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2023年03月21日(火)8:56 PM

タイの労働者保護法改正(在宅勤務)についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
労働者保護法の改正

タイの労働者保護法改正(在宅勤務)について

 

2023年3月21日
One Asia Lawyers Group タイ事務所

1.はじめに
2023 年 3 ⽉ 19 ⽇に労働者保護法第 8 号(以下、「改正法」)が官報に掲載され、
2023 年 4 ⽉ 18 ⽇より施⾏されます。改正法では⼀定の要件について労使間で合意する
ことで、在宅(または事業所外での)勤務が可能となることが明記されました。改正法
の背景には、従業員のクオリティオブライフ(QOL)向上、使⽤者が受ける恩恵に加え、
通勤による交通渋滞の緩和が挙げられています。本ニュースレターでは改正法の概要に
ついて解説致します。
2. 第 23/1 条の追加
新たに追加された労働者保護法第 23/1 条によれば、従業員が事業所外での業務(在宅
ワークやインターネットを利⽤した事業所外での業務含む)を⾏う場合は、必要に応じ
て以下の情報を含む詳細について、書⾯または電⼦ファイル形式により労使間で事前に
合意しておく必要があります。
(1) 合意内容が適⽤される開始⽇と終了⽇について
(2) 通常の労働⽇及び労働時間、休憩時間、及び時間外労働について
(3) 時間外労働及び休⽇労働にかかる基準、及び休暇の取扱について
(4) 従業員の業務スコープ及び義務、及び使⽤者による業務管理または監督について
(5) 業務上必要な機器または道具の提供及び諸経費について
また、通常の労働時間が終了した際、または使⽤者より指⽰された業務が終了した際、
従業員が事前に書⾯で同意した場合を除き、従業員は使⽤者や上⻑からのいかなる媒体
による連絡であっても終了後の業務を拒否する権利を有すること、さらに、事業所外で
の業務を⾏う従業員は、事業所内で業務を⾏う従業員と同⼀の権利を有すること、が定
められました。改正法の施⾏により、コロナをきっかけとした在宅ワークがさらに促進
されることが予想されます
                                    以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
masaki.fujiwara@oneasia.legal(藤原 正樹)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

2022年11月11日(金)8:24 PM

タイの民商法改正についてのニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

タイの民商法改正について

 

速報:タイの民商法改正について

                                     2022年11月11日
                               One Asia Lawyersタイ事務所

1.はじめに
2022年11月8日に改正民商法第23号(以下、(「改正法」)が公布され、2023年2月7日より施行される予定となっております。多少の変更点(主に表記方法の変更)が見受けられたものの、草案のほとんどがそのまま承認され、公布されています。本ニュースレターでは、改正法の概要について解説致します。

2. 非公開株式会社の最低発起人数及び最低株主数

これまで非公開会社は設立の際、3名以上の発起人を必要とし、また、会社解散命令の対象となる事由として株主数が3名に満たなくなった場合と定められていたことから、3名以上の株主が必要と解されてきましたが、改正法では株式会社設立手続きの柔軟性を高め促進する目的で、発起人数及び株主数共に2名に削減され、規制緩和が図られています。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1097条

発起人3名以上で株式会社の設立が可能。

発起人2名以上で株式会社の設立が可能。

第1237条

(4)

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、3名に満たなくなった場合。

裁判所は以下の事由により株式会社の解散を命じることがある。

(4)株主数が減少し、残り1名となった場合。

3. 株主総会招集時の新聞公告

これまで非公開会社が株主総会を招集する際は、7日前(普通決議)または14日前(特別決議)までの全株主への招集通知発送に加え、新聞公告の掲載が求められていましたが、改正法では無記名式株券を発行している会社を除き、新聞公告の掲載義務が撤廃されました。

ただし、現状、付属定款において株主総会招集時の手続きとして新聞公告の掲載を行うと定めている場合は、付属定款の変更登記を行わない限り、引き続き新聞公告掲載が必要となります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1175条

1項

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに地方紙に少なくとも1回公告し、さらに、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に名前のある全株主に対し、配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

株主総会の招集通知は、総会開催日の少なくとも7日前までに株主登録簿に掲載されている全株主に対し配達証明付き郵便で郵送しなければならない。ただし、会社が無記名株券を発行している場合は、地方紙に少なくとも1回公告するか、省令で定めた規則及び方法に基づき電子メディアに公告する必要がある。

特別決議のための株主総会招集の際は、上記について総会開催日の少なくとも14日前までに行わなければならない。

4. オンラインによる取締役会開催

2020年4月の勅令及び同年5月のデジタル経済社会省告示により、電子システムを利用した会議は既に一定の要件の下で認められていましたが、改正法では取締役会のオンライン上での開催が今後より多く利用されることを期待し、明文で認められることとなりました。

ただし、依然として取締役本人による出席が必要とされるため、委任状による代理人の出席は認められていないことにご留意下さい。改正法ではオンラインによる株主総会の開催について明文で定められていませんが、上記告示によりオンラインによる株主総会を開催することも従前どおり認められます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1162/1条

付属定款で禁止する場合を除き、取締役会においてテクノロジーを利用してコミュニケーションを取ること(以下、「オンライン会議」)も可能であり、取締役が会議の場に出席することも不要である。

オンライン会議の開催時は、電子システムによる会議に関する法律に従うこと。

オンライン会議の場合も取締役は取締役会に出席しているとみなされ、定足数の計算に含め、議決権を有する。

5. 株主総会の最低出席者数

これまで株主総会の最低出席者数については民商法上明確に定められていませんでしたが、法制委員会事務局(Office of the Council of State)の公式見解により「討論し決議を採択すること」という株主総会の目的を果たすため、2名以上の株主または代理人の出席が必要になると解されてきました。改正法ではこれを明文化し、少なくとも株主またはその代理人2名の出席が必要となることが明確になりました。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1178条

