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2020年09月23日(水)3:18 PM

タイにおけるアルコール飲料の広告、宣伝及び販売規制について報告いたします。

PDF版は以下からご確認下さい。

アルコール飲料の広告、宣伝及び販売規制について

 

タイにおけるアルコール飲料の広告、宣伝及び販売規制について

 

2020年9月21日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

首相府は2020年9月8日、アルコール飲料の購入者の年齢や販売時間を厳格に取り締まる目的で、電子的手段を通じたアルコール飲料の販売を禁止する告示を発出しました。本ニュースレターでは同告示の概要も含めた現在のタイにおけるアルコール飲料の広告、宣伝及び販売規制を定める法令について、以下の通り解説致します。

 

1 アルコール飲料管理法

タイではアルコール飲料に関する活動を規制する目的で、2008年にAlcoholic Beverage Control Act, B.E. 2551(以下、「アルコール飲料管理法」)が制定されています。同法第30条においてアルコール飲料の販売方法が、同法32条においてアルコール飲料の広告及び宣伝方法がそれぞれ規制されています。

アルコール飲料管理法第30条(参考日本語訳)

以下の手段または形態でアルコール飲料を販売してはならない。

  • (1)自動販売機の使用
  • (2)移動販売
  • (3)販売促進のための割引
  • (4)競技やパフォーマンスに出席する権利の付与または提供、サービスあるいは賞品の付与、またはアルコール飲料の購入者あるいはアルコール飲料に関連する包装、ラベル、その他の物を持参した者に対する、引き換えあるいは取引するような形での特典の付与
  • (5)アルコール飲料、その他の商品、あるいはその他のサービスの配布、おまけの付与、提供または交換、サンプルとしてのアルコール飲料の配布、人々を飲酒するよう唆す行為、またはアルコール飲料の購入を直接的または間接的に強いる方法で販売条件を設定する行為
  • (6)委員会の推薦のもとで大臣が告示で定めたその他の手段や形態

 

タイの街中で目にする機会の多い「Buy One Get One Free(1つ注文すればもう1つは無料)」のプロモーションは、厳格にいえば同法第30条(3)に該当し、また「飲み放題プラン」も同法同条(5)で飲酒を唆す行為に該当するため禁止されると考えられます。

 アルコール飲料管理法第32条(参考日本語訳)

特性を表示する、または直接的あるいは間接的に飲酒を唆すようなアルコール飲料の広告、アルコール飲料の名称または商標の表示を禁止する。

全てのアルコール飲料の製造会社による広告または広報活動は、情報、ニュース、及び社会を築くための知識の提供に限り可能とする。この際、商品の写真またはアルコール飲料のパッケージの表示は認められない。ただし、アルコール飲料のシンボルまたはアルコール飲料製造会社のシンボルのみ省令の定めに従い表示が認められる。

第1段及び第2段の規定は、タイ王国の国外で作成された広告には適用されない。

 

商品の特性を表示したり、飲酒を唆したりするような広告及び宣伝だけでなく、レストランのメニュー上でのアルコール飲料を想起させる写真またはシンボルの掲載についても同法第32条に該当、禁止され、後述する通り実際に罰則を受けた事例があります。

また、「広告」とは同法第3条において商業目的であることが明記されていますが、新聞報道等によれば、近年、個人がSNS上で友人を飲み会へ招待したり、ビールのテイスティング後にレビューをしたりする形で投稿したことを理由に摘発されている事例があり、同法第32条に基づき禁止される行為が条文上曖昧です。

アルコール飲料管理法第3条(参考日本語訳)

「広告」とは、商業目的で、マーケティングを含む、人々に対する情報の周知、伝達行為を意味する。

 

上述したアルコール飲料管理法第30条及び第32条に違反した場合、それぞれ以下の通り罰則の対象となります。

アルコール飲料管理法第41条(参考日本語訳)

同法第30条(2)(3)(4)(5)または(6)に違反した場合、6か月以下の懲役、1万バーツ以下の罰金、または併科とする。

 

