないとしながらも、市は仕事の完成を待つ立場にとどまらず、第三者に危害を及ぼす事態の回避に向け副次的・補充的な責任を負う立場にあると言及されています。

3.裁判例② ~橋桁落下事故による第三者被災に対する賠償責任~

 社会に衝撃を与えた大事故で発注者の賠償責任を認めた例として、1991年3月に広島市の新交通システム「アストラムライン」の建設工事で起こった橋桁落下事故が挙げられます。架設中の橋桁が作業員と共に橋脚下の県道上に落下したところ、県道を交通規制していなかったため、信号待ちしていた車両を押し潰し、車の運転者など第三者を含む15人が死亡、8人が重軽傷を負うという大惨事になりました。そこで、遺族が広島市と施工者のサクラダ(2012年に破産手続き開始)に対して損害賠償を求め、広島地裁に提訴した事故になります。

 一審判決(1998年3月)では、市の建設工事請負契約約款や建設工事施工監理の手引などを挙げ、市の監督員が発注者の立場で作業内容やそれに伴う危険の回避について監督することを前提とした規定を設けている点に言及し、「市には、本件工事の安全性を確保するための監督をなすべき義務があった」と判断しました。さらに、施工者の作業が他の工区よりも大幅に遅れていた点や、施工計画書に橋桁の落下防止措置が明記されていなかった点などを市の監督員は知っていたと指摘し、「市には施工者の安全対策を確認し、転倒防止ワイヤを取り付けるなどの安全対策を取るよう指示すべき義務があった」と結論付けています。

 市は、この判決を不服として控訴しましたが、既に施工者から賠償金を受け取っていた遺族が早期終結を望み、市への請求を放棄した結果、控訴審は実質的な審議をせずに終わっています。

4.公共工事における発注者責任

 以上の裁判例は、発注者に民事上の賠償責任を認めた事例で、発注者は、事故発生の危険を予見できる場合、安全性を確保するため施工者を監督すべき義務を負うと指摘しています。ただし、このような現場の安全確保に関する発注者の義務は、公共工事と民間工事では大きく異なると考えられます。

 国や自治体が発注する工事の場合、発注者側には監督員という技術者が関わることから、発注者も施工方法などについて一定の評価や判断ができるという前提で、このような義務を認めていると考えられます。そのため、公共工事では発注者が施工方法などをチェックすべき立場にあると十分に意識することが肝心であるといえます。万が一、施工方法に問題があり、工事の安全性を確保できないと判断した場合には、受注者に対して適切な是正を求める必要があります。他方、民間工事の場合は、発注者側に監督員のような技術者が関与する例は少ないといえます。発注者側の技術者が関与していない工事では、発注者があえて危険な作業をするよう求めるなど、積極的に不適切な指示を出したりしない限り、発注者に責任が及ぶことはまれです。

 もっとも、発注者が事故に対する賠償責任を負うからといって、施工者が責任を免れるわけではありません。前述の2つの裁判事例ともに、施工者も賠償責任を負わされています。施工者は、発注者の指示や設計図書に誤りがないか、現場との不整合はないかなどを精査し、問題があれば発注者に対して指摘しなければなりません。そのため、施工者としては、発注者の指示どおり施工していれば事故が生じても自らに責任はないというような安易な考えは捨てるべきであるといえます。

 従来は、工事現場の安全管理を含む施工管理は施工者の義務であり、公共工事であっても、工事現場での事故に対して発注者が責任を負うことはないと考える傾向にありましたが、今回紹介した裁判例のように、発注者としても安全確保や事故防止のために対応すべき場面があると認識され、その対応を怠った場合は施工者だけでなく、発注者も法的責任を負うという評価がされるようになってきました。そのため、発注者としては、施工者にお任せという姿勢は改め、施工者と協力して事故防止に努めることが求められます。

以上

 

2019年01月23日(水)1:02 PM

ASEAN各国の新法状況をご報告いたします。

 

【シンガポール】決算サービス法案
【タイ】労働者保護法・刑事手続法関連の改正及びIBC制度の創設
【マレーシア】外国人社会保険義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する改正法
【ベトナム】サイバーセキュリティー法の施行
【インドネシア】OSSシステムのBKPMへの移管
【フィリピン】外資規制緩和の最新動向
【ミャンマー】競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資撤廃
【カンボジア】労働法のアップデート
【ラオス】付加価値税法の改正
【日本】労働基準法の一部改正

 

2019新年版ニューズレター

2018年01月11日(木)4:44 PM

ASEAN各国の新法の状況をご報告いたします。

 

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