株主総会において会社資本の4分の1以上を代表する株主が出席しなかった場合、その株主総会の議題について審議することはできない。

株主総会は株主または株主から委任を受けた代理人が2名以上出席しなければならず、かつ出席株主が有する株式の合計が会社資本の4分の1以上でなければ決議することはできない。

6. 会社設立時の創立総会議題

従前より新会社設立登記申請前の創立総会において付属定款の承認が求められており、付属定款には投票の際に同数となった場合(議長が決定票を投じる等)の解決方法を任意で規定しておくことが可能でしたが、改正法では第1097条で発起人の数が2名以上に削減されたことに関連して投票時に同数となる可能性が高まることから、当該規定が義務付けられることとなりました。DBDが公開する付属定款のテンプレートを利用する場合、株主総会における解決方法は規定されていますが、取締役会については規定されていないため、別途追記する必要があります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1108条

(1)

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役または株主間の和解できない問題または反対意見に対する解決方法について規定しておくこともできる。

創立総会における議題は以下の通り。

(1)会社の付属定款の制定についての同意。この場合、取締役もしくは株主間の和解または決議できないような問題または反対意見に対する解決方法について規定しておかなければならない。

7. 配当金支払い

従前より配当の支払いは株主総会または取締役会決議から1か月以内に行うことと定められていましたが、改正法では少数株主保護のため1か月以内に支払を完了することと明記されています。

 

従前の内容

改正法の内容

第1201条

4項

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に行うこと。

配当支払いは株主総会決議または取締役会決議から1か月以内に完了すること。

8. 吸収合併

これまで合併を行う場合は、新設合併のみ可能で、吸収合併については認められておらず、一方会社への全部事業譲渡+他方会社の清算という形で実質的な吸収合併を行うケースが見受けられました。新設合併は許認可の新会社への承継が認められておらず、一般的なM&Aの手法としては用いられていませんでしたが、改正法により可能となった吸収合併では吸収する側の存続会社が有していた許認可 は合併後も引き継がれると考えられている(許認可毎に別途確認が必要です)ためM&Aにおけるスキーム選択の幅が広がることが期待されます。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1238条

株式会社は合併することはできない。ただし株主総会の特別決議による場合を除く。

株式会社は特別決議により合併することができる。

2社以上の会社は、次のいずれかの方法により合併する。

(1)     合併により新たに会社を設立し、合併された元の会社は法人格を失う(以下、「新設合併」)。

(2)     合併により1社の法人格のみを残し、その他の合併された会社は法人格を失う(以下、「吸収合併」)。

第1243条

新会社は合併された元の会社の全ての権利及び責任を引き継ぐ。

合併後の新会社[1]は合併された元の会社の全資産、負債、権限、義務、及び責任を引き継ぐ。

[1] 吸収合併時の存続会社を含む

9. 反対株主の株式買取制度

今回新たに合併に反対する株主のための株式買取制度が設けられ、会社は合併に反対する株主に対し、当該株主が保有する株式の買取者の手配が義務付けられています。買取価格について反対株主と買取者との間で合意に至らない場合は、今後公布される省令に従って任命される鑑定人により買取価格が提示されます。買取者からの買取の申し出から14日以内に反対株主が株式を売却しなかった場合、合併手続きの進行が認められ、反対株主は合併した会社の株主であるとみなされることになります。

 

従前の内容

改正法の内容

第1239/1条

合併の特別決議が可決された際、会社は合併に反対した出席株主(以下、「反対株主」)の保有株式を合意価格で買い取る者を手配しなければならない。買取価格について合意できない場合は、鑑定人が定めた価格を使用すること。反対株主が買取の申し出を受けた日から14日以内に売却しない場合、会社は会社合併の手続きについて進めることができ、反対株主は合併した会社の株主とみなされる。

前項における鑑定人の任命は、省令の定める規則、手順、及び条件に従うこと。

10. 合併手続きの流れ

合併を行う際は、まず各社で特別決議により合併(新設合併または吸収合併)を承認し、当該決議日から14日以内に特別決議の登記申請、新聞公告、及び全債権者に対する合併通知を行います。その後、最後に合併が可決された日から6ヵ月以内(1年まで延長可能)に合併後の新会社(以下、吸収合併時の存続会社を含む)の株主総会を開催し、第1240/1条で定められた議題全てについて決議します。これらの議題は一度に全て決議する必要はなく、何度かに渡って株主総会を開催し決議することも可能です。第1240/1条で定める全ての議題について決議が完了した日から7日以内に、合併された元の会社(消滅会社)は、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票等を合併後の新会社に引き渡さなければならず、かつ、合併後の新会社は14日以内に合併登記申請を行う必要があります。この際、新設合併か吸収合併かが会社登記簿に記録されることになります。

<変更点の整理>

 

従前の内容

改正法の内容

第1240条

会社は、合併の意図について、地方紙に少なくとも1回公告し、かつ会社が把握している全債権者に配達証明付き郵便で通知しなければならない。また、合併に反対する債権者には通知から60日以内に異議申立書を提出させること。

期限内に反対がなければ、反対はないものとみなす。

反対する債権者がいる場合、その債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、会社は合併の手続きを進めることはできない。

合併の特別決議から14日以内に、会社は決議日時点に債権者リストに掲載されている債権者に対し、当該決議について通知しなければならない。この場合、異議申立を行う場合の期限として通知受領後1か月以内と定めておくこと。さらに、会社は合併決議について、決議日から14日以内に広く普及されている日刊紙にも公告すること。