アルコール飲料管理法第43条(参考日本語訳)

同法第32条に違反した場合、1年以下の懲役、50万バーツ以下の罰金、または併科とする。

第1段落で定める罰則に加え、違反を犯している期間に渡り、違反者に対し1日当たり5万バーツ以下の罰金を当該違反行為が是正されるまで科す。

 

2 摘発事例

<レストランのメニュー掲載の事例>

2015年3月24日、チャオプラヤ沿いアジアティーク内のレストランが、メニューにビールを想起させる写真を掲載していたためアルコール委員会が訴訟提起した件で、裁判所は飲酒を唆す行為であると認定し、違反期間合計220日(2014年7月30日から2015年3月6日)に対し、合計46万バーツの罰金の支払いを命じました。本件はレストランのメニューに掲載したアルコールの写真がアルコール飲料管理法第32条の違反であると認定され訴訟[i]まで進んだ初めての事例として当時、話題になりました。判決内容については公開されていませんが、レストランのオーナーによるとメニュー上に掲載されたグラス入りのビールの写真にはビールの銘柄や製造会社のシンボル等は一切表示されていなかったにも関わらず、黄色い液体と白い泡が入ったグラスの写真はビールを想起させるシンボルであると認定され、間接的に飲酒を唆す行為に該当すると判示されたとオーナー自身がインターネット上にコメント[ii]しています。

 

SNSへの投稿の事例>

2020年6月25日のマティチョン紙[iii]によれば、フェイスブックの個人ページ上にビールの写真とメッセージを掲載した女性がタイ保健省疾病管理局アルコール飲料管理委員会に出頭を命じられたと報じています。タイでは数年前から個人のSNS上でのアルコール飲料に関する投稿を取り締まる事例がたびたび見受けられます。アルコール管理法第32条が定める「広告」とは、同法第3条で定義される「商業目的のための」行為であると解されているにもかかわらず、個人の趣味や娯楽の範囲内でアルコール飲料のロゴやマークが表示された写真を掲載し、かつ、その特性を謳ったり飲酒を唆すような記述をした場合は、個人であってもアルコール飲料管理法第32条違反を理由に摘発されているようです。

 

3 電子的手段によるアルコール飲料の販売規制

2020年9月8日に発出された電子的手段を通じたアルコール飲料の販売を禁止する告示は、施行開始日である2020年12月8日より、販売者と消費者が物理的に会うことなく電子的手段によりアルコール飲料を販売する行為等が禁じられると規定されています。例えば、自宅にいる消費者に対して販売者がGrab Foodのアプリやスーパーのウェブサイト等を介しアルコール飲料を販売する行為等が該当し禁止されると考えられますが、同告示上「電子的手段」の定義が明確に規定されておらず、どのような機能を有したシステムが該当するのか、機能を問わずインターネットを介するシステムは全て該当するのか否か等について、今後さらにガイドライン等が発行されると考えられています。

電子的手段を通じたアルコール飲料の販売を禁止する告示 日本語参考訳

第1条 電子的手段を通じ、購入を勧めたり提案したりする形で、消費者に対し直接、アルコール飲料またはアルコール飲料販売に関するサービスを販売する方法、または電子的手段により情報を伝達し、販売者と消費者が直接会わずに売買を可能とするようなアルコール飲料販売に関するマーケティングもしくはサービスを通じて、消費者に対し直接、商品もしくはサービスを販売する方法により、アルコール飲料を販売する行為を禁じる。

第2条 本告示は、店頭、レストラン、もしくはアルコール飲料サービス提供場所において電子的手段によりアルコール飲料の売買及び支払いが行われた場合は適用されない。

第3条 本告示は官報掲載から90日後に施行開始とする。

 

 

4 今後の対応                                                                              

消費者や事業者の間ではアルコール飲料管理法第32条及び電子的手段を通じたアルコール飲料の販売を禁止する告示に反対する声が多くあがっていますが、政府の規制は今後もより一層厳格になっていくと予想されており、禁止対象とされる行為の解釈が今後のガイドライン等で明確になるまで、アルコール飲料の販売及びマーケティング活動には十分注意する必要があります。

