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2022年01月10日(月)12:29 PM

日本における賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説

 

日本:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説

 

2022年1月7日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia大阪オフィス
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1.はじめに

2021年6月15日,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下,「賃貸住宅管理業法」といいます。)が施行されました。賃貸住宅管理業法は,近年の賃貸住宅の重要性の高まりにより[1],多くの賃貸住宅所有者が管理会社に管理を委託するようになるに伴い,賃貸住宅の管理会社を巡るトラブルも増加していること,サブリース事業におけるサブリース事業者と所有者との間の紛争も多発していることを受け,これらに対応するために定められました。

. 賃貸住宅管理業法の解説

 ⑴ 制度概要

   賃貸住宅管理業法は,①賃貸住宅管理業者の登録制度,②サブリース事業に対する規制措置の大きく2つから構成されています。

 ⑵ 賃貸住宅管理業登録制度

   賃貸住宅管理業法では,賃貸住宅管理業=「賃貸住宅の賃貸人から依頼を受けて,物件の維持保全,家賃・敷金・共益金・その他の金銭の管理を行う事業」を営む場合には,国土交通大臣による登録を義務付けています(賃貸住宅管理業法第3条1項)。ただし,管理戸数が200戸未満の場合には,登録なく管理業を営むことができます(同法同項但書)。

   国土交通省の登録を受けた賃貸住宅管理業者は,管理業務に当たって,以下のようなルールを遵守することが義務付けられており,遵守されない場合には,国土交通大臣による監督(業務改善命令,業務停止命令,または登録の取消し等)がなされることとなり,刑事罰(同法第41条以下)も定められています。

  【賃貸住宅管理業者が遵守すべきルール】

  ①業務処理の原則(同法第10条)

  ②名義貸しの禁止(同法第11条)

  ③業務管理者の選任・配置(同法第12条)

  ④管理受託契約の締結前の書面の交付(同法第13条)

  ⑤管理受託契約の締結時の書面の交付(同法第14条)

  ⑥管理業務の再委託の禁止(同法第15条)

  ⑦家賃等の分別管理(同法第16条)

  ⑧証明書の携帯等(同法第17条)

  ⑨帳簿の備付け等(同法第18条)

  ⑩標識の掲示(同法第19条)

  ⑪委託者への定期報告(同法第20条)

  ⑫秘密を守る義務(同法第21条)

 ⑶ 特定賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化のための措置等

   賃貸住宅管理業法は,サブリース事業(サブリース業者が賃貸住宅を賃貸人などから転貸を目的として借り受けるマスターリース契約を締結することを内容とする事業)を営むことについて登録を求めてはいませんが,サブリース事業を営むにあたってのルールを以下のとおり定めています。

  【サブリース事業を営むに当たってのルール】

  ①誇大広告等の禁止(同法第28条)

  ②不当な勧誘等の禁止(同法第29条)

  ③特定賃貸借契約の締結前の書面の交付(同法第30条)

  ④特定賃貸借契約の締結時の書面の交付(同法第31条)

  ⑤書類の閲覧(同法第32条)

   これらのルールを遵守しない場合,指示(同法第33条1項)・業務停止命令(同法第34条1項)や,刑事罰(同法第42条以下)の対象となります。

   また,上記ルールのうち,①(誇大広告等の禁止)及び②(不当な勧誘等の禁止)については,勧誘者に対しても遵守が義務付けられており,サブリース事業者と同様に指示・業務停止命令や刑事罰の対象となります。

.  経過措置

賃貸住宅管理業法は2021年6月15日に施行されていますが,施行時点で賃貸住宅管理業を営んでいる事業者は,登録義務がある場合であっても,2022年6月14日までは登録を受けずに管理業を営むことができる経過措置が定められております(同法附則第2条1項)。但し,登録までの期間においても,当該管理業者は法令上の賃貸住宅管理業者とみなされるため,上記を含めた法令上の義務が課されることとなる点,注意が必要です。

4.今後の展望

  賃貸住宅管理業法は施行間もないため,その運用に関しては,今後公表されるであろう政省令やガイドラインの内容を注視していく必要があります。また,経過措置期間後においては,業務管理者を選任できないために登録することができない可能性もありえますので,早め早めの準備・対応が必要と思われます[2]

 

【参考】

・国土交通省関連ページ

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00004.html

・渡辺晋「賃貸住宅管理業法の解説」(住宅新報出版,令和3年)

・一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会「賃貸住宅管理業者登録制度施行に伴う法律上の留意点」

 

[1] 「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によれば,居住世帯のある住宅総数5361万6000戸に対し,賃貸住宅は全体で1906万5000戸と,賃貸住宅が住宅総数に占める割合は35.6%であり,消費者の指向からしても,持家よりも賃貸住宅を指向する消費者の割合が9.3%(平成8年)から20.4%(平成28年)に増加しています(国土交通省「平成29年度土地問題に関する国民の意識調査」)。

[2] 業務管理者は,他の営業所又は事務所の業務管理者と兼務することはできないため,複数の営業所の設置が想定されている場合は,業務管理者となることのできる人員の確保には注意が必要になります(同法第12条3項)。

 

以上

2021年12月10日(金)5:21 PM

日本における宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

日本:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインについて

 

日本:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインについて

2021年12月11日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia 大阪オフィス
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1.はじめに

 宅地建物取引業者(以下「宅建業者」といいます。)においては,宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)により,取引の関係者に対し,重要事項の調査説明義務が定められており(同法第35条),当該調査説明義務には,物理的な欠陥とともに,物の価値を低下させる要因として,心理的欠陥(自殺,殺人等)も,その対象事項となりえます。しかしながら,従前,この調査説明義務の範囲に係る判断基準が明らかにされておらず,宅建業者においても,取引現場における判断が難しい状況が続いておりました。