反対する債権者がいる場合、会社はその債務を弁済するか、担保を差し出さない限り、合併できない。

第1240/1条

第1239条及び1240条に基づき進めた後、合併後の新会社の取締役は株主総会を招集し、次の議題について審議すること。

(1)     合併後の新会社の商号 この場合、新しい商号または合併前のいずれかの会社の商号を利用することができる。

(2)     合併後の新会社の事業目的

(3)     合併後の新会社の登録資本金 この場合、新会社の資本金額は合併された各社の資本金額の合計を上回る額でなければならない。

(4)     合併後の新会社の株式の配分 この場合、第1222条は適用されない[1]

(5)     合併後の新会社の基本定款

(6)     合併後の新会社の付属定款

(7)     合併後の新会社の取締役選任

(8)     合併後の新会社の会計監査人選任

(9)     合併後の新会社に関係するその他の事項(もしあれば)

合併後の新会社の株主総会は、合併された元のいずれかの会社が最後に合併決議を行った日から6か月以内に開催しなければならない。ただし、合併後の新会社の株主総会が当該期日の延長について決議した場合を除く。この場合、延長は最初の6ヵ月を含め1年を超えてはならない。

第1240/2条

第1240/1条に基づき開催する株主総会は、合併された元の会社の本店がある地域またはその本店に近い都県で開催すること[2]。また、

(1)     合併された元の会社それぞれにおいて、全株式の過半数を有する株主の出席を定足数とする。

(2)     出席株主の一人を議長として選任する。

(3)     株主総会の決議事項は別途合意がある場合を除き、(1)に基づき出席した株主の過半数の賛成により可決する。

第1240/3条

合併された元の会社の取締役会は、第1240/1条に基づき開催する株主総会から7日以内に、事業、資産、会計、書類、及び各種帳票を新会社の取締役に引き渡さなければならない。

第1241条

会社が合併した時、各会社は合併から14日以内に登記申請しなければならず、合併により新たに

設立された株式会社も新規に登記しなければならない。

新会社の取締役会は、第1240/1条に基づく株主総会で承認された基本定款及び付属定款について、第1240/1条に基づく株主総会の完了から14日以内に登記官に提出し、合併登記申請を行わなければならない。

第1242条

新会社の資本金額は、合併された元の会社の資本金額の合計と同じでなければならない。

登記官により合併登記が受理された際、登記官は次の内容を登記簿の備考欄に記録すること。

(1)     新設合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

(2)     吸収合併の場合、合併された元の会社が法人格を喪失したこと。

[1] 第1222条により増資の際は既存株主の株式保有割合に基づき新株を割当てることになっていますが、改正法では当該規定が適用されません。つまり、資本金200万バーツのA社と資本金300万バーツのA社が合併し資本金700万バーツとなる場合、追加で出資する200万バーツ分についてはA社とB社が協議しその出資割合を決定することが可能となっています。

[2] 当該株主総会のオンライン開催が認められるかは明文化されておらず、今後の動向を注視する必要があります。

11. 改正法施行前の合併決議

改正法施行前に株主総会において合併が可決されている場合、改正法前の民商法に基づき手続きを進めることも可能となっています。

以上

2022年01月07日(金)1:15 PM

タイ版下請法のマニュアルの概要について報告いたします。

タイ版下請法のマニュアルの概要について

 

 

 

タイ版下請法のマニュアルの概要について
                                   2022年 1月 7 日
  

1 はじめに

取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、「本告示」)」の解釈等を説明する取引競争委員会の告示・中小企業が商品販売者またはサービス提供者である場合の与信期間に関するガイドラインの件に関する説明書(以下、「マニュアル」)が、昨年末に公表されました。

本ニュースレターでは、このマニュアルの概要について説明致します。これまで公聴会の説明などにて本告示の解釈が示されていましたが、今後はこのマニュアルに従い与信期間について運用する必要があるものと考えます。

2 中小企業の定義(本告示第2条)

マニュアルでは、雇用者数または年間売上高のいずれかの要件に該当すれば、中小企業に該当すると説明されています。

本告示施行前の公聴会の説明では、年間売上高で中小企業性を判断すると解釈されていましたが、マニュアルでは、雇用者数または年間売上額のいずれかの要件を満たせば中小企業に該当する、という解釈に変更されました。

事業の種類

雇用者数

年間売上高

1.製造業

200人以下

5億バーツ以下

2.サービス、卸売、小売業

100人以下

3億バーツ以下

 

※雇用者数とは、賃金を得て労働またはサービスを提供する自社の従業員を意味します。つまり、掃除員や警備員を従業員として雇っている場合は雇用者数に含めますが、清掃会社や警備会社から自社に派遣されている者は含めません。

※年間売上高とは、各種経費控除前の利益全てを意味し、商品やサービスの販売から得られる利益だけでなく、その他の利益(例えば、預金の利子、会社資産の売却益、余った材料や部品の売却から得られる利益など)も含まれます。

3 中小企業該当性

例1: 従業員200人以下、年間売上高5億バーツ以上のバナナの加工食品会社A

雇用者数

200人以下

年間売上高

5億バーツ以下

該当性

(200人以下)

×

(5億バーツ以上)

中小企業である

 

例2:従業員100人以上、年間売上高3億バーツ以下の機械修理サービス会社B

雇用者数

100人以下

年間売上高

3億バーツ以下

該当性

×

(100人以上)

(3億バーツ以下)

中小企業である

 

例3:機械を製造し、修理サービスも提供する会社Cは、従業員150人を雇用し、製造事業の年間売上高は5億バーツ、修理サービス事業の年間売上高は1億バーツ

<主要事業である製造事業の要件が適用される>

雇用者数

200人以下

年間売上高

5億バーツ以下

該当性

(150人)

×

(6億バーツ)