以 上

[i] 訴訟番号第อ3937/2557号

[ii] https://www.facebook.com/watch/live/?v=637830840493383&ref=watch_permalink

[iii] https://www.matichon.co.th/social/news_2242205

 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。


本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)



 

 

2020年07月31日(金)2:24 PM

タイにおける労働裁判について報告いたします。

労働裁判について

 

タイにおける労働裁判について


                                  2020年7月31日
                             One Asia Lawyersタイ事務所
Covid-19の影響により、経営状況が悪化したことから、最近、少し強引な手法で解雇や減給等が強行される事例を目にしており、その結果、労働訴訟に関するご相談を受けることが増加しております。タイでの労働裁判所への訴訟提起は、訴訟費用が無料であり、休日でも裁判が可能なことから、労働者にとって比較的容易に手続きできるよう設計されています。そのため、雇用者は労働法令を遵守し、労働者の訴訟提起の要因となりうる事案を回避することが重要ですが、ある日突然、会社に訴状が届くことも珍しくありません。本ニュースレターでは、不当解雇を理由とする労働裁判を例に、そのプロセスと雇用者側の検討しておくべき事項について以下の通り解説致します。
1 労働者の権利
まず、前提として、労働者が労働問題に関する申立てを行う手段として、以下の3つが挙げられます。
(1) 労働者保護法第123条iに基づく労働検査官への申立て
(2) 労働関係法第124条iiに基づく労働関係委員会への申立て
(3) 労働裁判所設置・労働裁判法第8条iiiに基づく労働裁判所への提訴


2 労働者保護法第123条 に基づく労働検査官への申立て
労働者が労働者保護法に基づき労働検査官に申立てを行う場合、労働者保護福祉局長が定める様式の申立書「KorRor.7(คร.7)」を提出します。その後、労働検査官による審理が行われ、労働者が同法に基づき金銭を受け取る権利があると判断された場合、同法第124条に基づき、労働検査官が支払命令を発出します。同命令に対し不服がある場合、雇用者は同命令を知った日から30日以内に裁判所に訴訟を提起することが可能となっています(同法125条1項)。ただし、雇用者は上記訴訟を提起するにあたり、上記命令により支払いが命じられた金額を裁判所に供託する必要があります(同法125条3項)。雇用者及び労働者から指定
された期日内に裁判所に訴訟提起されなかった場合、労働検査官の命令は最終命令となります(同法125条2項)。
雇用者が労働検査官の命令を知った日から30日以内に支払いが行われない場合、同法第151条第2項に従い、使用者は懲役1年以下、罰金20,000バーツ以下、またはその両方を含む刑事罰が科せられますので、留意が必要です。
<労働者保護法に基づく申立ての流れ>

※図はPDF本文をご確認ください。


3 労働関係法第124条 に基づく労働関係委員会への申立て
被雇用者の労働組合員としての活動を雇用者が不当に妨げるような行為は、労働関係法第121条iv、122条v、または123条viに違反する行為であり、労働者は当該違反があった日から60日以内に労働関係委員会に申立てることができます。労働者が申立てを行った場合、労働者関係法125条に従い、労働関係委員会による審理が行われ90日以内に命令を発出します。同命令に対し不服がある場合、命令が発出された日から15日以内、もしくは命令で指定された期日までに労働関係委員会に異議を申し立てることが可能となっています。当該異議申立に対する労働関係委員会の決定に不服がある場合、労働裁判法第8条(4)に基づき労働裁判所への異議申し立てを行うことが可能となります。同法第121条、122条、または123条に違反した雇用者は、労働者関係法158条及び159条に従い、懲役6ヶ月以下、罰金刑は10,000バーツ以下、またはその両方を含む刑事罰が課せられます。
<労働関係法に基づく申立ての流れ>
※図はPDF本文をご確認ください。