 この点について,国土交通省は,本年10月8日,「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」における検討を踏まえ,「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」といいます。)を作成し,公表しました。以下では,本ガイドラインの内容を解説するとともに,今後の宅建業者においてとるべき対応について考えていきます。

2.「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の解説

⑴ 本ガイドラインの適用範囲

 本ガイドラインは,居住用不動産を対象として取り扱っています。オフィス等に用いられる不動産(事業用不動産)において発生した事案については,それが契約締結の判断に与える影響が一様ではなく,本ガイドラインの対象外としています。また,居住用不動産の場合でも,人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引や,搬送先で死亡した場合等の個別具体的な対応については定められていないため,引き続き,裁判例等に照らした個別判断が必要となります。

⑵ 調査の対象・方法について

 本ガイドラインは,宅建業者が媒介を行う場合,売主・貸主に対して,過去に生じた事案について告知書等に記載を求めることにより,媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務は果たしたものとしています。そのため,宅建業者は,原則的に,自ら周辺住民への聞き込み等の自発的な調査を行う義務まではありませんが,他方で,売主・買主からの告知がない場合であっても,人の死に関する事案の存在を疑う事情がある場合には,例外的に,売主・買主に確認する必要がある点は注意が必要となります。

⑶ 告知の範囲について

 本ガイドラインでは,宅建業者が媒介を行う場合の人の死に関する宅建業者の告知義務について,以下のように整理しています。

 本ガイドラインでは,上記整理を原則としつつ,②~③の場合であっても,事件性や社会的影響の度合が大きい場合や,買主・借主から事案の有無について問われた場合,買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識される場合等には,告知しなければならないとしており,あくまでも一般的な基準である点は留意しなければなりません。

⑷ 調査・告知における留意点

 本ガイドラインに関し,特に以下の点については,調査・告知の実効性やトラブル防止の観点からご留意いただく必要があります。

 ・上記②の場合は,賃貸借取引に限定されていること(売買取引は含まれていない)。
 ・告知に際しては,亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様・発見状況等を告げる必要はないこと(亡くなった方や遺族等の名誉・生活の平穏に配慮する必要があります)。
 ・取引に当たって,買主・借主の意向を十分に把握し,人の死に関する事案の存在を重要視していることを認識した場合には,トラブルの未然防止の観点から,特に慎重に対応すること。

⑸ 本ガイドラインの意義

 本ガイドラインは,調査・告知義務に関する一般的な基準として,宅建業者の今後の運用の一助になるものと期待されます。勿論,本ガイドラインでは明確に定められていないケースもあり,事案に応じた個別具体的な検討は必要となりますので,杓子定規な対応は避けなければならないところです。しかしながら,宅建業者の対応を巡ってトラブルとなった場合,行政庁における監督に当たっては本ガイドラインが参考にされることになりますので,対応マニュアル策定に当たっては本ガイドラインの記載に注意するとともに,今後のガイドライン改訂の動向は注視していく必要があります。

3.宅建業者がとるべき対応

⑴ 本ガイドラインにおける注意点

 上記の通り,本ガイドラインは,調査・告知義務に関する一般的な基準として行政庁の監督指針にもなることから,各宅建業者においては,これを踏まえた対応マニュアルの整備を行う必要があります。しかしながら,個別具体的な事案によっては,本ガイドラインの基準と異なる対応をすべき場合も考えられ,この点は,従前同様,裁判例や取引実務に応じた判断を迫られるところとなります。以下では,調査・告知義務を考えるにあたって注意すべき裁判例を一件,ご紹介いたします。

⑵ 25年前の事案について仲介業者の説明義務を肯定|高松高裁平成26年6月19日判決

 ア 事案概要

 松山市内の環境の良い閑静な住宅地の売買において,土地上建物内2階のベランダでの首吊り自殺に関し,仲介業者の説明義務を肯定した事案です。判決では,①自殺から25年が経過していたこと,②売主は契約締結時に自殺の事実を知らなかったが,契約締結後決済前に当該事実を知ったこと等がポイントとなりました。

 イ 判旨

 同判決では,「本件建物内での自殺等から四半世紀近くが過ぎ,自殺のあった本件建物も自殺の約一年後に取り壊され,本件売買当時は更地になっていたとの事実を指摘するが,(…)これらの事実があったとしても,マイホーム建築目的で土地の取得を希望する者が,本件建物内での自殺の事実が近隣住民の記憶に残っている状況下において,他の物件があるにもかかわらずあえて本件土地を選択して取得を希望することは考えにくい以上,被控訴人が本件土地上で過去に自殺があったとの事実を認識していた場合には,これを控訴人らに説明する義務を負うものというべきである。」とした上で,本件売買契約締結後であっても,このような重要な事実を認識するに至った以上,代金決済や引渡手続が完了してしまう前に,これを買主に説明すべき義務があったとした原審判断を肯定しています。なお,同判決では,宅建業者の調査義務自体は否定しています。

 ウ 宅建業者において注意すべき点

 同事件は,25年も前の事案に関する説明義務が問題となりましたが,近隣住民において殺人事件と関連付けて記憶に残っている状況等から,その社会的影響等を鑑みて説明義務を肯定しています。また,契約締結後であったとしても,引渡しまでに人の死が生じた事実を知った場合には説明すべき義務が生じると判断されています。このように,特に売買取引の仲介においては,事案発生からの時間経過があったとしても,事案の内容に応じて,個別的な判断が必要となります。

4.今後の展望

 人の死に関する告知義務の範囲を巡っては,本ガイドライン策定に当たっての検討会においても,どこまでをガイドラインとして定めることができるか議論がなされており,本ガイドラインでは対象とされなかったケースも多数あるところですので,今後の運用・改訂状況には注視していく必要があります。