中小企業である

※年間売上高の割合が多い方が会社の主要事業とみなされます。

4 与信期間

与信期間とは、購入者が商品またはサービスの納品または提供を受けた後、一定期間内にその代金を販売者に支払うことを約する販売者とその購入者間の文書による合意事項のことをいいます。

※「文書による」とありますが、文書がない場合でも合意事項や与信期間が無効となったり、裁判所への訴えが認められなくなるわけではありません。ただし、与信期間を文書で定めていない場合は、2560年取引競争法第57条の違反行為について取引競争委員会による調査が行われる際、その調査結果に影響を及ぼす可能性がございます。

5 本告示の適用範囲

施行日(12月16日)時点で過去の契約が終了していない場合も本告示の対象となります。つまり、過去に締結した契約が12月16日時点で有効な場合は、当該契約上の与信期間を見直し、必要に応じて本告示の要件に基づき変更を行う必要があります。

6 本告示が定める与信期間(本告示第4条(1)第1項)

1)一般的な商品またはサービスの場合:45日

2)農産物もしくは農産物の加工品またはサービスの場合:30日

※農産物もしくは農産物の加工品は腐りやすいため、与信期間が1)より短く定められています。

※上記より短い期間で既に合意している場合は、それに従う必要があります。

「農産物」とは

農業、漁業、畜産業、または林業から得られるものを意味し、例えば、米、とうもろこし、魚などが含まれます。

「農産物の加工品」とは

農産物を簡単に加工処理したものを指します。簡単な加工処理とは、油で揚げる、乾燥させる、天日干しにする、など。干し肉やドライフルーツなどが該当します。

※加工工程が複雑なもの、最新技術や機械、機器を使用するものは含みません。

7 本告示の例外(本告示第4条(1)第2項)

本告示は「法」であるため、本告示で定める要件より短い与信期間で合意している場合を除き、原則として本告示に従う必要があります。ただし、本告示に従うことができない理由または必要性がある場合、または本告示に従うことで重大な影響を受ける場合は、取引競争委員会が契約内容及び条件の下でのビジネス上、マーケティング上、または経済上の正当理由を事案ごとに判断することになります。

※本告示で定める与信期間より長い与信期間について両者が合意し、取引競争委員会への違反申立てが行われなかったとしても、同委員会は違反行為について調査及び審理する権限及び義務を有しています。

※契約自由の原則に基づき両者は本告示の範囲内で契約条件について自由に合意できますが、優越的交渉力を行使していたり、不当な取引条件が定められていたりする場合は違反行為とみなされるため注意が必要です。

8 与信期間の起算点(本告示第4条(2))

商品・サービス及び書類の引き渡し完了日が起点となります。

<商品・サービスの引き渡し完了日とは>

購入者が合意した商品またはサービスの数量、種類、品質、基準に基づき、販売者が全商品を納品した、またはサービス提供者が全サービスを提供した日を意味します。

※購入者が受領した商品またはサービスの検品期間については、合意内容、またはそれぞれの業界の通常の商習慣に従うことになります。

<書類の引き渡し完了日とは>

販売者が通常の取引で必要とする全書類(例えば請求書や納品書)を引き渡した日を意味します。

(例)飲料水の販売業者であるA(中小企業に該当)が与信期間を45日とすることでBと合意。2021年8月31日に商品及び書類の引き渡しが完了した場合、民商法193/3条に基づき与信期間の起算日は2021年9月1日となり、支払期限は45日後の2021年10月15日となる。

※与信期間の起算日を遅らせるために、正当な理由なく合意した商品またはサービス及び書類を故意に受領しなかったり、検品を遅らせたり、合意した日より遅れて商品またはサービスを受領した場合、不当行為であるとみなされる恐れがあります。

9 商品またはサービス購入者側がすべきこと

支払に関する詳細及びプロセスを明確に示す必要があります。

※これを行わない場合、または本告示の要件に基づき与信期間を変更しない場合、不当な取引を行っているとみなされる可能性があります。

なお、マニュアルでは、購入者側が販売者側の中小企業該当性について積極的に確認する義務について触れられておらず、購入者側にこのような確認義務はないと解釈してよいと考えます。

10 中小企業に該当する商品またはサービス販売者側がすべきこと

雇用者数または年間売上高により自身が中小企業に該当することを証明する必要があります。

<雇用者数を証明する書類の例>

社会保険納付書類、個人所得税納付書類(歳入局発行の領収書を添付)など。

<年間売上高を証明する書類の例>

昨年度の法人税納付書類(歳入局発行の領収書を添付)、財務諸表、DBDに提出する情報、など

※雇用者数を証明する書類については契約締結時時点のものを提示し、年間売上高を証明する書類については昨年度末のものを提示することになります。

※マニュアルでは、中小企業に該当することを証明する書類の提示は、変更がない限り一度きりで良いとされています。

※購入者が上記証明書の提示は不要であると合意した場合を除き、販売者側が上記の証明を行わない場合、本告示に基づく保護及び利益を受ける権利を放棄したとみなされる可能性があります。

11 不当行為の例(本告示第5条)

1)支払い遅延

正当な理由なく、商品またはサービスの代金支払いが定められた与信期間内に行われなかった場合(例えば、合意に基づく商品を受取ったにもかかわらず、承認が得られていないなどの理由で支払いが行われない場合など)

2)与信期間またはその他の条件の変更

正当な理由なく、または60日以上前の事前通知なく、与信期間または契約上のその他の条件(与信期間に関する条件に限る。例えば、検品期間を延長し、与信期間の起算日を遅らせるなど。)を変更した場合。一方的な変更の場合だけでなく、販売者が変更に合意している場合でも、正当理由または60日以上前の事前通知がなく、いずれかの当事者(販売者に限らず、サプライチェーンに関わる全事業者)が不利益を被った場合、2560年取引競争法第57条の違反であるとみなされる可能性があります。