4 労働裁判所設置・労働裁判法第8条 に基づく労働裁判所への提訴
タイでの労働裁判については、労働裁判所設置・労働裁判法(以下、「労働裁判法」)で定められています。労働裁判所への訴訟提起は、労働者保護法及び労働関係法などで必要な手続きが規定されている場合、その手続きを経た場合にのみ、労働裁判所への手続きへと進めることができます(労働裁判法第8条2項)。したがって、労働者が解雇についてだけ争いたい場合は、直接労働裁判所に訴訟提起することができますが、解雇補償金や賃金の未払いなど労働者保護法に基づく金銭の支払いを受ける権利について争いたい場合は、上記の労働者保護法123条 に基づく労働検査官への申立てをまず行う必要があり、いきなり労働裁判所に訴訟提起することはできません。
労働裁判所への訴訟提起は、口頭でも可能(同法第35条)で、訴訟費用も無料(同法第27条)、休日でも裁判が可能(同法第28条)というように労働者にとって比較的容易かつ有利に手続きできるように設計されています。審理においては裁判所に提出された証拠だけでなく、労働条件、生活費、労働者の困苦、賃金水準、同種の事業で働く労働者の権利と利益、雇用者の事業の状況や経済社会状況も考慮されます(同法第48条)。
タイの労働裁判では、通常の審理期日前に和解のための調停期日が設定されます。被告である雇用者は、訴状を受け取った後、裁判所からの呼出状において設定された調停期日までに答弁書を提出する必要があります。なお、事前に手続きすれば期日の延長も可能です。
答弁書では主に、訴状での原告の主張に対し反論を行うため、不当解雇における損害賠償請求訴訟であれば、解雇がいかに正当であったかを主張・立証します。タイの裁判は日本での裁判と異なり、主張書面を提出できる機会は非常に限られていますので、この答弁書で雇用者の主張をほぼ主張し尽くす必要があります。
また、答弁書の提出に加え、類似の事件に関する過去の判例において賃金の何か月分の損害賠償が認容されているかを調査し、調停での和解案を提示する場合の目安として認識しておくことも重要です。調停は、訴訟開始後から判決言渡し前までの間いつでも可能となっています(同法第38条及び第43条)。もっとも、調停において和解できない場合、労働裁判所は、争点と双方当事者の主張を記録し、証人尋問の期日を定めます(同法第39条)。当事者は証人尋問期日の7日前までに証拠リストと証拠を提出します(民事訴訟法第88条)。証人尋問期日における証人尋問手続きでは、主として労働裁判所が尋問を行い、当事者またはその代理人弁護士は労働裁判所の許可を得て尋問を行います(同法第45条2項)。必要な証人尋問が終了したとき、審理は終了したものとみなされ、当事者はその審理終了日に口頭で最終陳述をすることができます。そして、労働裁判所はこの審理終了日から3日以内に判決または命令を言い渡します(同法第50条1項)。
労働裁判所での解雇に関する判決は、労働者を解雇時と同等の賃金で復職させるか、または従業員と会社が協力して業務を遂行できないと裁判所が判断すれば損害賠償金の支払いを命じるかのどちらかになります(同法第49条)。
労働裁判所の判決に不服のある当事者は、判決の言い渡し日から15日以内に最高裁判所に法律的な面についてのみ不服を申し立てることができます(同法54条1項)。なお、この不服申立をしても労働裁判所の判決による執行は停止されず、別途執行停止の申立については、判決を言い渡した労働裁判所に行う必要があります(同法55条)。
<労働裁判所での訴訟の流れ>
※図はPDF本文をご確認ください。