3)その他の行為

・特別条項を設け、優越的交渉力を行使した場合(例えば、本告示の要件を満たした与信期間を受け入れる代わりに、他社への販売を禁止したり、値引きを要求したりする場合)

・与信期間を定めない場合。

・支払いプロセスを明確に示さない場合

・支払いを受けるためにこれまでの取引では必要とされなかった書類を要求する場合

・中小企業に該当することを証明する書類を受取らない場合

12 罰則

上記不当行為に該当する場合、2560年取引競争法57条の違反であるとみなされ、同法82条に基づき、違反を犯した年の売上高の10%を超えない額の罰金を科され可能性があります。

また、法人が違反を犯した場合は、同法第84条に基づき、法人の取締役に対しても法人と同等の罰則(違反を犯した年の会社の売上高の10%を超えない額)が科される可能性があります。

                                                                                                                                                        以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
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2021年12月21日(火)11:48 AM

タイ及びベトナムにおけるコンプライアンスヘルスチェック、監査支援業務をご紹介いたします。

コンプライアンスヘルスチェック、監査支援業務のご紹介

 

 

タイ及びベトナムにおけるコンプライアンスヘルスチェック、監査支援業務のご紹介

 

 

今般、コンプライアンス違反に基づく不祥事が明るみに出る事例が多発しており、監督省庁から行政処分、株主・消費者からの経営責任を追及する訴訟などの法的リスクの発生はもちろん、企業として健全性に対する信頼が損なわれることによるレピュテーションリスクは計り知れません。経営のグローバル化が浸透し、日系企業は、日本国内の法令、省庁ガイドライン・通達、民間の自主ガイドライン、企業倫理等だけではなく、タイなど海外子会社の法令遵守体制を構築する必要があります。タイにおいては日系大手発電所建設会社の日本人幹部が現地公務員に賄賂を提供していたとして起訴され、タイ国内でも大きく報道されています。当事件は内部通報により発覚したとされ、改めて内部通報制度導入を含めたコンプライアンスチェック体制の強化が不正事案を防ぐ効果的な方法として大きな注目を集めています。

当事務所においては、以下の図※の通り「①規則制定→②導入→③監査」の一連のワークフローを設定し、概ね毎年を目途に行うことを推奨しております。

※図は、PDFをご参照ください。

 

当事務所における実績例

1 各種コンプライアンス関連規定の整備に関するサービス

  • 日系大手製造企業のコンプライアンス規定、贈収賄規定の策定、レヴュー
  • 日系大手人材紹介会社のコンプライアンス規定、個人情報保護規定の策定、レヴュー等 

 

2 コンプライアンスに関する啓発、教育セミナーの実施

  • 日系大手製造企業における内部贈収賄規制セミナー
  • 企業内部における個人情報保護法、贈収賄規制、会社労働法、競争法セミナー等

 

3 監査代行サービス

  • 御社用にカスタマイズしたコンプライアンス監査項目の作成、精査
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                                                以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

2021年10月18日(月)10:00 PM

タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について報告いたします。

新システムによるVAT登録及び関連書類の提出方法について

 

 

 

タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について

                                   2021 年 10月 18 日
                               One Asia Lawyers タイ事務所

1.はじめに

2021年8月24日のニュースレター[1]でお伝えした通り、2021年2月9日にタイ国外から提供される電子サービスに対する付加価値税(以下、 「VAT」)の徴収を規定した改正歳入法第53号(以下、「法第53号」)が成立し、2021年9月1日に施行されています。改正により歳入局と事業者[2]がオンライン上で納税関連文書のやり取りを含めた各種手続きを行えるようになりました(法第53号3条の16)が、その規則や手順については省令で別途定めることとされていました。

その後8月23日に発出された財務省令第377号(以下、「省令第377号」)により、電子的手段によるVAT登録や書類提出等の各種手続きにおける規則及び手順が明らかになり、さらに電子的手段として、歳入局はVES(VAT for Electronic Service)システム[3]を新たに導入しました。

省令第377号は「第1章:証拠書類[4]の作成、提出、受領、保管」と「第2章:VAT登録」の2部構成となっており、以下の通りそれぞれ解説致します。

2.証拠書類の作成、提出、受領、保管について

事業者はVESシステムにより申請書や書類の作成、提出、及び受領等の手続きを行うことが可能となります。

証拠書類の作成および保存は、少なくとも電子取引法と同等の基準で、①書面が変更されることなくアクセス及び復元が可能であること、②証拠書類を保存する際は信頼できる方法で行うことが求められています。①については、歳入局より、現在はPDFファイルのみ提出可能となっており、将来的にはZIPファイルの提出も可能となるようにシステムを改善中と回答を得ています。また、②については、歳入局では特定の方法を指定していないとの回答を得たため、電子取引法を監督するデジタル経済社会省(MDES)に照会したところ、電子取引法においても信頼できる書類の保存方法については明確な定義や要件は規定されていませんが、パスワード等でアクセス制限を設けておくことを推奨するとの回答を得ています。

VESシステムによる証拠書類の提出後は、当該書類の詳細及び受領日時が記載された認証メッセージが送信され、この受領をもって、証拠書類の提出が完了したものとみなされます。

3.VAT登録について

VES(VAT for Electronic Service)システムは今後、事業者がVAT登録、VAT登録情報の変更、VAT登録の取消し、または、VAT 登録に関連するその他の手続きを行う際にも利用されます。事業者は年間売上高が180万バーツを超えた日から30日以内にVAT登録を行わなければならない(歳入法第81/1条)ため、法第53号の施行開始日時点で既に売上が180万バーツに達している事業者は、早急にVESシステム上でVAT登録を行う必要があります。システム上でVAT登録が承認された場合は、従来のVAT登録証(PorPor20)に代わり、VESシステム上の登録事業者リストに掲載されます。

4.おわりに

10月18日現在、海外企業の登録件数は98件となっており、その内日系企業の登録も数社確認できています。法第53号は既に施行開始されているため、電子サービスをタイ国外からタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業は、早急に対応する必要があるといえます。

 

[1] https://oneasia.legal/7325

[2] 海外の電子サービスをタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業を指し、電子サービス提供者だけでなく、電子プラットフォーム提供者も含む。

[3] https://eservice.rd.go.th/rd-ves-web/landing

[4] オンライン上でのVATの計算、提出、送金、課税、登録、還付、不服申し立て等に関する召喚状、納税通知書、申請書、報告書等を意味する。

                                                以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
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2021年09月30日(木)11:44 AM

タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について報告いたします。

中小企業に対する与信期間の設定について

 

 

 

       タイにおける中小企業に対する与信期間の設定について
                               2021 年 9 月 30 日
                          One Asia Lawyers タイ事務所
1 はじめに
2021 年 5 月 24 日、取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者
である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、「本ガイドライン」)」が発布さ
れました。本ガイドラインは、取引競争法第 57 条の下位規範として、中小企業が取引
先に提示される不当な与信期間により被り得る不利益を回避し中小企業を保護すること
を目的に制定され、中小企業と取引を行う全ての事業者に対し、施行開始日である
2021 年 12 月 16 日により適用されます。
2 中小企業とは
本ガイドラインで保護される中小企業は以下の通りとなっています(本ガイドライン第
2 条)。
(1) 200 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 5 億バーツ以下の製造者
(2) 100 人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が 3 億バーツ以下のサービス提供者、
卸売業者、または小売業者
なお、中小企業は取引先に対し、本ガイドラインが定める中小企業に該当することを従
業員数または売上高を証明する書類の提示を以て、証明する必要があります(本ガイド
ライン第 4 条 2 項)。中小企業と取引を行う企業は定期的(契約締結時または更新時な
ど)に当該書類の提出を求め、本ガイドラインが定める中小企業に該当しているかを確
認することが好ましいと考えます。
3 本ガイドラインが定める与信期間
中小企業が一般的な商品販売者、商品製造者、サービス提供者である場合、与信期間を
45 日またはそれ以下に設定しなければなりません。ただし、中小企業が農産物または
農産物の加工品(製造工程が複雑でないもの)だけを取り扱う商品販売者、商品製造者、
サービス提供者である場合、与信期間を 30 日以下に設定する必要があります(本ガイ
ドライン第 4 条(1))。
つまり、既に上記より長い与信期間での合意がなされている場合でも、原則として本ガ
イドラインの施行開始日前までに改定する必要があります。
なお、ビジネス、マーケティング、または経済的な観点から合理的であるとみなされる
場合は、上記の与信期間より長く設定することも可能であると規定されています(本ガ
イドライン第 4 条 2 項)が、例外として認定されるかはケースバイケースで担当官の判
断に委ねられると考えます。取引競争委員会に照会したところ、取引先の親会社の規定
で与信期間を 60 日に設定しなければならない場合でも、例外としては認められないと
の回答を得ています。
4 与信期間の起算日
上述した与信期間の起算日は、中小企業が商品を納品またはサービスを提供し、かつ納
品書や請求書等の必要書類を提出した日となります。商品の納品後、請求書が後日発行
されるような場合は、請求書の発行日が起算日となります。また、委託販売の場合は中
小企業による商品販売日が起算日となります(本ガイドライン第 4 条(2))。
5 違反とみなされ得る行為及び罰則
本ガイドライン第 5 条において、違反とみなされうる行為として以下の行為が挙げられ
ています。
• 商品またはサービスの代金支払時期が、正当な理由なく、本ガイドラインで
定めた与信期間より遅れること。
• 正当な理由や 60 日以上前の事前通知なく、契約で定めた与信期間または支
払条件を変更すること。
• その他の不当行為。例えば、契約上で与信に関する特別条項を規定し、中小
企業に不要な負担を強いること。
本ガイドラインの違反者は、違反を犯した年の売上高の 10%を超えない額の罰金を科
される恐れがあります(取引競争法第 82 条)。 

                                    以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
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2021年09月01日(水)10:12 AM

タイにおけるVAT税率据え置きについて報告いたします。

VAT税率据え置きについて

 

 

 

タイにおけるVAT税率据え置きについて

 

2021年8月31日

One Asia Lawyersタイ事務所

商品の販売、サービスの提供、及び輸入に係る付加価値税(以下、「VAT」)税率が2566(2023)年9月30日まで7%に据え置かれることが決定され、2021年 8月27日に勅令第324号[1]が官報に掲載されました。

タイのVATは1991年の改正歳入法により第80条で10%と定められていますが、同条2項において、勅令を制定することによりこれを引き下げることができると規定されています。そのため、1999年[2]以降勅令が発布され続け、VAT税率が7%に据え置かれてきました。

今回の措置は、国民の支出軽減、民間企業の救済、そして新型コロナウイルスにより多大な影響を受けた国の経済の安定化を目的としています。

なお、VAT税率7%は国税(6.3%)と地方税(0.7%)で構成されます。勅令第324号は歳入法第80条に基づくVAT税率の引き下げを行うものとし、その税率を6.3%とすると規定していますが、地方税0.7%については2534(1991)年地方自治体へのVAT分配と特別事業税に関する法律及び2534(1991)年地方自治体歳入法(第3号)により、地方自治体に代わって歳入局がVATの九分の一を徴収することと定められています。つまり、6.3%の九分の一である0.7%が地方税として加えられ、合計7%がVATとして徴収されます。

 

[1] http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2564/A/054/T_0001.PDF