以上、タイにおける労働紛争解決制度の概要とプロセスになりますが、比較的、労働者にとって有利な設計になっておりますので、基本的な労働法の知識を十分に押えた上、労働問題を生じさせないような予防的な対応を慎重に取っていくことが肝要だと考えます。
                                          以 上
〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 本資料は2020年7月31日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。
以上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)
i 労働者保護法第123条
被雇用者が本法令に基づき金銭を受け取ることのできる権利に関して、雇用者が違反した、または履行せず、被雇用者が本法令に基づき担当官に執行を望む場合は、被雇用者の勤務地を管轄する、または局長の定めに従った雇用者の登記住所の労働検査官に対し、被雇用者は申立書を提出する権利を有する。
本法令に基づく金銭受け取りの権利に関連し、被雇用者が死亡した場合は、その法定相続人が労働検査官に申立書を提出する権利を有する。
ii 労働関係法第124条
第121条、第122条または第123条に違反した場合、その違反の被害者は、違反があった日から60日以内に労働関係委員会に対し違反者を訴えることができる。
iii労働裁判法8条
労働裁判所は以下の件に関し、事件を審判し、命令する権限を有する。
(1) 雇用契約、もしくは雇用条件に関する合意に基づく権利、もしくは義務に係る紛争事件。
(2) 労働者保護法、労働関係法、国営企業労働関係法、職業紹介・求職者保護法、社会保険法、または(労働者災害)補償金法に基づく権利または義務に係る紛争事件。
(3) 労働者保護法、労働関係法、または国営企業労働関係法に基づき裁判所を通じた権利を行使しなければならない場合。
(4) 労働保護法に基づく担当官の決定、労働関係法に基づく労働関係委員会もしくは労働大臣の決定、国営企業労働関係法に基づく国営企業労働関係委員会もしくは労働大臣の決定、社会保険法に基づく異議申立委員会の決定、または(労働者災害)補償金法に基づく補償金基金委員会の決定に対する異議申し立て。
(5) 労働紛争もしくは雇用契約に基づく労働に関し、雇用者と被雇用者間の違約を事由に生じた事件。この場合、雇用を通じた労働によって生じた被雇用者と被雇用者間の違約事由も含む。
(6) 労働関係法、国営企業労働関係法、または職業紹介・求職者保護法に基づき労働大臣が労働裁判所に判定を求めた労働紛争。
(7) 法律が労働裁判所の権限と規定した事件。
第一段に基づく事件は、労働者保護法、労働関係法、国営企業労働関係法、職業紹介・求職者保護法、社会保険法、または(労働者災害)補償金法が担当官に対する申立て、手順及び方法による執行を規定している場合、当該法律が定めた手順及び方法をとった時、労働裁判所での手続を進めることができる。
iv 労働関係法121条
雇用者の以下の行為を禁ずる。
(1) 被雇用者、被雇用者代表、労働組合委員または労働連合委員に対し、被雇用者または労働組合が集会した行為、申し立てた行為、要求を提出した行為、調停もしくは訴訟を提起した行為、労働者保護法に基づく担当官、労働争議調停官、労働争議裁定人、労働関係委員、もし
くは労働裁判所に対し証人となった行為、または、これらの行為をしようとしていることを理由に解雇する、または勤務の継続を不可能とさせる何らかの行為。
(2) 被雇用者が労働組合の組合員であることを理由にその被雇用者を解雇する、または勤務の継続を不可能とさせる何らかの行為。
(3) 被雇用者が労働組合の組合員になることを妨げる、もしくは組合を退会させる行為、または被雇用者を組合員として申請させない、申請を受理しない、もしくは組合を退会させるために、被雇用者または労働組合の担当者に対し金銭を与える、もしくは金銭を与えることに合意する行為。
(4) 労働組合または労働連合の活動を妨げる行為、または被雇用者が労働組合員であることの権利を行使することを妨げる行為。
(5) 法律に基づく権限なしに、労働組合または労働連合の活動に干渉する行為。
v 労働関係法122条
いかなる者であっても以下の行為を禁ずる。
(1) 強制または直接・間接的な脅迫により被雇用者を労働組合に加入させる、または労働組合を退会させる行為。
(2) 雇用者に第121条に基づく違反をさせる何らかの行為。
vi 労働関係法123条
以下を除き、労働協約または裁定が施行されるまでの間、雇用者が当該要求に関係する被雇用者、被雇用者代表、労働組合の委員もしくは小委員もしくは組合員、または労働連合の委員もしくは小委員を解雇することを禁じる。
(1) 雇用者に対し意図的に職務上の不正行為を働いた、または刑事上の違法行為をなした場合。
(2) 故意に雇用者に損害を与えた場合。
(3) 雇用者が文書で警告したにもかかわらず、規定、規則、雇用者の合法的な命令に違反した場合。ただし重大な違反の場合は、使用者の警告は不要とする。この場合、その規定、規則、または命令は当該者の要求に関する手続きを妨害するために出されたものであってはならない。
(4) 正当な事由なく3日間連続して職務を放棄した場合。
(5) 労働協約または裁定に違反するよう教唆、支援、または説得する何らかの行為を行った場合。