[2] 2542(1999)年勅令第353号

http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2542/A/022/91.PDF

以上 

〈注記〉
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2021年08月24日(火)9:57 AM

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について報告いたします。

VAT 課税に関する歳入法の改正について

 

 

 

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について

 

2021年8月24日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

1.はじめに

2021年2月9日、タイにおいて、海外から提供される電子サービスからの付加価値税(以下、「VAT」という)の徴収を規定した歳入法B.E.2481(1938)の改正を目的とした改正歳入法(No.53)B.E.2564(2021)(以下「法第53号」という)が成立した。2021年9月1日に施行される予定である。

以下、その改正点を詳述する。結論を先に述べると、改正によって、海外の「電子サービス」(下記の定義規定参照)をタイ国内で当該サービスを利用する個人消費者などの非VAT登録者に提供する事業者(以下「対象事業者」という)は、VAT登録の義務を負い、(仕入VAT及び売上VAT間の相殺を行わずに)VATを支払わなければならず、タックスインボイスの発行も禁止されることとなる。そして、「電子プラットフォーム」(下記の定義規定参照)運営者は、対象事業者がそのプラットフォームを通じて上記サービスの提供を行う場合、その対象事業者に代わってVAT支払い義務を負い、その義務と責任はその対象事業者と同等のものとされる。

2.納税関連文書等について

改正により、作成及び提出等の対象となる納税関連文書が明示的に拡大された。

これらの文書等については、改正前は「電子取引法で定める規則に準じて」作成及び提出することと定められていたのに対し、改正後は「省令で定める規則及び手続きに従って」(当該省令は、まだ発布されていない。)作成及び提出することと定められた。

これにより、改正後は、これらの文書等を改正前と異なる規則にしたがって、電子的方法によって作成及び提出することができるものとした。

 

第3条の16〔改正前〕

納税に関連する報告又は文書の提出、及びその他の歳入法に基づく文書の作成は歳入局長が定めた規則、手順、及び条件に従って電子的方法により行うことができる。この場合、電子取引法で定める規則に準じなければならない。

第3条の16〔改正後〕

召喚状、納税通知書、帳票、タックスインボイス、報告書、証拠書類、その他歳入法に基づいて入手、発行、使用しなければならない書簡、歳入局が納税者やその他の者と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡、又は納税者やその他の者が歳入局と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡は、省令で定める規則及び手順に従って電子的手段を用いて作成することができる。

第1項の省令は、電子取引に関する法律に準拠した文書の作成、提出、受領、保管のための関連規則及び手続きを定めるものとする。

 

3.定義

  • 「商品」について

改正により「商品」の定義から、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産が明示的に排除された。

 

第77/1条9項〔改正前〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。

第77/1条9項〔改正後〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。ただし、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産を除く。

 

  • 「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」について

改正により、新たに「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」が定義された。

 

〔改正前〕

規定なし

第77/1条10/1項〔改正後〕

「電子サービス」とはインターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産の提供を含むサービスで、基本的に自動化され、かつ、情報技術を使用せずには提供することが不可能なサービスを指す。

第77/1条10/2項〔改正後〕

「電子プラットフォーム」とは、多くのサービス提供者がサービス受領者に電子サービスを提供するために使用するマーケット、チャンネル、その他の手続きを指す。

 

4.VAT課税について

  • 課税範囲と電子プラットフォームに課される義務について

改正により、従来の条項(以下「第1項」という)に加えて、第2項及び第3項が加えられた。

第2項によれば、対象事業者は、第1項の適用がなく、仕入VATを控除せずに売上VATを計算し、VATを支払わなければならない。そして確定申告書類を提出し、第83条にしたがって納税しなければならない。

第3項によれば、対象事業者が電子プラットフォームを通じて電子サービスを提供する場合に、電子プラットフォーム運営者はその対象事業者に代わってVATを支払う義務を負う。電子プラットフォーム運営者の義務と責任は、対象事業者と同等とされる。

 

第82/13条〔改正前〕

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第82/13条〔改正後〕

第1項

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第2項

第1項は、事業者が海外から電子サービスを提供しそのサービスをVAT非登録者がタイ国内で利用する場合には適用されない。この場合、当該事業者は仕入VATを控除せずに売上VATを計算することでVATを支払う必要がある。当該事業者は、確定申告書を提出し、第83条に従って納税しなければならない。

第3項

第2項の事業者が、電子プラットフォームを通じてサービスの提供、サービスの対価の受領、サービスの配信、及びその他歳入局長が定める行為からなる連続したプロセスで、電子サービスを提供する場合、当該電子プラットフォーム運営者は、各事業者のサービス提供内容を分類することなく、すべての事業者に代わってVATの支払義務を負う。また、当該電子プラットフォーム運営者は、第2項の事業者と同等の義務及び責任を負うものとする。

 

  • VAT支払い義務を有する主体について

改正により、第83/6条(2)に但書きを加え、(a)(b)同上

 

第83/6条〔改正前〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第83/6条〔改正後〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

  • VAT登録が不要とされる事業者について

改正により、第85/3条(2)に但書きを加え、(a)(b)の条項を加えたことによって、例外的事業者のみが、VAT登録が不要とされた。これにより、例外的事業者でない対象事業者は、VAT登録義務を負うことが確認された。

 

第85/3条〔改正前〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第85/3条〔改正後〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

5.タックスインボイス発行が禁止される事業者について

改正により、対象事業者はタックスインボイスの発行が禁止された。

 

第86/1条(1/1)〔改正前〕

規定なし

第86/1条(1/1)〔改正後〕

(1/1) 海外から電子サービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で非VAT登録者により利用されている場合。

 

6.おわりに

2021年6月10日に発行されたバンコク・ポスト紙の報道によれば、財務省財政事務局(Fiscal Policy Office)のクラヤ・タンティミット局長が、タイの法律では、タイに恒久的施設(PE)を持たない企業(以下、「オンライン企業」という)に法人税を課すことは認められていないため、現在、財政省では、タイでサービスを提供するオンライン企業に法人所得税を課す方法を検討していると発言した。その発言は、G7財務大臣協定における、各国が低税率を維持することによって多国籍企業の誘致競争を止めるべき旨の定めを受けたものである。このことから、今後、海外に拠点を有するオンライン企業に法人税を課すことに関する法改正が成立する可能性があるため、今後の動向を注視していく必要がある。

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

2021年08月09日(月)2:45 PM

タイにおける従業員が死亡した場合の葬儀費用について報告いたします。

従業員が死亡した場合の葬儀費用について

 

 

 

従業員が死亡した場合の葬儀費用について

 


                                    2021年8月9日
                              One Asia Lawyersタイ事務所

2561年(2018年)改正労働災害補償法第16条[1]では、従業員が通勤途中または雇用者の命令による作業中に死亡したまたは行方不明となった[2]場合、従業員の葬儀主催者に対し省令で定める葬儀費用を支払うよう雇用者に義務付けています。

 これに伴い、2020年3月26日に2563年(2020年)雇用者が支払う葬儀費用のレートを定める労働省令(以下、「2020年省令」)が発布され、施行開始日である2020年12月9日以降、雇用者は従業員が死亡した場合に4万バーツを葬儀費用として葬儀主催者に支払うよう定められていましたが、現在の経済状況に伴い、今回「2564年(2021年)雇用者が支払う葬儀費用のレートを定める労働省令[3](以下、2021年省令)」が発布され、その費用が5万バーツに改定されました。つまり、雇用者は2020年省令の施行開始日である2020年12月9日以降2021年7月11日までに従業員が死亡した場合は2020年省令で定める4万バーツを、2021年省令の施行開始日である2021年7月12日以降は5万バーツを葬儀費用として支払う必要があります。

 なお、当該費用の支払いは雇用者に義務付けられているものの、実際には雇用者が毎年納める労災基金から支払われることになります。

 また、通勤途中または雇用者の命令による作業中以外の理由で従業員が死亡した場合で、死亡前6ヵ月間のうち最低1か月間の社会保険料を納めていた場合は、社会保険基金より葬儀費用として5万バーツが支払われることになります。

[1] 第16条 従業員が怪我や病気により死亡した場合または行方不明の場合、使用者は従業員の葬儀主催者に対し、省令で定めたレートに基づき葬儀費用を支払うこと。

[2] 従業員が通勤途中または使用者の命令による作業中に事故等に遭い死亡したと想定される場合で、陸上、海上、水上による通勤途中で、乗車中の乗り物が事故等に遭遇し、当該事故等から120日以上従業員が見つからず、死亡したと想定される場合を含む。

[3] http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2564/A/045/T_0066.PDF

 

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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2021年07月12日(月)9:01 PM

タイ・シンガポール間のリアルタイム送金システムの相互接続について報告いたします。

リアルタイム送金システムの相互接続について

 

 

 

タイ・シンガポール間のリアルタイム送金システムの相互接続について


                                    2021年7月12日
                              One Asia Lawyersタイ事務所

1 はじめに

2021年4月29日、タイ中央銀行とシンガポール金融管理局は、タイの「PromptPay」とシンガポールの「PayNow」のリアルタイムのデジタル送金システムの連携を開始したと発表した。これにより送金相手の電話番号さえわかれば、スマートフォンの銀行アプリを利用してたった数分でタイ・シンガポール間の送金が可能となり、世界でも初の試みとなる。

2「PromptPay」及び「Paynow」とは?

どちらも銀行口座に携帯電話番号を紐づけることにより、タイまたはシンガポール国内での送金を即座に可能とするデジタル送金システムであり、タイでは2016年6月の導入後、4,000万口座以上がPromptPayサービスに接続済と報告されている。利用希望者はそれぞれの国の提携銀行[1]にて「PromptPay」または「PayNow」の利用登録申請を行う必要があるが、登録が完了すれば送金時に受取人の氏名や銀行口座情報などを入力する必要はなくなる。

3 送金手数料・送金上限額

「PromptPay」を利用しタイからシンガポールに送金した場合の手数料は、2021年7月31日まで1件につき75THB、2021年8月1日以降は1件につき150THBとなっている。

また、シンガポールへの送金額上限は1日当たり1,000シンガポールドル(1日の送金額合計が上限以下であれば、送金回数に制限なし)、タイでの受け取り上限は1件当たり2万5,000バーツまで(複数の送金者から何度でも受け取り可能)と設定されているが、今後上限額は拡大していく見込みである。

4 同一名義口座への送金

タイ国籍保持者によるタイ国内の自身の口座とシンガポール国内の自身の口座間の送金は認められていないが、外国人についてはその旨規定されていない。そのため外国人に限っては、同サービスを利用し自己資金をタイ・シンガポール間で移動させることも可能であると考えられる。

5 さいごに

タイ中央銀行はシンガポールとの連携だけでなく、他のASEAN諸国とのデジタル決済システムの連携も強めている。カンボジア、ベトナム、日本、ラオスとの間では現在QRコードによる決済が可能で、インドネシア及びマレーシアも近いうちに連携が開始される予定となっている。現在タイ・シンガポール間の送金においてQRコードによる決済は導入されていないが、今後も引き続き動向を注視していく必要がある。

[1] 2021年4月29日にBOTが公表したQ&Aによると、本デジタル送金システムの利用が可能なタイ側の提携銀行はバンコク銀行、クルンタイ銀行、カシコン銀行、サイアム商業銀行、シンガポール側の提携銀行はDBS銀行、OCBC銀行、UOB銀行となっている。

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


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