2020年07月01日(水)3:33 PM

タイにおけるMRO規制について報告いたします。

MRO規制について

 

タイにおける MRO 事業に関する概要とアップデート

2020 年 6 ⽉ 30 ⽇
One Asia Lawyers タイ事務所

2016 年にプラユット政権が発表したタイの 20 カ年国家戦略の中核となる「タイランド 4.0」
は、外国企業の誘致を通じて先進技術を導⼊し、産業構造の⾼度化と 20 年以内に先進国⼊
りの実現を⽬指すために掲げられたビジョンですが、その投資対象地域として指定されてい
るのが、チョンブリ県、ラヨーン県、そしてチャチュンサオ県の3県から成る EEC
(Eastern Economic Corridor: 東部経済回廊)です。
2018 年 5 ⽉には EEC 開発法iが施⾏され、EEC 政策委員会は EEC への投資において特に重
要とみなされる 12 のターゲット産業iiなどに対し、BOI の恩典を超えた優遇措置の決定権限
が与えられています。その中でもラヨーン県に位置するウタパオ空港での MRO 事業はEEC
開発計画の中でも⽬⽟プロジェクトで、第 1 期に 63 億バーツ(約 229 億円)iiiを投じ 210 ラ
イの広⼤な敷地で開発が予定されています。

1 MRO 事業とは
MRO とは、M(整備:Maintenance)、R(Repair:補修)、O(Overhaul:オーバーホー
ル)を指し、MRO 事業とは、⼀般的に航空機やその装備品に関連する整備や補修事業のこ
とを意味します。
今後、短距離の移動に航空会社を利⽤する客が増え、航空機利⽤客数は急成⻑すると⾔われ
ていますが、利⽤客数の増加とともに必要とされる航空機台数の増加も⾒込まれています。
新型コロナウイルスの影響が⼤きく⽣じる可能性が⾼いですが、アジア太平洋地域における
航空機台数は、Oliver Wyman 社の調査によれば、今後 10 年で現在の 7,786 機から 13,838
機に、また、世界市場における占有率も 17%から 35%に増加、これに伴い MRO サービス
の需要が⼤幅に拡⼤すると予想されています。
現時点でアセアン地域において MRO 事業の環境が整備されているのはシンガポールとマレ
ーシアの 2 か国のみとなっており、タイはアセアン No.1 のみならず、世界の MRO ハブを
⽬指し、優先的にウタパオ空港の MRO センター開発プロジェクトを進めています。

2 エアバス社の撤退
エアバス社(Airbus S.A.S)は 2018 年よりタイ国際航空との合弁事業による MRO センター
開発プロジェクトへの参⼊を試みていましたが、2020 年 4 ⽉ 20 ⽇に事実上、タイにおける
同プロジェクトから撤退したことが⼤々的に報じられましたiv。その後、バンコクエアウェ
イズ(Bangkok Airways PCL)、BTS グループ(BTS Group Holdings PCL)、及びゼネコ
ン⼤⼿のシノタイ(Sino Thai Engineering and Construction PCL)で組織されるBBSジョ
イントベンチャーが、MRO センター開発プロジェクトを含む東部航空都市開発事業を
2,900 億バーツで落札v、6 ⽉ 2 ⽇の閣議で承認されましたが、当該事業に MRO 施設や航空
訓練施設については含まれていません。現在、①エアバス社に代わる合弁パートナーを新た
に⾒つけるのか、②タイ国際航空単独で投資するのか、または③タイ国際航空が単独で先⾏
投資し、合弁パートナーは後で⾒つけるのか、という3つの選択肢を検討していると伝えら
れていますvi。

3 MRO 事業にかかる規制
タイの MRO 事業にかかる規制は、航空法vii(Air Navigation Act, B.E. 2497 (1954))に定め
られています。タイ国内における航空機関連のセンター運営事業は以下の 3 つに分類され
(同法第 41/93 条)、事業運営にあたりタイ⺠間航空局(The Civil Aviation Authority of
Thailand, CAAT)の局⻑より証明書を取得することが義務付けられています(同法第 41/94
条)。
 (1) クラス1:航空機のメンテナンス事業
 (2) クラス2:航空機の主要構成要素(エンジン・プロペラなど)のメンテナンス事

 (3) クラス3:航空機の機材及び部品(通信機器を含む⾶⾏に必要とされる全ての機
材及び部品)のメンテナンス事業

同法第 41/22 条において証明書の申請者に要求される資格及び特性が規定されていますが、
クラス1の申請者に限っては、以下に該当する法⼈格を有する必要があります。

 (1) タイ法に基づき設⽴された⾮公開会社または公開会社で、タイに本社を有してい
ること(航空法第 41/23 条)。
 (2) 登録資本⾦が告⽰の要件を満たしていること(航空法第 41/23 条)。
   (例)固定翼機:2,500 万バーツ以上(2016 年運輸省告⽰第 54 条viii)
 (3) タイ国籍の株主(タイ国籍の⾃然⼈、政府や政府系企業、及びタイ国籍の株主が
    51%以上の株式を保有し、タイで設⽴され、本社をタイ国内に有する⾮公開会社、
    公開会社ix、またはパートナーシップ)が 51%以上の株式を保有すること(航空
    法第 41/23 条、第 41/24 条)。
 (4) タイ国籍者が事業の管理・経営権限を有すること。(航空法第 41/25 条)
    さらに、2016 年運輸省告⽰第 16 条において、以下の要件全てに該当する場合に
    限り、タイ国籍者が事実上の管理・経営権限を有しているとみなされると規定さ
    れています。
    a. 取締役会メンバーの三分の⼆以上がタイ国籍者であること。
    b. 管理者やマネージャーにタイ国籍者を有すること。
    c. 署名権限者の三分の⼆以上がタイ国籍者であること。
    d. 第 17 条に規定される通り、タイ国籍者以外の者により経営が独占されていな
     いこと。(第 17 条では 9 つの項⽬に渡り、経営が独占されると認定されるケ
     ースを規定しています。)
 (5) 取締役など管理職レベルの者が航空法第 41/26 条に規定される禁⽌特性(破産者、
    懲役刑を受けた者、他)を有していないこと(航空法第 41/25 条)。
 (6) 過去 3 年間でタイ⺠間航空局より発⾏された証明書が失効されていないこと。
    つまり、現⾏法において、外国企業はタイにおける MRO 事業への参⼊に際し、持ち株
    ⽐率49%以下でタイ企業や政府との合弁会社を設⽴し、タイ側に経営権限を与える⽅法
    しか選択肢がない状態となっています。

4 外資規制緩和の動き
まだ正式な発表がなされているわけではありませんが、規制緩和に関する草案(緊急勅令⼜
は航空法改正案なのかは現時点では不明となっております。)が内閣で承認される可能性が
あり、今後 3 か⽉かけてタイ法制委員会事務局(Office of the Council of State)により同草
案が検討される予定であると 6 ⽉ 18 ⽇付のネーション紙で報じられています(弊所弁護⼠
から別途当局担当者に問い合わせましたが、具体的な状況等は開⽰頂けませんでした。)。
ネーション紙によれば、同草案は外国企業の MRO 事業への 100%外資での参⼊を認める⼀
⽅で、タイ⼈労働者への技術移転や認可取得後 5 年⽬以降の全従業員に占めるタイ⼈労働者
の割合を 80%以上とするなどの義務が新たに課せられるなどといわれていますx。新ルールが
施⾏されればクラス1の航空機メンテナンス事業に要求されていたタイ企業との合弁要件など
が撤廃されるため、MRO 事業における活発な外国企業の投資活動が期待されますので、今後、
同草案の動向等について注視する必要があります。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

 

i Eastern Special Development Zone Act B.E. 2561 (2018)
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/EEC-Act-English-Verunofficial.pdf
ii EEC 開発法 39 条によれば,⑴次世代⾃動⾞産業,⑵スマートエレクトロニクス産業,⑶⾼所得者対象観光及びメディカルツーリズム業,⑷先端農業及びバイオテクノロジー産業,⑸⾷品加⼯業,⑹ロボット産業,⑺航空及び物流業,⑻バイオ燃料及びバイオケミカル産業,⑼デジタル産業,⑽医療ヘルスケア産業の 10 産業であるが、これに⑾防衛,⑿教育が追加され現在では 12 産業となっています。
iii NNA ASIA 2020 年 1 ⽉ 6 ⽇付
https://www.nna.jp/news/result/1991504#MRO
v NNA ASIA 2020 年 4 ⽉ 23 ⽇付
https://www.nna.jp/news/result/2036016#%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%90%E3%82%B9%E3%80%80
v Bangkok Post 2020 年 6 ⽉ 3 ⽇付
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/1928440/bbs-lands-b290bn-u-tapao-airport-bid
vi Thansettakij 2020 年 4 ⽉ 22 ⽇付
https://www.thansettakij.com/content/430983#:~:text=%E0%B9%83%E0%B8%99%E0%B8%97%E0%B8%B5
viii Notification of The Ministry of Transport Re: Criteria and Conditions for Granting Licensing to Air OperationBusiness B.E. 2559 (2016)
https://www.nationthailand.com/business/30389789?utm_source=category&utm_medium=internal_referral
ix 無記名で発⾏された株式は外国籍株主に保有されているとみなされる(航空法第 41/24 (3))。
x The Nation Thailand 2020 年 6 ⽉ 18 ⽇付
https://www.caat.or.th/th/archives/50327

2019年01月23日(水)1:02 PM

ASEAN各国の新法状況をご報告いたします。

 

【シンガポール】決算サービス法案
【タイ】労働者保護法・刑事手続法関連の改正及びIBC制度の創設
【マレーシア】外国人社会保険義務・飲食店での喫煙禁止・贈収賄に関する改正法
【ベトナム】サイバーセキュリティー法の施行
【インドネシア】OSSシステムのBKPMへの移管
【フィリピン】外資規制緩和の最新動向
【ミャンマー】競争委員会の設立及び外国銀行の内資企業への融資撤廃
【カンボジア】労働法のアップデート
【ラオス】付加価値税法の改正
【日本】労働基準法の一部改正

 

2019新年版ニューズレター

2018年01月11日(木)4:44 PM

ASEAN各国の新法の状況をご報告いたします。

 

シンガポール→ダウンロード

タイ→ダウンロード

マレーシア→ダウンロード

ベトナム→ダウンロード

インドネシア→ダウンロード

フィリピン→ダウンロード

ミャンマー→ダウンロード

ラオス→ダウンロード

日本→ダウンロード

 

2020年08月04日(火)8:15 PM
藪本雄登が寄稿した「タイにおけるオンライン会議規制緩和に関するアップデート-オンライン会議規制の変遷と改正内容-」がJCC所報8月号(700号)に掲載されました。
 
タイトル:バンコク日本人商工会議所(JCC)所報
著者:藪本雄登、マーシュ美穂
言語:日本語
ウェブサイト:JCCホームページ
掲載元:バンコク日本人商工会議所
発行日:2020年8月